『亜空間通信』326号(2002/08/04) 阿修羅投稿を02.12再録

国王の隠し球あり着々進むイラク長期駐留計画に湾岸戦争時の怪物らが目白押し

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『亜空間通信』326号(2002/08/04)
【国王の隠し球あり着々進むイラク長期駐留計画に湾岸戦争時の怪物らが目白押し】

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 転送、転載、引用、訳出、大歓迎!

 本日(2002/08/04)の日経朝刊の国際面「ダイジェスト」欄に、「イラク国王として帰国も」の見出しの短い記事が出た。

 1958年のクーデターで殺された国王の従兄弟でイギリスに住むアリ・ビン・フセインは、「イラクの人々が国王としての帰国を望むのなら戻って国と国民に奉仕する用意がある」と述べたそうである。

 アフガニスタンでも、アメリカは、傀儡の「国王」を据えた。私は先に、アフガニスタンと日本を結び合わせて、以下の皮肉を飛ばして置いた。

akuukan-01-11-102.html
『亜空間通信』102号(2001/11/17)
【国内現存タリバン政権『崩壊』表現は二重基準で親米傀儡新植民地政権の手先】

[中略] 私は、この新アフガン戦争を、いわゆる「非対称戦争」と称して、難癖を付け、多国籍を名乗る基本的には米軍の長期駐留場所を確保し、ゲリラを「封じ込め る」石油資源地帯確保戦略なり、と睨むのである。

 軍事的な駐留場所確保の決定的な条件は、米軍がいないと地位が保てない「王様」 の傀儡政権を作ることである。日本では昭和天皇が自分の地位を守るために、マッカーサーに沖縄を25年から50年占領してくれと頼み、それが現在も続いている。中東の歴史は特に、この手のCIA謀略の血に塗れており、サウジも典型、アフガンでも「元国王」が物欲しげに、うろうろしている。

 ああ、21世紀は、デモクラシーならぬデマゴギーが正体の「民主主義」を守る王様 の傀儡政権が花盛り、新たなる植民地拡大の時代なのだ!

 [後略]

 以上で引用終わり。

 東の島国、後進帝国の日本も、かつては清国の元皇帝を「偽」満州国に据えて、傀儡支配を試みた。しかし、大英帝国と従兄弟の超大米帝国のタッグマッチには、到底、敵わない。中世の昔からユーラシア大陸諸国の亡命者を匿い、虎視眈々と支配領域の拡大を図っていた西の島国、海賊帝国の故知である。自前の曲物も怪物も、沢山飼っている。

 今度のイラク攻撃計画が、威嚇のままで、軍産複合体が儲けるだけで中断されるのか、それとも本格的な実施に至るのか否かの鍵の一つは、「サダム以後」の傀儡政権の構築可能性にある。その可能性の一つが、今や各地で雨後の竹の子のように増殖中の「国王」なのである。

 折から、以下の大手メディア記事も出現している。

http://www.asyura.com/2002/war14/msg/285.html
米上院イラク公聴会、「フセイン打倒」の認識共有〔日本経済新聞〕 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 8 月 02 日 22:58:07:

(回答先: 米大統領:イラクのフセイン政権交代に「あらゆる手段」強調[毎日新聞8月2日] ( 2002-08-02-10:53 ) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 8 月 02 日 17:20:26)

米上院外交委員会は1日、2日間にわたった初の対イラク政策に関する公聴会を終えた。証言した専門家らはフセイン・イラク政権を排除するべきだとの認識ではおおむね一致したが、軍事行動をめぐっては米国による単独行動を戒め、同盟国や国連と連携するようクギを刺す声が出た。

強硬姿勢が際立ったのはレーガン政権下で国防長官を務めたワインバーガー氏。「フセイン政権を打倒すべきだ」と早急に政権転覆作戦を進めるよう促した。経済制裁について「フセイン(大統領)を封じ込めることはできない」と効果に疑問を呈し、米国単独でも軍事行動に打って出るべきだと熱弁を振るった。

クリントン政権下で大統領補佐官(安全保障担当)を務めたバーガー氏はイラク攻撃について「きちんと行動しないと、より悪い結末を招きかねない」と警告。どのぐらいの同盟国が米軍と行動をともにし、イラク周辺国にどの程度の悪影響を及ぼすかなどを見極めてから、最終判断を下すべきだと語りワインバーガー氏とは一線を画した。(ワシントン=秋田浩之) (23:00)

 以上で引用終わり。

 この記事の紙印刷版は、3日付けであったが、少し違う。見出しは「単独攻撃に一部は異論」であり、中間の見出しとして「復興費6兆円以上に」と入り、最後に、上記の「一線を画した。」と「(ワシントン=秋田浩之)」の間に以下が続入る。

 複数の専門家が指摘したのが、フセイン政権崩壊後の国家再建には膨大な資金と冶安部隊が必要になる点。バーガー氏は復輿費は五百億ドル(約六兆円)から千五百億ドルかかるとして「危険とコストを明確にする必要がある」と訴えた。

 一方で混乱が生じれば、イランやトルコが介入し、中東が一気に不安定になりかねないとして、米軍の長期駐留は避けられないとの見方も示された。

 九月の公聴会には政府高官を招致して開催する方針で、イラク攻撃の是非をめぐる論議が一段と熱を帯びる。

 以上で引用終わり。

 さてさて、「再建には膨大な資金」とある部分は、いかにも経済専門紙らしい記事の作り方である。要するに、様々な選択肢は残しながらも、非常に具体的な議論になっている。しかも、そこで、「強硬姿勢が際立ったのはレーガン政権下で国防長官を務めたワインバーガー」とあるのが、実に生々しい。ワインバーガーに関しては、つい最近、以下を紹介したばかりである。

http://www.asyura.com/2002/war14/msg/123.html
『亜空間通信』310号(2002/07/23)
【911企画は湾岸戦争仕掛け人となるとシャロンと気脈通じイラク攻撃の宿願もか】

[中略]

 彼らの宿願に関しては、以下が参考になる。

nise-33.html
『偽イスラエル政治神話』
[中略]

 本書には、この間の底流の一端を伝える二つの資料が紹介されている。第一は、『キヴーニム』(82・2)掲載論文、「一九八〇年代のためのイスラエルの戦略計画」(一五五頁上段)であり、第二は、『ニューヨーク・タイムズ』(81・12・1)掲載、ベギン政権のシャロン国防大臣とワインバーガー米国防長官が“戦略的協力”計画を語った会見の記事(同前二七〇頁)である。[後略]

 以上で引用終わり。

 最後に重要な問題は、「米軍の長期駐留」であるが、これに関しては、以下の記事の観測がある。

http://www.kamiura.com/new.html
日本軍事情報センター
-激動する世界の最新軍事情報を発信-
SINCE Nov 1999
  所長  神浦元彰(軍事アナリスト)

 イラク攻撃後は米軍の長期駐留も ブレジンスキー元大統領補佐官 (読売 7月27日 朝刊) [要約]ブレジンスキー氏が読売新聞の永田記者のインタビューに答えたもの。ブレジンスキー氏はイラクが大量破壊兵器の査察に応じないなら、軍事攻撃が必要になるという。その効果的な査察体制作りに、攻撃の実否がかかっている。その際、軍事攻撃が行なわれた場合、地域全体が不安定になり、米軍のイラク長期駐留が必要になる。ただし紛争解決のメドもなし(長引けば)にイラク攻撃を始めれば、米国とイスラエルが共謀してアラブ世界に侵攻を始めたと映り、米国への反発が強くなるだろうと語った。

[コメント] 米軍のイラク駐留はすでに可能性が指摘されている。サウジの米軍基地が反米感情を高める要因になっているためだ。イラクに米軍が駐留すれば、隣国のイラン、サウジ、シリア、ヨルダンなどに、米国は強い政治(軍事)力を発揮できる。しかしその駐留のためには、主力戦車部隊を含む数万人の米軍規模が投入される。また生物・化学テロに襲われないための処置が必要になる。イスラム教の聖地サウジに米軍が駐留するより、イラク駐留は反発が少ないかもしれない。が、それはそれで第二次大戦後、日本に米軍が駐留したような温和な駐留状態にはならない。そのことで、さらなる大規模テロを引き起こす可能性があることも指摘しておくべきだ。
(写真あり)
 写真はインタビューに答えるブレジンスキー氏。

 以上で引用終わり。

 上記の日本軍事情報センタ所長「神浦元彰(軍事アナリスト)」の存在を私が知ったのは、1993年のことだから、今から数えて9年前のことになる。カンプチアPKOの取材後、自治労の労働大学が発行していた月刊誌『まなぶ』から寄稿を求められ、その参考にと同誌の1992年10月号の郵送を受け、「写真=神浦元彰」の次の「グラビアに寄せて」という記事を読んで、その時から9年前の1984年に遡るアメリカから日本への「自衛隊の派遣要請」日米諮問委提言の主要各紙報道があったことを知り、多くの専門家のみならず自分自身の「ポカ」に気付いて、愕然としたのである。その経過と問題点は拙著『国際利権を狙うPKO』に正直に記した。つまり、神浦元彰(軍事アナリスト)を私は、写真家であると同時に、細部を見落とさない性格の持ち主として記憶しているのである。

 上記の神浦元彰の最新記事の中に、「ブレジンスキー元大統領補佐官」が出てくるのが不気味である。カーター大統領の補佐官として、1979年にアフガン政府に対するCIA工作を担当した謀略の経験者である。以下を参照。

akuukan-01-10-47.html
『亜空間通信』47号(2001/10/17)
【ムジャヒディン援助はソ連の侵攻以前のCIA謀略と大統領補佐官が認めてた】

 このブレジンスキーが、「米軍のイラク駐留」の可能性を語り、その理由として神浦元彰は、「サウジの米軍基地が反米感情を高める要因になっている」ことを挙げているのである。

 1979年のアフガン謀略担当者、ブレジンスキーと、1981に、ベギン政権のシャロン国防大臣(当時)と会談したワインバーガー米国防長官(当時)が、今の今、「イラク攻撃」または「イラク駐留」に関わる存在だとすると、ますます、この夏の怪談は、不気味さを増してくる。

 以上。


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