チェチェン総合情報

チェチェンニュース Vol.06 No.07 2006.04.07

発行部数:1581部

今週末のイベント情報と、 最近の気になったニュースをいくつかお送りします。

INDEX:
■イベント:タノシイウツワの会・チェチェン難民チャリティートーク
■クーリエ・ジャポンにポリトコフスカヤ記事
■11年間で3千人以上が地雷で被害
■プーチン大統領博士論文ねつ造発覚
■日本政府、チェチェンの児童リハビリプロジェクトへの支援を決定
■誰の責任か? チェチェン難民についての報告
■「軍の7割を徴兵から契約兵に切替え」イワノフ
■ロシアのチェチェン支援活動家が重傷
■特務機関がバサーエフを匿っている-カディロフ

■イベント情報

●4/9 千葉:タノシイウツワの会&WOODSTOCKプレゼンツ〜チェチェン難民を訪ねて〜
http://geocities.yahoo.co.jp/gl/kamoneggy/view?.date=20060324

熱血唐津人のカモネギ氏が中心になって、チェチェン難民チャリティーのトーク&ライブ。バグパイプや、チェチェンの楽器の演奏もあります。

参加しよう!

■クーリエ・ジャポンにポリトコフスカヤ記事
Politokovskaya's "Poison in the Air" published in "Courrier Japon"

「発病者は100人以上、原因は不明・・・少女たちが集団感染!?チェチェンを襲う『奇病』」と題して、アンナ・ポリトコフスカヤの記事が、旬刊の雑誌「クーリエ・ジャポン」に掲載されました。3月9日のチェチェンニュースで同じ記事のアンダーグラウンド翻訳を掲載していたので、「わぉ」。ただし、この『奇病』がロシア軍の化学物質によるものではないかという疑問や、過去の類例は削除なのが気にならないこともなく。よく見ると「ファーストレディが語る 私の夫・プーチン」という記事も。コンビニで売ってます。480円。

http://moura.jp/scoop-e/courrier/content010.html

■11年間で3千人以上が地雷で被害
Over 3,000 killed or maimed by mines in Chechnya

4月4日は第一回の「世界地雷の日」。過去11年のチェチェン戦争で、3千人の人々が地雷によって死亡または負傷したと、UNICEFと欧州委員会が発表した。 [4/4 Interfax]

Interfax: http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20060405

2003年の地雷禁止国際キャンペーン報告では2002年に5千人がチェチェンで地雷によって死亡したとしているので、 数字にはばらつきがあるようです。(写真は同じく地雷に悩まされるカンボジアの子ども)

ICBL関係: http://www.jca.apc.org/tlessoor/chechennews/log2003.htm#0910

ほかにも地雷関係の情報を張り付けてみると:
チェチェンの子どもが爆弾を作る[2005 6/19 The SundayTimes]: http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20050624/1119594552
「あまり見ないほうが、あとでうなされずにすむのさ」だそうです。

■プーチン大統領博士論文ねつ造発覚
Putin accused of plagiarising his PhD thesis

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の博士論文が盗作、剽窃だったことが発覚し、プーチンは赤っ恥をかいた自分の顔色を隠すためにウォッカを鯨飲しているという報道が入った。

問題となったのは、プーチンが90年代半ばに博士号を取った論文で、その大半が米国の論文の引き写しであると、米国の研究者らが発表した。 たとえば、プーチンの博士論文の最初の20ページのうち、16ページ分がやや語順を変えたり、アレンジされているものの、78年にピッツバーグの2人の研究者、William KingとDavid Clelandによって執筆された「Strategic Planning and Policy」の引き写しになっているという。この論文は90年代初頭に旧ソ連のKGB関連研究所でロシア語訳されている(ちなみにプーチンはKGB出身者)。

告発をしたガッディー教授は「こりゃ、わたしの基準だと『剽窃』というもんに他ならんよ。誰かが論文の工作をしたに違いない。それがプーチンであれ、誰であれ、カット・アンド・ペーストは、プーチンのためだった」と語った。[3/26 The Sunday Times/via P-navi info]

日本語: http://0000000000.net/p-navi/info/news/200604012136.htm

原文(英紙サンデータイムス): http://www.timesonline.co.uk/newspaper/0,,176-2101607,00.html

、、、わぉ

■日本政府、チェチェンの児童リハビリプロジェクトへの支援を決定(エイプリル・フールではありません)
Japan Mofa Allots Some $1 Mln for Education Restoration in Chechnya

外務省の「人間の安全保障基金」が、UNESCOとWHOによる「チェチェンの児童・教師に対する統合的リハビリに係るキャパシティー・ビルディング・プロジェクト」というものへの、約1億円の支援を決定したとのことです。 チェチェンに外国機関の目が入るきっかけになるといいと思います。見たところ、ロシア政府や、親ロシア派にそのまま支援する形ではないので、 透明性の高い活動になるなら、これは評価できるのではないでしょうか。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/18/rls_0328c.html

なおロシア側では、イタル・タスが伝えています。

http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20060331

この次は、日本がチェチェン紛争の平和的解決に一役買えないものでしょうか。

ところで、欧州委員会(EUの内閣みたいなもの)は、チェチェン内外の難民に対して、2200万ユーロ(31億円程度)の支援を決定しました。内容はおもに緊急食糧支援、基礎的教育、子どもたちへの精神的支援など。アゼルバイジャンの難民の一部にも適用するようです。EUが、1999年からこれまでチェチェンを含む北コーカサスの人道援助に使ったお金は19600万ユーロ(282億円程度)で、この地域については最大の援助国です。この支援は、赤十字、デンマーク難民評議会、 UNHCR、国連食糧計画、メドゥサン・ドュ・モンド(世界の医療団)が共同して実行するようです。

EUは、活動の根拠となる難民の人数について、 20万人の難民がチェチェンのなかで難民生活をしていると報告しています。チェチェンの外では、隣接するイングーシ共和国に 2万5千人、ダゲスタンに9千人、アゼルバイジャンに5千人が難民として居住していると言います。 (さらに5万人から10万人がヨーロッパに流出していると思います)

http://www.reliefweb.int/rw/rwb.nsf/db900SID/LSGZ-6NLG23?OpenDocument

ながながと支援の金額のことを書いてしまいましたが、 「チェチェンは正常化に向かっている」といった宣伝をロシア政府がしていて、 全部ではありませんが、 日本のメディアでもそのとおりに伝えている向きがあります。 けれど依然としてこれだけの数の難民がおり、人権侵害の報告も絶えません。 さらに、ベスラン事件のような、チェチェン近隣でのいわゆるテロが起こっていることも考えると、「正常化」という言葉を信じるのは難しいものがあります。

そんな状況を考えると、チェチェンに外国政府や国際機関が援助のためでも 入っていくのは貴重なことだと思います。日本政府のチェチェン支援の 報告会にはぜひ参加したいと思います。

チェチェン難民への支援について詳しく知りたい方は、 次の記事をご参照ください。

■誰の責任か? チェチェン難民についての報告
UN and Humanitarian organization's official reports on Chechen refugee (The Japanese version of)

「『反チェチェン感情』がロシア連邦の多くの場所で蔓延し、2002年10月のモスクワ劇場占拠事件や2004年のモスクワ地下鉄爆破事件、 2004年9月のベスラン学校占拠事件以降ますます悪化している。...最近の例では、50人もの若者の一団がモスクワの地下鉄でコーカサス出身者4人を襲撃し、「テロ攻撃の報いを受けろ!」と叫びながら殴打とナイフによる攻撃を繰り返したという報告が寄せられている」 (NRC,p7)

国連高等難民弁務官事務所と、ノルウェー難民評議会(NRC)による、チェチェン難民問題についての報告書の和訳です(かなり大量)。難民問題に関心のある方は必読。訳:植田那美

「チェチェン情勢を背景としたロシア連邦からの亡命希望者に関する報告」(PDF310KB)[2003/2 UNHCR] 原文:http://symy.jp/?vBm

「誰の責任なのか? チェチェン国内避難民と亡命希望者、難民の保護」(PDF470KB)[2005/5 NRC] 原文:http://symy.jp/?.jp

■「軍の7割を徴兵から契約兵に切替え」イワノフ
Ivanov said 70% of military to professional soldier

ロシアのイワノフ国防相は、2008年にはロシア軍の70パーセントが、現在の徴兵制から志願兵制になると記者会見で語った。これによると、すでに6万人の契約志願兵・下士官が現役についており、 2006年には2万5千人があらたに加わる。また、チェチェンに派遣されている軍部隊が全員志願兵であるのと同じように、チェチェンの隣国のイングーシとダゲスタンに配置されている部隊も、まもなく全員が志願兵によって編成されるという。最近のコメルサント紙はイワノフ国防相が2008年の次期大統領選挙への出馬をうかがっていると指摘している。[3/29 RFE/RL]

http://www.rferl.org/newsline/2006/03/290306.asp#archive

チェチェン人にもっとも恐れられ、忌み嫌われているもののひとつは、「コントラクトニキ(契約志願兵)」と呼ばれる兵士たちです。ロシア軍は第一次チェチェン戦争を徴兵で戦ったのですが、徴兵忌避が多いことと、徴兵されたごく若い兵士達がほとんど訓練も受けずに前線に投入されたために、ロシアの母親たちが反戦運動に立ち上がったという経緯があります。第二次チェチェン戦争に入って、チェチェンには集中的に契約志願兵が送り込まれてきました。これは、メディアがチェチェンに入ることを禁止するのと同様、ロシアの世論・市民社会から「戦争」を遠ざけておく方策ではないかと思います。

ではどんな人達が「志願兵」になるのか? 一説には刑務所で徴募され、刑期の減免をゲットするために兵士になると言うもの。また、具体的な話として、ストリートチルドレンまたはそれすれすれの孤児たちが、兵士にスカウトされていると言うやりきれない報道もあります。

http://www.jca.apc.org/tlessoor/chechennews/archives/20020726kodomo.htm

■ロシアのチェチェン支援活動家が重傷
Russian Chechen supporter Boris Stomakhin seriously injuired in police raid

モスクワ北東管区民警の私服警官3名は、さる3月21日、チェチェン独立派サイト「カフカス・センター」の恒常的な執筆者として知られるジャーナリストで、「急進政治」紙主筆、急進政治組織、RKO=革命直接連合共同代表を務めるボリス・ストマーヒンの自宅に乱入し、ストマーヒンを拘束しようとした。ストマーヒンは拘束を逃れようと、窓からロープを伝わって地上に逃げようとしたが、綱が切れて4階から地上に転落して足及び脊椎に重傷を負った。[3/25 ChechenWatch] http://groups.msn.com/ChechenWatch/general.msnw?action=get_message&mview=0&ID_Message=1883

■特務機関がバサーエフを匿っている-カディロフ
Chechen PM says special services protect Basayev

チェチェン親ロシア派の首相ラムザン・カディロフは、 3000人の内務省部隊がバサーエフなどの独立派野戦司令官の捕捉のために作戦を展開していると語る一方、「本来ならバサーエフはもっと前に逮捕できていた。 特務機関が匿っている から逮捕できなかったんだ」と語った。

ラムザン・カディロフによると、現在までに7千人の独立派ゲリラが、親ロシア派に投降している。[3/13 RFE/RL] http://www.rferl.org/newsline/2006/03/130306.asp

以上文責:大富亮

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