わたしの雑記帳

2010/3/16 奈良中学校、柔道部顧問による傷害事件傍聴報告。

2010年3月16日(火)、13時15分から、横浜地裁503号法廷で、奈良中学校、柔道部顧問による傷害事件の民事裁判・口頭弁論(12回)があった。
裁判官は、三代川俊一郎氏、裁判官は峯俊之氏、塩田良介氏。

原告(Kさん)代理人弁護士から裁判官に、不起訴になった刑事事件の記録文書送付嘱託及び文書提出命令を出してほしい旨の要望が出された。
三代川裁判長は、書類は裁判所にあるが、原告側に提供してよいか聞いてみるとのこと。交通事故などでも、一定の内部的処理基準をクリアすれば、開示されることがあるので、開示してもよいか、非開示にすべきか検察に聞いてみるとのこと。

今回、左陪席(傍聴席から見て右)の裁判官が、争点整理について口頭で提示した。
原告と被告とで争いのない事実としては、柔道部顧問Tが男子部員Kくん(当時中3)を乱取り中、絞め技で落とした。蘇生後、また技をかけたという内容。1セット4分を2連続行ったということについて、当初は争いがなかったが、T元顧問のほうで「間に休憩があった」と変化している。

大きな争点としては、
1.被告Tの行為の内容の特定。
原告は執拗な暴行行為と主張し、Tは普通の練習と変わらないといって争っている。
被告横浜市はふつうの練習とは変わらなかったということはあまり強く主張していない。

2.Tの行為内容が、違法なものであったかどうか。Tがどのような意思をもってKくんに技をかけたか。
原告は、Tは普段から、柔道にかこつけ暴行していたと主張し、事故以前にTとKくんとの間で、もめごとがあったと主張。
被告Tは、そのような事実はないと否定。


3.故意か過失か。すなわち、不法行為があったかどうか。
原告側は、故意もしくは過失が認められると主張。
被告Tは、柔道技で急性硬膜下血腫になることは予見できないので、過失もないと主張。

乱取り直後に急性硬膜下血腫を発症したことは争いがない。

4.急性硬膜下血腫の原因。Tの行為との因果関係について。
原告側は、Tの行為が原因と主張。
被告側は、原因は特定できていないと主張。


5.被告側は、他者の加害行為によって、そのようなことがあったのではないかと主張。あるいは、以前から脳に問題があって、今回、悪化したのではないかと主張。

6.Kくんに高次機能障がいが発生したかどうか。その程度。

7.当初、被告の横浜市は、脳挫傷を認めていたが、今は否定するような主張。

8.原告側は、準備書面5で、安全配慮義務違反を主張しているが、Tの行為を悪質なものと主張するならば、国家賠償法との関連でもっと整理するべきではないか。

以上、裁判官は、原告側と被告側に、争点内容の確認を求めた。

裁判長からは、あとは立証の問題だが、原告側が入手できるものは限られている。医師による鑑定をどの段階でするかについて、Tの行為に責任がないとなれば、鑑定すること自体が無駄になる。費用も発生することなので、ある程度裁判が進んだ段階で鑑定を採用するかどうかを決めたいとした。

なお、今まで法廷での口頭弁論を続けてきたが、このあたりで、非公開のラウンドテーブルで、弁論準備手続きを進めたいとのこと。次回は4月27日の午前に、非公開で、弁論準備手続きが行われる。

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前回(2月9日)以降、原告代理人弁護士は、犯罪被害者等基本法に基づき、検察に対して、記録開示請求を行った。
しかし、門前払いされたという。


2006年12月8日犯罪被害者等基本法が成立し、5つの重点課題のなかの1つとして、「刑事手続への関与拡充への取組(基本法第18条関係)」が掲げられた。
「刑事事件の閲覧制度」について、「不起訴記録は、刑事訴訟法第47条により非公開が原則とされているが、同条のただし書により、従来から交通事故に関する実況見分調書等の証拠について、その事件に関連する民事訴訟の係属している裁判所からの送付嘱託や弁護士会からの照会に対し、開示することが相当と認めるときは、これに応じてきたところである。
 また、被害者等が民事訴訟において被害回復のため損害賠償請求その他の権利を行使するために必要と認められる場合には、実況見分調書等の客観的証拠について、被害者等に対して弾力的に開示する運用としており、供述調書についても、開示できる範囲を拡大する等、引き続き、弾力的な運用に努めている」(平成18年版 犯罪被害者白書 P35、36)

「法務省において、不起訴記録の弾力的開示等現行制度を周知徹底させるとともに、不起訴処分について、犯罪被害者等の希望に応じ、検察官が、捜査への支障等を勘案しつつ、事前・事後に、処分の内容及び理由について十分な説明を行うよう努めていくこととされた。」
「不起訴処分に関する説明の実施については、平成18年1月、最高検察庁から各高等検察庁及び各地方検察庁あてに、本施策の実施につき適切な対応が行われるよう留意事項を通知しているほか、会議や研修等の様々な機会を通じて検察の現場への周知徹底をはかっている。」(同 P80)
 
この犯罪被害者等基本法の考えは一体、どこへ行ってしまったのだろう。
ましてこの事件では、昨年(2009年)12月12日に検察審査会は、T教師が「嫌疑不十分」で不起訴になったことに対し、業務上過失傷害容疑で再度捜査のうえ、処分を再考するよう求める「不起訴不当」の結論を出している。 しかし、12月17日、検察は改めて傷害罪はもちろん、業務上過失も不起訴と決定した。(2010年2月12日付け雑記帳参照)

被災者家族は検察の不起訴決定にまったく納得がいっていない。検察が、それを説得できるだけの十分な説明をつくしたとも全然思えない。検察が、自分たちの再度の「不起訴」決定に自信をもっているならば、結論を出すに至った経緯、元になった記録を開示できるはずだ。それを門前払いするというのは、やはり決定にやましいところがあるからではないかと思えてしまう。

警察、検察に、たとえば捜査上のミスや何らかの恣意が働いたとき、被害者はどのようにそれを立証できるというのだろう。
警察、検察に楯突かない被害者は権利が守られ、異議申し立てをしたい被害者の権利を守る手立てがないのであれば、何のための「犯罪被害者等基本法」だろう。
学校と警察とが手を組めば、どんな事件も刑事不起訴、民事でも、すべての情報を学校と警察が握っているなかで、原告側に立証の手立てはなく、原告敗訴という図式が出来上がってしまう。



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