わたしの雑記帳

2007/12/16 小金井市自閉症児Nくん転落事件人証調べ。4人の証人尋問。傍聴報告。

2007年11月29日(木)東京地裁八王子支部401号法廷で、小金井市自閉症児Nくん転落事件(平成18年(ワ)第2354)の人証調べが行われた。朝10時00分から夕方5時まで、被告の担任G教師、原告であるNくんの母親、父親、校長の4人が証言台に立った。
裁判官は、河合治夫裁判長、桑原宣義裁判官、佐藤哲郎裁判官。

被告・担任G教師の人証調べ

最初に、被告のG教師。G教師の代理人弁護士から尋問がはじまった。
Q:事故が起きた平成16年11月26日、体育館の倉庫に施錠はされていたのか?
A:されていない。
Q:Nくんは自分で倉庫に入ったのか?以前にも同じようなことはあったのか?
A:Nくんは自分で扉を開けて入った。それまでに入ったのは見たことがない。それまでも知らない場所に入っていくことはあった。
Q:倉庫の扉は誰かが閉めたのか?どのくらいの時間、入っていたのか?
A:扉は自動的に閉まった。時間は、Nくんが倉庫に入ったのに気づいて、10メートルほど離れたところから歩いて向かった時間だから、数秒。
Q:どのように注意したのか。なぜ、倉庫に入ってはいけないのか?
A:「倉庫に入ってはいけません」といつもと同じ口調で言った。倉庫は3つあり、Nくんが入った倉庫2は、バレーボールの支柱やバトミントンの支柱があって危ないので。
Q:Nくんは理解している様子だったか?
A:いつも反応があまりないので、表情から読み取れなかった。

Q:そのあと、どうしたのか?
A:Nくんは自分で扉を開けて倉庫3に入っていった。「倉庫に入ってはいけないと言ったでしょう。そんなに入っていたからったら入っていなさい」。そのように言った。私が怒っていることを見せて、倉庫が危ないと感じ取ってもらいたかった。
Q:「入っていなさい」と言われて、そのまま入っているとは思わなかったのか?
A:思わなかった。いつも、「そのまま立っていなさい」と言っても、じっとしているわけではなかったので。授業中などに席を立ってしまうときに、怒っているという様子が伝わると、私のほうに寄ってきたりした。
Q:倉庫の扉は誰が閉めたのか?
A:空けられた状態で手を離せば自動的に閉まる。扉を押さえて開けておくことはしなかった。早く出てこないと先生は行ってしまうよと示せば、私のほうに寄ってくると思った。
3年生の春頃、週に1回、学校の外に出て校外学習をしていた。Nくんは興味をひくものがあると立ち止まってしまう。「先生、行っちゃうからね」と行くようなそぶりを見せると、寄ってきて列に戻る。
怒ったそぶりで、出てくると思った。
Q:Nくんは「閉めないで」という表情をしたのか?
A:わからない。

Q:G先生はどこにいたのか?
A:すぐ出てくると思って扉の前にいた。15秒から30秒くらい。
Q:扉の前にいた時間をG先生は様々な答え方をしているがなぜか?
A:最初、数秒と答えたが、警察が倉庫から一輪車台を通って窓から出たら、もっと長かっただろうと言われたので、時間が変わった。
Q:何の音もしなかったのに、最初、「中からガシャンと音がしたので扉をあけた」と言ったのはなぜか?
A:一輪車台が倒れていた光景が私の頭の中にあったので、音がしたのだろうと思って話した。
扉を開けたらNくんがいないので、びっくりした。どこに行ったんだろうと混乱した。今、冷静になってみると音はしなかった。
Q:扉を開けたあとは?
A:倉庫の中央にNくんは居ず、窓は開いている状態だった。窓枠に手をかけて乗り出すように下を見た。窓のところで出て行く児童の後ろ姿を見た。
Q:その後ろ姿は誰だかわかったのか?
A:誰だかわからなかった。倉庫2と3の間にも出入り口がある。私は校舎につながっている側の出入り口から出た。Nくんが体育館の中にいる可能性を考えたので。

Q:Nくんはどこにいたのか?
A:保健室にいた。あごから血を流していて、体操着に血がついていた。泣いていた。
Q:どのわうにしてけがをしたと思ったか?
A:一輪車台から落ちてけがをしたと思った。
Q:窓から落ちてけがをしたとは思わなかったのか?
A:思わなかった。手足にけがはなく、自分の足でたてる。窓からなら、これくらいのけがではすまなすだろうと思った。養護の先生に、見ていないのでわからないが、倉庫内の一輪車台から落ちてけがをしたと思うと説明した。

Q:説明の内容を何回かか変えてしまったのはなぜか?
A:事故当時は、けがの状態などいろんなことを考えて推測で話した。その後、他の人から目撃情報など、いろんなことを言われて、いろんな可能性を考えた。倉庫にNくんがいなくて驚いて頭が真っ白になった。イメージや順番が変わってしまった。ただ、自分の記憶に反することは言ったことがない。
Q:けがの原因は何だと思うか?
A:可能性としては、@倉庫で転倒・落下、A窓から飛び降りた、B外に出てから転倒の3つの可能性があると思うが、どれだかわからない。

Q:警察の実験には立ち会ったのか?
A:人形を使って窓から落として、パイプにあごをぶつけた実験に立ち会った。倉庫の窓から後ろ向きでパイプにあごをぶつけるように実験していた。いずれも、あごをぶつけたあと、後頭部、背中を打つようになった。
Q:保護者の方に対して、今の気持ちは?
A:当時、指導していたNくんを目を離してしまったことでけがを負わせたことは深く反省しています。混乱の中で、いろんな推測で話したことが、保護者に不信感を与えてしまったこと、けがをしたことで不安や日常生活での支障が出たことを深く反省しています。毎日のように思い出して、Nくんと保護者の方に申し訳ないという気持ちになります。本当に申し訳ありませんでした。

(中略)

原告代理人の清水建夫弁護士からの反対尋問。
Q:G先生は倉庫に入ってはいけないという指導が、障がいの特性にあわせた適切なものではなかったしているが、Nくんの障がい特性のどの部分で不適切だったと思っているのか?
A:怒っている態度を見せるために言葉がけをしたので、もう少し、わかりやすい言葉で指導すればよかった。たぷん、パニックを起こして一輪車台から飛び降りてけがをしたのだと思う。
Q:パニックはなぜ起きたと思うか?
A:その当時、考えていて、一輪車台が倒れている。上に上って落ちて、あごを打ったのだろうと思った。
Q:一輪車台の上に上ったというが、事実としては一輪車台は倒れていなかったのでは?
A:・・・(少しの間無言)。たぶん、そうだと思う。
Q:なぜ、そういう言葉に結びつくのか?
A:倉庫の中に見かけなくなって、頭が混乱し、保健室であうまでの間の記憶が混乱して、順序がわからなくなった状態で話した。
Q:倉庫3のドアを開けてみたらNくんがいなかった。狭いところだから、見ればすぐにわかるだろう?だから、窓のところに寄って下を見たのではないか?
A:閉める前は倉庫3の中央にNくんはいた。しかし、目で見た範囲内ではいなかった。
Q:窓から振り返ったら生徒が出て行ったのを見たと言っていたのを、別の生徒だったようだとG先生は言い換えた。Eさんだったとあとで言っているが?
A:最初、振り返ったとき見た後ろ姿が、誰だかわからなかったので、当時はそう思った。
Q:倉庫に入ったとき、ひととすれ違うことはなかった?
A:はい。

Q:G先生は1年生のときの連絡帳に、「交流会。きちんと説明したため、パニックはもちろんなし」と書いているが、意味を説明してほしい。
A:1年生のとき、さくら学級(心身障がい児学級)と通常学級で交流会をした。体育館で、歌をうたったり、ゲームをした。
Q:Nくんにきちんと話したから、パニックは起きなかったという意味か?
A:はい。
Q:連絡帳に、家庭にあてて「光とともに」(「光とともに 〜自閉症児を抱えて〜」戸部けいこ氏作、秋田書店のこと?=takeda註)という本をお貸ししますと書いてある。この本は4冊あるが、この中には、自閉症の子どもが高いところにあがってしまって、ハシゴ車が出た例がある。また、否定的なことを言ってはいけない。肯定的なことを言わなければということやも筋道をたてて、終わりをきちんと指導したほうがよいと書いてある。
また、ここにあなたが書いた研修報告書がある。その中にも、危険などの抽象的な言語、名詞の概念が理解できづらいので、具体的に話したほうがよいと書いてある。不適応行動への対応についても、罰にはいくつかの危険がある。罰を与えても長期的な効果がないことは証明されていると書いてあるが、そう今でも思うか?
A:時と場合による。すべての指導で、「○○してはいけない」と否定で指導するのはよくない。肯定的な面で指導したり、いけないことはいけないとはっきり指導するのも大切だと思う。他の行動のよい子であることを認めて、○○しないで偉いねと不適応行動を連想させることを言わない。作業の終わりが見えないと癇癪をおこすので、わかりやすい手立てでまず説明する。

Q:ボールなどの入っている倉庫1は入ってよいのか?
A:授業のとき、ボールをとるときに児童は入っていた。
Q:倉庫1は入ってよい。倉庫2は入ってはいけない。「倉庫に入ってはいけない」という指導では、なぜ入ってはいけないのかわからないのではないか?
A:自閉症にもいろんな子がいる。
Q:Nくんはわかったと思うか?
A:Nくんはその部屋が倉庫として認識したかどうかわからない。この場所は危ないという意味、思いで、指導した。
Q:「倉庫に入ってはいけません」というのは、具体的な指導ではない?
A:わからない。

Q:Nくんに「そんなに入っていたければ入っていなさい」と言った時、どんな様子だったのか?
A:少し、しゅんとしたような様子だった。
Q:母親に話したときには、「ああっ」と答えながら、手を前に出すようなしぐさをしましたと言ったのではないか?
A:覚えていない。
Q:「そんなに入っていたければ入っていなさい」という言葉を素直に聞けば、「そこにいなさい」と言うことではないか。出てきなさいというメッセージは伝わるのか?
A:その言葉自体に意味はない。私が怒っていることを示したかった。
Q:肯定的指導ではなく、否定的指導では?
A:言葉を理解しなさいということではない。

Q:(写真を見せて)実況検分のとき、2台が欠けたのはなぜか?一輪車が倒れているが、窓に乗るときに倒れたのか?
A:覚えていない。
Q:それとも、もともとなかったのか?
A:覚えていない。
Q:警察の調書では、立会人の説明として、Nくんを閉じ込めたのち、カシャンと音がしたので扉を開けると、2台が倒れておりと書いている。事実でないことをなぜわざわざ言ったのか?
A:当時は混乱しているので、推測で話した。
Q:T先生は、この辺に児童の上履きが片方、落ちていたと説明しているが、それはG先生が自分で拾ったのか?
A:窓から下を見たら、図工室の前ありに上履きが落ちていた。それを拾って手にとって見た。Nと名前が書いてあった。その後は全く覚えていない。
Q:実況検分のときに、外で拾ったとなぜ言わなかったのか?
A:外にあったものかわからなかったので。
Q:あなたが拾ったものではなかった?
A:私が外から拾ったものだった。

Q:実況検分の2日後、奥さんと母親と一緒に校長室を訪ねて、「実は話がある」と言って話をしたとあるが?
A:思い出したことを話そうと思った。今までの話と違っていることを話したいと言った。
Q:今までの話はちがうのか?
A:その時に、自分が見た上履きのことで、いろんな可能性があると、毎日のように推測していた。そのことを話さなければいけないと思った。
Q:実況検分のあと、あなたは弁護士に相談して、「上履きを拾ったことは話したほうがよいでしょう」と言われたと聞いた。正直に言うようになったのは、警察の捜査が入ったからではないか?
A:ちがう。窓から覗いて、地面に上履きが片方落ちていた。遠くでNくんの泣き声が聞こえた。
説明が違っているので改めてというより、付け加わった。
Q:一輪車のラックに載って落ちた可能性を今でも言っているが、一輪車台は1.4メートルある。簡単にNくんに乗れるのか?
A:わからない。
Q:窓から飛び降りてけがをしたにしても、一輪車のラックに乗って飛び降りてけがをしたにしても、予想外だったと思うが、なぜこういうことが起きたと思うか?
A:わからない。
Q:いろんなところを覗いている多動の児童を15〜30秒、一人にしておくのは大変、危険なことではないか?児童にとっては、たいへんな長さだと思わないか?
A:感じ方による。
Q:事故は全くの不可抗力か?教師として予測すべきだったのではないか?
A:予想していなかった。目の届かないところにしてしまったことを反省している。

同じく原告代理の児玉勇二弁護士から、反対尋問。
Q:校外学習で、歩道を歩いていて、興味があるものがあったときにばっと道路に飛び出してしまったのを見て、「怖いな」と思わなかったか?
A:そう思って、「こちらに戻ってきなさい」と指導した。
Q:多動の子を見えないところにおいたことは教師として失敗ではないか?
A:扉が閉まって、目から離れたことに反省している。
Q:事故後、保健室でNくんを見たとき、どう思ったか?
A:ほっとした。
Q:それは、生きていてよかった、重大な事故でなくてよかったという思いか?
A:その時に感じたのは、窓から降りたとしたら、立って歩いたりできない。骨折も、捻挫もない状況だったので、外ではないと思った。
Q:自閉症の子どもに体罰や厳しい指導も場合によっては必要だと思うか。体罰は人権侵害をすることで、許されないと思うか?
A:ほめたり、わかりやすく指導することが原則だが、肯定的な言葉といけないことはいけないと指導する、どちらもある。

Q:今回は静かに言ったのはなぜか?
A:怒っているとわからせるために、少し強い口調で言った。
Q:命令的に言ったとき、Nくんがそのままの行動をすることはほとんどなかったと言ったが?
A:「待っていなさい」と言って待っている子ではないという彼の性格をあらわした。
Q:Nくんにとって高いところは怖いところだったのか?自閉症の子がパニックになると、どこが怖いか否かわからなくなることがあるということは、よくあることか?
A:自閉症の学習ではある。
Q:「入っていたければ入っていなさい」と言われたことでパニックになることはあり得るのではないか?パニックになっい、高いところから降りようとしたこともあり得るのでは?どうすればよかったと反省しているのか?
A:目を離さなければよかった。

Q:今、以前と比べて、学校での評価は厳しくなっていると思うか?
A:わからない。
Q:校長から厳しく叱られたことは?
A:指導はある。

原告代理人の左近充(?)弁護士から反対尋問。
Q:小2のときの4月、Nくんが赤い顔になって、自分で頭をたたいているのではないか?出血斑が出たことがあるが、自傷行為の可能性の認識は?
A:自分の顔をたたくような行為は見たことがある。
Q:さきほど、Nくんに自傷行為はないと言ったが?
A:一切ないことはない。

原告代理人の岸本(?)弁護士から反対尋問。
Q:事故前に児童に、倉庫2、倉庫3に入ってはいけないと指導していたのか?
A:指導したことはない。
Q:倉庫2は危険なのか?
A:子どもにもよる。
Q:さくら学級の子どもには?
A:少し危険。
Q:倉庫3は?
A:卓球台、一輪車台があるので、あぶないと思った。
Q:Nくんは倉庫2から出て、倉庫3に入った。「この倉庫に入ってはいけない」と言ったのか?倉庫3に入ってはいけないという指導はあったのか?
A:倉庫3に入ってはいけないという指導はしていない。
Q:段階的に、まず、「倉庫3に入ってはいけない」と指導すべきだったのではないか?怒った態度を示されたが、Nくんにとっては、倉庫3は禁止された場所ではなかったのではないか?
A:私が怒った態度を見せると、寄ってくることがあった。
Q:倉庫から出すのに他の手段は?たとえば、「こちらにでてきましょう」というなど。
A:わからない。一瞬とった指導はそうだった。

Q:倉庫の窓があいていたことは、校長にいつ話したのか?
A:私が話したのではない。他の先生が見て、話した。
Q:それは事故当日から出ていたことか?
A:はい。
Q:窓から身を乗り出してみたのは、Nくんが落ちてしまったと思ったからか?
A:そういうことはあった。
Q:上履きが外に落ちていたという記憶は、当初からあったのか?
A:わからない。
Q:他の人に聞いた情報からというが、上履きが外に落ちていたのを知っていたのは、あなただけではないのか?自分で思い出して言ったのか?
A:はい。

Q:NくんはG先生が怒ると、必ず寄ってくるのか?
A:必ずではないが、授業中、トイレに何もいわずに行こうとしたとき、「Nくん!」と言うと来た。
Q:最近では、指導すると、笑いながら離れていくことがあると書いているが、正反対になることもあったのか?使い分けができていたのか?
A:注意されると逃げていくことはあった。体育館のなかとか、校庭とか、広い場所では注意すると笑いながら逃げていった。体育倉庫は狭いので、こちらに寄ってくると思った。
Q:先ほど例に出た道路は広いのに、寄ってきた?
A:道路に出てはいけないということは、私からではなく、いろんな人に言われていると思う。

Q:倉庫の中で落ちたと医者に説明したのはなぜか?
A:けがの状態から。手足にけががなかったので。
Q:検査をしている段階で、どうして軽いといえるのか?
A:立って歩いていた。足にけがが見えなかった。
Q:自閉症のひとは痛みの感覚が他の人と違うということは当時、知っていたか?
A:覚えていない。
Q:感覚がアンバランスで、むろし鈍感と思われることがある。骨折をしている場合でも、痛みの感覚が違うことから、平気で歩いたりすることがあるのを知っていたか?
A:わからない。しかし、休み時間にころんで擦り傷をつくって、「バンソコウ」「バンソコウ」と言っていた。けがに対して敏感だと思う。
Q:それはA:が出ている場合ではないのか?
A:わからない。

**************
ここまでで午前中の証人尋問が終わった。(12時10分ほどに終了)


原告・母親の人証調べ

1時から、原告である両親と元同校校長(以降、コ校長と略)の人証調べ。宣誓は3人が法廷中央に立ち、Nくんの両親のあと、校長が宣誓書を読み上げた。

原告母からの証人尋問。原告代理人からの質問で始まった。
Q:Nくんはどういう子か?
A:活発なところがあり、好き嫌いがはっきりしている。明るく素直。
自閉症で、他のお子さんと違った特徴として、言葉でのコミュニケーションが非常にしづらい。興味関心が偏り、強いこだわりがある。突然の変更に不安が強い。相手が意図することを汲み取るのが難しい。言葉だけでは何をやったらよいかわからない。
例えば、「お名前は?」と聞かれても、何の名前を答えたらよいかわからない。
言葉プラス文字や写真、ジェスチャーなど、目で見てわかる視覚的なものを使いながら、丁寧にコミュニケーションをとるようにしている。
Q:言葉とは、音声の意味か?
A:はい。そのまま文字通り受けとめて誤解することがある。たとえば、食事の準備をしているとき、「お皿をとって」と言うと、すぐそばの皿ではなく、食器棚からとってくる。何を意図しているか、言葉だけではわからない。

Q:突然の変化に対する不安、抵抗が強いというのは?
A:以前に法廷につれてきたとき、休憩が入ったことで、終わってしまったと思った。席で座っていることができずに、母親のところにきて、走り回ったりした。
Q:パニックを起こすことはあるのか?
A:理解できない状況で、わかっていないのにさらに言葉で言われ続けたりするとパニックになる。
Q:パニックになるとどうなるのか?
A:泣いたり、自分の頭をたたく、逃げ出すなど、その時によって違う。
Q:どのようなことに気をつけているか?
A:できるだけわかりやすく説明するようにしている。言葉だけでなく、文字、絵などを使ったり、終わりが分かるように話す。
Q:パニックになったらどうするのか?
A:落ち着くまで待つ。だいてやることもある。落ち着いてから、視覚的なものを使って、見通しをつけるようにする。

Q:小学校でパニックを起こしたことはあるか?
A:ある。見たのは、2年生にあがる時。学級編成も変わったので、混乱しないように説明してほしいとお願いしたが、してもらえなかった。混乱して、頭をたたくなどの自傷行為をした。
Q:Nくんがパニックを起こすのを校長やG先生は知っていたのか?
A:知っていた。

Q:養護学校ではなく、心身障がい児学級を択んだのはなぜか?
A:入学間近の頃、Nは同年代の子どもに興味を持っていたので、関わりの機会が多い一般の学校の心身障がい児学級を択んだ。通常の子どもとの関わりの刺激が、きっと子どもの成長のプラスになると思った。
学校からも、コミュニケーションの点で言葉だけでは難しいが、メモなどを見せて話したらわかると知って、「これでわかるならやってみましょう」と言っていただいた。
Q:小学校に通わせてよかったと思ったことは?
A:同年齢の子どもたちとの関わりが増えた。また、登下校の時にも、関わる近所の方も急に周りに増えた。あいさつする機会が親にも増えた。地域を意識するようになった。

Q:G先生との関わりについて?
A:入学したときからの担任だった。明るく、若いので、話はしやすかった。気が短いのかなと思えところもあったが、若いし、男性だからかなと思った。Nの性格や特徴は、連絡帳や送り迎えのときに私なりに伝えていた。
連絡帳に家庭のこと、エピソードを入れたのは、特徴を知ってほしいと思ったから。少したったところで、小学校入学前の記録を見せた。
Q:G先生は、自閉症の児童にあわせた指導をふだんからしていたか?
A:あまりしていない。言葉での指導が多いと思った。

Q:G先生から事故の連絡があったときにどう思ったか?
A:G先生の声や状況をきくと、ちょっと大きなけがという印象があった。また、運ばれた病院が大きな病院だったので、大けがかと思った。
Q:けがの状態はどうだったのか?
A:鼻から下が腫れていた。顔も青白く、ひとしきり泣いたあとに見えた。あごに大きなテープを貼っていた。
Q:G先生は病院の診察の場にもいて、医者に説明していたのか?
A:私に状況を聞かれてもわからないので、G先生が、体育倉庫の2メートルの台から落ちたと言った。
Q:本当は見ていないのでわからない。推測だと言ったのか?
A:言っていない。手でかざしながら、「これくらいのところです」と説明した。
私がどういう状態だったか聞くと、泣いてはいない。「閉めないで」という表情で、泣きそうな顔をしていたと手を前に出して、説明した。
Q:どう思ったか?
A:入ってはいけないところに入ったとしたら、おだやかに言葉で指導すればよかったと思う。短い言葉で、はっきり、ゆっくり言えば理解できる。

Q:治療はたいへんだった?
A:Nの場合、けがの治療が大変。通院も大変。病院は待ち時間があるが、理解できない。終わりがわからない。痛い治療の意味がわからない。口の中はとくに目に見えない場所なのでわからない。何箇所も、何日も病院に行って、苦痛だった。Nは数秒じっとすることができない。完全に眠る薬を出してもらったが、薬が飲めない。歯を治すにも全身麻酔が必要だった。口が開いたまま閉じなかった。さらに開けることも、閉じることもできないので、飲み込むことができない。よだれが出っ放しになった。食事はどろとろのインスタントラーメン。
あごがずれ、3箇所にひびが入っていて、もう一度ぶつければ割れる。絶対にそういうことがないようにと医者に言われて、目を離せなかった。
4週間、食事制限があったが、家族も大変だった。Nはなぜこんなものしか食べられないのか理解できないので、好物はおけない。食べ物を目の前に出せない。Nのきょうだいにも台所のすみで食事をとってもらった。
あごが開かない、歯が割れた状態で、歯磨きがずっとできずにいるのが気になった。
医者から顎関節症などの後遺症がでるかもしれないと言われた。当時生えていた永久歯4本すべてが割れた。
乳歯が、すぐ次が出てこないのに抜けた。金冠をかぶせた周囲は虫歯になりやすいとも言われた。

Q:心の傷は行動になって出たりしたのか?
A:直後、大人から離れなくなった。もともと犬が苦手だったが、すごく遠くから見ても逃げるようになった。トイレのドアを閉めて用を足すことができなくなった。家では、トイレのドアだけでなく、廊下の扉も開けたままだった。1年後でも、外でもだめだった。
自閉症の子なは、フラッシュバックがよくあるというので不安。何年たっても、大丈夫ということはないと思う。

Q:小学校に戻れず、転校した理由は?
A:今回の事故で、学校をとても信じていた私たちはとても傷ついた。どういうことが起こったかきちんと話してほしいという私たちの思いを先生方に叶えてもらえなかった。体制も変わらない。親として、安心して子どもを預けることができないと思った。

Q:学校に何を求めたのか?
A:学校に徹底して事故の原因を求めた。子どもが大きなけがをして、親として、どんな言葉がけをしたらいいかわからない。どんなふうにしてけがを負ったのかがわかれば、かける言葉も親としてわかるから、どこで「怖い」という気持ちを感じたのか親としても知りたかった。
Q:お母さんも体調を崩した?
A:先生や教育委員会のひとと会うと考えただけでも動悸が止まらない。夜中に何度もるがさめる。家で事故のことを思い出しても動悸がいる。学校のほうに足を向けると動悸が止まらない。医者にはストレスがたまったのだろうといわれた。学校との説明のやりとり、学校からの心ない言葉にたいへん傷ついた。

Q:裁判所に言いたいことは?
A:私はNを育ててみて、何かするにもすごく何年もかかったり、10年くらいかかってやっと何かができたり、そんなにかかってもできなかったりして、そういう成長もあると気づけて、幸せだと思う。障がいのある子は成長する機会が限られている。限られた成長の機会を奪うようなことを学校の先生にしてほしくなかった。たいへん悲しく思う。二度と同じことが起きてほしくない。防げるものなら、防いでほしい。

原告代理人の清水弁護士から質問。
Q:警察には12月に届けているが、もともとG先生の処分を求めていたのか?
A:いいえ。なぜ、何があったのかを知りたかった。教育委員会がしっかり明らかにすると言ったのを信じていた。
しかし、教育委員会も担任や校長と変わらないと思った。事実を明らかにしたいだけ。事実を最初から素直に話してくれれば、法的手段をとらなかった。G先生の証言で、ラックから飛び降りたと今でも思っていると言った。しかし、警察から聞いたのは、窓からの落下以外は考えられない。当時立ち会った学校関係者の話を総合すればと言った。

Q:自傷行為について?
A:2年生のときに、G先生から「花粉症ではないか?」と言われた。赤い細かいぶつぶつがあったので、皮膚科に連れて行ったところ、湿疹ではなく、出血斑ではないかと言われた。目の周りだけでなく、髪の毛のところも内出血していた。自分で頭なり目の周りをたたいているのを見て、びっくりしてG先生とS先生の2人の先生に会って話しをした。
学年が変わるに当たって、少し丁寧に説明してくれたと思っていたので、何もしていませんと言われて驚いた。少し丁寧に説明していただけませんかとお願いしたが、さくら学級は原則として言語指示に従えるから入れている。自閉症の子に特別な配慮はできませんという態度だった。教育委員会に相談に行った。

Q:G先生の説明についてはどう思ったのか?
A:最初、病院に行ったときに「体育倉庫の2メートルの台から落ちた」と言って、手で高さを示していた。私が、「見ていなくてわからないのでは?」と聞くと、「一輪車台があります」と答えたので、見たのかなと思った。それが、だんだんあいまいになって、不信感を抱いた。

原告代理人の児玉弁護士からの質問。
Q:12月初めに校長室で説明されたときについて。
A:G先生がしどろもどろになって、校長がきついことを言った。校長が「何か納得いかないことがあるならどうぞ、G先生に質問してください」と言ったので、私たちがG先生に質問し、G先生が答えようとすると、大きな声で制止されたので、びっくりした。

*********
ここから、被告代理人弁護士からの質問。
(質問の多くが、病院のカルテの記載の内容についてであり、Nくん母は「私は書いていないのでわかりません」「その時に立ち会っていないのでわかりません」と答えることが多く、何度も原告弁護団から、本人が経験したことを聞いてほしい、それ以外は無意味だという反論が出た。その内容については、ここでは省かせてもらう)

Q:警察が人形を窓から鉄の管にあごをぶつけるような形で落下させる実験をした結果、人形の後頭部が回転して後頭部を地面にぶつける。この人形を使った実験結果について、警察から何か聞いたか?
A:人形では筋肉がないから、必ずしも実験どおりにならないという話を聞いた記憶がある。

Q:書類にある「黒い異物」とは何か?
A:黒い砂のつぶ。倉庫の中にないものということで、これが何であるかは私にもわからない。

Q:Nくんは事故当日、自分の足でふつうに歩けていた。5メートルの高さから落下したら、足首の捻挫や骨折のあとが見つからないのはおかしいのではと思うが?
原告代理人:カルテについて聞かれても、本人が書いていないのだから答えようがない。本人が直接経験したことを聞いてほしい。

Q:11月29日の検査で、「11月16日に壁から転落して受傷」と書いているが、お母さんが説明したのか?
A:F病院では、事故を大人が見ていなかったということが病院に伝わっていなかった。G先生から説明を受けたので、N病院でも同じように説明した。

Q:Gからの説明が不十分だったために治療が不適切になったり、不十分だったことはあるか?
A:校舎から落ちたとわかっていたら、全身を調べていたと思う。歯のところに行き着くのに大分かかったが、もっと早くわかっていたかなと思う。

Q:刑事事件で、不起訴になった理由について説明を受けたことは?
A:ある。予見が難しい。扉を閉めたことが事故につながったと立件することが難しいと聞いた。
Q:G先生は午前中にあるように反省もしているのに、まだ納得がいかないのか?
A:G先生は「事故の状況を見ていなかったのでかわりません」「扉を閉めたので見ていません」「どこで、どういうふうにけがをしたのか特定できない」を繰り返した。
Q:閉めていて見ていなかったとしても、特定してほしいという思いなのか?
A:体育館の外か、中かをはっきりさせてほしい。それがわからないというのは、納得がいかない。状況を正しく話していただければ、明らかになったことは多いと思う。

被告代理人の別の弁護士からの質問。
Q:事故後の校長の説明について、報告書提出の報告はあったのか?
A:受けている。予見が難しい。扉を閉めたことが事故とどう結びつくか立件することが難しいと聞いた。

Q:G先生は事故の状況を見ていなかったのでわかりませんと言っている。見ていなくても特定しろというのか?
A:G先生は扉を閉めたので見ていません。どこで、どういうふうにけがをしたのか特定できないと繰り返した。せめて体育館の外か中かをはっきりさせてほしい。それがわからないというのでは納得がいかない。状況を正しく話していただければ明らかになったことは多いと思う。

Q:事故後の校長の説明について。報告書提出の報告は?
A:受けている。
Q:校長らが自宅に赴いて事故報告概要を持参したと思うが?
A:4枚の事故概要があり、事故の原因は3つの可能性があると書いていた。
Q:学校は3回の保護者会を開き、出された要望書に回答して、何回も説明の機会を設けているのに、不十分、足りないと思うのか?
A:事実を特定して、書いたものをもらいたかった。学校から報告書以外は出しませんと言われたが、できるだけくわしく、報告書に書いていること以外の事実を尋ねても、どこでこのけがを負ったのか、知りたいと思ったことが聞けなかった。
Q:サポーターのひとか何かがインターネットで書き込みをしていて、学校側が窓から落ちたことを否定していると書いているが?
A:3ヶ月以上、いろんな人に事故のことを相談していたので。
Q:窓から落ちたことを校長が否定している、報告書を見せてもらっていないと書いているが?
A:報告書は市の教育委員会が差し戻して作り直させたと聞いているので、警察に被害届を出し、報告書の提出を求めた。

Q:警察に被害届を出したことについて。
A:警察の判断と学校の報告は別のものですと言われたので。警察の調査で落下と断定していたので、それを報告書に盛り込んで書いてもらえると思っていた。

Q:現場は見たか?
A:倉庫3は事故後見た。
Q:ラックの向こう側にある窓からどうやって出たんだろうと思わなかったか?
A:一輪車台が倒れていて、説明してくれていたので、そう思った。
Q:倉庫の下の図工室は入ってみたことがあるか?
A:外からしか見たことはない。

Q:G先生の証言ではNくんがじっとしていなさいと言ってもじっとできないと言っているが、母親Nの認識としてはどうか?
A:「待っていなさい」と言って、ただ待っていることは難しい。
Q:「入っていたければ入っていなさい」と言ったことによって、どういう行動が考えられるか?
A:言われた意味がわからなかったと思う。一人にされるという気配は感じたのではないか。
Q:表情を読み取るのは難しいか?
A:語気を感じるのは難しい。怒られているのは理解する。視覚的にいけないことはいけないと、サインや身振りがあればわかる。Nがどう理解したか。初めて入った場所だけでもびっくりする。怒られて恐怖を感じたのではないか。

佐藤裁判官から質問。
Q:警察は、いつ、窓からの転落以外は考えられないと言ったのか?
A:学校に捜査に入って間もなくだった。警察に何度も行くことがあったので、いつという特定は難しい。
Q:書面で渡されてはいないのか?
A:口頭で聞かされた。



原告・父の人証調べ。

原告代理人の弁護士から。
Q:Nくんは父親の目から見てどういう子どもか?
A:歌とビデオが好き。多動で、家の中でもチョロチョロよく動く。スケジュールについて気にする子で、自分で、今日はここへ行って、などと確認する。
Q:第二小に通ってよかった点は?
A:健常児とふれあう機会が多くなった。運動会のときにも一緒にお遊戯をしたり、健常児が手を添えたり、リードしてもNはいやがることなく一緒について行く。養護学校では、そういう経験がないので、よい刺激になったと思う。
Q:事故の報告を聞いて、どう思ったか?
A:また、チョロチョロとしてどこかぶつけたのかと思った。
G先生から家の前で説明を受けたときは怒る気力もなかった。G先生はかっとなるタイプなので、だからかなと。
Q:G先生の説明と警察での事実を聞いて、現在、どこでNくんはけがをしたと思うか?
A:窓の下に落下したことによって、けがを負ったと思う。理由は、扉を開けたときに窓が開いていたという証言や上履きが外に落ちていたのをG先生が下に行って確認したという証言から。
当初、音がしたとか、一輪車が散乱していたという証言がコロコロ変わって、最終的に体育館の倉庫の中で転んだという証拠がすべてなくなっている。


Q:学校や教師に報告書で求めたことは?
A:真実。事故原因を特定して、どのように事故が起きたのかを明らかにしてほしい。障がい児は自分のことを説明できない。親が死んだときに、自分で説明ができない。親が公の形で残してあげたい。
学校は原因を特定している。しかし、問題は「Nが自分のことを説明できないことが大きな原因」と書かれていたことが残念。
自分のことを話せない子が、誰も見ていないところでけがをした。
窓から落下したかどうか特定できないということを最初は理解していた。いろいろな理由が合理的に理解できれば、仕方がないと思った。私たちにNが下に落ちなければならないメリットはない。校長は「自分が判断したことですから」と特定はまったく考えていなかった。
Q:回数や時間をかけて説明しているではないかと言っているが?
A:回数や時間の問題ではない。こちらからお願いしてやったことはあっても、向こうから説明することはない。
Q:教育委員会に行ったあと、警察に行ったのはなぜか?
A:教育委員会はG先生を含めて調べます、事実を明らかにしますと言ったのに、何もしてくれなかった。駄目もとで、警察に行った。警察は捜査して、実況検分をしてくれた。大学教授など専門家2人が、傷の内容など説明してくれた。人形の実験では、人間には筋肉があるので、落ち方は違うという説明も受けた。
Q:警察は、原因は特定できませんという説明はしたのか?
A:ない。

Q:夜中に校長先生に呼び出されて、G先生の説明を聞いたときにはどう思ったか?
A:なんで夜の夜中に呼び出されるのか、校長がG先生から聞いて報告すればいいのにと思った。しかし、警察の捜査が入って2日後だったので、本当のことを言ってくれるのかなと思った。G先生は説明内容を変えた。これで特定できる要因はそろったと思った。警察が入らなかったら、本当のことを言ってくれたのだろうかと思った。

Q:マスコミを先導して攻撃したと被告は主張しているが、働きかけをしたのか?
A:不安で仕方がなかった。会社を早退したり、休んだりした。知り合いの元記者に、様子がおかしいがどうしたのと聞かれて話したことはある。
Q:Nくんの事故の影響はどうか?
A:外から見えることはない。歯はこれから出てくることが不安。また、学校内を撮影したビデオを見て、Nが「ち(血?)」と言った。記憶に残っているのかと思う。フラッシュバックが心配。

Q:この裁判で言いたいことは?
A:自閉症のプロの先生の起こした事件事故であるということ。しかし、、自閉症を前提として話してくれていない。自閉症教育はこういうものであるということを理解してもらって、防止に役立ててほしい。Nが自閉症で゜あることは彼のせいではない。校長もG先生も、教育委員会も、しゃべれない、説明できない自閉症児の立場にたってほしい。叱り方も考えてほしい。

********
被告代理人からの反対尋問。
Q:体育館の下に図工室があり、授業中だった先生も子どもも、Nくんが落ちたのを見ていないということは聞いたことがあるか?
A:そうじなんじゃないかという説明だった。しかし、PTA会長が、図工室の外にいたが、誰ひとり自分の存在には気づかなかったと話してくれた。
Q:窓枠に手でぶら下がって、あごをぶつける降り方について、警察から説明を受けたことはあるか?
A:ない。しかし、歯科口腔外科で、閉じ込められた部屋から、このような方法ではないかとの想定を警察から似たような説明があったと聞いた。


10分間休憩後、3時50分から再開。


S校長の人証調べ
被告代理人からの質問

Q:G先生の研修は?
A:さくら学級の担任になって1年間は初任者研修があり、3年までは様々な研修がある。
Q:G先生が今まで問題を起こしたことは?
A:ない。性格はまじめでやさしい。将来性のある、期待できる。さくら学級の保護者からは、以前の担任よりG先生のほうがよいと聞いた。
Q:G先生が不適切な対応をとることは予想していたか?
A:していない。
Q:G先生とNくんのおりあいが悪いということは?
A:報告はない。

Q:Nくんの保護者からの継続相談とはどういうものか?
A:家庭で頭をたたくなどのパニックを起こすことがあるが、学校でもあるか把握しているのかという内容だった。
Q:対応は?
A:家庭と交流を密にしていこうということになった。

Q:事故発生時には学校にいたのか?
A:出かけていて、1時間後に戻って対応した。
Q:事故発生時に救急車を呼ばなかったのか?
A:養護教諭が全身の様子を見て、総合病院につれて行って多面的に見てもらった。病院が近かった。
Q:事件の説明は?
A:副校長から説明があった。Nくんが体育倉庫の中でけがをして出て行った。一輪車が倒れていた。倉庫3のなかにくつが片方残っていたと聞いた。

Q:倉庫からの落下の可能性について考えるようになったのか?
A:体育倉庫北側から鼻血を出して走ってくる児童の目撃証言があった。窓が開いていたことから、可能性があると思った。事情聴取された警察で、3つの可能性があると思った。
保護者の方に、Nくんは家で何か言葉を発していますかと聞いたところ、「一輪車、痛い」と言ったという。母親から問いかけたのか聞いたら、特に尋ねたわけではない、Nくんからそういう話が出たということだった。
Q:事故原因を1つにしぼっていないのはなぜか?
A:1つに特定には至らなかった。把握できる事実について書いた。
Q:保身の為に特定しなかったことは?
A:ない。
Q:複数の可能性とは?
A:@窓が開いていた。Aあごに下から上に向かって強い力が加わった。B給食職員が血を流した児童を目撃している。
Q:休憩室からの目撃証言はほかにいたのか?
A:用務主事が用務員室から見た。
Q:窓からの落下を否定する事実は?
A:@一輪車台が倒れて、一輪車が散乱していた。Aくつが片方、室内にあった。BG教師が、児童が倉庫3から出て行ったという証言した。C図工室で教員と30人前後の児童がいたが、目撃がなかった。Dけがの全身状態と矛盾している。約5メートル21から30センチ、もし転落していれば、もっと大きいけがをしていただろう。

Q:現場の写真は誰が撮影したのか?
A:副校長が撮影した。
Q:倉庫3の窓の前には2列の一輪車台がある。窓際で防護柵の役割をしている。G先生がドアの前で待っていたという時間に飛び乗って外に出るのは難しいのではないか?目撃された様子からも、窓からの転落は考えにくい。倉庫内で受傷して、保健室に直接行ったのて゜はないか?倉庫から児童児童が出て行くのを目撃したものはいないのか?
A:いない。
Q:倉庫内に血痕は?
A:ない。
Q:落下地点に血痕は?
A:ない。血痕は昇降口の外側で発見された。このことは警察に報告している。
Q:特定が困難だと思ったのはなぜか?
A:直接の目撃者がいない。関わった教員の証言が一致しなかった。G教師の証言は大きく変遷した。大事な話があるとして、一輪車と上履きのことを聞いた。

Q:原告は、校長が倉庫内の受傷を何度も強調したと言っているが?
A:そんなことはない。
Q:倉庫内の受傷であると言ったことは?
A:一つに絞らない。
Q:倉庫内と思ったことは?
A:一つに絞らなければならないなら、倉庫内の事故だと思うが、校長としては、個人の推測を書くわけにいかない。
Q:特定するしかない?
A:したくてもできなかった。
Q:警察捜査に全面協力したか?
A:はい。
Q:ダミー人形を落下させる実験には立ち会ったか?
A:立ち会った。
Q:あごをぶつけた場合、後頭部を打つという結果が出たのでは?
A:そう聞いている。

Q:被害者に言いたいことは?
A:一番、安全でなければならない学校の中でけがを負わせたことについては、たいへん申し訳ない。治療等を含めて大変な思いをされたことについては申し訳ないと思っている。

******
原告代理人の弁護士から反対尋問

Q:事故原因を一つに特定するなら倉庫内と発言したのはいつか?
A:12月10日。
Q:さくら学級について、日常的らにどのように関わっていたのか?
A:人員の配置は緩和できない。
Q:配置を決める評価は誰がするのか?
A:私。

Q:Nくんが2年生のとき、4、5回、頭をたたくなどの自傷行為があったというが、学校ではどうだったのか?
A:学校内では報告はなかった。担当の2人の教師からも報告はなかった。
Q:自傷行為は校長に報告しなければならないのか?
A:それぞれの教師の判断による。
Q:5月に教育委員会から連絡があって、両親と継続相談をすることになったのはなぜか?
A:年に1回、基本的に相談の機会を持つ。この場合には、その経過をたどって、今後はもっと密にコミュニケーションをとることになった。
Q:何が問題だったのか?
A:何が問題かよくわからなかった。
Q:パニックで頭をたたくことだけが問題だったのか?K学園(養護学校?)に行って、教師に研修してもらいたいと要望したが、応えてもらえなかったと聞いているが?
A:その場では、話を聞いただけ。
Q:担任教師に、自閉症の子どもに対する力量をもっと身に着けてほしいという主旨で、言葉だけでは伝わりにくいからという要望だったのではないか?
A:記憶にない。
Q:結論はどうなったのか?
A:親とのコミュニケーションをとりましょうということになった。
Q:その後の指導は?
A:とくにない。
Q:トラブルを教育委員会に報告したのか?
A:しなかった。教育委員会の担当者が同席していて、内容を把握しているのでしなかった。

Q:事故の前に、倉庫について指導したことは?
A:職員の申し合わせで行った。
Q:施錠については?
A:施錠しない。
Q:G先生は事前に児童に指導をしなかったようだが?学校として年間通して使用する場について全校的に指導していたのか?
A:その場、その場で、担任が必要に応じて指導するのがようので、いつ、どのようにとは周知していなかった。
Q:事件後、倉庫3に施錠や窓に防護柵をすることは?
A:倉庫3は一時施錠していた。今はしていない。一輪車台のある窓際に防護柵をつけたる

********
原告代理人弁護士の反対尋問
Q:事故で訓告処分になったと聞いたが、事故の大きさ、けがの重さによって、処分は変わるか?
A:わからないが、変わると思う。
Q:事故は出世に響くと思うか?
A:今、申し上げたとおり。

Q:G教師の供述が変わっていくなかで、できるだけ小さな事故であってほしいという思いは?
A:ない。
Q:Nくんの保護者にとって、どちらがよりよいと思うか?
A:わからない。
Q:Nくんの保護者は窓からの転落に特定してくれということをしつこく言っていたと思うが?
A:根拠がよくわからない。なぜ、そういうふうに言ってきたかよくつかめない。

Q:事故報告書は何のためにあるか?
A:事実の記載をしっかりして、再発防止に役立てるため。
Q:供述内容をコロコロ変えていることについて、記載されていないのはなぜか?
A:変わった部分について、必要なことは書いている。
Q:けがの場所について記載していないのはなぜか?事故報告書の2ページ目に「倉庫内で転んで」とあり、その後、把握したこととして、「倉庫内の2メートルくらいの高さから転んだ」とあるが?
A:給食調理員の証言を聞いたのは12月3日。事故当時、倉庫の窓が開いていたのを確認できたのは12月4日。様々な情報があった。

Q:当日、一輪車台は倒れていたか?
A:倒れていた。
Q:全部倒れていたのか?
A:少し、残っていた。
Q:上履きはどうしたのか?
A:担任が洗ってお返しした。
Q:現場を片付けて元にもどすように指示をしたか?
A:していない。確認しただけで、指示しない。
Q:保存しておこうと考えなかったのか?
A:考えなかった。
Q:現場を目撃した人がいないということは確認したか?
A:確認しない。

Q:倉庫は一目で目に入るか?半分くらいか?
A:人が隠れる場所はあるから、隠れるつもりなら。つもりがなければ見える。
Q:教師が目を離した15秒から30秒くらいの時間で、窓から飛び出すのは難しいと証言があったが、自閉症の子が、あのようなけがをした子が、隠れるのは難しいと思わないか?
A:わからない。
Q:調理場で、泣きながら走ってくる人を見たという。東昇降口で、用務員が、上着が血に染まっている児童が立っていたといっていた。保健室に入るとベットに向かって走って行った。大泣きしていたという。そういう児童が、体育館内で、誰にも気づかれないのは不自然ではないか?
A:わからない。

Q:保護者会のときに、図工の先生を呼んで、落下に気づかないということはないと証言してもらっている。なのに、泣いて走っていったという用務員になぜ、証言してもらわなかったのか?自分が把握した人と、気づかなかったという人、どちらの証言が大切か?
A:どちらも大切。両方必要。
Q:どの点で、教師の指導に適切さが欠いていると思うか?
A:児童を指導中、指導しなければならないときに、一時でも見えない状況にしてしまったことを反省している。結果としてそうなった。
Q:障がいの特性に合わせた指導ではないことについて、障がいを考えれば、どのように指導するべきだったと思うか?
A:その場、その場で、担任が判断すべき。
Q:2年生で自傷行為が問題になったとき、「配慮はしていられない」と答えているが、このときにきちんと指導していれば、今回のことはなかったのでは?
A:担任2人のこのような会話を把握していなかった。

Q:12月3日、G先生は途中から体を揺らし、ソファーからずり落ち、立ち上がれないほど動揺が激しくなったので、奥さんを呼んできてもらったというが?
A:G先生がどんな思いで、そんな状態になったかわからなかった。
Q:G先生が、「一輪車は倒れていなかった」「上履きは下に落ちていた」というのを聞いて、あなたは゛窓から落ちたと考えたほうがいいと思う」と言ったというが?
A:言っていない。
Q:今現在、どちらが可能性が高いと思っているか?
A:いつ、どこでと特定することは難しい。

Q:自閉症の子どものパニックや自傷、多動の原因が、職員の罰的対応が原因ということを知っていたか?
A:状況を一つひとつ精査しなければ答えられない。
Q:12月14日のさくら学級の説明会で、事故原因を特定できないと言って、保護者の抗議を受けた?
A:励ましとご助言を受けた。
Q:倉庫内で一輪車が散乱していたのは、Nくんが乗ってみようかなと思ったのではないかと言って、パニックしている子がそんなことをするはずがないと抗議を受けたのではないか。

Q:校長に対する評価が厳しさを増しているが、学校事故、事件、いじめがあると評価は変わるか?
A:評価者ではないので、わからない。
Q:Nくんが倉庫内でけがをした場合と、倉庫の外でけがをした場合と、評価はどちらがよいか?
A:わからない。

*******
佐藤裁判官から質問。
Q:警察の調査に協力した際、原因や対応について聞いたことはあるか?
A:私から質問したことはある。
Q:警察はどのように考えていると言っていたのか?
A:総合的に判断して落下の可能性が高いと言っていた。
Q:根拠は?
A:G教師が扉の前で立っていて動かないのであれば、ほかに出口がない。他の証言から。


TAKEDA 感想・ほか

裁判後に、Nくんのお父さんは「今日の証言を聞いても、本当に悪かったのは、校長ではないかと思ってくる」と言った。
私もそう思った。担任は自閉症の子どもに対する理解が日ごろから不足していた。そのため、自分の口頭での指示がNくんに通じないことに腹を立てて、倉庫に閉じ込めた。開けてみるとNくんは倉庫内におらず、あわてた。階下に探しに行くと、Nくんの上履きが落ちていて、Nくんが保健室で保護されていることを知った。
どうしよう、自分が閉じ込めたせいでNくんが落下した。責任が問われる。そう思ってとっさに上履きを倉庫内の床に置き、一輪車台をわざと倒して、まるでNくんが倉庫内でけがをしたかのように工作した。Nくんは自分の身に起きたことをひとに伝えることができない。責任を逃れられると思った。しかし、警察が入ってから嘘がばれるのではないかと怖くなった。一大決心をして校長とNさんに打ち明けた。しかし。校長は担任の責任は自分の監督責任になるとして、隠蔽をはかった。そんなふうな流れに、私は今回の証言を聞いていて感じた。
まるで、いじめ自殺があったあと、加害生徒らが学校に「実は自分たちがいじめていました」と報告して、それを学校の監督責任を問われることを恐れた校長や教育委員会が、「あれはいじめではなかった」と説得して、「君たちもよけいなことをしゃべるんじゃない」と口止めして、死人にクチナシとばかり、隠蔽に走る姿に似ている。
一旦は、自分がしでかしてしまったことの結果の重大さに恐れおののいていた子どもたちが、やがて、開き直っていく。真実を隠すことで、被害者にすべて責任を負わせて、被害者の名誉と遺族の思いを二重、三重に傷つけていく、その過程とよく似ている。


※報告を掲載するにあたって
何しろ、1日をかけた長い人証調べ。途中で、集中力が散漫になっていた箇所もあると思います。また、傍聴報告の8割方は翌日、一気に書いたのですが、残り2割を2週間以上も間をあけてしまったので、ちょっと心配です。
ただ、それでも、これをUPしたかったのは、少しでも自閉症への理解を読むひとに深めてもらいたいということ、障がいのある子どもたちへの日ごろの教育的配慮はもちろんのこと、自分の被害を訴えることのできないひとたちには、あらゆる面で十分に配慮してほしいと思うからです。

次回は、2008年1月10日(木)午前10時から、八王子地裁にて。自閉症教育に詳しい広島国際大学教授・伊藤英夫先生(元東京学芸大学)から意見をきく。


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