わたしの雑記帳

2004/9/10 小野朋宏くの裁判(9月8日)の傍聴報告


9月8日(水)は、横浜地裁602号法廷にて、体育授業の持久走で倒れて、救急車を呼ばれず自宅に帰されて、亡くなった小野朋宏くんの裁判の口頭弁論があった。6日の傍聴のお礼を込めて、小森美登里さんも傍聴していた。
今回は、被告側の申請している証人について、採用するかしないかの弁論が行われた。
大学の講師で、養護教諭の要請をやっているひとの意見陳述を行わせてほしいと被告の県側は言う。

朋宏くんが倒れたとき、体育教師が過呼吸症候群と判断したのは、症状からみて概ね妥当であること、養護教諭の役割などについて、専門家の立場から解説するという。
それに対して原告側は、講師が引用している文献が古く、現在の救急車要請の基準には当てはまらないのではないかということ、引用されている文章のもっと前後がほしいが、国会図書館にもなかったので、現物があれば見たいということを言った。

一方で、被告側は、朋宏くんが5月4日に風邪で、休日診療を受けていたことを調べて、問題にしてきた。
「インフルエンザ脳症」という言葉も飛び出したが、原告側からは診療は認めたが、事故があっのは5月ということで、当時、インフルエンザも流行しておらず、考えにくいことが出された。

原告側は改めて主張する。医師でもない体育教師や養護教諭に、病名をつけてほしかったわけでも、診断してほしかったわけでもない。過呼吸との判断を下すより、緊急性を要する状態であるという判断をすべきだった、異常が認められた段階ですぐに救急車を要請していれぱ、助かったかもしれないことが問題なのだと、被告側が問題をすり替えようとしていることに待ったの声がかかった。

現段階では、次回の体育教師と養護教諭の人証調べをもって結審する可能性も出てきている。
裁判所の特別の計らいで、10月6日は、通常(602)より広い501号法廷を用意してくれた。48席のうち、被告側に8席、原告側に40席が割り当てられた。長時間にわたることもあって、立ったままの傍聴は許可されない。MAX40席という、なかなか難しい課題が与えられた。小野さんは、傍聴予定者は事前に登録をと呼びかけている。


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救急車の要請について、2004年7月28日に発行された「先生はぼくらを守らない −川西市立中学校 熱中症死亡事件−」(宮脇勝哉・宮脇啓子 著/エピック)の文章(P280)を引用したい。

検事は、現職の教員としてお尋ねしたいと前置きして、さらに問いかけてきた。
子どもがどんな時、救急車を呼びますか?
子どもが倒れて、声をかけても応答のない時です」
「それは、命に関わるということですか?」
「命に関わるかどうかは、医者じゃないので私たちには判断できません。ただ、このまま放っておくと大変なことになると判断した時に、救急車を呼びます」
「その大変なことというのが、命にかかわることではないのですか?」
ハッとした。
「そうです!そのとおりです!呼びかけて応答のない時は、体の中にどんな異変が起きているかわからず、心臓なのか頭の中なのかはとにかくとして、このままここにいては死ぬことにつながるかもしれないと思うから、救急車を呼ぶのです!

−−−−ここまで−−−−−


なまじ専門知識があって、自分たちの勝手な判断で手におえるとして、救急車をよばなかったとしたら、そんな専門知識などないほうがいい。もし、子どもたちだけだったとしたら、ちゃんと救急車を呼んだかもしれない。実際に、教師が救急車を呼ぶのをためらっているうちに、生徒が携帯電話で救急車を要請して、そのために大事に至らなかったという例もある。子どもにも判断できることが、大人に判断できない。とっさに「命」を救うことを第一優先に考えるのか、それとも責任問題や体裁など、我が身を第一に考えるのかの違いではないかと思う。
もし、担任や養護教諭の判断に謝りはなかったと判決が出てしまったら、同じように子どもが倒れても、教師は安易に救急車を呼ぶことなく、まずは自分たちの勝手な判断であれこれやってみましょう。どうしようもないとわかったら、家族の元に帰すか、救急車を呼ぶようにしましょう。ということになりかねない。
そうなったら、これから、どれほど尊い命が再び失われることか。早い段階ならば、後遺症が残らずにすむこともある。迷っている場合ではない。「命の大切さ」は大人たちにこそ、説くべきだろう。

今回、私は熱中症ではないかと最初、思っていた。きっと、そのほうが争点としてはわかりやすかったに違いない。しかし、今なお原因は特定されない。
いずれにしても、リスクマネジメントとは、最悪の事態に備えることだ。最悪とは、子どもの命が失われることだ。そのリスクマネジメントが、子どもの命を預かる教育現場に欠けている。




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