わたしの雑記帳

2002/5/2 「中学校の体育の授業中における死亡事故裁判」(戸塚大地くんの裁判)控訴!


東京地裁八王子支部の棄却判決を受けて、大地くんの両親が高等裁判所に控訴しました。
その思いを通信に託されましたので、ここに掲載させていただきます。

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『中学校の体育の授業中における死亡事故裁判』の地裁での全面請求棄却に対して控訴しました。
高裁においては、元生徒であった青年たちの陳述、証言をよく吟味した上で判断をしてほしいと思っています。

 平成6年6月8日、戸塚大地は国分寺市立第五中学校3年生(当時14歳)の時、器械体操の授業中、跳び箱から落下し死亡した事故について、安全配慮義務違反を問う裁判を国分寺市に対して起こしました。
 その結果、東京地方裁判所八王子支部において、平成14年2月7日に全面請求棄却の判決をうけました。
 親として納得のできる内容ではないため、2月19日控訴するに至りました。
 事故の状況、戸塚の主張、地方裁判所の判断を次のようにまとめました。
 私達は、高裁の裁判官の方に元生徒だった青年たちの陳述、証言を十分吟味したうえで判決をしていただきたいと強く願っています。

(1)事故の状況
 授業は33名の半数がマット種目のテストを受けている中で、半数は跳び箱、鉄棒の種目のいずれかの練習をしていた。大地は、跳び箱の練習をしている中で、跳び箱を使って課題外のムーンサルト1回とプロレスの技を1回試み、1回目は成功したが2回目に失敗し頭部から落下し、頸椎損傷により3週間後に死亡した。

(2)戸塚の主張
イ.片方でマットテストに集中するあまり他方での練習に注視する事なく、おざなりの状況にあった中で事故が起きたのは、生徒の動向を掌握していなかった
ロ.当時、五中は文部省よりティーム・ティーチング(TT)の加配を受けていたが、危険が予測されると思われる授業への加配体勢を取らなかった。仮に、TTの体制を取っていたならば、1人の教師がマットのテストをしていたとしても、もう1人が生徒の動向を把握でき、このような事故に至らなかった。
ハ.3種目同時の進行の授業を進めることは、文部省が指導している選択制授業と形態の上では共通点があるので、生徒への指導、教師の指導体制といった留意点に注意し、準備と工夫を行うべきであった。
ニ.本授業に取り入れた安全配慮のためのグループ体制としての練習形態の崩壊、およびその授業の指導案によれば、補助者をつけるとあるのに、それも怠った。また、従前7段で設置していた跳び箱を本授業では初めて8段に加えて危険性を増加させた。
ホ.管理監督する義務がある校長、学校を指導監督する教育委員会にも責任があった。
ヘ.学校内事故に対する十分な事実調査、原因究明、親への調査結果報告、ならびに事故の再発防止を努める義務があるにもかかわらず、転嫁する言動を見せるのは、責任を回避する行動であった。

(3)地方裁判所の判断
イ.6人の元生徒の陳述、証言から、担当教師は授業中にほとんど生徒の動きを見ておらず、課題の練習を行いたくない生徒はブラブラすることが許される授業であったと記載されており、また、生徒同士で喋ったり、遊ぶことのできるような束縛されない自由な授業であったとの証言や、(担当教師はいつも)椅子にすわり書き物をしていたという証言について、裁判所の判断は、担当教師は当時生活指導主任であり、生徒に対して厳しい態度で臨んでおり弛緩した授業ではなかったこと、他の教員、校長よりも信頼があったこと、証言台に立った生徒は大地の特に親しい友人であるから、陳述の内容、証言を採用できない
ロ.元生徒の証言の中で記憶の欠落があることから、不自然であり証言を採用することはできない。一方、担当教師がオリエンテーションの際、印刷物を配布し安全に配慮すべきことを注意した担当教師の証言は、安全に配慮するようにとの説明があったものとしてみるのが自然であり、信用できる
.担当教師は、マットテスト中も、他方の生徒にも十分監視できる位置にいたのであり、特に騒がしい状況にあった訳でないことに加え、中学3年生ともなれば既に相当な理解力及び判断能力を備えており、大地が担当教師の目を盗んで勝手に課題外の技を試したために起きたのであるから、担当教師に生徒に対する動向を掌握する義務を怠ったという過失はない。また、跳び箱の8段の設置、補助者の不存在、グループの解消は、テストを受けていない生徒への教師からの指示を守ることが中学3年生には期待されて良い。
ニ.TTの加配は、別の女子の体育授業に割り付けていたのであり、本授業は担当教師1人で監視することが不可能であった訳ではないから、本授業にTT体制を取らなかったという過失は認められない。
ホ.文部省指導の選択制授業ではないが、多くの種目の実技の相対的評価を通じて生徒の評価を行う方が合理的であり、他校でもこのような形式を行っていたのであるから、格別不合理な点はなく、それが過失となるものではない。本事故は、大地が教師の目を盗んで勝手な技を試みたものであり、仮に、準備を万全に行っていたとしても、テスト中に防止できたかどうかは疑問があると言わざるを得ない。
ヘ.担当教師が無謀かつ危険な授業を取っていたことは認められないので、校長ならびに教育委員会の安全配慮義務違反には当たらない。
ト.事故状況の報告については、日数は経っていたにしてもその事実関係を説明し、戸塚の質問書に対しても回答しているので、たとえ内容に不満を持ったとしても法的義務違反になるものではない

 以上のように、地裁は私たちのすべての主張を退け、国分寺市側の主張も合理的であるという観点から全面的に認定しました。
 とりわけ、裁判所は中学3年生にはそれなりの判断力、思考力が備わっていると認定しながら、20歳になった元生徒の証言には信憑性がないということは矛盾していると思います。彼らは宣誓をしてまで、真実に反する証言をするとは思えません。
 元生徒が述べた証言の中で、彼らが虚偽の証言をしても何の利もありません。私達は、彼らが事実を述べていると確信しています。
 また、安全配慮を尽くすための準備、工夫等を行えば、このような事故は事前に防止できたはずです。そのことも、裁判所は安全配慮していたにもかかわらず、息子が勝手にやったことだと認定しています。
 地裁による一方的な判断に対して、私たちは納得が行かず、控訴することにいたしました。このような裁判所の認定は、これからの学校事故に対して、原告側に箝口令を敷くようなものであり、何を言っても無駄だということになりはしないでしょうか。学校という密室の中で、大人としては教諭が一人だけ、あとは生徒だけしか現場にいなかったという現実の中で、その中でただ一人の大人である教諭の証言のみ信頼でき、生徒達の証言は信憑性がないと退けられてしまうことに公平さを認めることができません。

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別紙に第1回控訴審の案内(2002年5月16日木・13:30〜 東京高等裁判所822号法廷 =インフォメーション参照)とともに、
「命の重さ、学校の安全配慮義務の重大性、危険防止への必要性、当該授業の特異性と危険性および安全確保の必要性、担当教師・校長等の過失、事故後の対応等、これまでの訴えをさらに追求していきたいと思っております。大変お忙しいことと思いますが、ご都合をつけていただき傍聴して戴きたくお願い致します。傍聴者が一人でも多いと大変力になり励ましとなります。何卒よろしくお願い親します。
戸塚 弘・ひろみ」と書かれていた。

ぜひ、裁判の傍聴支援を!


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