わたしの雑記帳

2002/2/10 命のメッセージ展


横浜そごう9階で開催されている「命のメッセージ展」に娘と一緒に行ってきました。
この展示会には、いじめ自殺した小森香澄さんのお母さん、お父さんが尽力されています。私たちが行ったときには丁度、香澄さんの作った詩にメロディーを付けたものがコーラスで歌われていました。
人型に切り抜いたボードに亡くなった方の写真やメッセージが貼られています。そして、足元には故人の靴が置かれていました。

岡崎哲君の人型や、飯島友樹君、丸谷康政君の遺影もありました。そのほかには、飲酒や無謀運転による交通事故の被害者が多かったように思います。
辛くて、とてもすべてのボードのメッセージに目を通すことができませんでした。特に、交通事故で友人を失って、突然自分たちの前から姿を消した「彼を知りませんか?」と尋ね人の案内を出しているメッセージに、熱いものがこみ上げてきました。
突然、愛するひとを奪われた人びとは、信じられない思いのなかで、いつまでもそのひとの存在を探し続けるのでしょう。二度と会えないことを知りつつも。

ここで感じたのは、命の重みに、その失われた理由も、年齢も関係ないということです。
交通事故死は、その数が多すぎて、マスメディアに取り上げられることもあまりありません。しかし、愛するひとを奪われた人びとの思いに変わりはありません。愛するひとがこの世に存在したという確かな証を残したい、伝えたいと願うのでしょう。理不尽に奪われた命をそのままにしておいては、再び同じ悲劇が起きる、命の大切さを伝えたい、教訓として活かしたいと願うのでしょう。
そして、愛する人を失う悲しみは、事件も、事故も、災害も、そして病であっても、けっして優劣など付けられるものではないと思います。

私自身、時々とても残念に思うことがあります。日本の子どもたちの問題に取り組んでいる人びとは世界の子どもたちの問題に関心がない。逆に、世界の、特に第三世界の人びとの問題に取り組んでいる人びとの多くは、日本の子どもたちの問題に関心がないということです。また、同じ日本の子どもたちの虐待や人権侵害の問題に取り組んでいる人びとでも、児童養護施設内での人権侵害には関心がないということです。
もちろん、ひとりの人間がやれることには限りがあります。あれもこれもはできない。その中で、自分には何をできるのか、何をしたいのか、取捨選択をするのは当たり前のことです。しかし、日本の子どもたちの命の重みも、経済的に貧しい国の子どもたちの命の重みも同じであること、親のいる子どもの人権も、親が保護できない子どもたちの人権も同じように守られなくてはならないことを心のどこか隅にいつも忘れずにいたいと思います。

また、同じ傷ついたもの同士が、「あなたより、わたしのほうがずっと辛い」「あなたはまだいい」などと、比較しあったり、貶めあったり、傷つけあったりすることがあります。深く傷ついているひとは、他人の心を思いやる余裕が持てないこともあります。自分自身の悲しみ、苦しみ、怒りで精一杯で、人と支え合っていくことすら、忘れてしまうことがあります。
そんな中で、様々な悲しみを抱いた人たちが手をつなぎあえる、ともに命の尊さを訴える行動がとれるのは、素晴らしいことだと思います。

命の大切さということでひとつ。みんながみんな、「命を大切にしなさい」と言います。そして、その裏返しとして、自ら命を断ったものを責めます。「絶対にしてはいけないこと」「間違った選択である」と。
もちろん、死を美化するつもりはありません。しかし、私たちに他者を責める権利はあるのでしょうか。
諏訪緑というマンガ家の「玄奘西域記」や「諸葛孔明 時の地平線」という作品の中に、「その人の命はその人のもの」というフレーズが出てきます。(きっと作者も気に入っているのでしょう。繰り返し出てきます)
親としては、子どもを絶対に死なせたくはないと思います。それでも、防ぎきれない、引き留めきれないものがあるのではないかと、この頃少し思い始めています。特に、裁判の判決で自殺した人間に対して何割もの過失相殺を強いるのをみると考えさせられます。
「その人の命はその人のもの」だからこそ、他人が奪うことは、けっして許されません。そして、自分たちのこの社会を変えようともせず、ただ死に行く人びとを責めることもできないのではないかと思います。私たちのこの社会は、彼ら、彼女らに見捨てられたのです。「死なないで」と言えるためには、ひとから生きる希望を奪い、死の淵まで追いつめる社会であってはいけないのです。

「命のメッセージ展」を通して、このようなことを考えました。
そして、私のサイト「日本の子どもたち」も、「命のメッセージ」を伝えるものでありたいと思いました。
なお、「命のメッセージ展」は、横浜は2月11日までですが、その後も各地を巡る予定があるようです。
詳細はサイトにて、ご覧になれます。 http://www.at8.co.jp/inochi/




HOME 検 索 BACK わたしの雑記帳・新