東裁判報告

判決延期と「励ます集会」

                                          最終更新:1998年12月08日

判決公判の延期

11月12日(木)に大阪の「東史郎さんの裁判を支える会」より電話が入り、 裁判所より11月26日に予定されていた判決言い渡しを 12月22日(火)に延期してほしいとの要請があったことが知らされた。 今回の判決に対し、支援グループも各地で集会を持ち、 これまでの裁判経過を確認し、 再度この裁判の意義と東史郎さんの裁判にかける意気込みを知り、 判決勝利へ向けての行動を行ってきた。 また、この裁判に対する中国側の関心は非常に高く、 南京市からは、江蘇テレビと南京テレビ、北京からは中央テレビ、 香港からは香港テレビと、 テレビだけで15名ほどの報道陣が判決公判の取材に訪れることになっていた。

「ノーモア南京の会」でも判決公判が東京高裁で行われるため、 傍聴の呼びかけを行い、東さんを孤立させない闘いを作り、 判決公判後の夜の集会などの準備を行ってきた。 また、多数の報道陣の上京を迎え入れるべく、宿舎の手配、案内人の確保、 通訳の手配等も準備してきた。 しかし、裁判所からの申し入れで、こうした日本での準備活動、 海外での取材体制もすべて一から出直しをすることになってしまった。

「東史郎さんを励ます集会」の実施

判決公判の延期を受け、 当会の11月26日の集会の持ち方も議論の対象になった。 最終的には、東さんは予定通り上京されることになり、中帰連の方や、 東さんの長男の東隆史さんなどにも発言をいただき、 東さんを「励ます集会」を持つことにした。 集会の冒頭に、大阪の「支援する会」のメンバーで、 毎日放送に勤務されている西村さんが控訴審開始以来 撮り続けたビデオが放映された。 1審の敗北後、東さんは新たに弁護団を組織し、様々な実験や、 現地調査などを繰り返し、 「東日記」の真実性を証明すべく活動を繰り広げてきた。 その活動はすべてビデオに記録され、証拠として裁判所にも提出された。 このビデオは、それらを30分ほどにまとめたものである。

続いて証言が始まり、東さんがまず証言された。 東さんは冒頭で今回の判決延期にふれ、 「11月26日に判決を行うことが決まったのは、 9月8日の結審の時であった。 78日も日にちがあったのに何故判決を書くことができないのか。」 と今回の延期に不満を訴えた。 東さんは前日の25日に中国の江沢民主席が来日するのを以前から気にして、 「私の判決が中国を怒らせるような内容であったら、 主席の来日中でしかも多くの中国のマスコミも日本に取材に来ているのに、 どうするのでしょう。」と、 暗にそんな判決は出さないだろうと思っていた様子だった。 しかし急に裁判所から判決の延期を申し渡されたのは、 裏に「政治的なものがあるのではないか。」と、疑問を表明していた。 あたかも集会の開かれている最中に、 「友好協力日中共同宣言」は両国政府間の意思統一が遅れ、発表は深夜になり、 両首脳の署名は行われずに終わった。 江主席は様々な場所で、 日本側の歴史に対する正しい認識が必要なことを繰り返していた。

東さんはまた、この裁判の本質が、元戦友の橋本氏ではなく、 「心に軍服を着た」偕行社とその背後にある「まぼろし派」であり、 日本の中国侵略を否定するこれらの勢力 −日本の歴史に対する誤った認識を広めようとしている− には絶対に負けないことを強調された。 東さんは成田空港での中国系アメリカ人ケビン・チャン氏に対する 日本の入国管理官の中国人に対する侮辱した態度に、 「軍国主義は今でも(戦前同様に)生きている。」と指摘、 これに対し11月1日より訪れた中国では、 人民大学で2時間ほどの講演をした際、 250人ほどの講堂に500名余りもの学生が詰めかけ、 講演が終わった後ももっと話を聞きたがった位で、 東さんの裁判および日本の軍国主義復活に対する中国の関心の深さを感じたという。 (会場の正面には、集会名の看板の上に、 人民大学の学生が作った東さんへの声援のスローガンの上に 講演を聴いた全員が署名をした5m以上もある横断幕が掲げられた。) 東さんは、自分は絶対にこの裁判に勝たねばならず、 そのための支援を皆に訴えた。

続いて、中帰連の湯浅謙さんに発言をお願いした。 湯浅さんは、軍医として中国に行き 中国人を生体実験に進んでかけるなどの残虐行為を行ったが、 当時は日本軍のための医学実験であり、そうした行為に全く疑問を抱かず、 戦後、戦犯収容所にて初めて自分の行ったことの意味を悟り、 帰国してから戦争の実体を語る活動をしていることを話された。 そして戦争を知らない世代に対し、戦争の実体をよく知る必要性を説いた。

又、東隆史さんは、家族として父の裁判を支えていくことを語られた。 家族にとってみれば、 なぜ自分の父親だけが一人でそこまでやるのかと思い、 右翼の嫌がらせにも耐えて支えている母親(東さんの奥さん) の苦労を是非分かってほしいと話された。

判決公判は12月22日(火)14時からに決定
−−傍聴席を埋め尽くそう−−

11月17日に判決公判の日時が決定された。 当日は延期前と同様な中国からのマスコミ陣の来日等も計画されている。 再度体勢を立て直し、支援活動を行いたいと思います。 抽選がありますので、傍聴する方は13時15分頃に高裁前に集合し、 多くの傍聴券を獲得しましょう。 公判終了後は、記者会見、判決内容説明会を行い、 18時からは、飯田橋の「シニアワーク東京」にて裁判報告集会を行います。 是非ともこの集会を、 「判決勝利報告集会」にするために多くの方の参加を呼びかけます。
                       (文責:芹沢 明男)

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