米国 使用済み核燃料の輸送・貯蔵キャスクに安全上の欠陥が発覚
違法溶接・中性子遮へい材の損傷・検査データのねつ造等を内部告発
市民団体はNRCの安全規制の失敗を厳しく追及
ユタ州は「中間貯蔵」計画に徹底して反対

 米国では、使用済み核燃料の輸送と貯蔵に用いられるキャスクの安全性について重大な問題が持ち上がっている。
 エクセロン社の元検査官による内部告発が発端である。内部告発によれば、既に5つの州で使用されているホルテック社製のキャスクには、違法な溶接・中性子遮へい材の損傷・品質保証書のねつ造等9つの問題が存在するという。キャスクには溶接に関連すると思われる傷があり、「核燃料が積み込まれたキャスクが圧力とひずみのもとで予想通りに機能できず、また、ある環境の下では高レベル核廃棄物からの放射線を十分に抑制できないであろうことを意味する」と市民団体は述べている。
 市民団体パブリック・シチズンとNIRSは、これらの問題を見落としてきたNRCの安全規制の在り方を強く批判し、6月19日に、徹底した調査を行うよう要請した。告発者はすでに2001年12月にこの問題をNRCに訴えていた。NRCはこれまでこのことを握りつぶし、市民団体の要請により問題が公になってはじめて、6月26日に、調査を開始すると発表した。
 ホルテック社製のキャスクは、後に紹介するユタ州で計画されているPFS社の「中間貯蔵施設」でも使用予定だという。問題は5つの州のみならず、大きく波及しようとしている。
 このキャスクの安全性問題は、日本の中間貯蔵施設の問題にも大きな影響を与えるに違いない。このアメリカの事例は、中間貯蔵施設を受け入れた後になって、キャスクに傷が生じる等の問題が浮上する可能性を示唆している。今後も、この問題について紹介していきたい。
[関連翻訳記事]
 ・「核の輸送容器をとりまく安全性の申立は、NRCの品質プログラムの失敗を示唆」(パブリック・シチズン2003/6/19)
 ・「NRCの監察官は核廃棄物キャスクの欠陥に関する報告書を精査中」(ラスベガス・サン紙−2003/6/26)

 さらに米国でも「中間貯蔵施設」の建設計画が大きな問題となっている。原発所有会社の合弁企業であるPFS社は、ユタ州スカル・バレーにあるゴーシュート族特別保留地に、4000本のキャスクを貯蔵する、巨大な使用済み燃料の貯蔵施設を建設する計画を進めている。PFS社は、戦闘機墜落事故時の施設の安全性が表面化し、貯蔵キャスクの数を4000本から336本に減らすことによって、申請を通そうとしている。しかし、ASLB(原子炉安全許認可会議:米NRC)は現在の所、PFS社の申請を「手続き上のミス」という理由で却下している。
 日本と異なり、建設予定地のユタ州はこの計画に徹底的に反対している。ユタ州は、PFS社の規模縮小について「違法な回避策」であり、フルサイズの施設を建設する許可を本質的に与えてしまう「謀略に他ならない」と強く非難している。PFS社自身、キャスク数336本の縮小施設が許可された後に「4000本の施設を建てることをひそかに」考え、「フル施設を建設する幸先良いスタート」だと語っている。他方NRCは、PFS社の「中間貯蔵施設」計画について、戦闘機墜落事故に関する調査を早急に行い年末までに決定を出すようASLBに指示し、早期の決着を目指している。
 米国では、ユッカ・マウンテンでの最終処分場計画が、強い反対運動によって進まない中、使用済み核燃料は原発サイトで溢れかえっている。ミネソタ州では、使用済み核燃料のサイト内保管の上限を撤廃した。サイト内貯蔵量が拡大されなければ、運転停止に追い込まれるところまできている。
[関連翻訳記事]
  ・「ユタ州は核廃棄物闘争で小さな局面で勝利」(デザート・ニュース 2003/05/30)