この間の食糧危機に対して、日本をはじめとする先進諸国は、アフリカのための緊急支援を発表し続けているのではないのですか。

日本を初めとする先進諸国は、アフリカなどで頻発する「食糧暴動」を受けて、食糧の国際価格急騰に関する緊急対策の検討に入りました。世界銀行と国際通貨基金(IMF)も声明を出し、アメリカ政府も2億ドルの緊急支援に続き、7億7000万ドルの資金支援などを発表しました。日本政府もTICADに向けて資金援助を含めた対策を検討中で、7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)でも主要議題の一つとして取り上げる予定です。

しかし、もとをただせば、この間アフリカで多発している食料価格の暴騰による市民社会の不満の爆発は、米日欧などが主導する世界銀行やIMFの対アフリカ政策に原因の一端があります。Q5で見たように、多額の債務を負わされてきたアフリカ諸国は80年代に以降、債務返済が困難な状況に陥ります。なかには福祉や教育予算を削り年間予算の3~4割を債務返済に充てるケースもありました。

このようなアフリカ諸国の苦境に対して、世界銀行やIMFは、借金返済の繰り延べの条件として国内経済の構造改革を提示します。この構造改革は、教育、医療、福祉政策の切り捨て、自給作物から換金作物への転換による自給率の低下、民営化にともなう大量解雇や賃下げを引き起こしました。グローバルな活動をする企業にとってはおいしいこれらの構造改革も、アフリカの普通の人々の生活はいっそう厳しいものでした。そこに今回の食料価格の暴騰が発生し、すでに疲れ切っていた人々の生活にさらに追い打ちをかけることになったのです。

食糧危機に対しては、緊急食糧支援という対処療法でお茶を濁すのではなく、これまでの債務政策の反省とともに、先進国の都合でふくれ上がった巨額の債務の帳消しや、バイオ燃料推進政策の見直し、投機マネーや金融市場の規制などがTICADやG8サミットの場で議論されなければならないのではないでしょうか。