組織の仕組みはどうなっていますか?

サミットは、毎年開催国がその年一年の議長国をつとめ、事務局の役割をはたします。したがって、恒久的な事務局組織はありません。サミットのホームページも議長国が設置するので「ここにアクセスすればこれまでのサミットの基本情報がわかる」というような公式ホームページもありません。

サミットは、首脳会談だけでなく、閣僚級会合、事務レベルの会合などさまざまな関連する会合があり、2008年洞爺湖サミットでは、3月から全国9ヶ所で閣僚級会合などが開催されます。(外務省のマップ

サミットでは、これらの会合は恒常的なものもあれば、テーマ別にタクスフォースとかワーキンググループなどとして設置されるものもあります。たとえば、86年東京サミットで設置が決まった先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議は、定期的に開かれている会合として重要な役割をになっているだけでなく、さらに、G10、G20といった会合も組織されるようになっている。同様に、マネーロンダリング対策で有名な金融作業部会(FATF)も89年のアルシュ・サミットを契機に設置され、OECD諸国をまきこんで参加国を拡大してきた一例です。長年金融庁が管轄していたが、現在では警察庁管轄となっている。また、2001年の同時多発テロ以降、テロ対策のためにCounter-Terrorism Action Groupが設置されるなど、首脳会談そのものだけでなく、その周辺に多くの会合や組織が作られ、さらにそれらが8ヶ国という枠をこえて、他の諸国を巻き込んで拡がりをみせる傾向にあります。(どのような関連会合などがあるかは、トロント大学のG8情報センターの中に、事務レベルのリストがあります)

また、サミットという名称にちなんで、登山の案内人の意味で「シェルパ」と呼ばれる首脳の「個人代表personal representative」が選ばれ、日本では経済担当外務審議官(事務次官に次ぐ事務方ナンバー2のポスト)がこの役割を担当しています。シェルパは、首脳会談準備のための会合を数回開きます。すでに、東京で1月10日から2日間、第1回シェルパ会合が開催されました。このシェルパ会合で議題の調整や首脳宣言などの準備が行われます。このようにシェルパの会合は首脳会談を準備する非常に重要な会合であるのですが、これまでその内容が公開されることはほとんどありません。

洞爺湖サミットでは、昨年に引き続き河野雅治外務審議官が担当するようです。この他、政務局長(政務担当外務審議官)、外務サブ・シェルパ(外務省経済局長)、財務サブ・シェルパ(財務省国際局次長)を含めて4名が主要なサミット担当とされてきたようです。(外交青書2005年

サミットの会合では、首脳会議場に入室できるのは、首脳を除くとシェルパと緊急時連絡要員だけです。文字通り密室での会談ということになります。このシェルパが「首脳の個人代表」と呼ばれているように、首脳の補佐役もまた首脳個人に責任を負うような位置づけになっています。このように、サミットの組織的な特徴は、民主主義や透明性などとはまったく正反対のものです。

サミットでは、首脳個人に自由な裁量と大きな権限が集中しやすくなるように、非公開を原則とした設計がなされる一方で、このサミットを取り巻くようにして、具体的な政策を実現するための制度や組織が、時にはサミット諸国の枠を越えて拡がりを見せるように作られてきたということです。(小倉利丸)