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西陣プロジェクト その1 〜綜絖編 富坂綜絖店 富坂儀一郎さん
2000年11月18日取材
ものづくり職人列伝
「綜絖」とは、ハードウェア

織機をコンピュータに例えてわかりやすく言うと、コンピュータで言うところのハードウェアを組み立てる仕事だそうです。それも、CPUまわりの中核部分に相当する部分の組み立てです。

機屋(はたや)さんは、各ハードウェア部品を組み立てて、全体を仕上げるお仕事。また、紋紙はソフトウェアに相当します。そして、できあがった帯がプリントアウトしたものということになります。

以前、近くの子供たちに説明したときは、ゲームコンピュータに例えて、紹介したそうです。なるほど、そうするととっつきやすいし、イメージしやすいですよね。

じゃぁ、ハードウェアのどんなところなのか?
織機の上にはジャガードがあり、紋紙に記録された模様を読み取り、その通りに糸を織り上げるように制御します。つまり、綜絖とは、「紋のデザインを伝えるための仕組み」です。織機の心臓部にあたります。

富坂さんの工房にある織機の一部



綜絖店の仕事

綜絖の仕事は、数千本にも及ぶ糸を、長さをそろえながら、一本一本を結びながら、織機を組み立てていくことなのです。

織機は一度組み立てたらもう、そのままなんじゃないか?という疑問がありますが、そんなことはありません。
時期によって、織る組織に合わせて、組み立て直すそうです。冬には、夏物向けの組織を織るときの綜絖の組み立て。夏には、冬物のための綜絖の仕事があるそうです。
つくりおきもできないし、織機のあるところに行ってしないといけない仕事です。

この仕事は誰にでもできるものではないですよね。機械化が進んだ西陣の世界、紋紙をつくったり、織ったりするのは、他のひとでもやってできないことはないけれども、この綜絖だけは他のだれがすることのできない技です。
でも、需要が少なくなっている今、全盛期の昭和40年代には90件ほどもあった綜絖店ももう、西陣には十数件しなかいそうです。


本物志向

「最近は、ほんものがわかる人が少なくなってしまっている。」富坂さんはおっしゃいます。
西陣が賑やかだったころ、つくれば売れるような状態だったそうです。その頃は生産性の高いものや売れるものばかりをつくっていたので、みんなの目がやせてしまったようです。「売れるものイコールいいもの」ではないですからね。

そんななか、本当にいい模様をつくろう、と紋屋さんや機屋さんと集まって話をされたこともあったそうです。

夏物の裂地の組織のことや、こんな綜絖でこんな組織をつくったら、別の手触りになりますよってことを教えてくださいました。

今は、帯を織っているひとも売っているひとも、そんなことはわかっていないひとも多いとか。
でも、この不況の中、本物をわかっているひとが生き残っていくだろう、とおっしゃる富坂さんの目は自信が満ち溢れていました。






竹の筬

筬(おさ)とは、部分を織る時に、経糸を竹の隙間に通し、杼(ひ)を使って横糸を入れて、織り前に織りつける道具のこと。最近はもう、竹を使うことはほとんどないのですが、ほんとうはやっぱり、竹がいい。

これの有効な利用法として、この竹を使ってコースターを作られました。すると、下鴨の和菓子やさんがすごく気に入ってくださって、大量に受注されたとか。

なにかいいかって、使われなくなった織機からもらった筬からとった竹は糸がいっぱい通っているので、適度に油がついていて、水に濡れても変形しないし、変色もしない。また、洗ってもだいじょうぶだし...ということで他の素材ではかなえられないメリットばかりあります。

和菓子やさんも本物志向の方で、そんな方が喜んでくださって、富坂さんも本当に嬉しかったとのことです。


西陣の技術を海外で

西陣のこれからについて、富坂さんはこんなふうにおっしゃってます。
西陣の技術は世界に通じるものである。これを世界にアピールしていかなければならない、と。
ホームページで紹介されてるように、西陣の素材にこだわって和のクラフトをつくるのも、そのアピールのひとつ。
その証拠に、富坂さんのホームページには、英語ページへのリンクもあります(まだ未製作ですが...)。

これからも本物をつくり続け、西陣の本物の良さを世界の方々にわかってもらえるよう、私たちもがんばっていきたいと思いました。



文:やっち
今回の訪問先:富坂綜絖店 富坂 儀一郎さん
富坂さんへの連絡先については富坂綜絖店

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