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西陣プロジェクト その2 〜撚糸編 廣川昌良さん
2001年 3月 7日取材
ものづくり職人列伝
「張り撚り」とは?

今回は京都で3軒となった撚糸の中でも「張り撚り」と呼ばれる技法を守っていらっしゃる廣川昌良さんのお仕事場にお邪魔しました。

奥行きの長い仕事場の一番奥で廣川さんは仕事をしていらっしゃいました。その奥行きは何と33〜34メートルもあるそうです。

廣川さんは西陣織製糸部門の伝統工芸士で、およそ45年のキャリアを持つベテランです。おじいさんの代からこの地で撚糸業を営んでおられます。

張り撚り撚糸は、自在に太さを調節して撚れるので、小口の注文にでも応じられるのが特徴です。お邪魔したときは数珠の芯を撚っているところでした。

しかし、個々の注文に応じてきめ細かく対応できる反面、量をこなせず、それだけに加工賃が高くつくとのこと。ですから、数珠の芯のほか綴れ織用の糸など高級品、付加価値の高い分野で強みを発揮する撚り方といえるでしょう。しかし、最近では撚りの違いを理解できる人が少なくなってきた、とのことです。

糸を撚る廣川さんまず、糸を「ツム」と呼ばれる金具に引っ掛けます。その手際の鮮やかなこ と。引っ掛けていく本数によって撚られる糸の太さが変わってきます。ちなみに この「ツム」を作っているところも今はもうなく、折れた場合、手に入れるのも 大変だそうです。
機械が動く糸を引っ掛け、移動式の先端部分を工場の反対側に移動させて糸を張ったらス イッチオン。スイッチの切り替えで、右撚り、左撚りの両方が可能です。 京都で3軒だけとなった張り撚り工場

撚糸屋さんの仕事は、糸屋さんから糸を預かってそれを撚って糸屋さんに返すという、「預かり加工」が中心で、必然的に糸屋さんからの加工注文の量に大きく影響されます。

終戦後は京都だけで40件近くあった張り撚りの撚糸工場ですが、現在は3軒が残るのみ。それも後継者がいないので、残念ながら、今のままでは京都から途絶えてしまう技術なのです。

現在は数珠の芯などの注文があるのですが、張り撚りの技術が京都から消えた時、それまでその糸を求めていた人たちはどうするのか、そして、他にこの技術を生かす道はないものかと複雑な思いで工場を後にしたのでした。

一般にはあまり知られていない仕事ですが、京都にこういった技術があり、携わっている方がいらっしゃるということを知っていただき、みなさんにも、この先どうしていけばよいのかを考えていただけたら幸いです。
以下、今回の参加者の感想です。
  • 糸を撚る技術だけを見ると、職人の技とか出来上がる糸の良さとか凄さを感じることができましたが、着物をつくる工程のほんの一部分でしかないことがこれからの時代にこの技術を残していく難しさを感じました。
  • 撚糸という呉服業界のほんの一角に過ぎない技術を今の時代に必要とされるものにするためには、撚糸という特徴とか良さとかをもっと呉服業界だけでなくもっと広く多くの人に知ってもらい、新しい必要性(呉服以外)を生み出すしかないと感じました。
  • やはり、次世代に生かせる用途を生み出すことが重要だと思います。張り撚りの「小口注文に応じられ、高付加価値のものを生み出せる」という特徴を生かした用途を考えるのと、こういった仕事が京都にあるということを伝えたいです。
撚られた糸たち糸、特に絹糸にとって乾燥は禁物です。また、水で濡らした糸を撚り、乾燥 させることによって撚りの締まったしっかりとした糸になります。夏は暑い中 で、冬は地面から冷えの上がってくる中でのたいへんな仕事です。
なお、張り撚り撚糸の工程の詳しくてわかりやすい説明はSavage Blueのホームページ
http://www.savageblue.com/nenshi5.htm
をご覧ください。
文: じゅん、こまねずみ、塾長 / 編:塾長
今回の訪問先:廣川昌良さん

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