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好きなものへの追求!まだ、道なかば! 梅染研究所 山本 晃さん
2000年6月10日取材
ものづくり職人列伝

山本さん紹介:絵が好きだった山本さんは 「何か物を作る仕事がしたくて」京都で、 友禅の世界で仕事をするようになり、若い頃は、師匠の家に住み込みで修行 し、独立後は梅染め+友禅染めのスタイルで独自の世界を切り拓いて おられます。

Q:ものづくりの原点は何ですか?
内弟子時代の経験だとおもいます。今から思えば仕事らしいもの はさせてもらった覚えが無いですが、師匠の生活を四六時中みており、師匠の子供 の子守りから夫婦喧嘩まで全て見せて戴きました。師匠の生き方そのものが、無形の財産となり、今の仕事の原点に 成っている事は確かです。

Q:独立したきっかけは何ですか?
友禅の仕事と一口に言っても、数多くの仕事があり、又、京都は 長い伝統の中でそれぞれの仕事が分業化されており、いつしか歯車の一部の様に 成っている、 自分の生活に不満を抱き、『自分が好きな事をするには独立しか ない』!と思い 工房を開きました。

Q:梅染めの出会い?
若い頃からのライフワークで、世界中の生地のデザインの歴史を調 べたりしている内にあるとき、平安時代の平民から王朝文化のことを調べている時に、 文献の中に「梅染め」 の言葉がでてきました。 私の工房が北野天満宮に近いものだから、この文献を元に、手探り で梅染めを研究を しているうちに、「毎年1月に剪定される梅の木を分けて貰えないだ ろうか。」と、事情を先代の宮司に話したところ、文化に理解のある方だったので 分けて頂き、染めて発表したのが、北野紅梅染になりました。

Q:梅染めとは!
歴史的には、桃山時代に辻が花と同じ様に、文献には度々出てくる染 方で政治・経済の変化でいつしか、廃れてしまいました。梅染めは、花を使うのではなく、木の幹を使い、特に心材(幹の中心 部分)は赤く、 中でも根の部分は栄養があるせいか特に良いそうです。 でも、同じ梅でも白梅は色がないが、100年以上育った古木は紅梅と 同じ色が使えるそうです。

Q:梅の色!
すぐに、淡い赤色を想像すると思いますが、天然染めの不思議なとこ ろは時間と共に変化するのです。 若木はピンク色に染まり、老木になると茶色に染まります。梅の成分の中にタンニンが含まれており媒染剤により、 濃くした り、黒くしたり、黄いろく変化さしたりします。面白のは梅の木に付いている苔は紫色 に染まります。

Q:梅染めの魅力!
天然染めに共通する事ですが、毎回違う色に染めあがります。 染める時の気持ちによっても変化するし、 もちろん、その日の天候によっても変わります。毎回が真剣勝負で す。見た目の美しさもさる事ながら、梅は汗などのアンモニアなどの 臭いを消臭する効果があり、肌触りも優れています。 そして、煎じた後の枝木は灰にして媒染剤に使うので、 環境にもやさしいエコロジカルな染め方です。
〇山本さん開発商品!
梅染めをもっと身近に利用して欲しいと考え、きものの原点である赤ちゃんの「産着セット」を考えています。 肌にやさしく、消臭効果があり産まれたての赤ちゃんにピッタリだと思 います。又、私が染める梅は、学問の神様の北野天満宮の梅だけに御利益があると思 います。子供が成長し、親から独り立ちする時に形見わけが出来るように、桐のケースに母子手帳やへその緒などが入るようにしています。

〇これからの事!
職人がつくるこだわりの生活着ができないかを考えてます。又、 梅染めを身近に理解してもらうのに工房で体験会を設けたりしていま す。 友禅職人になって半世紀、梅染めをライフワークとして取り組んで20 年、 ようやく自分の方向が見えてきたところです。

〇 PS
山本さんの工房は7月から、京都市と組んで、公開工房を実施されるそう です。



◎ 取材日記
飾らない人柄で、静かな語り口の中にも、梅染めにかける情熱を強く感じた。独 立する時の礼儀として 「師匠から戴いたのはものづくりの精神で、仕事としては師匠と縁を切ることだ」 と言う言葉が印象に残った。だからこそ、自分の道を切り拓く為に、人と違う何かを探されていた。自分の進 むべき道がようやく見えてきたのも、最近になってからのようで、職人の世界!いや、ものづくりの世界!は奥 が深いのだろう。 とかく現代の風潮は、即結果を求めたがるが、自分の進むべき道がこれで良かっ たかなどすぐには出ないものだ。 人生の価値を何に置くかだ。お金をたくさん儲けるのも人生かも知れないが、好 きな事を追求するのも幸せな人生だ。(たっくん) 

今回の訪問先:梅染研究所  山本 晃さん
ホームページ:http://www.h3.dion.ne.jp/~ume1/

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