自治労音協通信
   NO23号/97.7.1発行 3面

 私の音楽夜話

佐藤十三郎(東京中野区職)

(開演まではまだ30分ぐらいありそうだ。)四方山話のついでに私の音楽歴でも少し話せば、私のそれは独学の我法、音楽なんて所詮遊びの延長でしかないと思っている。10才の頃から音楽が好きでたまらず、親にねだって買ってもらったポータブルステレオ(今でいうCDラジカセか)が全てのはじまり、三件隣の同級生の家にベニヤ板で作ったギターがあり、誰も弾かないというので借りてきて、『明星』の付録の歌集を見つけて歌っていた。この先を話すと長くなりそうだが、このときも今も、私の音楽に対する想いはちっとも変わっていない。すぐそこの公園でサッカーに夢中になっている少年と同じように、フォークソングに夢中になっている無邪気でかわいい自分だった。

 学生時代には、音楽クラブに所属して様々な種類の音楽に接したが、特に自分が音楽にむいているとも思えず、また音楽を唯一の自己表現の手段だなどとも思はなかった。但し、小泉文夫(民族音楽)を読んだのは大いに有意義だったが、法律を勉強したのはトンデモナイ間違いだった。[創造的でないものはなんとつまらないものか]本当は料理を勉強して、ラーメン屋か定食屋をやりたかった。あるいは手先が器用だから、家具職人か大工職人にでもなれば、結構面白いものを作っていたと思う。今でも中学校時代に作ったイスに座ってギターを弾くが、あまり上手にできていないので、座る時つい両手を合わせたくなる。

 開演前につまらないことをクドクドしゃべり、ワクワクしている皆さんの気持ちに水をさしてしまったらどうしよう。(どうも私は、根っから謙虚にできているらしい。)

 さて、私が明星の付録を歌っていた頃に比べ、私を取り巻く状況は変わりすぎてしまった。人は傲慢になり、人生への感謝や日々の生活、の満足を忘れてしまった。世のエントロピーは異常に拡大し、人類の叡智は万物を制覇できると信じ込んでいる。(いけない、話しが大きくなりすぎた。)私は、人を語ると中傷になり、世を語ると傲慢になるらしいので、小心な自分の仕事を続けるのが相応だろう。私はクレジットカードもタマゴッチも持っていない。ファミコンも東京ディズニーランドも知らない。新聞を取るのもやめたし、タバコも9年前に、パチンコを2ヶ月前にやめてしまった。人との気の利いた会話もできないし、話題も片寄り人にはつまらないらしい。実際私と話している人は皆退屈らしく、あまり私と話したがらない。皆に煙たがられ、陰口を言われ、繊細な心が夜泣きをしているというのに、黙って皆の楽しそうな会話を見つめているだけ。だが本当は、カブト虫のように寂しいのだ。[おっといけない、一体何をしゃべっているんだ]

 [そろそろ開演のベルが鳴る。]そういえば、少年の日、ギターも木登りも同じようなものだった。みんなが遊びの天才だったし、何もかも楽しく感じられた。ーそうだいつの日か私が、街角でラーメンの屋台を引いているのを見かけたら、何も言わずに一杯食べていって下さい。絶対ですよ〜。何?。フツウのラーメンですよ、ごくアッサリとしたー。(さとうとうざぶろう)

■自治労コンサート出演記

吟遊詩人・古賀麗音(ひまじんこがれのん)(福岡県田主丸町)

「東京に歌いにいかん?」「君も、ついに中央進出だ!」書記長の甘い言葉に乗せられて、遠路遥々、埼玉県浦和市まで、歌いにいく羽目になってしまった。今までこの人の話しに乗って歌いにいって、良い思いをしたことがない。飛行機のチケットが届いてから思い出した。不覚である。一体どんなステージに立たされるものか・・・不安がよぎる。道中は予想どおり、苦労させられた。書記長はジャケットにジーンズ、サングラス、軽そうな旅行カバン一個。一端のミュージシャン気取りである。マネージャーでついて来るだけなのに・・・。私は楽譜の入った重たいショルダーバッグに、これまた重いギターケース。その上、飛行機に乗ったら「この便は満席ですので、ギターを置く場所がございません。東京に着くまでそのまま、座席で抱いたままお持ちになってください。」スチュワーデスのお姉さんの、やさしい言葉で迎えられた。軽快に歩く書記長と、荷物を引きずり歩く私は、なんとか電車を乗り継ぎ、浦和駅までたどり着いた。ところが・・・会場がない。誰に尋ねても知らないのである。しかたなく、交番でお巡りさんに聞いてみる。「たぶん、そこなら埼銀の横の・・・」公務員を信じた私が馬鹿だった。探しても探しても埼銀がみつからない。ストアーのおばちゃんに聞いたら「ああ埼銀は合併したから、ほらそこにあさひ銀行ってあるでしょう。」何度も前を通った場所だった。汗にまみれ足を引きずり、会場にたどりついた。ちなみに、書記長は軽やかに会場にたどりついた。ちなみに、書記長は軽やかに会場の階段を上がり扉をあけた。事務局のOさんが笑顔で迎えてくれて、書記長に言った。「あなたが歌われる方ですか?」私は帰ろうと思った。

 今、思い出したが、書記長にはコンサートの感想文を書くように頼まれたのだ。前段が長過ぎた。本当はまだ書きたいことが一杯あるのだが。それでは、コンサートの感想。参加者の皆さん、スタッフの皆さんお疲れさまでした。真面目に一生懸命、音楽してるっていう感じ。仕事や社会風刺を一杯込めた労働歌。一瞬、タイムスリップしたような感覚を覚えたけど、こんな音楽があっていいんじゃないかと思う。

 昼間の仕事を持ちながら、歌作りに励む人達が全国には沢山いるもんだなあ。アマチュアでも恥ずかしがらずに、堂々とミュージシャンしょう。音楽は楽しむもの。そして心の通じ合う言葉。いろんなメッセージを、想いを、音に乗せて、他人(ひと)の心へ運んで行く。改めて、自分も音楽やってて良かったなと思いました。そして、もっと多くの人が、もっといろんな人が、このコンサートを知り参加出来るなら、もっと楽しくなるだろうし、刺激になるとおもう。最後に、このコンサートが上手下手関係なく、音楽を作りたい人、音楽を聞かせたい人、音楽を楽しみたい人達の、出会いの場所であってほしいと願いつつ今回出会えた人達に感謝致します。人と出会うたびに、またひとつ、唄ができるような気がします。

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