東京地方争議団共闘会議「独占と権力の対応」

総行動11年の原点に立ち返って教訓を学ぶ

[1983.12.10-12.東京地方争議団共闘会議:第22回総会議案書]
[第3章(続)私たちをめぐる動き:副議長・法廷闘争対策担当・木村愛二執筆]

六、「使用者概念」云々の「不当労働行為」、「ひとり争議」の新発生と組織化の課題

2000.11.4 WEB雑誌『憎まれ愚痴』60号掲載

 同じく東京争議団の活動方針には、「地評・単産・地区労と協力して、未組織労働者の組織化につとめます」、とあります。

 これも、単なる字面の方針ではありません。東京争議団の結成メンバーであり、初代の佐藤事務局長を出した全国一般中部地域支部正路喜社分会は、偽装倒産・全員解雇の攻撃と闘いながら、三〇を越える新分会の結成に中心的な役割を果しました。東京12チャンネル(現テレビ東京)の第一次争議は、社員の大量解雇でしたが、下請労働者の組織化で企業内の力関係を逆転。自らの勝利とともに、大量の下請労働者の社員化までかちとりました。現在のテレビ東京争議団は、その組織化で結成された民放労連東京地区労組の組合員で、その後の労務政策の逆転のために社員化の約束を反故にされたものです。

 労働省は、平岩報告などにみられる独占の意向を受けて、一九八〇年に、「労働者派遺事業」にかかわる職安法の改正を提言しています。テレビ東京争議は、まさにこの労働行政の動きを先取りし、労働省と裁判所に独占の横車を押しつける攻撃でした。表面上は、業者との契約解除。しかし実態は、史上まれにみる凶悪な、政財界~桜田武の表現を借りるならば「経営のトップ」「裁判所」「官僚組織」、そして争議への干渉役としての「警察」~が一体となった集団的「不当労働行為」の共謀であり、関東軍式の既成事実づくり。主謀者は、財界直結の日本経済新聞社ですから、まさに本命です。

 この点で面白いのは平岩報告そのもので、親会社の責任をストレートに「労組法七条(不当労働行為)」との関係で論じています。使用者概念の拡大に「毅然とした態度」を取ることを、自ら「不当労働行為」と認めているようなものです。民放労連東京地区労組の瀬田解雇事件では、下請会社がテレビ局に配った営業案内のパンフレットが証拠になりました。そこには「労務管理が楽になります」と、いとも卒直に書かれていたのです。

 現在の争議で、この組織化の課題を考えてみましょう。いわゆる「ひとり争議」の新発生が目立っていますが、それも従来の大手企業における活動家解雇とは異なり、中小企業での闘いが増えています。中小企業の増大と系列支配という産業構造の変化が、争議に表面化しているのです。

 たとえば、千代田区のイセキ開発工機・山田解雇事件の場合、この一〇月一三日に対策会議が結成されました。相手の会社は、地下埋設工事などのトンネル堀りの特殊機械でパテントを持ち、急速に成長中。中小企業庁・通産省などが「ベンチャー・ビジネス」(研究開発型中小企業というのが御役所訳語だが、原義は冒険事業)として、育成のために税制・金融面での優遇策を検討中という二千~三千の中小企業の典型でしょう。

 当然のようにワンマン経営。組合ぎらい。そして、残業割増しのゴマカシ追及、労働者代表者会という労組づくりの前段で、ねらいうちのデッチ上げ解雇という事件です。社内のわずかな支持者も表面には立てません。名の知れた企業ではありませんから、地域での支持者が急速に増えるというのも、現状では困難です。

 しかし地元では、未組織労働者の闘いを見殺しにできるか、という合言葉で、都労委の傍聴動員を強化。事件の真相がリアルに知られるなかで、対策会議の結成により、地元労組が強力な体制を築くようになったのです。

 ほかにも、労災職業病の関係など、現在の独占と権力の動きを象徴するような争議が多発しています。相手は弱者切り捨てで、自らがつくり出した経済危機を乗り切ろうと企んでいます。しかし、弱者も闘います。わたしたちの独占に対する回答は、それらの闘いの組織化と、さらには職場労働者の積極的な組織化以外にありません。

 従来の大手企業争議でも、全国一般に個人加盟して団交権を確立するなどの経験があります。関連組織との協力の下に、新しい未組織組織化の運動の波を起すことも考えなくてはなりません。

以上で「 六」終わり。「七」に続く。


七、「冬の時代」にこそ総合的な反撃体制を築くチャンスが

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