編集長の辛口時評 2005年12月 から分離

高嶋教科書訴訟最高裁判決「湾岸戦争と情報コントロール(メディア操作)」批判脱落報道に喝!

2005.12.03(2019.8.20分離)

 以下は朝日新聞の電網(インターネット)記事である。


http://www.asahi.com/national/update/1201/TKY200512010173.html
横浜教科書訴訟、執筆者側の上告棄却 最高裁
2005年12月01日12時50分

 92年の教科書検定で文部省(現文部科学省)に修正を求められ執筆を断念した高嶋伸欣(のぶよし)琉球大教授(63)が、「表現の自由を侵害された」として国に100万円の賠償を求めた訴訟の上告審判決が1日、あった。最高裁第一小法廷(横尾和子裁判長)は「当時の検定制度は憲法に違反しない」と判断。個々の検定意見も「裁量権の逸脱はなかった」として高嶋教授の上告を棄却し、教授が逆転敗訴した二審判決が確定した。89年に簡略化された新制度とそのもとでの検定の適否について最高裁が初判断を示した。

 32年間に及んだ故家永三郎氏による一連の教科書訴訟を引き継ぐ形で93年に提訴。検定制度の違憲性などを訴えてきた。

 主に問題になったのは、高嶋教授が91年に「新高校現代社会」(一橋出版)で執筆を担当した「現在のマスコミと私たち」「アジアの中の日本」について、旧文部省の調査官が述べた検定意見の適否。

 検定意見が違法となる場合としては、最高裁が家永訴訟の判決で「根拠となる学説状況の認識などについて見過ごしがたい誤りがあるとき」との一般基準を示している。第一小法廷はこれを踏まえ「いずれの検定意見についても誤りは認められない」と述べ、「検定意見に関する文相の判断は、裁量権の範囲を逸脱しておらず、違法とは言えない」と結論づけた。

 一審・横浜地裁は、調査官が4カ所の記述に対して述べた検定意見のうち、二つについて「裁量権を逸脱して違法」として20万円の支払いを命じたが、二審・東京高裁はこれを取り消して請求を棄却した。

 文科省は「誠に妥当な判決」とコメントした。

     ◇

 〈問題になった検定意見〉 (1)福沢諭吉の「脱亜論」とアジアに好意的な勝海舟の「氷川清話」を対比させた記述について、「前後を端折って都合のいいところだけ抜き出した」(2)湾岸戦争で掃海艇を派遣したことをめぐる「東南アジア諸国から事前に意見を聞いて欲しかったという声が相次いだ」との記述に対し、「やや低姿勢である」――とした調査官の二つの指摘。一審・横浜地裁判決は、それぞれの検定意見について「学説状況の把握が不十分」「当てはめた検定基準が不明確」とし、違法と判断した


 上記の事件の原告、高嶋伸欣は、わが高校時代の友人の弟である。直接会って話したこともある。その話の核心部分は、彼が、自分の訴訟で、拙著『湾岸報道に偽りあり』を提出したという挨拶であった。

 上記の朝日新聞記事では、「湾岸戦争」と関係する部分は、「湾岸戦争で掃海艇を派遣したこと」だけになっている。

 非常に残念なことには、わが家の唯一の宅配紙、日経12/01記事も同様の状況である。

 拙著『湾岸報道に偽りあり』が関係する部分は、以下の「高嶋教科書訴訟を支援する会・公式WEBサイト」に記されているように、「湾岸戦争と情報コントロール(メディア操作)」なのである。


http://www.jca.apc.org/kyoukasyo_saiban/INDEX1.html
高嶋教科書訴訟を支援する会・公式WEBサイト
SINCE 2000.9.

不当判決!! 最高裁を上告棄却、たった30秒で終わる

 *12月1日、午前10時30分。上告から3年以上も待たされた揚げ句の果て、上記のような結果となりました。棄却の理由さえ伝えられませんでした。しかも、少数意見もつかない裁判官全員一致という不当性の極めて高い判決となっています。

高嶋教科書訴訟とは…

 30回に及ぶ東南アジアの戦争の傷跡に学ぶ「マレー半島戦争追体験の旅」の取り組みで知られている高嶋伸欣さん(琉球大学教授・前筑波大学附属高校教員)は、1994年度からの新教育課程用の教科書検定で『新高校現代社会』(一橋出版)の執筆を断念させられました。文部省(当時)は新教科書検定制度の下で高嶋さんに対し、福沢諭吉の「脱亜論」・天皇死去の際の報道・湾岸戦争と情報コントロール(メディア操作)・掃海艇派遣の四つの内容について削除を命じました。高嶋さんは「違憲、違法な検定意見で執筆を断念させられ、精神的苦痛を受けた」として、1993年6月、居住地の横浜地裁に国家賠償を求める民事訴訟をおこしました。1965年に始まり、3つの訴訟を連続して提訴した家永三郎さんにつぐ、第2の教科書訴訟であります。

 第1審判決(98年4月)では、ペルシア湾への掃海艇派遣決定(91年)にアジアから異論があったことを削除させた検定官の発言を違法とする判決がでました。しかし、掃海艇派遣10年後の昨年、政府はインド洋に戦闘艦を派遣しました。また、福沢諭吉の「脱亜論」を削除させた検定意見についても違法としましたが、〈現代版脱亜論〉と言うべきアジア蔑視の中学歴史教科書は、検定に合格しています。第2審は2001年4月に結審したにもかかわらず、判決が遅れに遅れ、2002年5月29日に判決がでました。結果は、第1審の判決を覆し、前述した検定官の発言を適法と判断するという、まさに時代に逆行する、「不当判決」となりました。さらに、近年の教科書攻撃・反動化を反映したものと言えるでしょう。いうまでもなく、原告・弁護団は最高裁への上告を行いました。

 「高嶋(横浜)教科書訴訟」は学校における教育の自由を求める運動を全国各地に広げることを目的としています。また、強まりつつある「歴史修正主義」の動きを止める運動も進めていきます。私たちはこれらの実現のために、今後も横浜を拠点として闘っていきます。


てなことで、「高嶋教科書訴訟を支援する会・公式WEBサイト」にもメールを送るが、年賀状などを送っている高嶋伸欣にも、「最高裁敗訴」の勲章を胸に、戦い続けるよう、激励の挨拶を送る。