自衛隊募集問題で徹底追及を!
「個人情報保護法案」を廃案に!
●自衛隊への個人情報・プライバシー情報の組織的“提供”はどこから見ても違法行為。
●行政間の個人情報「たらい回し」を「合法化」する「個人情報保護法案」。
●このまま放置すれば「一億総監視社会」や「思想チェック」にまでつながる危険。

(1)こんなことが許されるなら個人・プライバシー情報は行政の間でどんどん「たらい回し」されてしまう。政府・総務省、防衛庁に非難を集中しよう!
 防衛庁が自衛官募集に使うため、満18歳を迎える適齢者の情報を住民基本台帳から抽出して提供するよう、全国各地の自治体に37年間にわたって要請し、これに多数の自治体が応じていたことが、4月22日明らかになりました。こんなことが許されるなら個人・プライバシー情報は政府機関にどんどん蓄積され、どんどん「たらい回し」されてしまいます。
 衆院個人情報保護特別委員会は23日、集中審議を行い、石破防衛庁長官は内部調査の結果を公表しました。適齢者情報を実際に提供をしていたのは794市町村にのぼるとのこと。それだけでも大変なことです。

 しかしもっと驚くべきことに、一部の自治体は、「保護者名」「健康状態」「職業」などプライバシー性の高い「センシティブ情報」を提供したといいます。防衛庁長官によれば4情報以外も提供したのは332市町村です。障害の有無や家庭環境による差別、選別を可能とする個人情報リストが作成され防衛庁が利用していたことは明らかです。極めて危険なことであり厳しく糾弾されなければなりません。

 ところがこの794町村、332町村という数字は防衛庁の内部調査に過ぎません。氷山の一角であることは間違いないでしょう。調査に疑問の声が出るのは当然です。毎日新聞の調査によれば、函館地連管内などで、早くもこの防衛庁調査以外にも4情報以外を提供していたことがばれています。当事者にいくら調査させてもまともな調査など出来るわけがありません。防衛庁は軍事機構です。昨年の防衛庁リスト問題に続く不祥事。こんなところがこのまま好き勝手に個人情報を収集すれば軍事・治安対策に利用されかねない非常に危険な事態に至ることは必至です。

 政府・防衛庁や総務省は、今回の問題で、口をそろえて「法律上問題ない」と開き直っています。以下に詳しく述べるようにこれは全くのウソです。私たちは、まずもって政府・防衛庁、総務省に、既に提供された情報の全面的な破棄を要求します。事件の違法性を認めさせると同時に、徹底調査を要求します。
※<個人情報>函館地連管内の4町が住基情報提供 防衛庁は0報告(毎日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030423-00001062-mai-soci
※<個人情報>全体で794市町村が提供 防衛庁の適齢者情報収集(毎日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030423-00001033-mai-soci
※防衛庁・適齢者情報収集問題 閲覧外情報、332市町村が提供 全体で794市町村(毎日新聞)
 http://www.mainichi.co.jp/news/article/200304/23e/034.html
※自衛隊に名簿提供 「家庭環境までも…」父母ら憤りの声−−自治体「要請断れない」
 http://www.mainichi.co.jp/news/article/200304/22m/067.html

(2)住基ネットの危険を改めて示す。市町村の側の責任も重大。個人情報を勝手に自衛隊に“提供”した市町村にも抗議の声を挙げよう。
 個人情報を無断で“提供”した市町村の側の責任も追及すべきです。政府、防衛庁に今回個人情報の提供を行った市町村名を具体的に公表させ、協力市町村に対し具体的に今回の事件について、どのような情報を、どのような方法で、どのような形態で(リストやFDや電子ファイル)収集し提供してきたのか、その内容をすべて公表せよと要求しなければなりません。

 住民基本台帳には、市町村長の責務として「基本的人権の尊重」(第3条4項)が大前提です。今回の事件はこれに真っ向から敵対しています。さらに、都道府県知事の「報告義務」(第30条の7、8項)にも違反しています。

 今回の事件の教訓は何か。昨年強行された住基ネットの危険性を改めて示したことです。そして、政府機関・地方自治体を問わず、行政に無制限に個人情報を取り扱わせてはならないということなのです。彼らは、国民を「支配の対象」としてしか考えていません。本来はその個々人に属する個人情報を、行政である自分たちの所有物だと思っているのです。私たちはあくまでも住基ネットの危険性、4情報から、収集、統合範囲をどんどん拡大していく危険に警鐘を鳴らし反対し続けていかねばなりません。8月に予定される住基ネットの本格稼動に反対し、中止を求めていかなければなりません。市町村に対し、住基ネットからの離脱を要求していきましょう。
※住基ネットによる国家の権限強化の危険性と自衛隊員募集への利用の危険性については、署名事務局が昨年まとめた住基ネット批判 「住基ネット凍結法案を支持しよう!」の[8]に指摘していますので参照してください。

(3)政府・防衛庁・総務省が言う法的根拠はウソ・デタラメ。
 私たちが恐ろしいのは、問題発覚以降に政府・防衛庁・総務省が弁明したその法的根拠です。何とデタラメなことか。こんないい加減な態度で国民からもマスコミからも袋叩きに合わないことが、彼らを更に増長しているのです。
 彼らは、まず自衛隊法97条を挙げます。しかしこれは自治体が自衛隊募集事務「一部を行う」と決めただけで、適格年齢の個人情報を集めて“提供”することなど全く規定していません。また自衛隊法施行令119条も挙げていますが、これは自衛隊の「広報宣伝」を規定したものに過ぎません。施行令120条も「首相が・・報告や資料の提供を求めることができる」というもの。今回の当事者は首相ではありませんし、個人情報などどこにも規定されていないのです。だから東京都や神奈川県の市町村は、防衛庁の「提供要請」に応じなかったのです。言うまでもありません。それほど個人情報は厳格で神経質な管理がなされねばならないのです。そのような厳しい管理をしていても情報漏洩は出てくるものなのですから、防衛庁のような姿勢では危険が一杯なのです。
※<自衛官募集>くるくる変わる法的根拠 専門家ら危惧の声、続々(毎日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030423-00000164-mai-soci
※収集情報の利用停止は可能 自衛官募集問題で石破氏(共同通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030423-00000166-kyodo-pol
※信頼回復に努力=情報提供の範囲を徹底−石破防衛庁長官(時事通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030423-00000037-jij-pol


(4)住民基本台帳や現行の「行政機関の保有する電算機処理にかかる個人情報保護法」にも違反。
 今回の事件は、住民基本台帳や現行の「行政機関の保有する電算機処理にかかる個人情報保護法」に反する徹頭徹尾違法な行為です。
 まず第一に、住民基本台帳法違反(第3条、第36条など)です。政府は4情報(氏名、住所、生年月日、性別)なら問題ないと言いますが、ふざけたことを言ってはいけません。確かに悪法の中の悪法、住民基本台帳法はこの4情報の“閲覧”を認めています。しかし“閲覧”と“提供”は全く別のことです。自治体が“閲覧”以外の方法で、自衛隊に対して個人情報を定期的全面的に“提供”するなどやってはならないことなのです。
★住民基本台帳法 第5章(住民に関する記録の保護)
 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S42/S42HO081.html
第三十六条  市町村長の委託を受けて行う住民基本台帳又は戸籍の附票に関する事務の処理に従事している者又は従事していた者は、その事務に関して知り得た事項をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。

★(住民票に記載されている事項の安全確保等)
第三十六条の二  市町村長は、住民基本台帳又は戸籍の附票に関する事務の処理に当たつては、住民票又は戸籍の附票に記載されている事項の漏えい、滅失及びき損の防止その他の住民票又は戸籍の附票に記載されている事項の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。

★(市町村長等の責務)
第三条  市町村長は、常に、住民基本台帳を整備し、住民に関する正確な記録が行われるように努めるとともに、住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 第二に、現行の「行政機関の保有する電算機処理にかかる個人情報保護法」違反(第4条)です。4情報以外の「プライバシー」が、これも定期的全面的に自衛隊に提供されることなど、絶対許されないことなのです。
★行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律
 http://www.houko.com/00/01/S63/095.HTM
第二章 個人情報の電子計算機処理 (個人情報ファイルの保有)
第四条  行政機関は、個人情報ファイルを保有する(自らの事務の用に供するため個人情報ファイルを作成し、又は取得し、及び維持管理することをいい、個人情報の電子計算機処理の全部又は一部を他に委託してする場合を含み、他からその委託を受けてする場合を含まない。以下同じ。)に当たつては、法律の定める所掌事務を遂行するため必要な場合に限り、かつ、できる限りその目的を特定しなければならない。
2  個人情報ファイルに記録される項目(以下「ファイル記録項目」という。)の範囲及び処理情報の本人として個人情報ファイルに記録される個人の範囲(以下「ファイル記録範囲」という。)は、前項の規定により特定された個人情報ファイルを保有する目的(以下「ファイル保有目的」という。)を達成するため必要な限度を超えないものでなければならない

★(処理情報の利用及び提供の制限)
第九条 処理情報は、法律の規定に基づき、保有機関の内部において利用し、又は保有機関以外の者に提供しなければならないときを除き、ファイル保有目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。


(5)行政間の個人情報「たらい回し」を推進する悪法「個人情報保護法案」で、今回の事件は完全に「合法化」されてしまう。
 今回の事件は、防衛庁という軍事弾圧機関が、個人情報をその個人に無断で勝手に収集したりたらい回しにしている実態を暴露しました。「だから個人情報保護法案を今の国会で通さねばならない」と暴論を吐く人がいます。しかしこれは全くデタラメで、むしろ政府与党の法案はまったく逆のことを狙っています。
 今国会で審議中の個人情報保護法案、とくに行政機関個人情報保護法案には、健康や思想・信条に関わるプライバシーの収集、提供を禁止する条項、罰則条項は意図的に抜かれています。私たちは個人情報保護法案の廃案を要求します。

 政府与党の「個人情報保護法案」は、強大な「主務大臣の監督権限」が法の根幹をなし、一切の個人情報に関する管理・運用を主務大臣が恣意的に自由自在に扱えるようになるからです。「個人情報取扱業者」という「法律の対象」をどこまでにするのか、メディア規制との関わりで「報道」とは一体何を意味するのか等々、全て監督官庁と官僚が取り仕切るのです。

 一方、行政機関の権力乱用を規制すべき「行政機関個人情報保護法」では、行政機関相互の「目的外利用」を事実上野放しにしようとしています。「相当の理由」があり、「合理的に認められる範囲内」ならば、行政機関が収集した個人情報を、当初の目的とは別の「目的外利用」することが許されるという抜け道が「合法的」に規定されているとんでもない法律なのです。もちろん行政側が本人の承諾・了解を得る必要はなく、事実上自由自在に個人情報をたらい回しできる悪法なのです。
★行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律
 http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/030307_1.html
第二章 行政機関における個人情報の取扱い(個人情報の保有の制限等)
第 三条 3 行政機関は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。

★第八条 2 前項の規定にかかわらず、行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供することができる。
二   行政機関が法令の定める所掌事務の遂行に必要な限度で保有個人情報を内部で利用する場合であって、当該保有個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。
三   他の行政機関、独立行政法人等又は地方公共団体に保有個人情報を提供する場合において、保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。


(6)住基ネット、盗聴法、個人情報保護法、そして有事法制が全てつながれば恐ろしい「住民監視社会」だって可能になる。
 もしこんなことが許されるなら、今回の自衛隊募集問題や昨年の防衛庁リスト問題はおろか、行政機関にどんどん日本国民の個人情報、プライバシー情報が集中し集積されていきます。私たち市民が自己の尊厳をかけて闘わなければ、国家権力による野放しの「住民監視国家」「プライバシー監視国家」につながって行くでしょう。禍根を残さないためには今闘わねばなりません。

 それだけではありません。有事法制、その「国民保護法制」という国民総動員体制の道具として「目的外利用」が使われたら一体どうなるか。背筋が寒くなります。「総動員対象」の住民データが、瞬時に政府・行政機関、あるいは防衛庁、あるいは警察庁や都道府県警察で検索できれば、「要注意人物」「思想チェック」など瞬く間にコンピュータ画面に一覧が出る仕組みも技術的には非常に簡単なことになります。

 つまりこの問題の危険性は、個々人のプライバシー云々の問題を超えて、それが全体として日本の軍国主義化、反動化に利用される危険を指し示しているのです。防衛庁で事件が暴露されたことを目の前にして戦争体験者は言います。「徴兵制」につながらねばいいが・・・。日本の軍隊が組織的計画的に的確年齢に達した青年の個人情報を集積することの危険はいくら警戒しても、し過ぎることはありません。
※私たち署名事務局が昨年まとめた住基ネットの危険、個人情報保護法案の危険に関する記事・論評を併せてご覧下さい。
・「住基ネット凍結法案を支持しよう!住基ネットは、「恐怖の監視社会」に道を開く
・「「メディア規制法案」(個人情報保護法案、人権擁護法案)を廃案に!
−許せない国家権力による国民とメディアへの言論統制・弾圧−

・「あくまでも中谷防衛庁長官の罷免を要求する
−− 防衛庁の「情報公開」室は、自衛隊の市民監視・治安・弾圧活動の窓口だった!


2003年4月23日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
(4月25日一部訂正。)




政府、総務省、防衛庁に抗議を集中しよう!


● 総務大臣 片山虎之助

総務省
〒100-8926 千代田区霞が関2-1-2
e-mail: opinions-2002@soumu.go.jp

〒100-8962 千代田区永田町2-1-1 参議院議員会館323
TEL. 03-3508-8323
FAX. 03-3502-8896
e-mail: toranosuke_katayama@sangiin.go.jp


● 防衛庁長官 石破 茂

〒100-8982 東京都千代田区永田町2-1-2 衆議院第二議員会館525

TEL. 03-3508-7525
FAX. 03-3502-5174
e-mail: g00505@shugiin.go.jp


● 内閣総理大臣 小泉 純一郎

首相官邸FAX. 03-3581-3883
首相官邸HP: http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html

〒100-8981 東京都千代田区永田町2-2-1 衆議院第一議員会館327
TEL. 03-3508-7327
FAX. 03-3502-5666


● 内閣官房長官 福田 康夫

〒100-8981 東京都千代田区永田町2-2-1 衆議院第一議員会館611
TEL. 03-3508-7181
FAX. 03-3508-3611
e-mail: g03872@shugiin.go.jp



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