小泉政権はクラスター爆弾を即刻全面廃棄せよ!
−多数の子どもたちを殺し傷つける断じて許せぬ非人道兵器−


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(1)「専守防衛」なんて嘘っぱち。クラスター爆弾は“侵略用兵器”の典型。
 米軍がアフガニスタンや今回のイラク侵略でたくさん使ったクラスター爆弾、この非人道的・無差別兵器を、日本の自衛隊も大量に装備していたことが明るみに出ました。防衛庁は4月17日、ボール状の子爆弾が広範囲に飛散する「クラスター爆弾」について、1987年度から16年間かけて何と数千発、計148億円分も購入し、航空自衛隊の各基地に配備したことを明らかにしたのです。また陸上自衛隊も同じような子爆弾を収納するミサイルなどを保有していることも判明しました。とんでもないことです。
※16年間で148億円分 空自のクラスター弾数千発(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030417-00000196-kyodo-soci

 ところが福田康夫官房長官は17日午前の記者会見で公然と開き直りました。「クラスター爆弾」保有を認めた上で、これは「専守防衛であり、他の国に持って行っての使用は考えていない。専守防衛という観点から必要であれば、廃棄する理由はない」として、保有には問題はないと突っぱねたのです。18日石破防衛長官も「敵の着上陸侵攻に際して侵攻部隊の陣地、戦車等車両の集積所を攻撃し、侵攻を阻止するのに有効」と述べました。しかし一体今現在、どの国が日本本土に上陸侵攻するというのでしょうか。具体的には答えられないはずです。
※自衛隊、クラスター爆弾保有 廃棄の理由ない−官房長官(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030417-00000094-kyodo-pol
※クラスター爆弾、侵攻阻止に有効=非人道的使用を否定−防衛庁長官(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030418-00000148-jij-pol

 しかし、「専守防衛」などウソです。このクラスター爆弾という兵器の構造と特質そのものが“侵略兵器”なのです。この兵器のように広範囲を無差別に攻撃・制圧できるものを国内で使用するのは事実上不可能と考えていいでしょう。米軍はクラスター爆弾を、また劣化ウラン弾を、燃料気化爆弾を、更には核兵器を、生物兵器や化学兵器を純粋に「米本土」で使うというのでしょうか。そんなことはないはずです。米軍がイラクやアフガニスタンで使用したように他国を侵略し制圧するための兵器なのです。しかも自衛隊がそのような攻撃兵器を数千発も持っているということ自体異常です。
※「ナパーム弾・クラスター爆弾−−アメリカは非人道兵器の使用を直ちに中止せよ!」(署名事務局)

(2)“朝鮮半島有事”で米軍との共同攻撃で使用するつもりか。いつ、どこで、どのように使うのか、説明せよ。
 野党はもっと具体的に追及すべきです。17日、18日の2日間、与野党の間で論戦がありましたが、それ以降はぷっつり。こんなデタラメな答弁で済ませてはなりません。
 いかなる目的で数千発も持っているのか。官房長官がもし「専守防衛」というのなら一体いつ、どこで、どのような目的のためにこの兵器を使用するのか、現実的な解答を引き出すべきです。「周辺事態法」の、「テロ対策特措法」の、そして今審議中の「有事法制」の、どこに、どう位置付けられるのか、はっきりさせるべきです。具体的に問い質せば、「日本の防衛」「日本の領土」で使うことなど強弁できないはずです。このクラスター爆弾を「専守防衛」と呼ぶ姿勢そのものが専守防衛など何とも思っていないことの表れではないでしょうか。
 日本政府は、何よりもまず第一に、これまで非人道兵器を保有してきたことを国民の前に謝罪し、第二に、直ちにクラスター爆弾の保有を撤回し、この爆弾を廃棄すべきです。

(3)これで分かった。国連非人道兵器に関する決議に棄権した理由。
 クラスター爆弾は劣化ウラン弾とならんで、1996年国連人権小委員会で非人道兵器・大量破壊兵器と決議されました。この時、唯一決議に反対したのがアメリカです。アメリカはこの時改めて世界中に向かって非人道兵器・大量破壊兵器の保有・使用を宣言したのです。何が「イラクの大量破壊兵器」でしょう。俺は持っても使ってもいいが、イラクよ、「悪の枢軸」よ、お前らは持っても使っても絶対許さない、と。傲慢もここまでくれば呆れ返ります。

 日本はどうでしょうか。実はこの時「棄権」したのです!!私たちはこれまでなぜ棄権したのか分かりませんでした。いつものように単にアメリカの顔色を伺ったのだろうと思ったのです。核兵器の惨劇に見舞われた被爆国なのだから、日本は持ってもいないだろうし、使いもしないだろうに。そう思い込んでいました。

 しかし事実は驚くべきものでした。非人道兵器を秘密裏に持ち、米軍と一緒に侵略する時に、使おうと狙っていたのです。福田官房長官は「隠していたわけではない」と弁明しますが、国内的には持っていることを明らかにせず隠し通し、国際的には禁止に反対する行動を取っていたのです。私たちは日本政府と自衛隊の危険性を一層厳しく糾弾して行かねばなりません。

(4)自衛隊が保有する非人道兵器はクラスター爆弾だけなのか。それ以外も追及すべき。
 クラスター爆弾は、国連で非人道兵器として認定されている劣化ウラン弾、生物兵器などと同じです。この96年の国連人権小委員会では、クラスター爆弾以外にも、気化爆弾、生物兵器、劣化ウラン弾などが大量破壊兵器・無差別殺傷兵器とする決議が採択されています。また、2002年の国連人権小委員会でも、劣化ウランを含むこれら一連の兵器の使用は、過剰な殺傷能力を発揮し、不必要な苦痛を与えるものであり、非人道的兵器とされています。

 私たちは信じられなくなりました。果たして日本政府と自衛隊は、これら国連で決議されたり審議されたりした非人道兵器・大量破壊兵器の中で、実際に保有しているのはクラスター爆弾だけなのか。もっと全面的な調査と解答を求めるべきです。


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(1)軍事から外交まで一切合切をアメリカに“丸投げ”。非人道性までアメリカに追随するのか。

多くの子どもたちが犠牲に (ロイター=共同)
 私たちはなぜここまでクラスター爆弾に固執するのか。それは、これほど非人道的な兵器はないのに、その「使い易さ」から大量使用されているからです。何だかんだ言ってもアメリカとて核兵器は使いにくい兵器です。(ブッシュ政権になって“小型核兵器”なら大丈夫だと、使用基準を何とかして引き下げようと目論んでいますが)それに比べてクラスター爆弾は「使いやすい」のです。そこに危険があるのです。

 今回のイラク侵略でもその非人道性は疑う余地なく証明されました。今もなおクラスター爆弾による「2次被害」で子どもや民間人に犠牲が相次いでいるのです。ロイター通信は19日、バグダッドの病院にある集束爆弾の被害者病棟に入院するアリ・ムスタファ君(5つ)の様子を伝えました。アリ君は11日、兄弟と庭で遊んでいた際に集束爆弾が爆発、全身に傷を負い、失明の可能性があると言います。AP通信も19日、イラク人の少女が拾った集束爆弾の不発弾をパトロール中の米兵に渡した際、突然爆発が起き、米兵4人と少女が負傷しました。少女は手を負傷し、米兵の1人は片足を切断しました。
※集束爆弾で2次被害拡大 子ども巻き添え、米兵も(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030420-00000031-kyodo-int
※「[翻訳資料] クラスター爆弾の主要な犠牲者は子どもたちだ」(署名事務局)

 アメリカ軍はバスラやカルバラ、バグダッド南部等で広範囲にクラスター爆弾を使用したと報道されています。人口密集地でこれらの兵器を大量に使ったことは尋常ではありません。イラクの人々は人間とは見なされていないのでしょう。よく「イラク解放」と言ったものです。
 クラスター爆弾は200発以上の子爆弾を内蔵し、投下されれば広範囲の地域を破壊するものです。しかしこの兵器が非人道的、無差別兵器と呼ばれるのは、投下された子爆弾のうち10〜20%が不発で残り、対人地雷と化すことです。報道によればバグダッドの市街地、子どもたちが遊ぶような場所の至る所に不発子爆弾が転がっていたり、樹木に引っかかっていたりしています。何も知らずに近くで遊んでいた子どもたち、知らずにさわった子どもたちから犠牲者が出始めているのです。そしてその犠牲はこれからも増え続けるでしょう。

(2)クラスター爆弾による被害は甚大。なぜマスコミは警鐘を鳴らさないのか。なぜ保有禁止で論陣を張らないのか。

キティホーク上のクラスター爆弾(ロイター)
 米軍なら、核兵器を使っても許されるのでしょうか。クラスター爆弾を使っても、劣化ウラン弾を使っても、燃料気化爆弾を使っても、枯れ葉剤など化学兵器を使っても、生物兵器を使っても許されるのでしょうか。理由なしに気にくわなければ侵略しても許されるのでしょうか。国際法違反は自由自在なのでしょうか。大量殺戮しても許されるのでしょうか。アメリカはやりたい放題で別格なのでしょうか。マス・メディアはどこまでも血生臭いアメリカの戦争マシーンを真正面から批判したことはありません。

 近接戦闘を恐れ、被害を恐れる米軍はイラク軍部隊がいる場所には大量のクラスター爆弾を投下し、部隊そのものを壊滅させる作戦をとったと思われます。クラスター爆弾による被害は航空機からのものだけでなく、地上からの多連装ロケット発射機からも投射されました。1両の発射で8000発もの子爆弾(M77)がばらまかれたのです。
 米の人権団体ヒューマンライツ・ウォッチによれば、対ユーゴ戦争(99年)で米軍は202個の子爆弾を含むCBU-87型クラスター爆弾を約1100個投下し、英国軍は147個の子爆弾を含むRBL-755型クラスター爆弾を約500個投下しました。控え目に見積もって5 %の不発率で計算しても、NATO軍は15,000個あまりの不発弾を残したことになり、それらが対人地雷と同様に平和が取り戻されてからも人の命や手足を奪い続けているのです。使われた1600個あまりのクラスター爆弾は、全使用兵器のわずか6%であるにもかかわらず、それによって死亡した一般市民は全体15-16%にあたる90人から150人にも上ります。
※「CCW中間会議参加国への問題提起」(地雷廃絶日本キャンペーン)
http://www.jca.apc.org/banmines/framework/cluster/ccw2.html

 アフガニスタンでも大量のクラスター爆弾が使われました。マーク・ヘロルド教授は、アフガン開戦後11週間でアメリカ軍は1210発のクラスター爆弾を投下したと評価しています。その20%が不発になり、50000発の子爆弾が対人地雷になったと批判しているのです。湾岸戦争では62000発のクラスター爆弾が投下されました。1300万発の子爆弾が投下され、そのうち120万発が不発で残ったと考えられます。
※「Above the Law and Below Morality: Data on 11 Weeks of U.S. Cluster-Bombing of Afghanistan」Professor Marc W. Herold http://cursor.org/stories/abovethelaw.htm

(3)クラスター爆弾の本質:「今日落とし、明日殺す」。
 対人地雷禁止のNGOグループは、湾岸戦争でのクラスター爆弾について「何百人もの市民がクラスター爆弾で死亡した。イラクに投下された過剰な量の爆弾によって、これから何千人もの一般市民が犠牲になっていくであろう。戦争が終った後、2000人以上のクウェート人が不発弾で負傷したが、そのほとんどは子どもたちである。」「湾岸戦争におけるクラスター爆弾の使用は、イラクとクウェートに広大な地雷原を作り出してしまった。1994年、イラクで米軍の不発弾が13歳と11歳の兄妹の命を奪った。1993年にも同じような事故がイラクで起こった。8歳の少年が家族でピクニックをしていた時に死亡し、その妹も重傷を負ったのだ。バクダットからの報告によると、1991年8月の時点で、イラクで米軍が投下した爆弾による負傷者は440人、死者は168人にのぼるということである。」と論じている。

 すでにイラクでは確認されているだけで(それも被害が報道されない地方を含めればはるかに増えると思われるが)2300人もの民間人、女性。子どもがアメリカ軍によって殺されました。その中にはクラスター爆弾によって殺された77人の民間人も含まれます。そしてさらに今後不発の爆弾によって多くの人々が殺されるのです。
※「今日落とし、明日殺す」(地雷廃絶日本キャンペーン)
http://www.jca.apc.org/banmines/framework/cluster/mennotite.html


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★有事法制の審議でこの問題を審議させましょう。東京のピースニュースが以下の呼びかけを行っています。皆さんも是非ご協力下さい。
□有事法制を審議中の「衆院武力攻撃事態特別委」でこの問題を追及するよう要求しよう!
□野党、民主党、公明党の議員に対してメールやFaxを送ろう!
 http://www.jca.ax.apc.org/~p-news/YUUJI/SDF_CLASTER.htm
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2003年4月22日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局


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