北朝鮮への米先制攻撃戦略の一部となる有事法制
有事法制4月中旬成立強行の動きにストップを!
石破防衛庁長官の「敵基地攻撃能力保有」発言に抗議する


 有事法制が新しい危険性を帯びる。ブッシュの先制攻撃戦略に組み込まれる有事法制
 対イラク戦争が凄惨さを増す中で、日本政府はアメリカの北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)をターゲットにした先制攻撃戦略に連動する方向へ舵を切り始めました。一見、防衛庁長官や防衛庁が先行して暴走しているかに見えます。しかし、政府・自民党は、有事法制の衆院通過を4月半ばに目指すなど、イラク戦争に乗じて、体制づくりを急速に強めようとしています。「イラク復興支援法」の制定よりも前に「有事法制」を通そうというのです。

 ブッシュのイラク攻撃で、日本の有事法制の性格も、より一層その危険性を強めようとしています。昨年春の段階では、あくまでも「先制攻撃戦略」は紙の上のものでしたが、今では「先制攻撃」が現実のものになっているからです。今や有事法制は、北朝鮮に対するアメリカの先制攻撃に合わせて国内体制の整備を目指すものに変質したのです。
※有事関連法案、4月中旬の衆院通過要請 中川・自民国対委員長(毎日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030327-00002030-mai-pol


 アメリカによる北朝鮮への先制攻撃に言及
 石破防衛庁長官は24日午後の参院予算委員会で、北朝鮮に関し、「米国が『もう待っていられない』と先制的に(武力行使を)やるかどうか分からない」と述べ、アメリカが北朝鮮に対して、先制攻撃に踏み切る可能性を示しました。
 ブッシュ大統領はイラク攻撃に先立つ17日の演説で、「恐怖の日がやってくる前に、手遅れになる前に、危険は取り除かなければならない」と明確に先制攻撃であることを公言しています。これは明らかに敵の攻撃前にあらかじめ「自衛措置」として攻撃することを明言しているのです。これは明確な国連憲章違反、国際法違反です。国連憲章は「自衛のための武力行使」だけでなく、引き続き攻撃の脅威がない限り「報復攻撃」さえ認めていません。もちろんアメリカの対イラク戦争は自衛戦争でも報復戦争でもありません。侵略戦争です。
 石破防衛庁長官は、この様な国際法違反の対イラク戦争、先制攻撃を北朝鮮へ適応する可能性を明言したのです。
アメリカはイラクでの無法な戦争が成功すれば、次は北朝鮮に対して恫喝を加えてくることは確実です。そのためもイラク戦争をストップさせねばなりません。
※米、対「北」先制攻撃も=石破防衛庁長官が可能性指摘(時事通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030324-00000285-jij-pol


 日本が先制攻撃能力をもつことを目指す「敵基地攻撃能力の保有」発言
これを補足するように出てきたのが、27日の「敵基地攻撃能力の保有」発言です。ブッシュ大統領のアメリカが北朝鮮への先制攻撃をする可能性に言及しただけでなく、それに日本が積極的に加担し、その能力を持つことを提言するものです。石破防衛庁長官は27日の衆院安全保障委員会で、自衛隊が敵基地を攻撃する能力を持つことを「検討に値することだと思う。少なくとも思考停止に陥っては国の平和と独立に責任を持つことにはならない」と述べました。石破長官は、専守防衛政策を見直すよう求めています。これは明らかな憲法違反です。
 日本国憲法は交戦権だけでなく、武力の行使、武力の保有、そして武力による威嚇さえ否定しています。
※<石破防衛庁長官>自衛隊の敵地攻撃能力「検討に値する」(毎日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030327-00003079-mai-pol

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 第9条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
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 北朝鮮敵視では与野党が翼賛
 この発言は、民主党の 前原誠司氏(民主党)の質問に答えたものです。前原氏は、「北朝鮮の脅威」に対して、敵基地攻撃能力の保有を検討すべきだとつめよりました。ここに日本の深刻な事態があります。イラク攻撃に反対する署名が民主党議員有志によって行われています。野党議員の多くがイラク攻撃には反対です。ところが、ことが北朝鮮になった途端に、北朝鮮敵視の大合唱になります。管直人民主党党首は「MD」の推進をプッシュしています。

 北朝鮮「経済制裁」の発動を米へ提言、日本海へのイージス艦の張り付け、AWACSによる情報収集、米のミサイル防衛(MD)へむけた自衛隊法改正、情報収集衛星打ち上げ、MD参加のための予算要求、日米による弾道ミサイル迎撃実験の来年予定等々、北朝鮮に対する恫喝と戦争準備とも言うべき動きが始まっています。
 拉致問題を煽った北朝鮮敵視政策、北朝鮮を狙った戦争挑発に強く反対する必要があります。


 イラクを攻撃した殺人兵器トマホークの導入さえ検討。
 「敵基地攻撃能力」として検討されているのがなんと巡航ミサイルトマホークです。防衛庁は27日、米軍が対イラクのピンポイント爆撃に使用している巡航ミサイル「トマホーク」(射程約1700キロ)など、他国基地に限定的な攻撃を加えられる兵器の導入に向け検討に入った、とつたえられています。トマホークは、イラク戦争ですでに600発以上が撃ち込まれた、攻撃用ミサイルに他なりません。 
 福田康夫官房長官は27日の記者会見で「とりあえずそういう計画は持っていない」と述べ長期的な導入を否定しませんでした。福田官房長官は「非核三原則見直し」発言をした人物です。

 政府は既に戦闘機の航続距離を延ばす空中給油機の導入を決めており、28日には初の情報収集衛星(偵察衛星)を打ち上げる予定です。これをとマホーク導入を合わせ「3点セットで北朝鮮に軍事的な圧力をかける狙い」(日米防衛関係筋)といわれています。友好ではなく威嚇、交渉ではなく監視、対話ではなく武力、これが北朝鮮政策で急激に台頭しているものです。
<防衛庁>トマホーク導入を検討 他国基地を限定目標に(毎日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030328-00000155-mai-pol


 憲法を逸脱、専守防衛の政府の従来見解からも逸脱
 政府はこれまで、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母については「他国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる攻撃的兵器」との解釈をとり、保有は違憲としてきました。しかし、安倍副官房長官が、昨年の大学での講演で「ICBM」の保有も可能と述べるなど、核や攻撃兵器に対する見解を修正とようとする動きが絶えず繰り返されています。
 小泉首相は27日夜、「検討するのはいいということでしょ。日本は専守防衛に徹する。これに変わりありません」と平然と答え、導入論議を進めることを明らかにしました。
 小泉首相は28日午前の参院予算委員会でも、「今の段階でそういう考えはない」と将来的な導入の可能性を否定しませんでした。


 有事法制関連法案の狙いは北朝鮮 4月中旬を想定した強行突破を絶対に阻止しよう
 自民党の中川国対委員長は26日、衆院武力攻撃事態特別委員会で、有事関連法案について、来年度予算成立後、早急に有事関連法案の審議に入り、4月中旬に衆院を通過させるよう要請しました。あたかもイラク戦争後の「対北朝鮮」をにらんで早期に成立させておきたいというかのようです。

 有事法制の核をなす「武力攻撃事態法」は、「武力攻撃事態」を武力攻撃が予測される事態と定義し、「発射準備の兆候」の段階からの有事の発動を規定しています。これこそ、「敵基地攻撃能力」保有発言と連動しています。「発射」準備を認定するのは、日本であり、またアメリカの情報です。「大量破壊兵器の疑惑」だけで、凄惨な結果をもたらしている無法な侵略にまで踏み切ったアメリカのイラク戦争を考えれば、「発射準備」というものがいかにいかがわしいかがわかります。

 有事法制の成立か否かの山場を迎えた昨年6月、「非核三原則」見直し(福田官房長官)、「徴兵制導入」(石破防衛庁長官)、「ICBMも合憲」(安倍副官房長官)などの発言が相次ぎました。核保有も含めて検討し北朝鮮を恫喝する、戦争に備えて平時から徴兵制で若者を軍隊に引き込む等々、有事法制の本音を暴露し、この危険性から有事法制は一旦継続審議になりました。
 いま再び有事法制の強行突破が問題になりはじめて、危険な発言が相次いで浮上してきました。これは有事法制が持っている好戦的な性格を表しているといえます。 
 有事法制が成立するようなことがあれば、日本全体がアメリカの対北朝鮮先制攻撃の最前線基地になってしまいます。この危険な動きを絶対にストップさせましょう!



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