イラク戦争劣化ウラン情報 No.15      2004年4月5日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局 吉田正弘

自衛隊員も被曝から無縁ではあり得ない。改めて自衛隊の撤兵を要求する−−
ついに公表されたサマワ帰還米兵の劣化ウラン被曝の事実!
−−そこに住み続けざるを得ぬイラク住民の深刻な被曝被害をも示唆する−−


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[1]原因不明の疾患にかかり米軍の対応に怒ったサマワ帰還米兵がUMRCに駆け込む。
−−ドラコビッチ博士のチームが米紙と協力し、衝撃的な診察・分析結果を公表。
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 4月3日付のニューヨーク・デイリー・ニュース紙は、イラク戦争後にサマワに展開し、体調不良で帰国した米兵の9人中4人の尿から劣化ウランが検出されたことを公表しました。一面トップのスクープ記事です。私たちは早速これら記事の翻訳をしました。
 ニューヨーク・デイリー・ニュースの記事は4月3日付が3本公表され、それ以降も続くようです。今回は、まず第一弾として、4月3日に一面トップのスクープ記事として掲載された総論的な記事を翻訳して紹介します。以後日をおかずに全ての記事を紹介していく予定です。ご注目下さい。(本ニュースの巻末を参照)
http://www.nydailynews.com/front/story/180333p-156685c.html
http://www.nydailynews.com/news/local/story/180337p-156686c.html
http://www.nydailynews.com/news/local/story/180340p-156689c.html
※ ニューヨーク・デイリー・ニュース-ホームページ
   http://www.nydailynews.com

 調査対象となった兵士達の所属する第442憲兵中隊は、直接の戦闘には参加しておらずイラクに入った時期も遅いにもかかわらず被曝したのです。共通して訴えているのは昨年8月にサマワにキャンプを設営しているときに原因不明の疾患にかかったということです。(昨年8月にオランダ軍に治安を任せるまでサマワも米軍が治安を担当していました。そして今、日本の自衛隊がサマワに派兵されていることは皆さんがご存じの通りです)

 事の発端は、帰還兵達が軍当局や軍病院の不誠実な対応に業を煮やしてUMRC(ウラニウム医療研究センター)に連絡を取り、ぜひ診断して欲しいと相談してきたことです。これを受けてその責任者であるアサフ・ドラコビッチ博士が即座に対応したのです。博士のチームは兵士達を直接診察し、その症状から劣化ウラン被曝の可能性があると判断し、尿のウラン分析の必要性を確信しました。9人の尿の分析はニューヨーク・デイリー・ニュースが資金提供してドイツのガルデス教授のところで最新鋭の機器を使って行われました。調査・分析はドラコビッチ博士とドイツのガルデス教授の共同研究となりました。

 昨年の初来日の際に博士が力説しておられたことは、医師として人間として、米政府・軍の理不尽なやり方に対して、自分は自らの手で分析・調査した科学的事実を持って闘うという確固とした信念・信条でした。一般兵士達を、現地イラクの人々を、人間を、このように被曝させあるいは使い捨て、平然と“劣化ウラン戦争”、“放射能戦争”をやり続け放射性物質をまき散らす米政府・軍の非人道的行為に対して、科学的な調査と事実を武器に立ち向かうドラコビッチ博士とUMRCの新たな挑戦が始まった。−−私たちは、今回の新聞発表をそう理解しています。同時に私たち
も、博士とUMRCの挑戦を、資金面からも、調査結果を全世界に宣伝する面からも、全面的に支援しなければならない。そう考えています。
※初来日の模様については以下を参照。
 http://www.jca.apc.org/stopUSwar/UMRC/durakovic.htm
※新刊パンフレットとして、初来日講演会の報告集を発刊しました。ぜひご購読下さい。(下記の申し込み方法参照)またUMRCイラク調査カンパキャンペーンを行っています。カンパ方法を下記に掲載しました。こちらへのご協力もお願いします。

 この調査結果は極めて重大です。思い付く限り以下簡単に列挙してみます。
(1) この調査は今回のイラク戦争に参加した米兵士の劣化ウランによる被曝を世界で初めて具体的に明らかにするものでした。しかもこの被曝兵士に関する調査・分析結果は、単なる新聞発表用のものではありません。今年フィンランドで開かれる核医学欧州学会の年次総会で研究論文として発表されるものです。

(2) 昨年来、イラク駐留米軍の間で原因不明の疾患、奇病にかかる兵士が続出していました。最近の調査では、医学的理由で退避させられた兵士が何と1万8千人にのぼると言われています。今回の調査結果は、こうした原因不明疾患・奇病の、少なくとも一部については、劣化ウランが原因である可能性が高まったことを示唆するものです。
※私たちは今年1月自衛隊派兵を前に、「増大する米軍兵士の犠牲と現状を直視せよ−−今日の米兵の悲惨な姿は明日の自衛隊員の姿となる危険」という論説をホームページに掲載しました。そこでは「3.劣化ウランか炭疽菌ワクチンか、あるいはそれらの合併症か。−−“原因不明の奇病”が続出。第二の湾岸戦争症候群の再現。」の「(2)湾岸戦争症候群の再来。劣化ウランが重要な原因の一つであることは間違いない。」の節を設けたのですが、これが今回の調査結果で現実のものとなったのです。
  http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Iraq/us_fatalities.htm
 この論説に付けた翻訳資料2「数千人の米軍兵士が原因不明の医学的理由のためイラクから退避させられた」では、昨年9月段階にワシントン・ポストが報じた「医学的理由の待避兵士」は6000人に過ぎなかったのですが、この3月には18,000人まで膨れ上がったのです。
※「Medical evacuations in Iraq war hit 18,000 」By Mark Benjamin United Press International
Published 3/31/2004
  http://www.upi.com/print.cfm?StoryID=20040330-051545-6818r

(3) この兵士達は、米政府がこれまで劣化ウラン弾への被曝を渋々認めてきた「体内に劣化ウランの破片を持つ兵士」でも、「戦車の中で友軍の劣化ウラン弾の誤射を受けた兵士」でもありません。従来米政府がありえないとしてきた一般の兵士の劣化ウラン被曝の事実が明らかになったのです。

(4) さらに重要なのは、彼ら第442憲兵中隊の兵士達は戦闘で劣化ウランに被曝したのではないということです。彼らは憲兵隊で主要な戦闘には加わっておらず、護送やイラク警察の訓練などの任務についていただけです。彼らの被曝は環境中のウランのほこりを吸い込んだことによるのです。

(5) 戦闘に参加していない彼らの9人のうち4人が被曝していたのならば、高濃度のウランのほこりが飛び交う戦闘に参加していた多数の米兵達の被曝はずっと深刻であることが予想されます。

(6) この記事によると、オランダ軍が劣化ウラン汚染を事前に調査していたことが分かります。サマワにいるオランダ軍は、駅の周辺(この場所こそ米兵達がキャンプを設営したところ)の放射能レベルが高かったので、砂漠の真ん中にキャンプを設営したというのです。

(7) しかしこの被曝米兵が指し示した最も深刻なことは、イラク戦争以来ずっとそこに住み続け、これからも住み続けるサマワの住民、更には何十万、何百万のイラクの一般市民を劣化ウランによる被曝の危険にさらしていることを明らかにしたことです。これらサマワ帰還兵士は数ヶ月サマワにいただけです。未来永劫、責め苦のようにウランのほこりを吸い続けるサマワやイラクの住民が今後どのような被害を被り、どんな病気にかかり、どんな運命をたどるのか。これはまさしく戦争犯罪です。
※4/12(東京)、4/14(大阪)での報告集会では、このサマワ帰還米兵の被曝だけではなく、イラク住民の被曝の調査結果についても報告される予定です。(報告集会詳細は下記「集会案内」参照)

(8) また今回の調査は、小泉政権のウソ・デタラメを事実でもって暴きました。
これら米兵達は現地にいて呼吸していただけで劣化ウランに被曝する可能性があるということを証明したのです。政府・防衛庁や自衛隊幹部は、「ガイガーカウンターで(劣化ウランは)見つけられる」「近寄ったり、飲食しなければ安全」と言ってきましたが、こうした無責任な発言がウソであることが明らかになったのです。人をバカにしたようなその場しのぎのでたらめな言い逃れを繰り返してきた日本政府の責任は重大です。サマワに派兵された自衛隊員の安全対策を言うなら、直ちに撤兵させるべきです。
※「イラク戦争劣化ウラン情報 No.10 イラクでの劣化ウラン使用を否定し続ける政府答弁−−自衛隊の「放射能測定器」携行のごまかし」参照。
 http://www.jca.apc.org/stopUSwar/DU/no_du_report10.htm


======<<改めてカンパキャンペーンへのご協力を!>>========

 今回の調査結果は、ニューヨーク・デイリー・ニュースの資金援助によって出されたものです。UMRCの調査・分析は米政府・軍と真っ向から対立する形で行われているため、公的援助は一切なしです。一般市民からの醵金が極めて重要な役割を果たしています。
 日本では私たちUMRCイラク・ウラン被害調査カンパキャンペーンが、イラク調査費用全額のカバーに向けてさらにカンパ活動を継続しています。カンパ総額は3月15日現在223万4240円に達していますが、なお皆さんのご協力をお願いする次第です。

●振り込み口座番号 00950−5−264696
 口座名 UMRCイラクウラン被害調査カンパ事務局

●振込用紙をご要望の方は下記までご一報下さい。
UMRCイラク・ウラン被害調査カンパキャンペーン
連絡先:〒580-0023 大阪府松原市南新町3-3-28 阪南中央病院労働組合気付
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
FAX 072-331-1919 HP: http://jca.apc.org/stopUSwar/
090-5016-3844(吉田正弘)e-mail masayo@silver.ocn.ne.jp

======<<新刊パンフレット案内>>=================
■UMRCドラコビッチ博士調査報告集会の記録。
 昨年11月に行われたドラコビッチ博士初来日報告集会の記録を新刊パンフレットとして発行しました。博士の考え方、湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争などUMRCの活動の実績と歴史がまとめられています。ぜひご一読下さい。
発行;UMRCイラク・ウラン被害調査カンパキャンペーン/アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局。A4版、約80ページ。頒価は700円(UMRCへのカンパを含む)+郵送費
 ご希望の方は署名事務局 e-mail: stopuswar@jca.apc.org まで。


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[2]4/12東京、4/14大阪での報告集会への参加を!
−−調査結果を持って再来日するUMRCのアサフ・ドラコビッチ博士。
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 UMRCのドラコビッチ博士が急遽訪日します。4月12日には東京で記者会見と報告集会が、14日には大阪で報告集会を開きます。今回の訪日は、[1]でご報告したサマワからの帰還米兵士の調査結果だけではありません。昨年9〜10月以来進められているイラク市民のウラン汚染調査の結果を持ってこられる予定です。皆さんご多忙のこととは思いますが、ぜひおいでください。
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UMRCドラコビッチ博士再来日急遽決まる−−−
初めて明かされるサマワ帰還米兵、イラク住民の劣化ウラン被曝!
−−東京、大阪で緊急報告集会を開催。ふるってご参加下さい−−
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4月12日(月)(昼) 国会議員会館でブリーフィングと記者会見
午後2時〜4時 参議院会館第5会議室(1時45分から券配布)
4月12日(月) 東京報告集会
午後6時半〜9時 文京区民センター2F
4月14日(水) 大阪報告集会
午後6時半〜9時 エル大阪 709号

****主催*****************************
 UMRCイラク・ウラン被害調査カンパキャンペーン
 アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
  (問い合わせは090−5016−3844 吉田まで)

****東京集会の共催、呼びかけ人(4月3日現在、順不同)******
ASIANSPARK、アフガニスタン国際戦犯民衆法廷実行委員会、イラク子ども健康基金、基地はいらない!女たちの全国ネット、ピース・ニュース、ふくろうの会、劣化ウラン研究会、劣化ウラン廃絶キャンペーン/青山有香(大学院生)、稲月隆、加藤賀津子(基地はいらない!女たちの全国ネット)、きくちゆみ(グローバルピースキャンペーン)、倉橋正明(テロ特措法海外派兵は違憲市民訴訟の会)、小林一朗(環境・サイエンスライター/CHANCE! pono2)、斎藤紀代美(テロ特措法海外派兵は違憲市民訴訟の会)、志葉玲(ジャーナリスト/World Peace Now実行委員)、田中優(国際ボランティアセンター理事)、豊田直巳(フォトジャーナリスト)、藤木五郎(ピースニュース)、細井明美(イラク子ども健康基金代表)、前田朗(東京造形大学教授)、松田卓也(ASIANSPARK)、マッド・アマノ(パロディスト)、山崎久隆(劣化ウラン研究会)

************(呼びかけ)*****************
 「ウラニウム医療研究センター」(UMRC)のアサフ・ドラコビッチ博士が再度訪日されることが急遽決まりました。
 イラク戦争開戦1周年を迎えて、イラク戦争・占領の無法、殺戮、破壊、ありとあらゆる暴虐が益々明らかになっています。そして今回もまた大量に使用された劣化ウランの被害も想像を絶するものになるでしょう。まさにそれは戦争犯罪です。
 そこで私たちは、自衛隊派兵が既成事実化している現状の下でもう一度、劣化ウラン戦争の脅威、劣化ウラン被曝の被害を暴くべくUMRCに再来日を要請し、ここに実現することになりました。

 サマワ帰還米兵およびイラク住民の被曝実態の詳細を、それぞれ具体的な数字で、しかもUMRCの責任者から直接明らかにされるのはこれが初めてです。とりわけサマワからの帰還米兵の被曝は、日本の自衛隊員にとっても無縁ではあり得ません。
 劣化ウラン戦争の脅威、劣化ウランの被害の実態を広く一般市民の皆さんに知っていただく貴重な機会です。ぜひ皆さんのご協力を得て緊急報告集会を成功させたいと思います。
ふるってご参加下さい。そして周りの知人・友人にお知らせ下さい。
 詳しくはHPをご覧下さい
 http://www.jca.apc.org/stopUSwar/UMRC/durakovic2.htm


==========(翻訳紹介)===================
劣化ウランに毒された?
ショッキング・レポートは暴く:
おそらく州兵たちはアメリカのハイテク兵器の犠牲者であろう

Poisoned?
Shocking report reveals local troops may be victims of america's high-tech weapons

特別報告 フアン・ゴンサレス(デイリー・ニュース記者)
2004年4月3日(土曜日)
Newyork Daily News
http://www.nydailynews.com/front/story/180333p-156685c.html
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ヘクター・ベガ軍曹


アグスティン・マトス軍曹
 イラクで軍務についているニューヨーク州兵陸軍歩兵中隊所属の4人の兵士が、米軍が発射した劣化ウラン弾によるダストに起因すると思われる放射能に汚染されているということが、「デイリー・ニュース」の調査で分かった。

 彼らは、同じ第442憲兵中隊のメンバーである。彼らは、昨年夏にイラクの町サマワで始まった持続的な慢性の体調不良と闘い続けている、と述べている。

 「私は6月にはもう具合が悪くなっていた。」とブルックリンの住宅警官レイ・ラモス二等軍曹は述べた。「私の健康はずっと悪くなり続けている。毎日頭痛がして、手にいつもしびれがあって、腹に発疹が出ている。」

 この歩兵中隊の9人の兵士を診察し検査した核医学専門家は、4人が、劣化ウランで作られたアメリカ製砲弾の爆発から生じた放射性ダストを吸入したのは「ほとんど確実だ」と述べている。
 「デイリー・ニュース」の求めで行なわれた検査は、4人の兵士から採取した尿サンプルにおいて、二種類の人工的組成のウラニウムが微量含まれていることを明らかにした。

 もしそうであれば、この4人−−ヘクター・ベガ軍曹、レイ・ラモス軍曹、アグスティン・マトス軍曹、アンソニー・ヨナン伍長−−は、現在のイラク戦争で吸入された劣化ウラン被曝の確認された最初の症例である。

 第442憲兵隊は、大部分がニューヨークの警察官、消防隊員、刑務官で構成されていて、ロックランド郡オレンジバーグに本拠を置いている。この部隊のメンバーは、昨年のイースター(復活祭)にイラクに配備され、物資輸送の護衛を行ない、拘置所を管理し、イラク警察を訓練してきた。この歩兵中隊全体は、今月末帰還する予定である。

 「これらは驚くべき結果だ。とりわけ、これらの兵士は憲兵であって戦闘の真っ最中に被曝したのではないからだ。」と、アサフ・ドラコビッチ博士は述べた。博士は米軍兵士を診察し「デイリー・ニュース」が費用負担した検査を行なったのである。

 「戦闘に加わっていた他の米軍兵士たちは、もっと多くの劣化ウラン被曝をしているに違いない。」とドラコビッチ博士は述べた。博士は、1991年湾岸戦争の時には現役であった陸軍予備役大佐である。

 デラウエア州の陸軍病院で勤務していた時、博士は湾岸戦争帰還兵に異常な放射線レベルを発見した最初の医師たちの中の一人であった。それ以来、博士は戦闘における劣化ウランの使用の主要な批判者となった。

 劣化ウランはウラニウム濃縮過程の廃棄物であるが、15年以上にわたって、砲弾にそしてまた戦車の装甲として、アメリカ軍およびイギリス軍によって使用されてきた。劣化ウランは鉛の2倍の重さである。

 その密度のために、「それ(劣化ウラン)は、戦車を守る装甲としての、また装甲を貫通するための、優れた重金属である。」と、ペンタゴンのスポークスマン、マイケル・キルパトリックは述べた。

 陸軍と空軍は昨年イラクで、少なくとも127トンの劣化ウラン砲弾を発射した、とキルパトリックは述べた。海兵隊がどれぐらい発射したかについての数値は、明らかにされていない。

 キルパトリックによれば、イラク戦争から帰還した約1000人の米兵がペンタゴンによって劣化ウランの検査を受け、3人だけが陽性となったが、すべてはDU砲弾の破片(を体に受けた)の結果である、ということである。

 しかし、ニューヨーク州兵の9人中4人がDU陽性であるという検査結果は、連合軍兵士とイラク市民の間に、より広範な放射性被曝がある可能性を示している。

 近年のいくつかの軍の研究は、DUを含む砲弾が爆発する際に放出される低レベル放射線は重大な危険をもたらすものではないと結論づけてきた。しかし、独立系の科学者たちの中に、またわずかだが軍自身の報告にも、そうではないことを示しているものがある。

 結果として、劣化ウラン兵器は、世界中でますます大きな論争を引き起こしている。2003年1月に欧州議会は、DU兵器が使われたコソボに従軍したイタリア兵士の間に異常な数の白血病死が報告されて後、その使用のモラトリアムを求めた。

■私はますます弱っていく。私にいったい何が起こっているのか?■■
 陸軍によれば、劣化ウラン弾の破片によって負傷した兵士または爆発の時に戦車の中にいた兵士のみが、測定できるほどの放射線被曝に直面するという。

 しかし、はるか以前の1979年に、ニューヨーク州北部のノウルズ原子力研究所の物理学者レオナルド・ディーツは、DUに汚染されたダストが長距離を移動しうるということを発見していた。

 ディーツはウラニウム同位体を分離する技術を開発した先駆者であったが、偶然次のことを発見した。彼が実験に使っていたエア・フィルターが、26マイル離れたところでDUを生み出していた国立鉛工業プラントからの放射線ダストを収集した、ということである。彼の発見でこのプラントは閉鎖に追い込まれた。

 「この汚染はとても重大であったので、このプラント周辺の52カ所の地所から表土を取り除かねばならなかった。」と、ディーツは述べている。

 天然ウラニウムは水や食物の中に見出されるので、あらゆる人間は、その体内にほんのわずかではあるが天然ウラニウムをもっているとディーツは言う。しかし、天然ウラニウムはすぐに害なく体外に排出される。

 ウラニウム酸化物ダストは、いったん吸入されて肺にとどまると、非常に溶けにくく、何年にもわたって体内に放射線を放出しうる。

 「民間人であろうが兵士であろうが、これらの微粒子を吸引するものは誰でも永久に被曝し、それは長期にわたってあまり減少しない。」と、核物理学者として33年間活躍した後に1983年に引退したディーツは言う。「結局は...セラミック状ウラニウム酸化物に被曝した帰還兵たちは大きな問題を抱えている。」

 DUの批判者たちは、その危険性についての軍の観点が、時を経るにつれて変わってきていることに注目してきた。

 1991年の湾岸戦争の前に、1990年の軍報告は次のことに注目していた。劣化ウランは、「被曝が体内的であればガンに結びつき、化学毒性は腎臓障害を引き起こす。」ということである。

 米軍のA−10ウォートホグ対戦車攻撃機とエイブラムズ戦車が初めて大規模にDU弾を使用したのは、湾岸戦争においてであった。ペンタゴンによれば、湾岸戦争で約320トンのDUが発射された。そして、より小規模には、コソボのセルビア人地区でも使用された。

 湾岸戦争では軍首脳は、爆発するDU砲弾の危険性について、兵士たちに何の警告もしなかった。数知れない米兵が、劣化ウラン弾の破片によって、あるいは吸入によって、また戦場の瓦礫を処置したことによって被曝した。

 いくつもの帰還兵グループが、DU汚染を湾岸戦争症候群の要因として非難している。この湾岸戦争症候群という言葉は、湾岸戦争から帰還した何千人もの兵士を苦しめた多くの症状に対して付けられたものである。

 複数の帰還兵グループからの圧力で、米国防総省は、いくつかの研究を新たに委託した。そのうちの一つは2000年に公表されたが、次のように結論づけた。DUは、重金属として「化学的な危険をもたらすかもしれない」が、湾岸戦争帰還兵は「健康に影響するほどには(劣化ウランの)摂取はしなかった」と。

 米国防総省スポークスマンのマイケル・キルパトリックは、軍による70人のDUに汚染された湾岸戦争帰還兵の追跡調査によれば、深刻な健康への影響は示されていない、と述べた。

 「どんな重金属についても、安全といえるものはない。」とキルパトリックは言う。「どれも化学毒性の問題がある。そしてDUについては、放射性の毒性も問題としてあげられる。」と。

 しかし、彼は次のように言う。ウラニウム関連産業で働く人々についての諸研究から導き出される「圧倒的な結論」は、「それ(DU)が何らガンを増加させてはいないということを示している。」と。

 しかしながら、いくつかのヨーロッパでの研究は、劣化ウランをネズミの染色体損傷や先天的障害に関連づけている。多くの科学者によれば、我々は、人体への低レベル放射能の長期的影響については、どの程度の量なら安全であると言えるほどには、まだ十分に知ってはいないという。

 イギリスの国立科学アカデミー英国学士院は、DUが使用された場所を明らかにすることを要求し、汚染された地域をクリーンアップするよう強く迫っている。
 「とても多くの米兵が(イラクで)、ウラニウム酸化物ダストで深刻に被曝した可能性がある。」と、マウント・サイナイ医療センターの病理学者で劣化ウランの専門家であるトーマス・ファシィ博士は述べた。「そして、その健康への影響が将来へ向けて心配される。」と。

 第442憲兵隊の兵士について言えば、彼らは、病気になってフラストレーションがたまり困惑し茫然自失になっている。彼らによれば、イラクに到着した時、誰も彼らに劣化ウランについて警告してはくれなかったし、誰もダスト・マスクを与えてはくれなかったという。

■本紙の調査を支える専門家たちの精査■■
 「デイリー・ニュース」による調査の一環として、核医学の専門家で劣化ウランに関して広範な調査研究を行なってきたアサフ・ドラコビッチ博士が、昨年12月に第442憲兵隊の9人の兵士を診察し、それぞれから尿サンプルを集めた。

 彼のチームのメンバーであるアクセル・ゲルデス教授は、フランクフルトのゲーテ大学の地質学者でウラニウム同位体分析を専門としているのだが、1週間以上もかかるこの尿サンプルの分析検査を行なった。彼は、マルチコレクター誘導プラズマ質量分析器(MC−ICP−MS)と呼ばれる最新の機材と処理手順を用いた。

 ゲルデス教授によれば、さまざまなウラニウム同位体を極微量で特定し測定する能力がある実験室は、世界中で約100しかない。

 ゲルデス教授は、4人の兵士が体内に劣化ウランをもっていると結論づけた。劣化ウランは天然に生じることはない。それは、天然ウランの高度な放射性をもった同位体ウラン235とウラン234が抽出されるとき、このウラン濃縮の廃棄物として生成される。

 ドラコビッチ博士によれば、兵士たちの何人かからは他のウラニウム同位体ウラン236もごく微量検出された。このウラン236は、核反応過程においてのみ生み出されるものである。

 「これらの兵士たちが戦場で放射能兵器に被曝したことは、ほぼ確実である。」とドラコヴィッチ博士は述べた。

 ドラコビッチ博士とゲルデス教授は、今年フィンランドで行われるヨーロッパ核医学協会の年次会合で、これらの兵士たちの研究に関する科学的な論文を発表する計画である。

 DU砲弾が爆発する時には、それは攻撃目標とその周辺地域を低レベル放射能で永久に汚染するのである。

 (第2記事に続く)



関連:

 「UMRCイラク・ウラン被害調査カンパキャンペーン