G7広島サミットを問う市民のつどい宣言

戦争も核兵器も原発も気候危機も性差別も解決できないG7を広島で終わらせよう!

今年5月19日~21日、かつてのアジア侵略の出撃拠点・宇品でG7広島サミットが行われようとしています。

侵略戦争を起こし交戦国となった日本に対して、1945年8月、米国は、暴力による支配を象徴するものとして、人類を、さらに全ての生命を無差別に絶滅させることのできる恐ろしい破壊力を持った原爆攻撃を広島・長崎に断行しました。敗戦後の日本政府は、アジア侵略戦争・植民地支配を二度と起こさないために、戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認を憲法において約束し、各国の主権平等を原則とする国連に加盟したはずでした。

しかし、日本は天皇の戦争責任免責・天皇制存続の条件として、天皇制軍事国家の再来を防ぐために、憲法9条により武装解除されたというべきです。日本民衆にとっては、天皇が犯した戦争犯罪をはじめ、すべての戦争犯罪に対する責任追及のための民主的取り組みは完全に失敗しています。このことが日本における民主主義の根本的欠陥の重要な要因として現存しています。一方で、アメリカが犯した原爆無差別殺戮攻撃という戦争犯罪に対する責任追及は、その後の核武装冷戦体制の中で隠ぺいされました。核廃絶を求める「ヒロシマの心」はこの二重の隠ぺいを暴露し、断罪することによって初めて人類に対して説得力をもつといえます。

私たちは、これまで、暴力ではなく話し合いで国家間の争いを解決すること、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」を守ること、「核と人類は共存できない」ことを確認してきました。

国連総会に結集し主権平等の原則で課題解決に臨もうとする国際社会に真っ向から対立するものとして、G7サミットが存在します。そしてこの広島のサミットが、世界に対して「自由と民主主義」という常套句でだまし、軍事同盟を既成事実化し、あたかも気候変動とジェンダーの課題に取り組んでいるポーズを示し、自分たちのリーダーシップを誇示する情報戦の舞台となることを警戒すべきです。

広島サミットでは、昨年2月のロシアによるウクライナ侵略における、ロシアによる核使用の恫喝に対抗するためとして、被爆地ヒロシマで核使用を禁止する論議をするとしていますが、米・英・仏・印の核保有国での「戦術核」・核と先端技術との結合・劣化ウラン弾という核使用の制限緩和こそが問題なのです。 

日本政府は、核兵器禁止条約を批准せず、核兵器使用の国際法違反を主張せず、5月21日の日米韓首脳会談で「核の傘の拡大による抑止」の強化を宣言しようとしています。このままでは、被爆地ヒロシマは「戦争終結を早めた核兵器使用」の現場として再認識されかねない状況です。さらに、原発占領または攻撃を有力な戦略として位置づけたロシアの暴挙は原発の戦略的意味を暴露しました。核兵器禁止条約の体制構築のためには、反核と脱原発の運動の結合が求められています。

このサミットがもつ重要な局面は、米欧がウクライナ支援を名目に結束を強化し、東アジアだけではなく環太平洋全域を巻き込み、ロシア・中国と米欧日・NATOの新冷戦体制に向けた軍事同盟強化が目論まれていることです。

さらに、G7広島サミットが、米国の対中国戦略に深く加担し、ウクライナ情勢を口実に「台湾危機」をあおり「敵基地攻撃能力」の保有と称して先制攻撃を正当化し、安保3文書の閣議決定、大軍拡・大増税路線を突き進む、日本政府を後押しする場としても位置づけられています。琉球弧(南西諸島)では、島嶼部防衛のためとされていた基地に先制攻撃用のミサイルが配備されました。サミットに間に合わせるように、被害者を無視した徴用工問題の決着が押し切られ、日米韓の軍事同盟強化が着々と進められています。

侵略戦争・植民地支配への責任をあいまいにした結果、アジア侵略の出撃拠点・宇品という歴史的意味を有する場所で、新たな侵略(先制攻撃)を画策するG7サミットが開催されるという危険な情勢です。 

2000年7月に開催されたG8沖縄サミットにあわせた「沖縄国際フォーラム」では、軍隊は民衆を守らないという沖縄戦での真実から、軍隊により守られる国家の安全と民衆の安全とは相反するもの、この暴力装置は侵略行為と平時における臨戦態勢により維持され、暴力的な男性支配と性的な抑圧と搾取の構造をもつこと、男性中心主義の人種的・経済的・地域的な排外主義へと深化していることを確認しました。この軍隊の暴力と支配の対象とされている女性からの強い批判と様々な境界を越える連帯により、オルタナティブな構造を求める非暴力の闘いによる「民衆の安全保障」構築の重要性が提起されました。

2000年6月の「国際女性サミット」では新基地建設が沖縄での暴力拡大につながり、G8沖縄サミットにより日米軍事同盟強化となることを批判しました。私たちは、日米安保が憲法の上に君臨している現状を、今年5月21日沖縄平和集会に連帯してはねのけていきます。暴力によって相手を支配する戦争と性暴力の根は同じであることを再確認し、軍隊という暴力装置、他国からの脅威を前提とする「安全保障」ではなく、「国境を越えた民衆の平和」を築く取り組みを進めていきます。

ウクライナ戦争はロシアによる侵略から1年を経過し、ウクライナ軍へのNATO諸国の軍事支援の強化に伴い代理戦争の様相がますます強まっています。多くのウクライナ・ロシアの人々が亡くなり膠着状態にある今こそ、停戦・和平に向けた具体的現実的な動きが必要です。ロシアによる侵略を明確に非難しつつ、これ以上の戦争の継続・拡大を止めるために、暴力に抵抗しているウクライナとロシアの人々に連帯して、ロシアとNATOの双方に圧力をかける国際的な反戦運動が求められています。「命とうとし」「命どぅ宝」は過酷な歴史から得た教訓です。民衆の立場から、ウクライナの平和のために何をしていくのか、私たちは今こそ、反戦・平和の声を結集していく必要があります。

冷戦終結後、新自由主義の下でのグローバル化が世界をおおい、米国の目論みに反し、中国が急速発展する一方で、格差拡大による地域経済破壊が加速しました。これに反発した脱グローバル化の動きの中、米中対立が「新冷戦」状況に陥り、コロナ・パンデミックとウクライナ戦争を契機に、軍事と経済が一体化した「経済安全保障」体制が仕組まれています。G7はこの面でも中国包囲網を強化し、「グローバルサウス」の新興国との断絶をもたらしています。私たちは、資本や軍事のグローバル化でも、「経済安全保障」でもなく、再生エネルギーと食の地域自給を基盤にした開かれた循環型地域経済を発展させた世界を、非軍事・非同盟・中立を追求する、越境した民衆の連帯で作り出していきます。

人類が直面する「地球環境容量の限界」に対して、気候変動枠組み条約と生物多様性条約が採択され、「自然との持続可能な共存」が喫緊の課題となっています。この問題の原罪はG7にあり、中でも米国は生物多様性条約に未加盟です。私たちは、軍隊の存在を含む化石燃料中心の浪費型文明を見直し、グローバルな資本主義体制の社会変革を求めるとともに、自らの変革を実行する必要があります。

私たちは、戦争も核兵器も原発も気候危機も性差別も解決できないG7を、広島で終わらせることを訴えます。

★岸田首相は軍拡のために被爆地ヒロシマを政治利用するな!

●バイデン大統領は原爆無差別大量虐殺を謝罪せよ!

●岸田首相はアジア侵略・植民地支配を謝罪せよ!

●核武装国(米英仏印)首脳は広島に来るな! 即時に核廃絶せよ!

●G7・NATO軍事同盟は核による脅し(=平和に対する罪)をやめよ!

●暴力に抵抗しているウクライナとロシアの市民に連帯しよう!

●即時停戦! ロシア軍撤退を! NATOは過剰介入をやめろ!

●すべての戦時および日常の性暴力と性搾取を根絶しよう!

●市民の国際連帯で核兵器・原発・軍隊のない東アジアをつくろう!

     2023年5月13日

G7広島サミットを問う市民のつどい参加者一同

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