ニュース第65号 01年2月号より

「四季折々の野草に魅せられて」 

さがみの森 小澤 登

 

 私が「さがみの森」に通いだしたのは、スタートより半年程経ってからである。それまでは、森づくりフォーラムの下草刈りに年1回参加するだけであったが、そこに行った時にKさんから「さがみの森」に誘われたのがきっかけであった。そこで多くの方と出会い、多くのことを教えていただいた。Sさんの奥さんは「さがみの森」は出会いの森とおっしゃったが、本当にそのとおりである。

   さて、今回、坂井さんから原稿依頼のお電話いただいたのは、私が作業そっちのけで植物の写真に夢中になっていたからのようだ。しかし、私も最初から写真ばかり撮っていたのではない。私が植物の写真を撮りだしたのは、今から3年程前のある時、尾根筋で昼の食事をしている時に、すぐ近くの潅木の中にたくさんの白い花が咲いているのに気づき、持っていたカメラに収めたのが、最初であったと思う。

 しかし、その頃はまだ花の写真を特に撮るつもりでいたわけではなく、地拵え・下草刈りなどの作業や、休憩場所の近くにきれいな花があれば記念に撮る程度であった。

 そんなことを続けているうちに、「さがみの森」にはどの位の樹木・野草があるのだろうかと思い、写真に撮って調べてみようと思い立った。

 植物に特別精通している訳でもなく、違うものを並べてもその違いに気がつかない様な状態の者が、植物の種類を見分けるにはどうしたらいいのだろうか。それには花が一番であった。そのため、花の咲いているのが目に入れば手当たり次第に写真を撮っていったのである。そして、家に帰ってからは、その植物の名前を調べるために、植物図鑑を初めから何回もめくっていった。図書館に行くこともしばしば。

 植物の専門家でもなく、写真のプロでもない、全くの素人の私が写真に撮った植物を図鑑の中から探し出すのは結構大変な作業であった。しかし、そんなことを繰り返すうちに、少しずつ植物の名前を覚えていき、植物が好きになっていったのであった(某所でお世話になっている方には、「花の咲いていない状態で覚えないと本当に覚えたことにならない」と言われたが、今の私にはこれが限界)。「小澤さん、あそこに・・・が咲いていたよ。」と教えていただき、急いで撮りに行ったりもした。

 そんなことを続けるうちに、せっかく写真に撮るのだから、少しでもいい写真を残そうと思うようになってきたが、一週間に一度出かけるだけであの広い「さがみの森」の中に咲いている花を見つけ出し、更にその花の一番いい状態に出会うのは偶然に等しいものであった。

 最初の頃に撮った「地エビネ」は作業道の際に1株、長い花穂に明るいピンクの花弁をつけて咲いていた。出来上がった写真は見るに耐えないもので、また来年撮りなおそうと思っていたが、翌年にはその株はなくなっていた。家の庭にも地エビネがあるが、あれ程明るい色のものはこれまでに出会ったことがなかっただけに残念である。作業の時に刈られたのかも知れないと思い、翌年もその辺りを探してみたが見つからなかった。

 また、一昨年には途中の林道に咲く「ヤマユリ」を見つけ、一輪咲いているものを写真に撮った。近くに5・6個のつぼみをつけたのがあり、2週間後の作業日に狙いをつけておいた。作業日当日、林道を登っていくと、ちょうど咲いた花と大きく膨らんだつぼみのバランスがよかったが、生憎と作業の取材の方と一緒であったため、途中で止まれず、帰りに撮ろうと思いながら、その花を見送った。ところが、作業終了直前になり、猛烈な雷雨になったのである。山を降りる時もどしゃ降りは続き、残念ながらその花の写真を撮ることはできなかった。

 昨年も「ヤマユリ」の時期となり、その「ヤマユリ」の咲くのを楽しみにしていた。つぼみも大きく膨らみ、来週辺りには咲き始めるかと思ったその次の週に行ってみて愕然とした。根元を虫に食われて倒れ掛かっていたのである。自然の厳しさを改めて知らされたのであった。

 小さな「ヒトリシズカ」が数輪並んで咲いていたのに、翌週行ったときにはなくなっていたこともあった。里に持っていっても咲き続けるのは難しいと聞くと残念である。

 ハイキングの人も入ってくる山であり、中には綺麗な花を見て持ち帰りたくなる人もいると思うが、”取るのは写真だけ”と呼びかけたい(せめて根だけは残してほしい)。

 「さがみの森」は、伐採により日光が地面に届くようになったために色々な野草が一斉に咲き始めたのではないかと思う。植林した樹木が大きく成長してくると、再び日陰となって咲かなくなる野草も出てくるであろう。せめてそれまでは自然のままに咲いていてほしいものである。

 昨年は体力を使うことができない状態であったために、作業は少しだけで、植物や作業の写真撮りに回らせていただいた。そんな一年間「さがみの森」で撮った写真を使って、パソコンで2種類(野草と樹木)の卓上カレンダーを作ってみた。1年間、満足な作業ができなかったお詫びの意味も込めて、12月24日の活動日にこのカレンダーをお配りした。中身の出来具合は別として、妻がクリスマスプレゼントらしく包んでくれたためか皆さんに喜んでいただいた。

 最初の頃は作業の合間だけであったが、そのうちに毎週出かけるようになり、気がつけば「さがみの森」の野草の写真は名前の判ったものだけで160種類ほどになっていた。野草と同時に樹木も撮っていたが、こちらはなかなか見分けがつかないために100種類ほどで止まっている。これからは樹木を主体にしていきたいと思っている。

 今年は雪が多いが、長期予報によると春は早めとのこと。3月ともなれば、また一斉に春の花が咲き出す。これまでに出会えなかった野草と会えるのを楽しみにして出かけるつもりでいる。

 皆さんも作業の合間にちょっと手を休めて、足元に咲いている春の花を楽しんでみてはいかがでしょうか。

森の風目次    森の風・01年3月    巻頭言・01年1月