「5.3 山梨憲法 1000 人集会」閉会挨拶(2026年5月3日)のご紹介

 今年の「5.3山梨憲法集会」は、主催者の意気込みを示す意味や広く参加をしてほしいという願いを込めて、「5.3 山梨憲法 1000 人集会」と銘打って開催された。みなさんの努力で、800人ほどの参加者があった。昨年の3倍の参加者数であるという。日本政府は、安全保障環境の厳しさを強調するが、平和憲法を守りたいという人々の緊張感も強度を増しているように思える。以下、同会の実行委員会の共同代表の一人として行った閉会挨拶を紹介したい。

白藤博行

日本国憲法は、2026年11月3日に、公布80年(傘寿)を迎えます。しかし現在の日本政府は、複雑化・深刻化する安全保障環境を理由に、憲法の平和主義、とりわけ第9条の戦争放棄を軽視する軍拡政策を推し進めています。一方で「法の支配」に基づくインド太平洋戦略を掲げながら、他方では国連憲章や国際法に反するアメリカの戦争を否定しないまま、いわゆる「抑止論・核抑止論」に依拠する「力の支配」を支持する政策を進めているという矛盾も見られます。

いま私たちは、人類の未来を左右する重大な世界的危機に直面しています。みなさんは「パグウォッシュ会議」をご存じでしょうか。パグウォッシュ会議は、「対立を超えた対話」を基盤に、すべての戦争と核兵器の廃絶を訴える科学者の国際会議です。昨年、20年ぶりに広島で開催され、科学者コミュニティの専門的責任と、市民が道徳的な平和の原動力であることを確認しました。そして最後に、「ノーモアヒロシマ、ノーモアナガサキ、ノーモアウォー」に触れつつ、次のように宣言しました( 第63回パグウォッシュ会議「広島宣言」)。

日本国憲法第9条の戦争放棄は、1955年のラッセル=アインシュタイン宣言が訴えた『戦争そのものの廃絶』につながるものであり、両者は良心の不滅の灯台である。真の安全保障は武器や武力の行使ではなく、多国間主義、法の尊重、対話と正義、そして私たちが共有する人間性にこそある。

ここで引用されるラッセル=アインシュタイン宣言(湯川秀樹博士を含むノーベル賞受賞者10名+1名=11名による1955年7月9日の宣言)は、当時まだ「新型爆弾」と呼ばれた核兵器(おもに水素爆弾)の誕生を受け、それを「人類に立ちはだかる悲劇的状況」と捉えました。宣言は、もはや自国の勝利のみをもたらす戦争は存在せず、すべての当事者に悲惨な結末をもたらす戦争を防ぐためには「新しい考え方」が必要だと述べています。

この宣言の究極の問いは、「私たちが人類を滅亡させるのか、それとも人類が戦争を放棄するのか」という二者択一です。「人類」という言葉は抽象的ですが、私たち自身、子どもや孫など身近な存在を思い浮かべれば、その意味はより切実に理解できるでしょう。核兵器が存在する時代において、私たち自身も、愛する者たちも、もだえ苦しみの果てに滅びゆく危機にさらされているのです。宣言は、核兵器以外の近代兵器なら戦争をしてもよいと考える愚かさを鋭く指摘しています。

国家は、いったん戦争が始まれば勝利のためにより強力な兵器を求め、ついには核兵器を持てば勝てると考えてしまうものです。これは、現在席巻する「抑止論・核抑止論」につながる思考です。しかしその論理は、戦争が始まり勝利を追求する限り、核戦争が避けられないという結論に行き着きます。それはすなわち人類滅亡のシナリオにほかなりません。

そこでラッセル=アインシュタイン宣言は、次のように世界の諸政府に強く求めています。世界戦争によっては自らの目的を達成できないと認識し、それを公に認めること。 そして、あらゆる紛争を平和的手段によって解決する道を見出すこと。みなさんは、すでにお気づきでしょう。これは日本国憲法前文の平和主義そのものであり、第9条の戦争放棄そのものです。つまり日本国憲法は、世界で初めて「核時代の戦争」を視野に入れた平和憲法だと言えます。

国連憲章や国際法は、たしかに20世紀の世界戦争の惨禍を踏まえて制定されました。しかし、人類史上唯一の被爆・敗戦国である日本は、さらに一歩踏み込みました。核兵器が存在する時代においては、核兵器を廃絶するだけでは平和は実現しない。なぜなら、核兵器の素材や技術が残る限り、戦争になれば国家は必ず核兵器をつくり、使おうとするからです。したがって「戦争そのものを廃絶」しない限り、平和は実現しないと考えたのです。

憲法の平和主義と戦争放棄は、人類が生き延びるためには戦争の廃絶しかないという思想に基づいています。日本国憲法の先見性と先駆性を誇りに、憲法を守り生かす取り組みを続けていきましょう。

<執筆者自己紹介>

専修大学名誉教授。現在、地方自治研究所「北杜のもぐら」を主宰。地方自治法、警察法、インテリジェンス法などを研究しているとしている。


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コメント

“「5.3 山梨憲法 1000 人集会」閉会挨拶(2026年5月3日)のご紹介” への2件のフィードバック

  1. 新倉修のアバター
    新倉修

    力強い閉会の辞。ほんとうに「戦争は嫌だ!」を共有し、うわついた改憲論を吹き飛ばしましょう。

  2. 白藤 博行のアバター
    白藤 博行

    励ましのコメントありがとうございます。
    前田朗さんが紹介してくれた「響け9条」という歌。
    ほんとうに、いいですね。
    徳野衆さんという議員さんが書いた詩を、AIが曲付けたらしいですね。
    AIおそるべし、です。
    欅坂46というグループの歌に、「不協和音」という歌があるのですが、その歌詞の中に、「僕は嫌だ」という箇所があります。私は、戦争に対しては、「僕は嫌だ」と言い続けたいと思います。「戦争は嫌だ!」

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