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女性2000年会議、日本NGOレポート
by NGOレポートを作る会, 1999.08.13
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H 制度的仕組み

1. 革新的な政策・プログラム・プロジェクト及び最良の実践例

  1. 国内本部機構の組織・機能強化
    a.男女共同参画推進本部担当部署の充実等
    b.男女共同参画社会の形成を促進するための新たな審議会の設置
    c.男女共同参画推進連携会議
  2. 男女共同参画社会の実現を促進するための基本的な法律の検討等
  3. 国・地方公共団体間の連携強化
  4. NGOとの連携強化
  5. 有償・無償労働のジェンダー間の差に敏感な生活時間調査の開始
  6. ジェンダー統計の充実について

2. 直面した障害およびその克服

  1. ジェンダーの視点からの影響・評価が不充分
  2. 個人のライフスタイルの選択に中立な社会制度の検討
  3. ナショナルマシーナリーの充実強化の不備
  4. 地方自治体における取り組みの遅れ
  5. 無償労働を評価するための制度的仕組みをつくるための政府内の連携不足
  6. ジェンダー統計の未整備
  7. 官僚のセクショナリズム

3. 将来への見とおし

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1. 革新的な政策・プログラム・プロジェクト及び最良の実践例

(1)国内本部機構の組織・機能強化

a.男女共同参画推進本部担当部署の充実等

 2001年に中央省庁等行政改革により男女共同参画会議が設置されると、国内本部機 構は監視、総合調整等の機能を持つことになり、新しい強力な仕組みを設置すること は高く評価できる。しかし、強制力の担保、制度的保障、男女共同参画局の具体的な 職務内容、職員数・予算等が明確にされていない。

b.男女共同参画社会の形成を促進するための新たな審議会の設置

 審議会設置のための立法化は評価できるが、審議会にはNGO代表が1名しか任命さ れていない。多様なグラスルーツの女性たちの意見を女性政策に反映させるためにも、 NGO代表委員をもう少し増やすべきであろう。  

c.男女共同参画推進連携会議

 メンバーは「NGOの代表を広く募ったものではなく、いわば政府に都合のよい人間を 中心に集めたものに過ぎない」という意見もある。さらにNGOとの随時の意見交換会の 開催についてもNGOに対して広く参加を呼びかけていない。インターネットで広報して いるということであるが、これらの集会はインターネットには掲載されていない。また、 意見交換会となっているが、NGOの意見を国の女性政策に反映するために十分に活用さ れているか疑問である。むしろ政府に都合の良いNGOを通して女性政策に関する情報提 供を行う機会にすぎないという印象をうける。様々な立場のNGOが参加し、単に情報交 換だけでなく、出された意見が政府が企画し実施する政策に反映し、さらに政策を監視・ 評価できるような仕組みにすることが必要である。

(2)男女共同参画社会の実現を促進するための基本的な法律の検討等

 右傾化の見える現在の政治状況にもかかわらず、三党合意に基づき、男女共同参画社会 基本法が制定された事は評価できる。しかし、基本法について次のような意見も出されて いる。「男女を同じ長時間過密の過酷な労働の中に投入し、全体として賃金を低下させて 男女差別を温存する経済界の戦略を示すと共に、女性差別撤廃条約上の義務を履行したか のごとく装う隠れ蓑であると非難し、改善するために、@男女平等の理念に対立する『社 会経済情勢の変化に対応』の文言の削除、A女性に対するあらゆる差別を例示して禁止、 B苦情の処理や救済を行うための独立機関の設置をもとめていくことが必要」。

 その他の意見としては、「女性の人権」とはせず、「男女の人権」の尊重としており、人 権の尊重に関しては女性が見えにくい。罰則規定がない。基本理念および基本計画では具 体的な女性の課題が述べられていないなど、全体的に具体性に乏しい。特に差別が最も厳 しい雇用の場における男女共同参画をすすめるための具体的な内容がない。さらに、日本 社会はジェンダーに基づく考えが国際比較をしても極めて強いが、これを是正するために 鍵となる教育、特にジェンダー教育の教材開発、学校教育、職場研修、社会教育における 実施・振興などについてまったく触れていない。

 積極的改善措置は本基本法の目玉ともなっており、国がその措置を取ることになってい るが、具体的な内容がまったく書かれていない。さらに、もう一つの目玉である苦情処理 機関の設置についてもどのような機関を設置するのか触れられていない。本基本法の参議 院審議の際、この件に関する質問に対して、官房長官は人権擁護委員会など既存の組織を 活用したいと回答している。しかし、人権擁護委員会はまず、第3者機関でないという救 済機関として決定的な問題点の他、全く女性問題を理解していない人権擁護委員が多いと いう現実の問題もある。その上、わが国における人権擁護委員会については国連人権委員 会から政府から独立した第3者機関としての人権救済機関を設置するよう勧告されてい るという実態がある。

(3)国・地方公共団体間の連携強化

 国・地方公共団体との連携は中身が明らかでない。地方自治体の推進体制の強化を図る ために、政府は会議の開催や、ホームページ、情報誌を通した情報提供以外にどのような 事を行っているのか。情報提供だけでは、連携とは呼べないし、アドホックな相談に預か るというのも組織的な連携ではない。国の地方公共団体に対する具体的な支援策も見えな い。

(4)NGOとの連携強化

 基本法の制定に関してできるだけ多くのNGOの意見を集める努力がされた事は、NGO の意見を軽視したり全く無視しがちな日本の官僚機構の中で歓迎できる特筆すべき事で あるが、NGOの意見の組織的な取り入れ方向が見えない。

 また、女性政策先進国では世界女性会議のような大規模国際会議だけではなく、女性の 地位委員会などへの政府代表に必ずNGO代表を加えている、日本の場合、大規模会議に は極めて限られた数のNGO代表を政府代表団に入れているが、委員会などには全く入っ ていない。NGOの意見の取り入れ方も含めたNGOとの関係について図式化が必要であ る。

 特に1995年以降、全国レベルおよび地域レベルでNGOが設立され、女性たちをエンパ ワーする多様な活動を行っている。また、政策提言型のネットワークが設立され、日本政 府及び地方自治体と連携を取ったり、女性議員と協力している。 NGO データベースの開発を今年から開始したということであるが、NGOの活動を規制 したり監視する可能性のあるNGOのデータベースはNGOの連合体で開発すべきであり、 政府が行うものではない。

(5)有償・無償労働のジェンダー間の差に敏感な生活時間調査の開始

 現在総務庁では生活時間調査に関する無償労働の調査項目を充実させることやEUなど が行っている調査との国際比較を進めるために研究会を設け、関連の調査をした。ジェン ダー視点を入れるために女性委員が多く入っており、総務庁、経済企画庁、男女共同参画 室が参加し共同討議の場となっている。新しい取り組みであり評価できる。

 NGOの活動としては、神奈川ネットワーク運動が生協組合員やその夫を対象に生活時 間調査を行い(1997)、無償労働のうちおもに社会的活動について分析を行った。

(6)ジェンダー統計の充実について

 ジェンダー統計の整備・充実については、国立婦人教育会館が『女性および家族に関す る統計データベース研究開発報告書』(1997年3月)を出すなど、近年調査研究が進んでい るが、国内本部機構および統計局などとの連携のもとに、さらに進める必要がある。

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2. 直面した障害およびその克服

(1)ジェンダーの視点からの影響・評価が不充分

 特にナショナルマシーナリーの機能が極めて限定されている現在、不可能に近いのかも しれないが、ジェンダーの視点からの影響・評価は全く行われていない。今年度調査研究 に着手するということであるので、その成果に期待するしかないが、あらゆる施策に反映 する施策への組込み手順の明示がされなければならない。さらに、中央政府レベルだけで はなく、地方自治体でも応用可能な手法の開発が望まれる。

(2)個人のライフスタイルの選択に中立な社会制度の検討

 年金制度については、基本的に夫婦単位でなく、個人単位にするべきである。個人単位 に一気に改善できないにしても、賃金が一般的に低い女性の場合でも、最低限の生活がで きる程度に引き上げるべきである。税制もシングルには不利な世帯単位となっている。 様々なライフスタイルを自由に選べるような税制、年金制度に改革するべきである。 民法改正について世論が分かれていると国民への責任転嫁をしている。政府がなにをや ったかが問われるべきはないか。現行の戸籍法にも問題が起きてきており、改正の方向に 持って行くべきではないか。具体的には、性同一障害の人が戸籍変更の訴えを起こすこと なども出てきている。 その他、婚外子に対する相続分の差別、婚姻可能な年齢の男女差、女性だけに求められ る待婚期間などを改善する民法改正案が与党の反対で国会に提出できないままになって いる事は女性の人権を侵害する問題である。

(3)ナショナルマシーナリーの充実強化の不備

 予定では2001年にナショナルマシーナリーは格段に整備される事になっているが、具体 的な内容が明示されていない。オンブスパーソン制度の確立、国や地域の女性センターの 充実・整備、国及び地方自治体における職員研修体制(ジェンダートレーニング)の確立、 統計の企画・収集・分析にジェンダーの視点を盛り込ため体制整備などについて言及が必 要である。

 また、男女共同参画会議及び男女共同参画室(2001年からは局)だけでは政府全体にお けるジェンダーの主流化を進めることは困難である。各省にジェンダーの主流化を推進し 調整するための体制(フォーカルシステム)が事務次官や筆頭局長など当該省の権力の中枢 にある職員の管轄の元に設置され充実されなければならない。

 女性に対する様々な暴力、特に夫や恋人からの暴力・家庭内暴力(DV)に対する効果 的に機能する政府の窓口がない。実際にDV被害者が人権擁護委員や警察に相談したけれ ども、「取り扱いかねる」と対応してくれない。DV予防、トラウマを少なくするためのカ ウンセリングや緊急避難のためのシェルターへの援助を含む総合的な政府の対応窓口を 設置するべきである。この状況を改善するためにも、女性に対する暴力を根絶する法案の 制定することが急務である。

(4)地方自治体における取り組みの遅れ

 次のような阻害要因と除去の方法が挙げられる。

 c. ジェンダーのメインストリーミング推進のため、総合調整機能をもつ、国の男女共同 参画推進本部に相当する、首長を長とする男女共同参画推進のための全庁的庁内組織 を設置する。その中にNGOを入れる。

 d. 都道府県指定都市に比べて、市町村レベルではもっと遅れ、女性政策の窓口も調整機 能のない教育委員会に設置されているところが多い。市町村では、女性政策担当が専 管係になっていないところが多い。また、専管で設置されていても、リストラが進む 中で自治体によっては他課に統合されるケースも出てきている。各地方自治体の首長 部局に担当の部(課、室)をおく。その担当部には 企画・連絡調整にとどまらず総合 調整機能を持たせ、かつ専任の担当者を置き、NGOとも連携する。

 e. 行動計画の制定は全国で13%に過ぎない。特に、中小規模市、町村レベルでの取り組 みの遅れが目立つ。この点では都道府県との連携が必要。また、行動計画を策定して も達成目標期限などが明らかにされておらず、進捗状況の監視機能もないし、報告書 も出されていないところがほとんどである。行動計画の推進機構が全庁的な位置付け になっていない。行動計画の策定、評価にNGOの代表が入るべきである。

 f. ほとんどの都道府県では男女の意識の昂揚し、女性問題の学習や交流の場を提供する ため女性センターを設置している。市町村でも類似の施設を作ることで住民の意識の 変革が進む。

 g. 男女共同参画社会基本法を踏まえた各自治体の条例作りが必要である。この過程で NGOの意見を入れること。また、保守的な町村で機能するような仕組み(団体などの 長を男女二人代表とするなど)を取り入れた男女共同参画のための条例が必要。また、 既存の人権委員や行政相談員とは別に、地方自治体に独自の新たな苦情処理機関、相 談機関を設置する。

 h. 行政および議員、特に地方議員の認識不足が阻害要因である。行政は議会の決定に従 わざるを得ない。したがって、議員、行政に対する広報、研修、啓発が不可欠である。 そのためには議員を選ぶ市民、NGOにも問題があるので、その意識、研修が必要であ る。

 i. 地域で活躍するNGOの提言能力、問題解決能力、行動力不足は、地方自治体における 制度的仕組みの整備の阻害要因の一つである。NGOが地方自治体の行動計画策定など に関与するためには、NGOのエンパワーメントが必要なのでこれのために、支援が必 要である。

 j. 男女共同参画推進員制度で数百名の県民が選ばれている県が多いが、見なおしやチェ ック制度の導入が必要。

(5)無償労働を評価するための制度的仕組みをつくるための政府内の連携不足

 経済企画庁は「無償労働の貨幣評価」を1997,1998年の二回公表したが、男女共同参画 室との連携がなく、女性政策への有効な反映が図られていない。経済企画庁が始めた「介 護・保育サテライト勘定」の研究会に女性が入っていない。ナショナルマシーナリーに無 償労働の測定と評価をリードする組織を設置する必要がある。さらに、有償・無償労働の ジェンダー間格差に敏感な生活時間調査を定期的に実施すべきである。

(6)ジェンダー統計の未整備

 女性の失業率および不完全雇用を少なく見積もっている測定の改善など、ジェンダー統 計が整備が必要である。現行の失業統計は無償労働やパート労働に従事する女性の実態を 正しく反映せず女性の失業率や不完全失業率が実態より低く見積もられている。

 また、CEDAW等から政府が男性の賃金に対する女性の賃金の低さを改善するため、民 間企業等を指導するよう勧告を受けている事を配慮してか、日本政府は男性に対する女性 の収入の割合を国際機関に報告していない。そのため、UNDPでは毎年作成しているGEM (Gender Empowerment Measure)やGDI(Gender Development Index)を算出す るために日本男性の収入に対する日本女性の割合として75%という国際平均を使ってい る。一九九八年の日本のGEMは38位で先進国では最も低いが、51%という実際の数字を 使うともっと低くなる。

(7)官僚のセクショナリズム

 男女共同参画室の強化は、セクショナリズムにより妨害されてきた。今後は各省におい てジェンダーフリーをメインストリーム化することが必要になる。しかし、官僚のセクシ ョナリズムが、すべての省の協力を得る場合の重大な障害となることが予測される。セク ショナリズムは政府だけではなく、地方自治体の場合にもジェンダーのメインストリーム 化に向けて障害となる。これら官僚の意識の変革を起こすためのジェンダートレーニング やフェモクラット(フェミニストの女性官僚)の質の向上と数の増大が重要である。

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3.将来への見とおし

 ジェンダーの主流化は、ナショナルマシーナリーだけではなく、各省庁、地方自治体、 そしてNGOの連携を強化することにより可能になる。さらに、これら各々が個々に力を つけていくことが日本におけるジェンダーの主流化に最も重要である。

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