日本平和委員会声明

以下、日本平和委員会からの声明を転載します。



北海道・洞爺湖における主要国首脳会議(G8サミット)にさいしての日本平和委員会の声明

 7月7日から9日まで北海道・洞爺湖において、主要国首脳会議(G8サミット。アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、ロシア)が開かれる。また、これに先立って、外務、財務、労働、環境、エネルギーなど主要な閣僚による会合が4月から開催されている。

■G8サミットにたいする我々の基本的立場

 これまでサミットは、先進資本主義国が、「市場経済の維持と発展」を共通目標として、政策調整と協調をはかり、世界を思い通りに支配するための手段となってきた。サミット参加国は、その経済力においても、また軍事力においても、世界の中で圧倒的な位置をしめるとともに、国連をはじめ、国際通貨基金や世界銀行で大きな影響力をもつなど、世界の現在と未来を左右しうる重大な責任を負っている。

 サミットは今日、経済政策のみならず、貧困、環境、「テロ」、大量破壊兵器の「不拡散」なども議題としている。それは、これらの問題が、経済発展にとって避けて通れなくなっているとともに、世界の人々が、その公正な解決を求めてたたかってきたからである。戦争に反対し、平和で公正な世界をめざす諸国民は、サミットを世論結集の一つの重要な機会ととらえて、活動してきた。これまでも、ケルン(ドイツ、1999年)、沖縄(2000年)、ジェノヴァ(イタリア、01年)、グレンイーグルス(イギリス、05年)、ハイリゲンダム(ドイツ、07年)などで、幅広い市民、運動団体、NGOが参加して大規模な行動がくりひろげられてきた。サミット参加国も、これら市民社会の声を無視することはできなくなっている。また、中国、インド、ブラジルなどの「新興国」の台頭は、従来の大国だけで世界を支配することがもはや経済的にも不可能な状況をつくりだしている。

 今日の世界的問題の解決は、一部の大国の意思ではなく、民主的、平等、非軍事的な国際関係と市民社会の積極的な関与によってこそ可能である。それゆえ諸国民と諸国政府は、大国の覇権を拒否し、国連憲章の平和的、民主的原則にもとづく世界秩序の擁護・確立をもとめているのである。日本平和委員会は、大国の支配に対抗する世界的な流れと連帯し、世論と運動を発展させるために尽力するものである。

■G8サミットにさいしての要求

 北海道・洞爺湖サミットにあたって、日本平和委員会は、核兵器も戦争もない平和で公正な世界の実現のために、主要国首脳会議とその参加国が、以下の点で、積極的なイニシアチブを発揮することを求める。

(1)軍事費の削減と飢餓、貧困など経済的不公正の解決を

 世界では毎日、2万6000人を超える5 歳未満児が命を落とし(「世界子供白書2008」)、労働者の5人に2人が「ワーキングプア」(1日2㌦以下の生活費)と呼ばれる状況にある(「世界雇用報告2008」)。一方、世界の軍事費は、1兆2000億㌦をこえ(SIPRI 2007)、G8諸国で、その7割近くをしめる。貧困や飢餓人口の半減などをかかげる国連ミレニアム宣言目標を達成するための年間予算は、世界の年間軍事費の4%にすぎない。G8が率先して軍事費を削減し、公正な世界の実現のために、その経済力を使うべきである。G8はこれまで、農産物をふくめた貿易の自由化、雇用形態の柔軟化など、新自由主義政策を後押しする立場をとってきたが、それは極端な経済格差を世界的にも、先進諸国内でも助長し、深刻な矛盾をひきおこしている。これらの問題の解決にむけて、多国籍企業、投機資本の活動への新たな課税をふくむ民主的規制の措置をとるべきである。

(2)紛争の平和的解決と外国軍の撤退  

 国連憲章に反する先制攻撃がおこなわれたイラク、アフガニスタンでは、ひきつづく外国軍の駐留が、治安の悪化を深刻化させる悪循環を引き起こしている。すべての外国軍隊の撤退をはじめ、これらの問題の平和的解決のために、G8参加国が国際政治の場でイニシアチブを発揮することがもとめられている。パレスチナ問題の公正な解決にむけても、占領地域からのイスラエル軍の撤退、独立したパレスチナ国家の建設、両国の平和的共存などを原則とした解決のために力を尽くすべきである。

(3)すみやかな核兵器の廃絶 核保有5カ国は2000年、核不拡散条約(NPT)再検討会議で、「自国の核兵器の完全廃絶」を「明確な約束」として受け入れた。しかし、これまでサミットは、核軍縮ではなく、「不拡散」のみを議題とし、一部の核大国は、核兵器廃絶そのものを拒んでいる。2010年の核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けて、「新アジェンダ連合」や非同盟諸国などの政府もふくめ、世界の圧倒的多数の人びとが核兵器廃絶を求めている。サミット諸国は、この声にこたえ、核抑止力に依存する政策を放棄するとともに、核保有国は、核兵器のない世界の実現へ足を踏み出すべきである。(4)外国軍基地の縮小・撤去

 外国軍のプレゼンスは、受入国の主権と安全、住民の生活と安全、権利、環境を脅かすとともに、地域と世界の軍事的緊張を高めている。日本には約 130の米軍基地(注)と約4万人の米軍が駐留している。サミット開催地の北海道は、演習場をふくめた米軍基地面積は34,463㌶(注)にもたっし、沖縄をも上回る巨大な面積を占有されている。矢臼別演習場での米軍実弾砲撃演習は、酪農など周辺地域住民の生活と営業を脅かしている。アジア、アフリカ、中東などに配置された軍隊と軍事基地の圧倒的多数は、アメリカをはじめとするサミット諸国によるものである。米軍をはじめすべての外国軍事基地をすみやかに縮小・撤去すべきである。

(注) 基地及び演習場の数、面積は日米地位協定第2条4項(b)にもとづく自衛隊基地・演習場の一時使用を含む。

(5)地球環境の保護

 地球環境の悪化は、人類の生存への脅威であるとともに、食料・エネルギー問題の深刻化など、国家間の緊張と紛争の要因ともなりうる。戦争とその準備活動は、重大な環境破壊でもある。地球温暖化問題の解決にむけて、温室効果ガス排出を先進国全体で2020年までに90年比で25〜40%削減するという「中間目標」の達成が焦点となっている。責任の大きいサミット諸国が率先して問題の解決へ実効ある行動を起こすことを訴える。

■日本政府はその国際的責務をはたさなければならない

 こうした切実な課題の実現にとって、サミット議長国である日本政府の責任は大きい。我々は、広島・長崎の被爆体験を有するとともに、国民の平和的生存権、戦争放棄と武力不保持を憲法にうたう国にふさわしい、積極的なイニシアチブの発揮をつよく要請する。

 わが国が、その責務を果たしていくためにも、イラクおよびインド洋から自衛隊を撤退させ、海外での本格的な武力行使に道をひらく動きをただちにやめるべきである。横須賀への原子力空母配備計画をはじめ、米軍基地の再編強化計画を中止し、縮小・撤去すべきである。核抑止力に依存する政策をあらため、すみやかな核兵器廃絶を世界に訴えるべきである。地球温暖化問題では、政府としての二酸化炭素の総量削減目標を明確にし、大規模排出源の削減義務化をはかるべきである。さらに、世界5位の巨大な軍事費を削減し、福祉、教育などの抑制されつづけている社会支出を拡大し、労働者の貧困化を招いている大企業への規制、労働者の生活と権利の擁護をはかるべきである。

 我々は、G8サミット参加国政府が、世界の市民社会、ならびに自国民の声に真摯に耳をかたむけ、その要求の実現に尽力することを強く訴える。