『爆撃』:戦争という悪に対するハワード・ジン最後の証言
ベン・ダンデリオン
ZNet原文
2010年9月26日


『爆撃』
著者:ハワード・ジン
出版社:岩波ブックレット
出版年:2010年
価格:560円+税
ISBN:日本語版のISBNは 978-4-00-270788-4

ハワード・ジンは今年亡くなった。彼の名はその著書『民衆のアメリカ史』という本を通して最も良く知られているだろう。『民衆のアメリカ史』は、ザ・シンプソンズでも取り上げられ、映画「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」の中でマット・デイモン役に推奨されている。米国の歴史を500年にわたる帝国主義と植民地主義、人種差別主義の観点から描いたこの本は、学問的にはあまり受け入れられず、批判者たちはこれを論争的で修正主義の書物と読んだ。結局のところジンは活動家であり、政治的エッセイだけでなく学問的著作にもその性格は現れている。

死の1カ月前に出版社に提出された本書『爆撃』は、政治的エッセイに属する作品である。本書でジンは2本のエッセイを並べている。一つは「ヒロシマ----沈黙をやぶる」、もう一つは「ロワイヤン爆撃」である。復員を待ち望んでいた青年ジンは、広島への原爆投下に浮かれ騒いだことを回想する。原爆投下は彼にとって二度と参加したいとは思わない戦争の終わりを意味していた。その3カ月前、彼はフランスのロワイヤンの街を爆撃する作戦に参加していた。これら2本のエッセイは、1945年のその数カ月、ぼんやりとこれらを祝福し、命令に従った状態に立ち戻って考えるものである。歴史的な証拠に依拠しながら、本書は、いずれの作戦も不要であったと論じ、軍の論理および道徳的感覚を超越する軍事行動を促したものは何なのかを問うている。

ハワード・ジンの著書、『爆撃』は、広島への原爆投下とフランスの町ロワイヤンの爆撃が、彼の戦争観をどう変えたかを辿ったものである。

ジンと同じように、私自身も戦争の必要性と栄光について意見を変えた。クーエカーの学校を17 歳で卒業したあと、私は戦闘機のパイロットになりたいと思っていた。けれども、自転車で世界を旅するうちに、私もジンと同じことに気づいた----つまり、「彼ら」などというものは存在せず、世界的な「私たち」がいるだけなのだ、と。私は、こうした心変わりは、政治家によくあるような弱さの表れではないしそうであってもいけないこと、むしろ創造的反省の賜物であると喜んで言おう。私は現在、献身的な平和主義で、人々がジンや私の方向に----その逆に平和主義者から軍事主義者へではなく----変わることを望む。

ところで、ジンは、単純な平和主義のものより複雑な議論を展開している。彼は、人類の一部を「劣ったもの」と描き出すことに批判的で、自らを道徳的とみなす人々が絨毯爆撃や原爆投下といった戦略を可能な選択肢と考えることができるのは、ひとえに敵を非人間化することによってのみであると正しく指摘している。私は、社会学者のクリスティー・デービスがメディアを分析し、人類がいつでも、人間として識別されるだけでなく、集団の中の名もない構成員や数字とみなされること、そして人々の道徳的な地位はメディアが人々にどれだけの人間性を付与するかによって変わると述べていたことを思い出す。「バス事故で18人が死亡」と書けば死者は数値になる。戦争でも同様で、「敵」は非人間化され、ときには悪魔化されることで、敵を殺すことは殺人とは見なされなくなり、「無辜の」「犠牲者」ではなくただ「死んだ敵」がいるだけと見なされるところにまで到達する。

第二次世界大戦後、原爆の影響を記録したフィルムを検閲したことに、政府とメディアの意識的な振舞いが認められる。ジンはそれとなく、自分たちを「敵」の状況に置いてみたときに提案された軍事行動が正当化されないならば、自分たちは道徳的に間違っていると論じている。結局のところある種の平和主義に落ち着くかもしれないが、これは、批判者に多様な論点を投げかけ、個々の行動が提案されたときにより具体的にグローバルな道徳的観点からの検討を要求するものである。

本書が扱っている2つのケースについて----とりわけ、敵ではなく味方が住んでいたロワイヤンの破壊について、ジンは軍事的プライド、新しい技術の実験(ナパームが最初に使われたのはロワイヤンだった)そして復讐の欲望が、いずれの場合も戦略的に不要だったという事実----港は1945年6月ベルリンに向かって急進撃を続ける連合軍にとって何の脅威ともならないおまけだった----よりも重視された。

さて、戦争が打ち負かすことを意図したまさにその「悪」は、連合軍の行動そのものの中にも潜在していた。連合軍はすべて、植民地支配を行った歴史を有し、それまでに自らの利益のために他国を侵略したことがあった。連合国がまさにドイツと日本について非難した行為である。さらに、連合国は例外なく、1945年以降に起きた独立運動に敵対し自分たちの帝国を守ろうとした。そして最終的に軍事行動を起こして、何十万人、何百万人という民間人を殺したのである。チャーチルはドレスデンに対する絨毯爆撃を「集中攻撃」と述べた。当時、米国の人種差別は、日本とドイツへの戦争を推進するレトリックを鼓吹したと同じくらい米国社会そのものを支えていた。この意味でも、今度はいささか不幸な観点からだが、「彼ら」は実際のところ「私たち」と同様だった。それにもかかわらず、戦争のレトリックは「彼ら」を劣った見なすことに依存している。

爆撃が引き起こした苦痛を考えると、『爆撃』の中には読むのが容易でないところがある。多くの人々は怒りを感じるだろう。本書の歴史分析に抵抗する者もいるだろうし、寄せ集めの議論を手前勝手に解釈する者もいるだろう。また、下さなくてはいけなかった(そして今も下さなくてはいけない)決断の性質をジンは単にわかっていないだけなのだという者もでるだろう。けれども、ジンの著書は、権力の回廊にいる者たちと、何が起きているか実際にはわからないまま戦争が必要だという権力者の議論を聞いているだけの我々とを隔てる分断も示している。

残念なことに、本書『爆撃』は現在今この時点で、時宜を得た、とても重要なものである。学問と活動の人生に対する証言として、本書は真剣に読むに値する。


『[http://www.amazon.co.jp/爆撃-岩波ブックレット-ハワード・ジン/dp /4002707881:爆撃]』は日米同時刊行。つい最近出版されたばかりのラジ・パテル著『肥満と飢餓----世界フード・ビジネスの不幸のシステム』とともに、2010年発売の必読書であるとともに、21世紀の古典となるべき重要な本です。また、第二次世界大戦に従軍した米国の知識人が広島への原爆投下について考えたエッセイを含んでいるという点でも、大切な記録です。ぜひご一読を。

■ 辺野古通信

辺野古通信をご覧ください。

■ 上関原発

STOP! 上関原発をご覧ください。

■ ジャーナリスト土井敏邦さんのDVD

「“私”を生きる」「沈黙を破る」など、一連の優れたDVDが発売中です。土井敏邦さんのサイトをご覧ください。

■ STOP無印良品キャンペーン

パレスチナで弾圧を続けるイスラエルに、無印良品が進出しようとしています。STOP無印良品キャンペーンをご覧ください。

■ 武力で平和はつくれない――もう一つの日米関係へ:パレード

日時:2010年10月17日(日)集合13:00
   パレード出発14:30(雨天決行)
場所:芝公園23号地(JR「浜松町」徒歩12分、
   地下鉄三田線「御成門」徒歩3分、
   地下鉄大江戸線「赤羽橋」徒歩3分)
パレードコース(予定):芝公園23号地→米国大使館→麻布三河台公園(解散地点)
主催:10月「ピースウィーク」2010・東京実行委員会
 実行委員会参加団体:
  JUCON
  ノーベース全国アクション
  WORLD PEACE NOW
協賛:
 沖縄一坪反戦地主会関東ブロック
 日本国際ボランティアセンター(JVC)
連絡先:
 ピースボート:   〒169-0075東京都新宿区高田馬場3-13-1-B1
  TEL: 03-3362-6307 FAX: 03-3362-6309
 許すな!憲法改悪・市民連絡会
  〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-21-6-301
  TEL:03-3221-4668 FAX03-3221-2558 

■ 民主党政権下の軍事計画を読む
  国際宇宙平和週間[2010年10月2~9日]企画

日時:10月8日(金) 午後6時30分~9時
会場:ピープルズ・プラン研究所 会議室   (東京・有楽町線「江戸川橋駅」1b出口徒歩5分、TEL 03-6424-5748
資料代:500円
・2011年度防衛省概算要求を読み解く
 山本英夫(新しい反安保行動をつくる実行委員会)
・「新安保懇」報告書の狙うもの
 杉原浩司(核とミサイル防衛にNO!キャンペーン)
・オバマ政権の軍事費「削減」動向をどう見るか
 山口響(ピープルズ・プラン研究所)

■ 沖縄・自衛隊基地の強化を許さない10月9日集会


日時:10月9日(土)午後6時30分開始
会場:
文京シビックホール 会議室1+2
 東京都文京区春日1-16-21電話03-5803-1100
 丸ノ内線・南北線「後楽園」駅、都営三田線・大江戸線「春日」駅3分
参加費:500円
主 催:沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック
連絡先:090-3910-4140
発言:
 自衛隊の配備に反対する「与那国」島民の訴え
  田里 千代基(たさと ちよき) さん
 沖縄の自衛隊の動向
  滝本 匠(たきもと たくみ) さん(『琉球新報』記者)
案内チラシをダウンロードできます

■ 「船ごと徴用」とは? 韓国併合100年の今、
  韓国人太平洋戦争遺族の声に耳を傾けよう


日時:10月9日(土)14時 神戸華僑歴史博物館10階会議室
  (JR・阪神元町駅西口から南へ7分 国道北側歩道沿078-381-3855)
参加費:700円(学生500円)
主催:「韓国・朝鮮の遺族とともに全国連絡会」
共催:神戸学生青年センター
   在韓軍人軍属(GUNGUN)裁判を支援する会
プログラム:
 講演:「船ごと徴用とは?」
  講師:大井田孝さん(戦没した船と海員の資料館研究員)
 韓国からの証言
  姜宗豪(カン・ジョンホ)さん
  崔洛〓(チェ・ナックン)さん
  南英珠(ナム・ヨンジュ) さん

■ 「普天間基地の無条件返還と辺野古・徳之島への移設断念を求める署名」

要請事項
1. 沖縄差別に貫かれた5・28「日米共同声明」を撤回すること
2. 普天間基地の即時無条件返還を米国政府に要求すること
3. 名護市辺野古への新基地建設計画を断念すること
4. 徳之島への移設・移転計画を断念すること

【メール署名方法】
メールアドレス:henokojitu.syomei@gmail.com
署名方法:上記アドレスに氏名(ハンドルネームは不可)、住所を書いて送信して下さい。識別のためメールのタイトルを「署名賛同」として下さい。
【署名用紙】
添付の用紙を打ち出して使うか、下記urlからダウンロードして下さい。
個人用
団体用
【署名での個人情報の取り扱い】
本署名、メール署名での個人情報は本署名行動のため以外には使用しないことを約束いたします。メール署名でのメールアドレス等個人情報は署名行動終了後廃棄します。
辺野古への基地建設を許さない実行委員会
問い合わせ先: Tel:090-3910-4140(一坪)・Fax:047-364-9632(一坪)
署名送付先: 〒101-0061東京都千代田区三崎町2-2-13-502
沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック宛
締め切り: 第1次集約 2010年8月末日 最終集約 2010年10月末日
益岡賢 2010年10月1日

一つ上] [トップ・ページ