コロンビアに平和を

ギャリー・M・リーチ
2003年1月6日
コロンビア・ジャーナル原文


2003年、「コロンビア・レポート」は4年目に入る。一方、コロンビアの紛争は、1946年に保守党大統領マリアノ・オスピナ・ペレスが選挙で権力を握り、自由党系の農民に対する弾圧を開始したときに紛争が始まったと見るならば、57年目に入るし、1948年のホルヘ・エリエセル・ガイタン暗殺を開始点と見るならば、55年目に入るし、あるいは、南部コロンビアでのちにFARC(コロンビア革命軍)に発展することになる武装農民グループが全国的闘争を開始し、北部コロンビアで学生たちがELN(民族解放軍)を結成した1964年を始点とするならば、38年目に入ることになる。現在の紛争がいつ開始されたと見るかにかかわらず、現在、コロンビアでの暴力は、1940年代と1950年代の「ラ・ビオレンシア」時代以来、最もエスカレートしているのは明らかである。

2003年に入った時点で、FARCは1万8千人の十分に武装した兵士を要しており、ELNも4000人の戦闘員を擁している。この20年のあいだに、現在コロンビア自衛軍連合(AUC)の傘のもとで活動している右派準軍組織は1万2千人の部隊に成長した。コロンビア軍は、この数年、米国による大規模な軍事援助から利益を得ている。この軍事援助は、もともと麻薬に対する戦争の一部という口実で正当化されたものであるが、最近では、世界的な「対テロ戦争」のもとで正当化されている。

コロンビア軍は2002年12月にワシントンからクリスマス・プレゼントを受け取った。コロンビアが国連の場で、イラクの大量破壊兵器報告入手を手助けしたご褒美として、米国のコリン・パウエル国務長官は、2003年にさらなる軍事援助をコロンビアのアレバロ・ウリベ大統領に約束したのである(ブッシュとウリベは国連安保理を妨害)。

コロンビア紛争は、基本的にコロンビア軍と準軍組織とが同盟して2つの左派ゲリラと戦っているものであるが、緩和の兆しを見せていない。政府との和平交渉を開始するためにAUCは一方的な停戦宣言を発したが、準軍組織「死の部隊」による一般市民コミュニティへの攻撃は続いていることが伝えられている。一般市民は「停戦」の対象外であり、これまでいずれにせよ準軍組織は標的としてこなかった政府軍だけが停戦対象であるようだ。

FARCとコロンビア政府が和平交渉からかくも遠くに来たことはかつてなかった。FARCは、今後の和平交渉のためには一方的停戦と国連の仲介が必要であるというウリベ大統領の要求を拒否したし、ELNは政府との和平交渉を破棄して、北部コロンビアで軍事作戦および誘拐作戦を続けている。コロンビアにおけるあらゆる武装集団の活動により、250万人以上のコロンビア人が暴力によって家を追われ、また、コロンビアは、誘拐、そして労働組合員やジャーナリストの殺害で世界トップとなっている。

アメリカ政府は、ウリベによる紛争拡大を支持するというだけでなく、多くの場合、自ら紛争を開始させている。今や米国軍事援助第三の受けて(第一位と第二位はイスラエルとエジプト)となったコロンビアに、ブッシュ政権は、現在、100名からなる米軍特殊部隊を送り込もうとしている。対テロ戦争という見せかけで、ロサンゼルスに本社を置くオクシデンタル石油の石油パイプラインを守るため、コロンビア北部に送り込もうというのである(介入の新たな規則を参照)。この米国による軍事エスカレーションは、これまで、米国が提供した武器と軍事訓練を対麻薬作戦のみに用いるという制限が撤廃されたことを受けて行われている。米国の軍事援助は、今や、世界的な「対テロ戦争」の一環として、米国国務省外国テロリスト組織リストにあげられている左派ゲリラに対して利用できることになった。

しかしながら、ワシントンおよびコロンビアの武装集団が暴力をエスカレートさせたがっているように見える一方、コロンビアには、非暴力で平和と社会正義を追求しようと求める多数の人々がいる。先住民のグループは、武装集団がいずれも先住民コミュニティに共感を示してこなかった中で、自分たちが中立なものとして位置づけられることを求めてきたしまた求め続けている。労働組合活動家たちは、コロンビアの労働者のために、米国が強制する経済の「グローバリゼーション」に反対して声を上げたために、記録的なペースで右派の「死の部隊」に殺され続けている。そして、コミュニティ・グループの指導者たちも、コロンビアの貧困層の福祉に憂慮しているためにしばしばゲリラの共感者とみなされ、準軍組織の攻撃に日々さらされている。

こうした人々に対する暴力が続く中、多くのコロンビア人が、勇敢にも、すべての武装グループが行う暴力に反対して声を上げている。コロンビア・レポートを公開している私たち米州情報ネットワーク(INOTA)は、こうした人々との連帯を表明し、こうした勇気ある人々が暮らすことを余儀なくされている恐ろしい状況を米国(日本)の人に紹介したいと考えている。私たちは、こうした殺害が続く恐ろしい状況が、ブッシュ政権により悪化していると考える。というのも、ブッシュ政権は、米国納税者のお金を、コロンビアにおいて非暴力的にすべての人が参加できる民主体制を発展させようと努力している市民社会のグループに対する政治的・経済的支援を与えるかわりに、暴力を激化させるために用いているからである。

INOTA/コロンビア・レポートの役割は、米国のラテンアメリカ地域における外交政策に対する人々の理解を促すことにより、ラテンアメリカにおける社会経済的正義の実現に貢献することにある。今日の、グローバル化が進む社会において、市民が民主的なプロセスに参加するためには、大企業メディアではない別の情報源から、米国外交政策に関する情報と分析を容易にわかりやすいかたちで入手できることが重要である。今月、コロンビア・レポートは三周年を迎える。過去三年間、私たちは、好意的なコメント、建設的な批判、質問、寄付をいただいてきた。これについては、本当に感謝したい。

私たちのコミットメントはかつてないほど大きいが、困難な経済状況の中で、INOTA/コロンビア・レポートのような非営利組織はむずかしい状態に置かれている。資金不足により情報提供規模を縮小せざるを得ない状況にある。今後も、読者に、実地の調査や観察に基づく分析を提供して行くが、記事を発表する頻度は落とさざるを得ない。けれども、今のところ、コロンビア・レポートのページの最新ニュース・コーナーは、コロンビアでの現状を読者に紹介するために、毎日更新していきたいと考えている。

ワシントンがコロンビアで進めている偽善的な「対テロ戦争」にすべての米国市民が気づいて反対の声を上げていく必要がある。結局のところ、この「対テロ戦争」は、われわれ米国市民の名のもとで行われているのだから。コロンビアでは、政治的殺害により、2001年9月11日に世界貿易センターで殺されたよりも多くの人々が毎年殺されている。さらに、この暴力の一部は、コロンビアにおける軍事・経済政策を支援し資金を提供するワシントンに資金を与える米国の納税者のお金でまかなわれている。来年になったときに、コロンビアがまだ戦争状態にあるか、それとも平和への道を進むことができるかについて、米国は重要な役割を果たしている。みなさんの支援をもとに、私たちコロンビア・レポートの運営者たちは、ニュースと分析をできれば(小さいながらも)続け、コロンビアが平和への道を進めるよう支援したいと考えている。

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  益岡賢 2003年1月7日

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