クリントン、メキシコと中米での米国の軍事的活動を正当化するためにコロンビアの麻薬史を歪曲
ギャリー・リーチ
Colombia Journal 原文
2010年9月20日


米国国務長官ヒラリー・クリントンは最近、メキシコで起きている麻薬をめぐる暴力を、20年前にコロンビアが経験した事態のようだと述べ、麻薬取引ネットワークは「メキシコと中米のゲリラと我々が見なすものへと変容を遂げたか、あるいはそれと協力している」と主張した。バラク・オバマ大統領とメキシコ政府高官はすぐさまクリントンの言葉を正し、メキシコの現状を1980年代のコロンビアのように考えることはできないと述べた。しかしながら、彼らが修正しなかった点がある。それは、クリントンが、コロンビアの歴史を歪曲して、あるいは意図的にねじ曲げて、メキシコと中米における米国の軍事的役割の増大を正当化しようとしたことである。

メキシコについて、クリントンは「麻薬カルテルは今やますますゲリラの様相を見せている。突如として、自動車爆弾が登場したが、これは以前はなかった」と主張する。彼女はらさに、その結果、メキシコは「ますます20年前のコロンビアのようになってきている。麻薬密売組織がわずかではあるが国の一部を支配している。コロンビアでは、国の3分の1以上、40パーセント近くがある時点でゲリラに、FARCに支配されるまでに至っていた」と語る。

20年前にコロンビアで頻発していた自動車爆弾が麻薬カルテルによるものだという点ではクリントンは正しい。実際、1989年から1993年の間に、約40発の自動車爆弾で500人以上が死亡している。しかしながら、コロンビア最大のゲリラである FARCはこの自動車爆弾にはほとんど無関係である。都市部でこれらの自動車爆弾を仕掛けたのは麻薬王パブロ・エスコバルとそのメデジン・コカイン・カルテルであり、コロンビアの麻薬王たちの身柄を米国に引き渡すという当時コロンビア政府が行っていた行為をやめさせようと脅迫したものだった。

さらに、FARCは当時麻薬取引には関与していなかった----さらに、現在でも、大規模に麻薬に関与しているかどうかは議論の余地があるところである。実際、FARCとコロンビアの麻薬カルテルは1980年代末には最大の敵であった。さらに、クリントンの主張とは逆に、「国の一部を支配」していたのはFARCであって、主に都市部を拠点としていた麻薬密売組織ではない。クリントンが、そのコメントの中で、20年前にコロンビアの麻薬カルテルとFARCが一心同体だったという印象を作り出し、麻薬カルテルの暴力をゲリラの暴力と一体化させようとしていることは明らかである。しかしながら、実際には、これら2つの集団は、暴力のかたちも目的もまったく違っており、劇的に対立するものでさえあったのである。

元註コロンビア米国大使トマス・E・マクナマラは、ロサンゼルス・タイムズ紙に書いた論説記事の中で、クリントンの主張を擁護している。20年前のコロンビアのメデジン・カルテルと今日のメキシコの麻薬密売組織とを比較して、マクナマラは、「これら2つの国ではいずれも、カルテルは、政府ではなく自分たちが規則を決め、紛争を解決し、警察力を支配することを要求している。これは明らかに反政府組織の行為である。主権の不正侵害、領土の支配とそれを維持するための武力の行使」。彼はさらに、「これはアメリカの麻薬マフィアによる組織犯罪とは大きく異なる。アメリカのマフィアは主権を強奪しようとはしていない」と述べる。

しかしながら、米国国防省の見解に基づいてさえ、コロンビアとメキシコのカルテルをゲリラ組織と名付けることは正しくない。国防省は、ゲリラを「転覆的手段と武力紛争を用いて立件政府を転覆しようとする組織運動」と定義している。メデジン・カルテルもメキシコの現代のカルテルも、政府を転覆しようとはしてこなかった。メデジン・カルテルは暴力を使って政府の政策に影響を与えようとした(身柄引き渡しをやめさせようとした)のであって、権力を握ろうとしたわけではない。実際、マクナマラの主張とは逆に、コロンビアとメキシコのカルテルの活動は米国の組織犯罪と極めて似ており、ともに、暴力を使い法執行担当官を買収するのもひとえに自分たちの犯罪行為を守るためなのである。

クリントンとマクナマラはどうして、コロンビアの伝統的な麻薬カルテルの暴力行為とFARCを融合させ、コロンビアの歴史を歪曲しようというのだろう? 明らかな答えは、犯罪組織を地域における政治的脅威(すなわちゲリラ)として描き出すことにより、メキシコと中米での米国の軍事的役割拡大を正当化することが容易になるから、というものである。

メキシコには「よりよい法執行手段が必要で、場合によっては、その拡大を防ぎ屋台骨を砕くためにそうした法執行手段に対する軍事支援と政治的意志とが有効である」とクリントンは言う。さらに彼女は、「メキシコ当局はできるだけ自力で対処したいと言うが、我々はいつでも手助けの準備がある。さらに、中米の小国には自分たちだけで対処する力はない」と言う。クリントン国務長官はその上で、軍事的色彩の濃いプラン・コロンビア----70億ドル以上の米国による援助のうち70パーセントが軍事援助だった----はコロンビアで功を奏したと主張し、「中米、メキシコ、カリブ地域でそれに相当する手段を見つけ出す必要がある」と示唆する。

同様にマクナマラもプラン・コロンビアを成功と位置づけ、「もはやカルテル・ゲリラがコロンビアを悩ませることはない。ゲリラ活動は続いているが力は衰えた。新たな麻薬マフィアは今も活動しているが、コロンビアの麻薬密売は大幅に減った」と述べる。実際のところ、プラン・コロンビアの前後で、コロンビアの麻薬密売組織が生産し輸出するコカインの量が大きく減ったわけではない。実際、コロンビアにおける米国の麻薬戦争「成功」とは、単にコロンビアの密売組織がコカインを直接米国に持ち込むかわりにメキシコのカルテルを経由させるようにしたことで、コロンビアの諸都市からメキシコに暴力の場を移しただけのことである。マクナマラによると、メキシコの新たなカルテルに対する米国の対応は、コロンビアと同様、「あらゆる合法的な手段を使ってゲリラを弾圧する」ことであるという。

クリントンとマクナマラがこうした発言をしたのは、南米で始まった波が中米にも伝わり、中米に左派寄りの政権がいくつか誕生したときである。最近、FMLNがエルサルバドルで大統領を生み、ニカラグアではサンディニスタが再び政権の座についた。ホンジュラスでもやはり左に動き、マヌアル・セラヤが大統領に選出された。けれども、軍事クーデターでセラヤ大統領が追放されたとき、オバマ政権はセラヤの政権復帰を要求しなかったため、ホンジュラス政局は右翼に戻った。

中米でも南米でも全体に左派へとシフトしている中で、クリントンが地域における麻薬密売に対して米国は軍事的対応を強化する必要があると主張することは、米国政府が10年前にコロンビアの左派ゲリラによる脅威の増大に軍事援助で対応したことを反映している。プラン・コロンビアのもとでの米国のコロンビアに対する軍事介入は、麻薬との戦いという以上に左派ゲリラとの戦いであった。コロンビアの麻薬に関する歴史を歪曲することでメキシコと中米における麻薬密売ネットワークはゲリラである疑いがあるとクリントンが言い立てるのは、おそらく、存在しないゲリラの脅威ではなく、米国政府の目には左派寄り政府と社会運動の脅威に晒されていると見える中米地域に対する米国の軍事プレゼンス拡大を正当化するための手始めの一発なのである。


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■ 武力で平和はつくれない――もう一つの日米関係へ:パレード

日時:2010年10月17日(日)集合13:00
   パレード出発14:30(雨天決行)
場所:芝公園23号地(JR「浜松町」徒歩12分、
   地下鉄三田線「御成門」徒歩3分、
   地下鉄大江戸線「赤羽橋」徒歩3分)
パレードコース(予定):芝公園23号地→米国大使館→麻布三河台公園(解散地点)
主催:10月「ピースウィーク」2010・東京実行委員会
 実行委員会参加団体:
  JUCON
  ノーベース全国アクション
  WORLD PEACE NOW
協賛:
 沖縄一坪反戦地主会関東ブロック
 日本国際ボランティアセンター(JVC)
連絡先:
 ピースボート:   〒169-0075東京都新宿区高田馬場3-13-1-B1
  TEL: 03-3362-6307 FAX: 03-3362-6309
 許すな!憲法改悪・市民連絡会
  〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-21-6-301
  TEL:03-3221-4668 FAX03-3221-2558 

■ 民主党政権下の軍事計画を読む
  国際宇宙平和週間[2010年10月2~9日]企画

日時:10月8日(金) 午後6時30分~9時
会場:ピープルズ・プラン研究所 会議室   (東京・有楽町線「江戸川橋駅」1b出口徒歩5分、TEL 03-6424-5748
資料代:500円
・2011年度防衛省概算要求を読み解く
 山本英夫(新しい反安保行動をつくる実行委員会)
・「新安保懇」報告書の狙うもの
 杉原浩司(核とミサイル防衛にNO!キャンペーン)
・オバマ政権の軍事費「削減」動向をどう見るか
 山口響(ピープルズ・プラン研究所)

■ 京都市の空き缶回収禁止条例反対デモ!

10月9日(土)
13:00 京都市役所前集合
13:30 出発(南下し四条河原町を右折、四条烏丸周辺解散)
14:30 デモ解散、その後、四条河原町で情宣活動
15:30 情宣活動終了
主催:空き缶回収禁止条例反対デモ実行委員会

9月28日、空き缶の回収を禁止する条例の採決が延期されました。しかしこれは、条例案への批判が高まるなか、賛成する与党会派が拙速な態度の表明を避けたにすぎません。このまま条例案に対する関心が弱まれば、10月21日の「くらし環境委員会」で可決の結論が出されてしまいます。そこで私たちは、野宿者の生活を脅かす空き缶回収禁止に反対するデモを行うことにしました。

■ 沖縄・自衛隊基地の強化を許さない10月9日集会

日時:10月9日(土)午後6時30分開始
会場:
文京シビックホール 会議室1+2
 東京都文京区春日1-16-21電話03-5803-1100
 丸ノ内線・南北線「後楽園」駅、都営三田線・大江戸線「春日」駅3分
参加費:500円
主 催:沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック
連絡先:090-3910-4140
発言:
 自衛隊の配備に反対する「与那国」島民の訴え
  田里 千代基(たさと ちよき) さん
 沖縄の自衛隊の動向
  滝本 匠(たきもと たくみ) さん(『琉球新報』記者)
案内チラシをダウンロードできます

■ 「船ごと徴用」とは? 韓国併合100年の今、
  韓国人太平洋戦争遺族の声に耳を傾けよう

日時:10月9日(土)14時 神戸華僑歴史博物館10階会議室
  (JR・阪神元町駅西口から南へ7分 国道北側歩道沿078-381-3855)
参加費:700円(学生500円)
主催:「韓国・朝鮮の遺族とともに全国連絡会」
共催:神戸学生青年センター
   在韓軍人軍属(GUNGUN)裁判を支援する会
プログラム:
 講演:「船ごと徴用とは?」
  講師:大井田孝さん(戦没した船と海員の資料館研究員)
 韓国からの証言
  姜宗豪(カン・ジョンホ)さん
  崔洛〓(チェ・ナックン)さん
  南英珠(ナム・ヨンジュ) さん

■ アフガニスタンはどうなっているか(第55回市民講座)

日 時:2010年10月16日(土)6時半開始
場 所:文京区民センター 3C会議室
参加費:800円
主催:許すな!憲法改悪・市民連絡会

■ 脱!肥満と飢餓 ~食卓から私と世界を変える~

日時:10月23日(土曜日)14:00~16:30
場所:hanare × Social Kitchen
  京都市上京区相国寺北門前町699
  京都市営地下鉄「鞍馬口」駅 徒歩5分、「今出川」駅 徒歩7分
参加費:500円 + カンパ
Schedule
14:00-14:10「世界食料デーについて」 松平 尚也
14:00-14:40「肥満と飢餓はなぜ起こるのか?」 佐久間 智子
 14:40-15:10「食卓から私と世界を変える、その方法」平賀緑
 15:15-16:00 Talk&Discussion 佐久間智子×平賀緑×松平尚也

■ 映画『“私”を生きる』完成記念シンポジウム

「“私”を生きる」とはどういう生き方なのか
日時:2010年11月23日(火曜日・祝日)
   午後2時〜午後5時(開場 午後1時30分)
場所:東京・明治大学 駿河台キャンパス リバティータワー 地下8F 1083教室
詳しくは、ジャーナリスト土井敏邦さんの映画『“私”を生きる』完成記念シンポジウム案内ページをご覧ください。

■ 「普天間基地の無条件返還と辺野古・徳之島への移設断念を求める署名」

要請事項
1. 沖縄差別に貫かれた5・28「日米共同声明」を撤回すること
2. 普天間基地の即時無条件返還を米国政府に要求すること
3. 名護市辺野古への新基地建設計画を断念すること
4. 徳之島への移設・移転計画を断念すること

【メール署名方法】
メールアドレス:henokojitu.syomei@gmail.com
署名方法:上記アドレスに氏名(ハンドルネームは不可)、住所を書いて送信して下さい。識別のためメールのタイトルを「署名賛同」として下さい。
【署名用紙】
添付の用紙を打ち出して使うか、下記urlからダウンロードして下さい。
個人用
団体用
【署名での個人情報の取り扱い】
本署名、メール署名での個人情報は本署名行動のため以外には使用しないことを約束いたします。メール署名でのメールアドレス等個人情報は署名行動終了後廃棄します。
辺野古への基地建設を許さない実行委員会
問い合わせ先: Tel:090-3910-4140(一坪)・Fax:047-364-9632(一坪)
署名送付先: 〒101-0061東京都千代田区三崎町2-2-13-502
沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック宛
締め切り: 第1次集約 2010年8月末日 最終集約 2010年10月末日
益岡賢 2010年10月4日

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