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2008年12月20日

【閲覧室】三浦和義さんの“遺稿”対談集『敗れざる者たち』出版

 三浦和義さんの最後の著書となった『敗れざる者たち――「後ろ指さされ組」の記録』(ぶんか社/1429円+税)が出版された。共著者の放送作家・河村シゲルさんとともに20数回にわたって開いたトークショーの中から、8人のゲストとの対談の記録を一冊にまとめたもの。
 9月5日、サイパンの独居房で書かれた「まえがきにかえて」は、《この本が書店に並ぶころには、僕は日本に戻り、今までどおりの平穏な生活に戻っていることを想像しつつ、静かな心で合掌です》と結ばれている。それから約1か月後、三浦さんはロスで「帰らぬ人」となった。この本は〈冤罪・報道による人権侵害〉と約25年間にわたり、真正面から闘い続けてきた三浦さんの「遺稿」になった。
 読者は、目次に並ぶ対談相手8人の名前・肩書きを見るだけで、三浦さんという人の交遊の幅広さに驚かれるだろう。新右翼「一水会」顧問・鈴木邦男さん、元連合赤軍の植垣康博さん、和歌山カレー事件・林眞須美さんの夫・健治さん……。その他、元警視庁刑事、民族派右翼、住吉会系組長、冤罪を訴える元受刑者など、世間から「うしろ指」を指されてきた人たちばかりだ。
 彼らと縦横無尽に語り合う三浦さんは、まさに「後ろ指さされ組」の「組長」格だ。《一方的に虚像を創るマスメディアが毎回、被告席にあったようなトークライブ》(まえがき)での三浦さんの姿は、旺盛な好奇心、膨大な読書量に裏打ちされた驚くほどの知識、人への稀有な優しさ、温かい眼差しを感じさせる。
私は読んでいる間、8月にサイパンの拘置所で面会した別れ際に「じゃ、今度は東京で」と手を振った三浦さんの声が何度も甦り、改めて「三浦さんを殺した」日米警察とメディアに対する怒りが呼びさまされた。
《三浦和義という男がいかに敗者・弱者のために尽力し、優しさとユーモアと崇高な志で人生を切り開いて行こうとしていたのか、その男の素顔を見出していただけたら幸いです》――河村さんの言葉に、「ほんとうにそうだ」と思った。(山口正紀)

投稿者 jimporen : 2008年12月20日 18:23