不戦へのネットワーク 有事法制反対ピースアクション

申し入れ書(2008年2月23日:不戦へのネットワーク)

三菱重工 名古屋航空宇宙システム製作所所長様  
従業員のみなさん

 私たちは愛知県内を中心に平和な社会を実現するための運動を微力ながら続けている市民団体です。これまで自治体・行政や自衛隊基地への申し入れなどに出向くことはしておりますが、民間の企業にお願いにあがることはあまりしておりません。しかし、三菱重工業のように大きな企業、それも軍事に関連する工場を持つ企業は、私たちの地域全体にも大きな影響を持っています。ぜひとも私たちの意見・気持ちをうけとめていただきたいと思い、今回、申し入れにきました。よろしくお願いいたします。

 三菱重工は日本のトップ企業です。戦前は、残念なことに、戦争や軍事と一体化したものでありました。その歴史は加害と被害の歴史でした。象徴的にいえば、重慶爆撃をおこなった爆撃機は三菱の製作したものですし、名古屋の道徳工場では朝鮮半島から連行した少女を働かせていたという事実があります。名古屋空襲は三菱などの軍需工業を標的してなされ、多くの従業員、市民に犠牲をもたらしました。しかし、こうした加害・被害の歴史は一企業の歴史というより、この地域の歴史そのものとして、私たちは胸に刻まなければならないと思っています。

 日本そしてアジアに悲惨な被害をもたらした侵略戦争への反省をして、戦後の日本は出発しました。平和憲法を制定し、専守防衛、武器輸出三原則、そして非核三原則などを国の基本姿勢として明確にしてきました。この原則は、国はもちろん、企業も守るべき約束事として、現実に力強く機能し続けてきましたが、その背景には平和を求める人々の声があったことは疑いえません。平和で豊かな社会の実現に貢献したいという気持ちが、戦後の人や企業の活動の原点でありました。それは今でも変わってはいないと思います。インターネット上のホームページで、貴社の新人社員の紹介を見ました。「空への想い」「宇宙への夢」が入社の動機であったと語る若い人が大半でありました。貴社の将来を支える若い人たちの夢に強く共感しました。夢を語ることは、平和への想いを語ることでもあると思います。

 守屋前事務次官の汚職問題を契機として、軍需企業と防衛省のあいだに癒着ともいえる体質があるとの指摘がされています。三菱重工業の2006年度の防衛省との契約額は2776億円で、これは他の企業にくらべて圧倒的な数字です。しかし、防衛省OBの受け入れも62人とトップなのです。自民党への献金は3000万円とされています。私たちは、経営規模も技術力もトップの位置にある企業が軍事に大きくシフトし、政府、防衛省と密接な関係になっていくことに大きな不安を感じます。アメリカがイラク攻撃にふみきった背景には軍事産業の存在があるという指摘がありますが、現米政権の人的構成をみれば、それを一概に否定することができません。産軍複合体への懸念を表明した故アイゼンハワー大統領の退任時の演説はとても有名です。現在、自衛隊の兵器の能力はますます専守防衛の範囲を逸脱するものになっており、経費も莫大なものになり、関連企業には大きな利益をもたらすものとなっています。ミサイル防衛システムのなかで、PAC3は08年配備分からは三菱重工がライセンス生産し、その受注額は500億円といわれます。このミサイルは小牧北工場(名古屋誘導推進システム製作所)で生産されます。ミサイル防衛は先制攻撃とセットで考えられているので、防衛のためだけの技術とはとても言えませんし、その実効性も疑問視されています。その上、集団的自衛権の行使の禁止、武器輸出の禁止、宇宙の軍事的利用禁止などわが国の平和外交の基本原則にことごとく抵触しています。そしてなによりも莫大な経費がかかります。小牧南工場では戦闘機F2はじめ多くの戦闘機、ヘリコプターの生産、修理をおこなっています。昨年10月31日、小牧南工場で点検・整備中だったF2機が県営名古屋空港で大きな事故をおこし、あわや大惨事となるところでした。私たちはこのような住宅地に近いところで戦闘機の試験飛行がおこなわれていた事実にも大変驚いています。

 私たちは貴社の持つ企業力、技術力が平和的に役立てられることを強く望みます。それが「大空への想い」「宇宙への夢」をもつ若い社員の健全な志を実現する道であると思います。

 現在愛知県は県営名古屋空港に隣接する用地を国から購入し、三菱重工社に貸し出す予定としていますが、もしそれが間接的なかたちであれ、兵器開発につながるものであれば、県民は到底納得できません。「元気なモノづくりの愛知」は平和に貢献してこそ誇れるものです。従業員とその家族の生活をささえながら経営努力をされているみなさんにむかって申し上げるのは心苦しいことですが、再び戦前にもどることのないような会社の舵取りを切にお願いします。戦闘機などの兵器の開発、生産をやめてください。住宅地に近い県営名古屋空港での戦闘機のテスト飛行はやめてください。ミサイル防衛(MD)から撤退してください。以上、申し入れをいたします。この申し入れの内容を本社の方に報告してくださることを強く希望いたします。よろしくお願いします。

2008年2月23日
不戦へのネットワーク


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