不戦へのネットワーク 有事法制反対ピースアクション

【不戦ネット会報47号/2007年9月27日発行】
「対テロ戦争」と自衛隊派兵 「自衛隊イラク派兵差止訴訟」の社会的意味

池住義憲(自衛隊イラク派兵差止訴訟の会代表)

日本が今参戦中!これが現実

 安倍政権から福田政権へ。「対テロ戦争」支持と自衛隊海外派兵による参戦という政府の違憲行為は、引き継がれる。それだけではない。既成事実の積み重ねによって、戦争支持と参戦は強化され、常態化されようとしている。

 政府は、いつも「テロとの戦い」という表現をつかう。テロ特措法もイラク特措法も、「テロとの戦いのために!」が前提となっている。だが、誤魔化されてはいけない。ブッシュ米大統領が使っている言葉は、「ワァー・オン・テラァー」(“War on Terror”)。「戦争」だ。

 6年前の9・11事件をきっかけとして米国がアフガニスタンに対して先制的自衛権を行使。「不朽の自由作戦(OEF)」と称して「報復戦争」を2001年10月、アフガンで始めた。さらに2003年3月、こんどは「イラク自由作戦(OIF)」と称して「イラク戦争」を開始。根は同じだ。両方の戦争をブッシュ大統領は「対テロ戦争」と呼んでいる。両戦争とも、国際法違反だ。戦争の指揮権は、アフガンもイラクも米中央軍司令部が持っている。米国にとっては、二つの「対テロ戦争」が一体化している。

 日本は、憲法で戦争を永久に放棄した国。憲法で武力行使を永久に禁止した国。そうした憲法を持つ国が、他国(米国)が起こした「報復戦争」「国際法違反の戦争」を支持し、参戦し続ける…。「国際貢献」「国際協調」という名のもとで。

 インド洋では対テロ作戦(OEF)だけでなく対イラク作戦(OIF)にも従事している米軍艦船に6年余にわたって給油・給水。イラクでは昨年7月の陸自撤退後も、空自は米軍兵とその関連物資を中心とする空輸活動を今も行っている。日本は、今、「アフガン戦争」「イラク戦争」という二つの戦争に「参戦中」! これが現実だ。こんなこと、絶対に許してはいけない。

田近判決を生かし、違憲判決を勝ち取ろう。

 自衛隊イラク派兵差止訴訟、提起してから3年半が経った。政府が行っている自衛隊のイラク派兵という違憲行為をやめさせる裁判だ。困難な中にも、希望のもてる二つの動きがある。

 第一は、本年3月、第7次訴訟(原告1名)の判決で、「田近判決」と呼んでいるものだ。敗訴ではあったが、大きな前進を勝ち取ることができた判決だ。裁判所は、「憲法9条に違反する国の行為によって個人の生命・自由が侵害されず、また侵害の危機にさらされない権利」を、憲法上保障されている権利として正面から認めた。また、「同条(9条)に違反する戦争の遂行ないし武力の行使のために個人の基本的人権が制約されない権利」も認めた。これは、初めてのことだ。

 さらに「田近判決」では、間接民主制の統治システムが円滑に機能していない場合は、裁判所が違憲性の判断を積極的に行うべきである、とした。改正イラク特措法は、民意に反し、政府は十分な国会審議を尽くすことなく、強行採決という暴挙で成立させた(本年5月)。この一点をもっても、間接民主制は機能していない。裁判所は、今こそ違憲立法審査権を行使すべきである。

 第二は、現在進められている控訴審の動き。第1〜6次原告の第一審では実質審理はまったく行われなかったが、第二審(控訴審)ではついに証人尋問が認められた。しかも、二人も! 来る10月25日(木)には小林武愛大法科大学院教授が、また、来年1月31日(木)には山田朗明治大学教授をそれぞれ証人尋問することになっている。裁判所がこれら二人の証人尋問を認めたということは、裁判官が違憲判決も視野に入れているということだ。

 「田近判決」と控訴審での証人尋問実現。この二つを連動させて、違憲判決をなんとか産み出したい。裁判所が自衛隊派兵は違憲だとの判断を下せば、今後の自衛隊海外派兵を食い止める力になる。憲法を守り活かす大きな力になる。立憲主義を取り戻すことになる。

 こうした裁判の動きと並行・連動させ、10月31日期限切れとなるテロ特措法に替わる「新法」成立の企みを砕こう。同時に、「イラクからの自衛隊撤退法」を成立させよう。参院での野党過半数という状況を最大限に活かして。

(2007年9月24日夜記)


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