不戦へのネットワーク 有事法制反対ピースアクション

【不戦ネット会報47号/2007年9月27日発行】
あいち平和のための戦争展  米軍再編 「岩国」を中心に

 毎年8月に行われている「あいち平和のための戦争展」に、今年も「すすむ日米軍事同盟」をテーマで、特に、岩国での再編問題を中心に展示を行った。前号では、「米軍再編推進法」の問題点を指摘したが、5月23日、法案は参議院本会議で強行採決され、成立した。「米軍再編推進法」は、沖縄からのグアムへの移転経費60.9億ドル(約7300億円)と2007年度再編交付金51億円をはじめとする3兆円にも及ぶ負担と、再編に関連する自治体に対し、再編を受け入れた場合にのみ進捗状況に応じて交付金を交付するといった内容が盛り込まれている。日本の負担(税金)で初めて海外に基地が作られ、自治体にはより露骨に「札束」で再編を強要する悪法である。

 しかし、昨年3月、厚木基地からの空母艦載機の移駐を住民投票で拒否した岩国では国・県による露骨ないじめ・嫌がらせが起こっている。(前号 「爆弾を落とし続けるアメリカ 平和を装い続ける日本 でも只今再編中」シンポジウム 岩国市議田村さんの報告参照)田村議員の報告では、すでに決まっていた岩国市の新市庁舎建設の補助金35億円がカットされ、合併特例債を使った予算案を市議会が否決し、2007年度予算が組めていない、というものだった。本来、新市庁舎建設の補助金は、SACO合意で、普天間基地からの空中給油機移転と引き換えに出されるものであった。国はこれを、「空中給油機の移設は米軍再編関連になった」との詭弁で、米軍再編を拒否する井原市長への圧力とした。結局、6月議会で合併特例再を使った予算が再び拒否され、交付金での予算が成立し、問題は先送りされた。

愛宕山への米軍住宅建設問題

 そして、さらに大きな圧力が加わってきた。愛宕山への米軍住宅建設問題である。岩国市のほぼ中央に愛宕山という山があった。800年もの歴史を持つ愛宕神社があり、春には桜の花が咲き、市民の憩いの山であった。1994年、「基地周辺の騒音の軽減」ということで岩国基地の沖合い移設の話が持ち上がり、この愛宕山を削って沖合いの埋め立て用に使い、跡地の102haは住宅建設用地にし、負担の軽減とニュータウン建設よって地域の活性かに生かす、というものだった。事業主は山口県住宅供給公社で、工事は、1997年に始まり、土砂の搬出は今年3月に終わり、2008年には大型岸壁を持つ新滑走路が完成する。

 しかし、県は、「土砂採取費用がかさばり、住宅需要も落ち込んでいることから、このまま工事を進めても採算が合わない、今やめれば251億の赤字(県負担3分の2、市負担3分の1)ですむ」との見通しを示した。そこで出てきたのが、開発計画の中止と「米軍住宅建設」への転用である。全体の1/3の負担を背負わされれば岩国市の財政は破綻する。まさに、再編特措法を待つまでもなく、国・県の強権的・露骨な「岩国いじめ」が進んでいる。9月23日付の新聞では、米軍住宅建設につながる、として国への売却を拒否していた井原市長は、「県と市との共同事業として転用策など後処理を行うことを前提とし」「現時点で、米軍住宅は考えられない」としながらも、国への売却に合意したと報道があった。市長の苦渋の選択の姿がうかがえる。これに対して、米軍再編や米軍住宅建設に反対する市民の活動も積極的に取り組まれている。新市庁舎建設のためのカンパ活動、住民投票と愛宕山の問題を扱ったドキュメンタリー映画「米軍再編岩国の選択」「消えて鎮守の森」の全国上映会と市長の全国での講演会の設定などである。(市議会で市長の募金活動中止の決議が上がったとのこと)

 日本は、アフガニスタン・イラクとアメリカの戦争にどこまでも追随しようとし、更に出口の無い「対テロ戦争」のために、自衛隊の再編も含め、日本全土を米軍の出撃基地、兵站基地化を目指すのが米軍再編の本質である。なりふりかまわない「ムチ」で受け入れを迫る手法は、今後、沖縄でも神奈川でも基地を抱えるどの自治体でも起こりうる。

 もしも、名古屋の東山丘陵に米軍住宅を建てるといったら、海上の森に建てるといったら、あなたはどうしますか?それが現実の問題として突きつけられているのが岩国である、ということを想像し、この問題をぜひ考えてほしい、と思う。
戦争展、4日間の入場者は2500人。この展示でどれだけの人がこの問題に関心を持ってくれたのかわからないが、「遠い岩国の問題」ではなく、「戦争をしない」「基地・軍隊は要らない」という共通の思いで、より関心を持ってほしいと切に願う。

(山本みはぎ)


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