有事法制反対ピースアクション 不戦へのネットワーク

沖縄戦「集団自決」への日本軍の関与を否定する教科書検定結果の撤回を求める要請書
(2007年9月29日)

文部科学大臣 渡海紀三朗 様

 文部科学省が今年3月30日に公表した高等学校歴史教科書の検定結果で、沖縄戦における「集団自決」(強制集団死)について、「日本軍に強いられた」「日本軍によって集団自決に追い込まれた」など記述した複数の教科書から「沖縄戦の実態について誤解する恐れのある表現」として修正を指示し、日本軍が関与・強制した部分の記述を削除させました。
私たちは、この歴史的事実を歪曲・隠蔽する教科書検定結果の撤回と修正を強く求めます。

1)軍の強制・誘導があったことは明らか
1945年3月の米軍の沖縄上陸から始まった「沖縄戦」は、国内唯一の地上戦として戦われました。その内実は、「軍官民共生共死の一体化」の方針の下で、防衛隊・学徒隊・義勇隊などに一般住民、老若男女こぞって動員し、その結果、住民15万人が亡くなるという凄惨な戦いでした。そのような極限状態の中で起こった「集団自決」(集団強制死)が、住民が自発的に行ったものではなく、強制されたものであることは、これまで幾多の住民の証言によって明らかにされています。また、1997年の第3次家永教科書裁判最高裁判決でも「極端な皇民化教育・日本軍の存在とその誘導・守備隊の隊長命令・鬼畜米英の恐怖心・軍の住民に対する防備対策」など軍の存在と誘導を認め、「一律に集団自決と表現したり美化したりすることは適切ではない」としています。

2)教科書検定の欺瞞
  今回の教科書検定について、伊吹元文部科学大臣は、「文部科学省の役人も、安倍首相もこのことについては一言も口出しできない仕組みで行われている」と答弁し、政府の関与を一切否定しています。しかし、検定を担当した教科書審議会の日本史小委員会での審議では「集団自決」の審議は一切なく、文部科学省の教科書審査官の、検定意見の原案がそのまま意見として通ったことが委員の証言で明らかになっています。しかも、この委員会には沖縄戦を専門としている委員は一人もいないという実態も明らかになりました。
歴史的事実を歪曲し、国の都合のよいように書き換え、しかもその関与を否定し責任の所在を隠蔽する国のやり方は教育の国家統制をより強くするものであり、断じて許されるべきではありません。

3)歴史的事実の歪曲・美化は許されない。
 この沖縄戦での集団自決(強制集団死)に対する軍の関与を否定は、沖縄住民が国(天皇)のために軍に協力し、自発的に死を選んだかのように歪曲・美化することになります。多くの証言者の声を無視し、歴史的事実の改ざんにほかなりません。その根本の目的が、自衛隊のイラク・アフガニスタンへの派兵や一連の「有事法制」の制定、「日米軍事再編」、そして改憲などを通して「戦争ができる国」へと進めようとする勢力が、南京大虐殺や「従軍慰安婦」にかかわる歴史改ざんや否定、教育基本法の改悪、靖国問題など歴史事実を「修正」し、国家統制を強めていこうとする流れの中の一環であると言わざるを得ません。

 県民の総意として、沖縄県議会では二回の、「教科書検定意見の撤回と『集団自決』に関する記述の回復を求める意見書」を可決し、県内41の自治体が同様の意見書を可決しています。今日、9月29日、沖縄では「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が開催されます。
「集団自決」の軍の関与否定の検定問題は、沖縄の問題だけではありません。戦争を美化し、歴史を歪曲するものは再び「戦争」を作り出します。
私たちは、沖縄戦で示された「軍隊は住民を守らないのみか、住民を死に追いやる」という重い歴史的な事実を直視し、二度と再び侵略・戦争の加害者とならないためにも、検定結果の撤回と修正を強く求めます。

2007年9月29日
不戦へのネットワーク


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