不戦へのネットワーク 有事法制反対ピースアクション

【不戦ネット会報46号/2007年4月26日発行】
自衛隊はイラクから撤退しかない 〜イラク特措法の延長反対の声を〜

勇気あるイラク女性サーブリーン 
(前文略)来月3人のイラク女性の処刑が予定されていることについて人道機関が警告を発している。ワッサン・ターリブ、ザイナブ・ファディル、リカ・オマル・ムハンマドの3人だ。いずれも「テロリズム」の罪に問われている。つまり、イラクレジスタンス組織とつながりがあるということ。これは、彼女たちが、レジスタンスに加わっていると疑われる人物の親戚かもしれないという意味だ。あるいは、彼女たちがたんに悪いときに悪いところにいただけのことかもしれない。一人は刑務所で出産した。彼女たちがどんな拷問に耐えたのだろうと思う。アメリカの占領下でイラク女性は少なくとも"ある程度は"平等だったなんて、誰にも言わせない―いまや男性と同じように処刑されるほど平等なのだ。

 そしてまた、国内や国外にいるイラク人とイラクにいるアメリカ人、どちらにとっても状況は悪化し続けているときに、アメリカにいるアメリカ人はいまだに戦争や占領を――勝ったのか、負けたのか、良くなったのか悪くなったのかと討論している。
 ぐずぐずと問い続けているあらゆる馬鹿者たちのためにはっきりと言おう:状況は悪くなった。もうおしまい。あなたの負け。あなたが持ち込んだ、アメリカじこみの猿どもの歓呼を受けて、戦車でバグダードに乗り込んだ日に、あなたは負けた。兵士が陵辱したすべての家族を、あなたは失った。アブ・グレイブでの写真が公表され、私たちが目の当たりにしている、この路上で繰り広げられた残虐行為が、収容所の壁の向こうと同じだと実証されたとき、勇ましく、まっとうなイラク人をあなたは失った。殺人者を、略奪者を、無法者を、そして暴力団の親分たちを権力の座につけ、イラクの最初の民主政府として彼らを迎えたとき、あなたは負けた。身の毛のよだつ処刑を最も偉大な達成と称したとき、あなたは負けた。かつては持っていた敬意と評判を失った。3000以上の兵士を失った。それがアメリカが失ったもの。せめて石油がそれだけの価値あるものであったと願いたいものだ。
     バグダードに住むイラク女性、リバーベンドの日記 2月20日より http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/

 右の文章は、インターネットで配信されるバグダッド在住の女性、リバーベンドの日記の一部です。アメリカの軍事侵略が引き起こした、言葉にできない程の状況に対する絶望感、やり場のない怒り、何万人、何十万人とカウントされるイラクの人々の「死」、破壊される人間性、ということを改めて認識させられる内容です。

 この状況をマスコミは、「宗派対立」として報道していますが、そもそも、この混乱は、アメリカブッシュの、攻撃と占領が引き起こした事態です。力で抑えていたとは言え、あのフセイン政権時代にさえこのような悲惨な状況はなかったのです。NBCニュースとウォール・ストリート・ジャーナルが実施したイラク国民を対象とした世論調査では、ほぼ66%が、「もし米軍が撤退するなら暴力・武力事件は減る」と考えています。それほど、ブッシュの戦争は罪が深いのです。ブッシュは、このイラクの混沌を打開するためと称して、3万人もの増派をしましたが、酒井啓子さんは「戦争を行った国が戦後の治安確保や市民生活の安定に責務を負うことは当然だが、そのことはイラクの人にとっては『復興』として求められるものではなく『賠償』として求められるべきものだろう、」と指摘しています。(DAYS JAPAN4月号)

 そして、その戦争に、「復興支援」のためと称し、重武装をした自衛隊を派兵し、米軍の物資・兵員の輸送を行い、戦争の一翼を担っているのがこの日本の現実なのです。自衛隊派兵による2003年から3年間に自衛隊の「イラク復興支援」に使われた経費は約650億円。この外に、約50億ドルのODAと60億ドルの債務救済など行っています。3月30日、外務省はイラクからアクラム・アル・ハキーム国民融和担当大臣らを招聘し、「イラク国民融和セミナー」を開催しました。石油の90%を中東に依存する日本は「長期的・戦略的パートナーシップを構築し、お互いに利益を得るような関係になること」が重要と謳いあげ、「ODAと自衛隊の活動は車の両輪」と外務省は言います。血を流すことに加担し、(犠牲者も出ていますが)更に「国益」のために美辞麗句を並べる姿は醜いとしか言いようがありません。

 アーミテージ新報告『米日同盟―2020年までアジアをいかにして正しい方向に導くか』にあるように、今後ますます日本はアジアの中で米国の対テロ戦争の重要なパートナーとして位置づけられ、「国益」を守るために積極的にそれを推進していくでしょう。イラク派兵は、そのために今後進められようとしている日米軍事再編、9条改憲へのステップでもあります。既成事実としての壊憲状態を止めること、緊急のこととしては、今進められているイラク特措法延長を止めることが何より私たちに課せられた課題なのです。

(山本みはぎ)


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