沖縄の米軍は誰を守っているのですか!
米軍兵士の女性暴行事件に関して日本政府に要請します

内閣総理大臣 小泉 純一郎 様

前略

 私たちは、反戦・反軍隊の立場で平和運動に取り組んでいる市民グループです。
 私たちは、先に沖縄・下地島空港及び波照間空港へ米軍機が着陸したことへの抗議書を差し上げました。(5月26日付)そこにおいて、米軍基地犯罪・事故等が多発し、住民が日々平和に暮らす権利を脅かされていると訴えました。幼い少女への暴行事件を始め、1995年には少女強姦事件が発生しました。それが契機となって沖縄県知事の代理署名拒否、ひいては県民総決起大会へとつながったことを、貴職もご記憶のことと思います。さらに昨年、世界の首脳が集まったサミット終了後に皮肉にも海兵隊による犯罪が続発し、駐留米軍の責任者が謝罪するはめになりました。今回またもや北谷町で女性への暴行事件が発生し、米兵容疑者への逮捕状が出ました。北谷町では今年に入って米軍関与の放火事件等が相次ぎ、幾度も町議会が開かれています。「またか」という思いが禁じ得ません。

 端的に申せば、日本政府のいう「日米安保によって日本が守られている」という説明はまったく説得力を持たない言い分であるということです。沖縄は、ずっと米軍基地ゆえの犯罪・事件・事故にさらされ続け決して安全ではなかったからです。日常的な生活を脅かされて、どうして守られていると言えましょうか。「守ってくれるはずの米軍」が、襲ってくるのです。日本政府のいう「日本」が「沖縄を除外しているのであれば別です。それは明らかな沖縄蔑視であり差別です。

 今回の事件で、稲嶺知事は「人権に関する問題であり、あってはならないこと」と怒り、北谷町議会は抗議決議を上げました。

 しかし、もはや米軍の「綱紀粛正」にはまったく効力のないことが証明されてしまいました。日米首脳会談において、ブッシュ大統領は一応謝罪しましたが、沖縄県民の負担軽減の具体策は何ら進展しませんでした。小泉総理は「これほど強く信頼関係を築けるとは思わなかった」(朝日新聞7月1日付)と言っておりますが、誰と誰の信頼関係なのか、わかりやすく沖縄県民全体に説明する必要があると思います。総理がハンセン病患者に対する謝罪と人権回復で示した「人権感覚」は、50年以上に渡る沖縄の艱難辛苦に対してどのように生かされるのでしょうか。

 私たちは、今回の事件の徹底糾明と加害者の処罰を当然、日本の手で行うことを要求します。けれども、それだけではなく、沖縄県民すべてが米軍基地ゆえに被害を受けることが二度とないように、日本政府の責任において地位協定の抜本的見直しをアメリカ政府と交渉すべきであると考えます。沖縄県民の人権を尊重せずして他国の人権問題に介入できる権利はないと思います。

 そして、これ以上の米軍基地拡大・強化は決して民衆の安全保障につながらないことを認識し、米軍基地の縮小・撤去に向けて最大限の努力をするよう求めるものです。

以上

2001年7月3日

不戦へのネットワーク 代表・水田 洋(名古屋大学名誉教授)


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