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禁断の極秘文書・日本放送労働組合 放送系列
『原点からの告発 〜番組制作白書'66〜』-26
メルマガ Vol.26 (2008.04.10)

(第3章 人と機構 3 もう黙ってはいられない)

D 経営者側のビジョンの欠如と我々の諸要求
     ――あるべき職場の姿を求めて――

 これまで繰返し述べてきた諸々の不満はつまるところ、経営者にサービ
ス部門に対する一貫したビジョンのないことを露呈した。独自のビジョン
をもたないこれらの部課は機構改革のたびに他の部門の要求なり機構決定
を待ってはじめて自己の位置を見出してきた。そのため担当職制に自分の
部課の展望を課員に示す自信がない。このビジョンの欠乏と自信喪失はサ
ービス部門全員の勤労意欲に大きな影を落している。

 ――部員は将来に対して不安を抱いている。夢物語ではないしっかりし
   た構想を求めている。ところが資料業務に対する消極的な経営政策
   のため資料部員の中に陽の当たらない者意識を醸成している。(業
   5)――
   
 ――番組交換業務の国際からの離脱は数年前の機構改革の際にも問題と
   なったがその将来の方向が管理職にも一般職員にも現在皆目見当が
   つかない。宙ぶらりんの状態に置かれていることが問題となってい
   る。こうした中で郵便局的な仕事に忙殺されているが、ここでも協
   会の将来に対する無計画性を強く指摘したい。(国1)――

 放送料の格付けの問題を抱えた著作権にしても、映画の機材管理、ある
いは調達映画の今後の課題にしても、また総務部の放送料支払いシステム、
写真課の在り方にしても、サービス部門にビジョンの欠乏を訴える声の聞
こえないところは無い。
 事業部では放送総局に所属するよりは広報あるいは営業局に所属した方
がいいのではないかという見解があがっている。
 総務部の美術管理にも現行の機構では本来業務すら十分に果たし得ない
という不満の声が高い。

 ――美術管理は過去に於いて美術部門を解体した時、美術センターへも
   移行せず制作局の総務部に移った美術デザインや進行の職種に含ま
   れなかった者が美術開発の事務局という名目で総務部の中に残った。
   美術センターの窓口、美術研究が主たる業務であるが全国を統括す
   る横のつながりはおろか本部の制作部局の美術とのつながりも個人
   的なものにすぎず関連業務間につながりのないことが大きな欠陥と
   なっている。よりよいデザイン・セット開発への意欲はあっても関
   連部局間に交流のない現在ではそれも不可能に近い。美術の真の向
   上を重視するならば放送総局内に美術を総括するセクションを設け
   ることが必要である。(業1)――

 もはや経営者側からの改革では待ちきれなくなってきている。しかし現
場の職制には依然として日常業務が過不足なく遂行されれば問題はないと
する現状維持的な拱手傍観の傾向が強い。こうした保守主義を打ち破り現
状の沈滞に突破口を開かなければならない。今こそ我々はサービス部門に
働く者が声を大にして現状打開の要求を掲げる時だ。要求は不満の裏返し
でもある。サービス部門に主体性の生かせる道を講じるべきだ。
 職場環境の改善を迫り人事交流をつきつけ、業務内容の不合理な部分は
修正し、実情に合わない機構は作り直す。我々の不安を和らげるために一
刻も早く将来の青写真を示すべきだ。そして職場から上がる建設的な声や
アイデアはどんどん登用してゆかなければならない。職場の意欲的な芽を
摘み取るようなことは絶対に許されない。
 最後に各職場から出された職場のあるべき姿のいくつかを披露しておく。

 ――機械的な収集、整理整備の業務から脱却してより質の高い資料コン
   サルタントを養成すべく研究の時間を与えて欲しい。自主的にやる
   資料取材、資料の再構成、調査などの業務を重視すべきだ。これま
   での資料業務のような体力だけが要求されるような整理貸出し業務
   から、より積極的な調査研究分析業務への志向が一致してみられる。
   (業5)――
   
 より良き放送のために加担したいというのがNHKに働く全労働者の共
通の願いである。放送はアイデア産業である。優れたアイデアを得るため
に、アイデアの民主主義が確立されることが望ましい。それはアイデア提
出の機会均等であり、公正な段階を踏んでアイデアの取捨選択が行われる
制度であり、埋もれた才能やアイデア開発の絶え間ない努力である。以上
の理由からサービス部門に働く者の中に澎湃として抑えることのできない
“放送制作への参加意志”を抑圧すべきではない。

 ――番組制作部門との人事交流を盛んにして、番組提案の段階から資料
   スタッフが参与できる体制をつくる。また番組制作に加わった過程
   で資料を蒐集してゆくという意見もある。(業5)――

 本当にやりたい仕事への提案を贅沢だと斥けてしまうべきではない。

 ――本当にしたい仕事は放送企業内での写真という大前提に立って写真
   の力を本当に発揮し主体的で創造的な撮影取材・印画作成である。
   テレビというメディアの中で写真の特性をフルに生かした企画制作
   をやってみたい。例えばスチール構成番組。別に広報部門で写真課
   の創意を生かしたグラフィクなども興味がある。また1人のカメラ
   マンが撮影から焼付けまで担当する体制、撮影の前と後で話し合い
   の場をもてるような一貫したスティール・ディレクター的な仕事も
   やってみたい。(業4)――

 現場に密着した制作各局の総務部の中には現場との間に断絶感をなんと
か埋めてゆきたい希求がある。

 ――この断絶感を埋め少しでも自分たちも番組制作にタッチしている、
   何らかの関与をしていると実感するためには製作現場にとび込んで
   ゆける体制が必要だ。具体的には総務部のルーティン・ワークをも
   う少し減らして、その分をロケマネでも良し臨時PDでも良し、接
   待の弁当配りでも良い、とにかく番組制作のプロセスの中に参加し
   た仕事に振り向けるようにすることだ。(教7)――

 そしてさらに必要なことは参加してゆく放送番組が「真に国民のため」
の「豊かで良い放送」を送る精神で制作されることにある。ここで言う豊
かで良い放送とはどんな放送であろうか。最後に「豊かな放送」の意味を
問いかけた映画調達セクションのレポートを紹介する。

 ――放送の豊かさとはどういうことか。それは各種ジャンルの番組がバ
   ラエティ豊かにあるという量的な基準ではない。人間と社会の真実
   を直視し、いかなる表現上の制約を受けないという姿勢をかかげた
   プロデューサーたちによって、多種多様の鋭い視点に裏打ちされ、
   責任ある主張を持った色々なジャンルの番組が百花斉放し全体とし
   てのバランスのとれている状態を豊かと言うべきである。TVの一
   層性に過ぎないお茶の間性を金科玉条として人間精神の苛烈な追求
   と芸術の無尽蔵のポテンシャリティーを抹殺してしまうことは現代
   文化の主要なファクターであるTVの制作者にとって許されない冒
   である。「〜からの自由」という自己規制を伴った消極的中立主義
   にばかりとらわれず「〜への自由」という積極的な姿勢が確立され
   るべきだ。以上の原則にのって調達映画もいたずらに制約のみを課
   することなく、その作品がどれだけ現実と真実に肉迫し得たか。芸
   術的な完成度、あるいは創造意欲という点を基準にして自信をもっ
   てセレクトしてゆかねばならない。――

 ――調達映画の時間枠を拡大し、常設し、随時マーケットに乗った優秀
   な作品は先づけして購入しておき後で編成するというプール制を採
   用すること。調達部門と現場を一本化し、データを持っている触角
   となる部課に提案権を付与し、細分化されたプロセスを3部課ぐら
   いに結びつける。さらに世界の優れた作品を保存して演出者の参考
   にするライブラリーも考えられる。――

 ――放送における豊かさの意味が再認識され、芸術性や社会性が大幅に
   採用され、市場の映画に対して機動性(ニュースの独占物ではな
   い)のある体制が作られて、日本国民にぜひ見てもらいたい作品が
   どんどん放送されるようになれば、サービス部門たる映画班員の疎
   外感や主体性喪失の意識は払拭され、仕事に対する情勢と充実感が
   ずっと横溢するようになるだろう。(業4)――

 これは何も映画調達に限られたことではない。本当に豊かで良い放送を
電波にのせる体制があり、その放送制作の過程において主体的な参与を果
たし得ているという実感が保証される時、サービス部門であれどんなセク
ションであれ、仕事へのモラルは自然と高揚してくるであろう。この時こ
そ、かつての原体験と現在の現体験とが何のためらいもなく一致する幸福
な放送労働が成立するのだ。
 しかしその幸福な日はまだ遠い。我々の現体験は原体験からあまりにも
へだたった所にある。この現実をふまえて、NHKにあって特に大きな権
限を附託されている人々に対し、全体にみなぎる不安と沈滞の灰色の霧を
一掃すべく自らの責任と自らの原体験をかけて勇気ある改革に着手するよ
うに要請するものである。



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