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秘密日記 秘書の独り言


7月31日(火) 晴れ

7月も終わりだ。引っ越しも終わりだ。くたびれた。社内全員でしおれてる。涼しくて良かった。一頃の炎熱地獄のまま荷物運びなんかしたら死んでた。足の踏み場もない。秘書の机も段ボール箱の下敷きだ。どこに何があるか、明日から大型立体パズルが始まる。


7月29日(日) 晴れ

お葬式だった。日本の民主主義が死んだ。参議員選は突風が吹き荒れて・・・

なんてセリフを秘書が言う訳ない。

昨日、我が家の天竺鼠が死んだ。秘書がひいこら荷物運びをしている間に、同居人がぐうすか朝寝をしている間に。同居人が目を覚ました時には横たわっていたという。朝、秘書がお家を掃除して敷物を取り替え、ごはん入れもきれいに洗って新しいペレットとおやつビスケットを入れ、トマトときゅうり(好物)の薄切りも並べた。その時はいつも通りだった。ちょっと元気がなかったが、猛暑が続いたせいだと思っていた。

死んだのは午前11時頃らしい。ひっそり1匹で死んだのかと思うと切ない。朝入れたビスケットを半分かじっていた。

推定で享年4歳8カ月。平均寿命は3年位と言うので、長生きしたほうだったろう。家の中で放し飼いにしていたので、寄ってきてはかまってくれろと足をかじったり、寒い冬にはストーブの真ん前に陣取ったりスリッパを敷物代わりにしたり、また結構グルメで味の落ちる野菜にはそっぽを向いたり、妙に人間くさいふるまいが多かった。

工事中で荒れ果てた庭のかろうじて伐採を免れたライラックの根元に穴を掘って埋めた。来年の春盛大に花が咲くだろう。


7月28日(土) 晴れだか曇りだか

雷が鳴って雨が降って急激に涼しくなって、ほっと一息つく日々が続いた。

今日引っ越しトラックの第2便が走った。秘書も現場人足にかり出された。こんな細かいのが荷物の間をちょろちょろしてたらかえって邪魔ではないか、と辞退を申し出ようと思ったが、2本脚歩行が出来て前脚で荷物が運べるなら猫でもいいんだぞ、との有り難いお言葉を頂戴した。秘書の知り合いの猫に2本脚歩行のできるのはいるが、その格好でものを運べるのはいない。

どさっと大量の段ボール箱がおろされる。えっちらおっちら秘書も階段を往復して運びあげる(エレベーターがない)。運んでいるうちに腹が立ってくる。ほとんどが在庫と称している(売れ残りの)編集長の著作だ。近ごろは本が売れない(確かに事実ではある)、全部で××百万円になる資産だ(売れれば)、粗末に扱うな・・・ おかげで玄関が倉庫みたいな様相を呈してる。

(賢明にして聡明なる読者の皆様、まとめて全部買って下さるなら、定価にこだわりません。半額で手を打ちます。御連絡は秘書までお願いいたします。編集長の耳には絶対に入れないで下さい。)

晩御飯にトンシャブを御馳走になった。酒も出たが飲んでる気がしなかった。やっぱり引っ越しはくたびれる。


7月24日(火) 晴れ

今日も暑い。今日も今年一番の暑さだ。昼間外を歩いていたら熱風が吹いてきた。38度あったらしい。どこぞは40度だったとか。何にさわっても熱く感じる。

暑くてぬかみそがくさる。一日かき回すのを忘れていたら白カビが生えていた。塩をたっぷり入れて混ぜておいた。

暑くて冷蔵庫が冷えない。気がつくとHになっている。すけべ冷蔵庫、ではない。温度表示がH(ハイ、高すぎる)だ。あわてて設定を最強にしたが、8度をなかなか下回らない。

暑くて脳味噌が茹だる。茹で上がった羊の脳味噌は極上の美味らしいが、秘書のは食えない。(いや社内に人をくったおじさんがいる。茹だり具合を言いふらすと、身が危ないかもしれない。)

おじさんも暑くて火が付いてるらしい。燃えるゴミの日だっていうので、燃やすゴミを捨てに行って、今日は“生ゴミの日”でございますことよ、とか御(誤)進言遊ばすおばさんに遭遇して瞬間湯沸器と化して、あちこち電話かけまくってた。生半可な知識をふりかざすゴミ奉行が多いようだ。自分は正しいと思い込んでる分、始末が悪いらしい。


7月23日(月) 晴れ

今日も今年一番の暑さである。も、は入力ミスではない。ほぼ連日記録を更新しているのだ。ああ、夏は嫌いだ。凍てつく冬の方がずーっと好きだ。


7月22日(日) 晴れ

今日も暑い。何故か今日引っ越し第一陣のトラックが走るという。日曜祝祭日の概念のない編集長の要請か。秘書は大変残念だが、足が痛くて役に立ちそうもないからお休みにした。営業部長よ、すべてはあんたの働きにかかっている。編集長と力を合わせて頑張ってく欲しい。


7月21日(土) 晴れ

本日秘書はお仕事お休みです。足が痛いのです。この暑いのに引っ越しに備えてのお片付けなんて嫌、などという理由ではありません。


7月20日(金・海の日) 晴れ

海の日って何する日だろう、と思うが、取りあえず秘書には関係ない。何故って、あんよがイタイタで、おんもはイヤオヤ・・・ ゴチッ
(同居人に一発くらった。この××暑いのにアホな口きくな、だと)

でも、足が痛い。何かをする気力は足と一緒にひねってしまった。一日ぼけっと過ごして夜になる。ああ、また熱帯の夜。近頃夜毎密林の猛獣が覆い被さる夢を見る。今どき肉布団は恋しくない。


7月19日(木) 晴れ

魔の朝であった。チャーリーポイント通過仕損ないの悲劇を身を持って味わった。

本日は週に一度の資源ゴミの日。先日の蚤市場の売れ残りを捨てに行ったら、パジャマ姿のおじさんがタバコふかしながら立っている。嫌な予感がした。一応御近所の方には御挨拶することにしている秘書がぺこんと頭を下げると、おじさん「××○○△△?」。

へっ?、と聞き返そうとした瞬間段差を踏み外して足がぎくっ。激痛が走った。おじさん大丈夫?と聞いてくれたが、こういう時、大丈夫じゃない、とは叫びにくい。

おじさんは、古着の中に綿が入っているかと聞いたのだという。綿即ち布団類は資源ゴミではなく粗大ゴミなのだ。混じっていると収集してくれない。それでおじさんは、変なもの捨てにくる人がいないか、朝早くから見張っているのだという。御苦労さんで・・・足が痛い・・・

夕方には右足首がぱんぱんに腫れ上がって、陸に上がった人魚姫もかくやの足取りであった。


7月15日(日) 晴れ

何の因果か、フリーマーケットの売り子にかり出されてしまった。売り物は山のような古着。(この時点で、ああ嫌だ、の溜め息)。当日現地に荷物を運んで行けば、敵前逃亡組の連絡だ。(ああ嫌だ、秘書だって逃亡したかった)。半ばやけで叩き売りした。おかげで隣近所の売り上げに悪影響を与えたらしい。一枚30円の服買った後では300円のシャツは馬鹿高値に映る。

大量の売れ残りは好きにしていい、と言われても、大半がLサイズの洋服だ。お子様サイズの秘書に合うものは一枚だってない。結局ゴミ袋に詰め込んでえっちらおっちら往復して持ち帰り次の資源ゴミの日に担ぎ出さねば。ああ、嫌だ嫌だ。人生前向きに考えろ、っていわれたって、ゴミの山は嫌いだぁ。

ところで、Lサイズの古着はLサイズのおばちゃん達が上得意だ。おばちゃんというのは、生物の掟なのか、若い頃は華奢だったにもかかわらず加齢とともに等しくLサイズ化する。(と言うことは秘書も・・・ああ嫌だ嫌だ)。つまりおばちゃんはほとんどがLサイズなのだ。はて、何を言いたかったんだか忘れてしまった。

ところで、おばちゃん、売り子が女だからって気を抜いてはいかんよ。××コ座りっていうんだろうか、とにかく座り込んで値段交渉するのはいいんだけど、パンツ丸見えはあんまし有り難くないなあ。


7月14日(土) 晴れ

気が付けば本日はパリ祭だけど、昨今話題にならないな。あのシャンソンおじさんも荷造りに忙しくて(新社屋と旧社屋を行ったり来たりしている)、それどころじゃないようだ。


7月13日(金) 晴れ

余りの埃に編集長は自分でも嫌気がさしたらしい。少し大人しくなるかと思ったら、この××暑いのに、机や椅子、愛松君やメビを運んで、編集長室だけさっさと移転させてしまった。新社屋は快適らしい。

ふん、自分だけ、と言いかけたが、じゃ秘書室も移転するか、と言われて思わず首をぶんぶん横に振ってしまった。

だって、この××暑いのに、編集長、愛用の自家用車即ちドラム缶も乗っけてたチャリで運んでおるのだ。か弱い秘書にそんなまね出来ない・・・どうやら守衛のおじさんと賭けして意地で運んだらしいぞ。ビールをせしめたようだ。高いビールだなぁ、さぞかしうまかろ・・・

ところで新社屋は電源が安定しているようで、愛松君の顔色が随分良くなったとか。


7月10日(火) 晴れ

口にするのもおぞましいが、“暑い”。
連日常軌を逸した暑さだ。そして連日地雷原に踏み込んだような超常識ワールドだ。1歩踏み出すごとに、むわあー、と埃が舞い上がりたちまち視界ゼロと化す。恐る恐る足を踏み出すと、わっ、なんか踏んだ。大蛇かっ。

熱帯の紛争地帯の話ではない。惨状を呈している我が社の“社内”の話だ。移転が判明した日から予想はしていたが、あの魔窟の奥の院、編集長室はやはり我が社の諸悪の震源地であった。引っ越しトラックのくる日はまだ先なのに、せっかちな編集長は荷造りに取りかかってしまった。

普通なら、段取りが良い、と誉めてあげるのだろうが、何しろ我が社の編集長室は、もう隙間がない、という位モノが詰め込まれている。箱詰めしようにも場所がない。だもんで当然のように、秘書のテリトリーにはみ出してきて、がそごそぎったんばっこんずりずりどさどさと、おやりになる。それだけなら、まだ我慢しよう。我慢ならないのは、編集長あんた何年掃除サボったんだ、とつい叫びたくなるよな埃の量だ。ものがはみ出してくるにつれ埃もはみ出して来て、ここは布団工場か、床一面がふわふわで覆われてしまった。

また秘書は全身がぶつぶつになりそうだ。


7月7日(土) 晴れ

梅雨は明けていないのに毎日ピカピカに晴れて暑い。気分はすっかり真夏だ。

気がついたら7月に入って一週間。ここんところ秘書はなにしてたんだろう。記憶がずぼっと墜落している。忙しかったもんなぁ、引っ越し2回もしたもんなぁ・・・ 疲れが吹き出して身体のあちこちがぶつぶつだ。帯状包疹とかいうらしい。一説によるとこのぶつぶつ、癌になる前触れとか。(嫌だなぁ。こんな人生でもまだ未練がある。)

なのに、なのに、なのに、引っ越しだってえ。憎まれ愚痴社が丸ごと移転だってえ。秘書は知らんぞ。いたいけな乙女をからかうと罰を当てるぞ。一体いつそんな話になったのだ。

昨日、だと言う。ぐっ、ぐっ、ぐっ。秘書、一身上の都合で辞めさせていただきます・・・なんて口に出来る程優雅な身の上ではない。この××暑いのにまた荷造り埃塗れ段ボール箱埋没生活をするのか。

しかし、総務部長に連れられて下見に行ってみたら、おや、なかなか良いではないか。時代に取り残されたような旧社屋からすると、近未来にタイムスリップしたみたいだ。コンセントも一杯ある。(今は鮹足どころか倍数烏賊足みたいにコードがあちこちを這っていて暑苦しい上に年中蹴つまづいて危険この上ない。間違えてパソコンのコードを引き抜いてしまったり、の腹が立つような冗談の日々からやっと脱却できる。)ボタン一つでお湯が出る。エアコンが付いている。ベランダが広い。(夏には日よけを兼ねてキュウリの苗なんか植えたいなぁ。もぎたてに味噌をつけてぽりぽりと・・・)

家賃は当然高いらしい。ちゃんと仕事せぇよ。あれこれ風呂敷広げてとっ散らかしたまま遊んでる場合ではないぞよ。原稿はとっととかきましょうね。ねっ、ねっ、編集長。


御来訪ありがとうございました。またのおいでをお待ちしております。
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2001.8分離