4月30日(月・振り替え休日) 雨・・・
緑の日って、晴れの特異日じゃなかったか。秘書のささやかな連休になんの恨みがあって連チャンで雨降らす。まさか誰かまた呪文唱えたんじゃないだろうな。
少し寒いが、もう暖房類は段ボールに詰めて諸々の下敷きになってる。どこにも行けないし(行かないし)、お布団たたむの止めて布団乾燥機をセットした。ごー、と唸ること30分、ふかふかの極楽誕生。読みかけの本持って潜り込めば、ああ、人生捨てたもんじゃない、生きてて良かった。ここは最上のスイートルームだぜい。豪華クルージングだぁ。(アホか、と同居人がつぶやく)
4月29日(日・緑の日) 雨
自転車に乗って隣の町までお出かけ。銀行の駐車場に放り込んで(ホリデーなんとかぱあキングとか言って、銀行がお休みの日はチャリを置かせてくれる。シルバー人材センターの方々が面倒みてくれる)、久々都会の空気吸った。
なにしろ今住んでいる所は、ここはどこ?今はいつ?私は誰?、と口走りたくなるほど浮き世離れしている。秘書思うに昭和は40年代の地方都市の雰囲気だ(知らないクセに・・・)。で、チャリで1駅分ぎこぎこすれば、平成13年の東京が出現する。ほとんどバックツーザふゅーちゃー(ちゃんと変換できない)だ。
井の頭公園で不離馬を冷やかし、ええい、フリマだってば(ちゃんと変換せい)、アイスなめなめワンピ1枚お買い上げ、勢いでデパートの洋服売り場にも進出。しかし悲しいかな、400円でブランドもの買った後では何見ても「高い」。
結局裏通りの雑貨屋さんで、1瓶900グラムのエジプト産の純ジャム(水飴なんか入っていないイチゴの実がぎっしり詰まったやつ)を298円で買って来た。一緒に行った同居人いわく「安上がりなヤツ」。
ムッ、人間は高級だわい。帰りしっかり雨に降られてしまった。
4月28日(土) 晴れ、暖かい
窓から外をぼーっと見ていると頭の芯が青空に吸い込まれていつの間にやら夢の国。お日様ぽかぽか小鳥がぴよぴよお舟がぎっこぎっこ白河を渡る・・・
がくん、ときて、いかん、と目を覚ませば清書中の書類にぽたりとよだれが・・・
半眼でまた書き直し。すると睡魔に襲われて深手を負ってうつ伏してあえなく討ち死。屑カゴの周りに累々とむくろが転がる。
聞けば成田空港は出国ラッシュだとか。巷は黄金週間でぶっ続けで1週間丸々休みになるらしい。で、海外で過ごすのが習慣となった人々が早々とお旅立ちになったようだ。秘書は図書館行ったり近所の公園行ったりして、本当の休養をするんだ。羨ましくなんかないぞ。
4月27日(金) 晴れ
ぎぃーやっぐわっはっはー、と笑い袋を踏みつぶしたような声が守衛室からもれてきた。守衛のおじさんの地声もでかいが、今日のはまた格別だ。強盗に押し入られた悲鳴ではなさそうだから、別にいいんだろうが、でも気になって覗きに行った。ドアをそっとあけて隙間から様子を伺うと、おじさんが最近出始めたお腹をさらに突き出して喘ぎながら笑い転げている。
いかん、どうかしたらしい、と中へ入ろうとドアを押し開けたら、いたっ、それまでドアに隠れて見えなかった大魔神が。笑い虫を相当数おじさんの大口へほうりこんだらしい。
全くもう、こんな所で油売ってないで、さっさと自分の部屋に戻って仕事してください。言っときますけどね、連休中は絶対手伝いませんからね。秘書はカレンダー通りに休みます。編集長と違って真っ当な市民なんです。
編集長は昨晩楽しい夜を過ごしたらしい(そうだろうな、締めきり迫ってる仕事放り出して・・・)。如何に可笑しかったか、今度一緒にどうかと、あることないこと交えて教えてあげてたらしい。
で、大笑いさせたのが少々下世話なジョーク。
御存じの方のほうが多いと思うが、マイクロソフト社のビル・ゲイツ氏、妻から離婚訴訟を起こされた。
理由は、micro & softだから。もひとつ。今は昔の人森総理。在任中英語の特訓受けて、やはり今は昔のクリントン大統領に会いに行った。
How are you? と言うつもりが Who are you?
クリントン氏、面くらったが、I'm Hilary's husband.
すると森総理ニコニコして、Me too.どこがそんなに死ぬ程面白い? ビル・ゲイツさんが極小で柔らかでどこが悪い。森さんがヒラリーさんの亭主でどこが・・・これはまずいな。
4月26日(木) 晴れ、寒い
編集長が請け負った翻訳がようやく終わった。やれやれ、これで愛松君もこき使われずに済む・・・
ではお茶でもお入れして労をねぎらいましょう。愛松君に飲ませる訳にもいかないから、編集長代わりにどうぞ、と、取って置きの羊羹(一週間前に極楽書房の社長にもらった残りを引き出しに入れたまま忘れていた)を添えて持ってったら、またなんかしこしこやってる。
なんですかそれ、と聞いたら、いやその、と歯切れが悪い。つまり、終わった終わった、と喜んでいたら、分担したもうお一人の元にごっそり残っている事が判明して、結局締めきり間際にじたばたするはめに落ちいったらしい。世を挙げての国民大移動の季節金色週間はもう直ぐだというのに。
少しは同情する・・・必要はなかった。夕刻、秘書が必死になって明日の朝持ってく書類を仕上げているのを尻目に、ではちょっと出かけて参ります、と出奔してしまった。大事な会合、とか言ってたが、赤い提灯や縄の暖簾がかかっている会議室でやるんだろうな。昨日もどっか行ってたぞ。昨日も大事な会合とか言ってたが、実は酒飲んで管巻いてあたりを煙りに巻いてたらしいぞ。
4月25日(水) 雨、寒い
社長命令で編集長に貼りついて都内出張した日の事。(編集長は余程社長に信用がないらしい。しかし編集長をお守するのは疲れる。)
秘書は人込みをかき分けはぐれないように必死に編集長にくっついて歩いていた。はぐれたら、自分の行き先が分らない帰るに帰れない(方向オンチに加えて空財布)。上着の裾でも握りしめていればいいのだろうが、5寸チビの秘書にもプライドってもんがある。
と、そこへ「愛ちゃん」と声が響き渡った。呼ばれたのはどんなに可愛い子かと、通りゆく人が振り向く。秘書も振り向いた。愛想のいいおっさんが突進してくる。そして「やあ久し振り」と握りしめた手の先を辿れば、嬉しいような困ったような曖昧な笑いの編集長。
げっ。
このホーチンミンみたいな髭はやしたおじさんのことか。(ホーチンミンみたいな、は、髭、にかかる。天然パーマもかかってる。)愛想のいいおっさんは、秘書のことを、お子さん?、とか聞いてた。(勿論即座に否定した。)
編集長がアイちゃんなら、秘書はアユム君か。才媛の令息も悪くはないが、ボクのお母さんはオトコ・・・
4月24日(火) 晴れ
引っ越して1月がたった。今の家はだだっ広くて、前の家の3倍はある気がする。おかげでベランダでキャンプしたり廊下でジョギングしたり風呂場でヨガやったり人生を存分に楽しんでいる・・・訳がない。広いといっても相対的に広いだけだ。所詮は団地住まいだ。
相対的にも絶対的にも狭かった前の家、改修して更に狭くなる。ウサギ小屋からウサギの檻への変身だ。トラの檻よりよか増しだけど、サイズ計ってたら腹が立って来たぞ、腸がむかついて来たぞ。短辺が70センチの畳なんて、長辺が140センチの畳なんて、なんの冗談だ。それで4帖半だってぇ。3帖の間違いだっ。6.6平方メートルなら6帖とは言わない。そんな所へ戻れと言うのか。うわああ、ぷちっ(切れた)。
4月23日(月) 晴れ
やんごとなきお方のもとへコウノトリが訪問されたそうだ。秘書んちにはスズメが来たっけ。窓ガラスにぶつかって目をまわしてた。
さてやんごとなきお方は御懐妊された。ここまではめでたい話である。
又従姉妹の理恵ちゃんは、出来た、と言った途端脳天に一撃食らって目から火花飛ばしてた。なにすんねんおかん!
あほんだれ!みたいな会話が交わされた筈だ。(方言の表現はいい加減)
相手は誰だ連れて来いだの引っ付くの別れるの擦った揉んだの挙げ句、特注のウェディングドレスに身を包んだ理恵ちゃんはふてくされてた。後で聞いたら、式なんか挙げるよりアパート借りる資金が欲しかったそうだ。下々の悩みは現実的だ。
4月22日(日) 晴れたが寒い
自民党の総裁選は小泉さんが勝ちらしい。田中真紀子さんの応援が功を奏したようだ。しかしまあ、誰が勝っても代わり映えはしない。ここいらで一発一揆でも起こそうか・・・。
4月21日(土) 雨、寒い
自動翻訳とはどんなものか、など秘書に聞かないで下さい。愛松君だって答えられません、翻訳なんかできません。だって愛松君の出自は・・・編集長のほうが良く御存じでは。いわば軽さが売りのシティボーイなのに、重厚壮大な学者様の真似事などとてもとても。どうしても愛松君に押し付けたいのなら、それなりの手立てを講じてください。ん十万円もするソフトを入れて下されば、それなりに仕事もいたしましょう。でも、ん十万円秘書に払って下されば自動翻訳並みに笑える日本語を大量生産いたします・・・
4月20日(金) 雨のち晴れ
あと少しで編集長の翻訳が終わるらしい。ならばとっとと片付けてしまえ、と秘書は思うのだが、慣れない缶詰め仕事に忍耐の緒(?)が切れたらしく、あれこれ取り散らかしたまま、ちょっと・・・とか言ってはどこぞに消えたり出たり。出れば出たで、へらへら減らず口たたいては人の仕事にちょっかい出す。
秘書がのし袋に、御祝、と心を込めて書いていたら、ほほうお習字かい、感心感心、ところで御呪ってどなたに差し上げるのかい、寒心寒心・・・
編集長に呉れてやるっ。どうせ秘書は字が下手だい。ミジンコが酔っぱらったような字しか書けんわい。
4月19日(木) 晴れ
営業部長は中井貴一を胃弱で気弱にした感じだ。守衛のおじさんはビル・クリントンを縦方向に詰めた雰囲気だ。森総理に似ている、との節もある(親戚ではないと思う)。総務部長は笠智衆を鶴にしたみたいだ(どんなんだ?)。いずれも本人にお会いすれば万人が納得する、と秘書は思う。
さて、ここからは意見が分かれる(というより秘書は全く納得しない)。
キムタク、とかがチラチラしている。電池の切れかかった金メッキの電卓の話ではない。
SMAPのキムタクこと木村拓也、秘書の好みのタイプではないが、いい男であるのは間違いない。
ならば自分は憎まれ愚痴社のキムタクだ、なんて。(姓が同じ、ただそれだけの理由だ。)
断じて似てないっ。秘書がブーブー文句言ったにもかかわらず、すっかりその気になった編集長、でも憎まれ愚痴のキムタクです、と長ったらしく名乗るのは面倒くさいらしくて、いつの間にかキムアイ、と自称している。
お客さんにも物好きがいて、ところでキムアイさん、などと調子を合わせるものだから、耳にするたび背筋がぞくっとして、秘書は風邪気味だ。
4月18日(水) 晴れ
光陰が弾丸のごとく突き抜けてゆく。
編集長がぶつぶつ呪文を唱えている。ピラミッドだのサイコロだの筒だの、新手の賭博に勝つおまじないだろうか。かたわらで愛松君が溜め息ついたりあくびごまかしたりしてる。
近頃ハイテンションな編集長。声もでかい。演説に行くには最適の体調とお見受けするが、まだうろついている花粉めには勝てないらしい。願わくば来るべき演説再開の日に備えて社内で予行演習などしないように、と、被害者友の会の営業部長と秘書は祈る。
ところで我が社の業績は世間並みだ。すなわち賃上げなどある筈がない。リストラされないだけ幸せに思え・・・なんてことは言われないが、ああ溜め息がでる。
自民党の総裁選にあのバブルののっぺり大王、とでも呼びたいお人が出馬している。今さら何をしたいんだろう。国民は(少なくとも秘書は)そっぽを向いている。国民は政府を信用せず若者は未来に希望を抱かない、そんな社会にあんたがしたっ。もう日本は立派な二流国だ。我が社の編集長に総理やらせてみぃっ。
(かっかして恐ろしいことを口走ってしまった)
4月16日(月) 晴れ
「第3のイグアナ」というのテレビでやっていた。「第3の男」ではない。
ガラパゴス諸島の海水温がエルニィーニョの影響で30度にもなってしまって(プールなら編集長が怒り出す温度だ)海草が育たず、食べるものがなくなった海イグアナが危機に瀕した。
画面には干物のように痩せこけた海イグアナと、対照的に多雨で緑生い茂り飽食して詰め込み過ぎたカバンのように膨らんだ陸イグアナが映っていた。
さて、飢えた海イグアナの中には、海に背を向けて、すたこら陸地に突き進んだものがいた。そして・・・
お父さんは海イグアナ、お母さんは陸イグアナ、というハーフの子が生まれた。確認された数約20頭。
陸イグアナに混じって暮らしていたが、仲間とは認識されていないようで、繁殖期仲間はずれにされていた。実力行使を試みても空しく振払われ、クォーターの子は未だ誕生していないらしい。そこで秘書の頭にムクムク疑問が沸き上がった。
お父さんはどうやってお母さんを口説いたのだろう。
4月14日(土) 晴れ
噂によると、今日はブラックデーというそうだ。バレンタインデーにチョコあげる当てなく貰える当てなく従ってホワイトデーにお返しくる筈なくお返しする筈もない者同士集まって黒い麺(ジャージャン麺というそうだ)食べるらしい。お隣の韓国の話。
誰にもチョコあげなかった秘書、多分誰からもチョコ貰ってない編集長に御飯を奢ってもらう。別に黒い日をまねた訳ではない。大分前の約束を果たしてもらったのだ。ジャージャン麺とやらを食べてみたかったが、連れていかれたのは定食屋。出てきたのはでかい鯖の塩焼きに野菜たっぷりの味噌汁。お腹がパンパンになって、秘書幸せ気分。
4月13日(金) 晴れ
13日の金曜日。無信心者(別名ばちあたり)が勢ぞろいしている憎まれ愚痴社はうらうらと平穏で黒猫も横切らないし梯子も立てかけてない。大鎌担いだ不景気な神様もお出でがない。
窓辺にいると日射しぽかぽかついうとうと。青いお空見上げてふと思う。鳥になって飛んで行きたい。天候不順の今年は桜がだらだら咲き続けてようやく散ったと思ったら八重桜がどどどっと満開状態に突入した。
濃い桜色の派手な口紅のような花がぼてぼてぎしぎし、満艦飾とはこのことか。風情が無い、という人もいるが、秘書は結構この花が好きだ。明日あたり八重桜さんを囲んでお花見でもいかが・・・編集長が首を横に振ってる。
もう杉花粉もだいぶ少なくなっていると思うのだが、銀行強盗みたいな格好は相変わらずだ。今日はなんか編集長機嫌が悪い。こういう時は放っとくに限るのだが、経理部長から書類に編集長のハンコ貰って来なさいの厳命が下った。
おそるおそる奥の部屋に入っていくと、よかった、営業部長が捕まって一席ぶたれている。ハンコハンコと手真似で示してさっさと逃げ出そうと思ったのに、わかったわかったと手を振るだけで押してくれない。仕方なし営業部長と並んで御高説を賜ってしまった。
行きつけの公営プールが相変わらず熱いんだそうだ。なんの為に長期間閉鎖して編集長に文句たらたら言わせながら改修工事したのだろう。設計した人が間抜けなんだろうか。
4月12日(木) 晴れ
道を歩いているといろんなものが落ちている。
夜道を歩いていたら、サラリーマンが落ちていた。つつつっと通り過ぎ、ん?と振り向くと、道ばたに自転車と人が転がっている。酔っ払いか事故か、逡巡したが、ともかく様子を見に戻った。
自転車は横倒しでカゴから飛び出した荷物が転がっている。人は、といえば、西を向いて手をついて膝を折ってうずくまり一瞬メッカに日課の礼拝をしているみたいだが、そんな筈はない。だいたい今はシンデレラの魔法の衣装が剥げる時間だ。(こんな時間に秘書はどこをうろうろしてるのだ・・・)
どうかしましたか、と声をかけると、大丈夫です、と顔を起こしたのは、ネクタイ締めて背広着たちゃんとしたサラリーマン(と秘書は思った)だった。ともかく車も通る道なので、自転車もその人も端っこに寄せてきたが、その後無事だったろうか。あんなに酔っぱらうまで飲むなんて、きっと押しつぶされそうなストレスと毎日闘っているんだろうな。男の人は、背広着てネクタイ締めると、皆んな「サラリーマン」という人格に見えてしまうが、中身は生身の人間だ。自分を押しつぶすような仕事はそろそろ拒否した方がいいんではないか。
“働き過ぎみんなで嫌だと言えばクビにならない。”(字余り過ぎ)
4月11日(水) 晴れ。暖かい、というより暑い
秘書業は結構疲れる仕事だ。今日も今日とて社長室で持ちおもりのする花瓶磨いていたら(秘書の仕事だろうか)、営業部長が息せきって呼びに来た。余りに花瓶が重たいので、底に小判でも隠してないかと覗き込んでいるところへいきなりドアがバタンと開いたので、思わず手を滑らせて取り落としてしまった。ぎゃっ、という悲鳴は割れたからではない。足の指を直撃してしまったからだ。材質はなんなのか、花瓶は傷一つなく床に転がってた。片足抱えてもう片方の足でけんけん跳ね回る秘書に、部長がすまなそうな声を出した。
編集長が錯乱起こしてる。
それがどうしたっ。秘書の知ったことかっ。
愛松君が危ない。叩き潰されそうだ。それは一大事、と秘書はぴょこたんぴょこたん跳ねながら奥の院に突進した。愛松君は松子さんの可愛い弟だ。むざむざ編集長の餌食にされてたまるものか。
何してるんですかっ。
こいつが言うことをきかんのだ。さっきまで快調に検索変換をこなしてたのに、どこで気分を害したのか、突然(そんな単語)ありません、知らんと、やり始めたという。ありませんたって、そこにあるではないか、おのれ馬鹿にしおって(というが、編集長自分のことを、ちゃんとした馬鹿って、自分で言ってたじゃないか。)・・・ということらしい。かたわらで愛松君が青くなったり紫になったりしてどぎまぎしている。
またこき使ったんでしょ、何ごとも程々のペースってもんがあるんです、使い過ぎた編集長が悪い、と秘書は断定して愛松君の電源を切ってしまった。恨めしそうな編集長には桜餅を遠火でこんがり焙ったのと濃いめの番茶をあてがっておいた。まったく自分が仕事中毒だからといって、愛松君まで巻き添えにすることないじゃないか・・・営業部長も編集長の後始末は秘書の仕事と勝手に決めんで欲しい・・・ブツブツブツ。
夜、湯舟に浸かりながらしみじみと足を見てしまった。働けど我が暮らし楽にならざりじっと足を見る・・・訳じゃない。花瓶の下敷きになった親指のその後が心配だったのだが、それ程ひどくはなさそうだ。良かった良かった。ん? 何だこれは。ぎえっ、穴があいているぞ、爪の横側付け根の近くにぽこっとかじられたような穴が。つらつら眺めるにこれは冬のさなか霜焼けに直撃されたところだ。
やっぱり秘書は不幸だ。
4月10日(火) 晴れ、暖かい
フライパンにバターを溶かして、葉っぱを剥がした桜餅を並べてとろ火でじっくり焼いて、さあ、お茶でも入れて、と湯沸かし室でやってたら、がたがたっと来た。
編集長いたずらは止めて下さいっ、と振り向いたら、開け放したドアの向う側の部屋で、社長と編集長が仲良く机を押さえて天井を見上げている。照明がぶらんぶらん揺れている。
ぎゃっ、本物の地震だ。秘書は地震が嫌いだ(好きな人いるか)。慌てふためいて、つい社内を走り回ってしまった。その様をしっかり編集長に見られてしまった。にやっとしてた。ああ、恐喝の種にされそうだ。
(火は無意識のうちに止めてたらしい。念のため。)
4月9日(月) 晴れ
休みの次の日はどーんと疲れる。うつむき加減で信号待ってて、青だ、さあ渡ろうと足を踏み出して、わっ、びっくらこいた。横断歩道の手前で止まってたバスが発進してぶいんと迫ってくる。んっぎゃ、とおののいたのはボケナス秘書だけではない。自転車に乗ってたうら若き乙女はこけそうになった。カバンを持った会社帰りのおじさんは足を踏ん張ってバスを睨み付けている。
なんだなんだ、このバスは。酔っぱらっているのか。青になったのは歩行者信号だぞ。大体停止線というものを知らんのか。横断歩道ギリギリで信号待ちするんじゃない。
と、怒鳴り付けてやればよかった。運転手は窓から手だけだして、はよ渡れ、みたいな合図をしてた。轢かれなかった安堵感が先に立ち、さっさと現場を離れてしまったが、あとから腹が立って来た。
これが近頃噂のがら悪のバスか。編集長が遭遇しては揉めてバス会社に苦情を呈したり警察になんとかせんのかと電話している、例の○×バスか。編集長だから揉めるのかと思っていたら、警察の人の話では、ここんところ苦情がどさっと来ているそうだ。
そう言えば、先日編集長宛にバス会社のお偉いさんみたいな人から電話がかかってきたっけ。受話器の向う側の平身低頭ぶりが伝わってきそうな電話だった。
○×バスよ、謝ったって遅いぞ。あんたの会社潰れるぞ。
4月8日(日) 晴れ
貧乏性の秘書だが、最近は3文得するくらいで早起きはしない。ひたすら春眠を貪って、今朝は9時過ぎに同居人に起こされた。友人達と今日花見をするという。きょう日あたりでは遅いわい、と言ったが、要するに適当な口実で昼から宴会したいだけなので、いそいそと出かけていった。
取り残された秘書、お買い物をかねて散歩に出た。のどかにぽっこりほっこり歩いていると、何やら賑やかな音がする。紅白の幔幕が見える。はて?
そうであった。今日は市の桜祭りであった。盛りをとうに過ぎた桜だが、かろうじて残っていて良かった良かった。が、ぐずぐずしてたせいで、色の褪せた花と赤っぽい新芽が入り混じって、まだらというかまばらというか、珍妙な色合いになってしまったのは何ともお気の毒。
4月7日(土) 晴れ
先週とは打って変わったほかほか天気だ。秘書の心もほかほか、ぼけっと大通りの桜トンネルを歩いてお使いにいった。ふわふわと花びらが降りかかって、ああ、気持ちが良い。
思えば今年の桜は長かった。ぱっと咲いてぱっと散るのが桜、これぞ大和ダマしい、と聞いていたのにもう1週間も満開状態だ。桜もいい加減くたびれているのではないか、と余計なことを考えてしまう。今夜が限界であろうな。夜半の風に吹かれて後は見事な若葉を残して季節は初夏へと移ろいゆく・・・
と、詩的な気分を抱いて秘書は会社に戻った。と、ドアを開けた途端に、いっひっひ、と良からぬ声が響き渡った。ああ、気分が悪い。花見に恨みがあるかのお方、何やら呪文を唱えているようだ。破約知霊、端役恥霊、早口霊・・・
4月3日(火) 晴れ?
引っ越しの疲れがどどっと出て来て寝ても寝ても眠い。大あくび連発しながら仕事してたら、さっき食べた桜餅が飛び出す程背中をどやされた。うぐっ。桜餅うまいだろ、と言われても、もう食傷気味だ。(まだ冷凍庫に一杯残っている。ちっとは責任とれっ。)
唯今翻訳を請け負っている編集長、いちおうシコシコやっているようだが、あの性格で辛気くさい(と言って怒られた)仕事が続けられる訳がない。飽きてはちょろちょろと部屋を出て来て、経理部長の算盤を球突きよろしく定規で遠くから弾いたり、営業部長の日報を添削して真っ赤にしたり・・・秘書は肝心のところで茶々入れられて何してたんだか分からなくなって初めからやり直しになった。
要するにはた迷惑だ。翻訳の締め切り迫っているならさっさと仕事せんか。ぐずぐずしてるんならガソリンとマッチもってってお尻に火つけてやる。
4月2日(月) 晴れ
気温も上がり、花咲き乱れて世は春。昨日花見で盛り上がった社内は和気藹々だ。一人例外がいるが。
俗世間と隔絶したような奥の部屋から妙な呪文が聞こえる。西馬当てろ、西馬当てろ・・・
花見に行けなかった腹いせに馬券でも買ったのか。仕事中に熱くなるない。どうせ外すんだろうし・・・西馬ってサイババの馬か。秘書は競馬にはうとい。知ってる名前といえば、ハイセイコー位だ(古いっ)。当てたら何かおごってくれるんだろうな。桜餅系はもういいから仏系とか魚系とかがいいなぁ。
4月1日(日) 晴れ
昨日の悪天候が嘘のようなピカ晴れ。では早速仕切り直してお花見を・・・
トントンとドアを叩く人あり。誰だこんな朝早くから(8時)、と思いつつ出てみれば、御近所の世話役とおぼしき方。「団地の中庭の一斉清掃と草むしりをします」とお誘いに来て下さった。ああ、有り難きかな、御近所は。嬉しくて涙が滲んで来る。
晴れといえども昨日の後遺症で草むらは冷たく濡れそぼって手袋してても手がかじかんで来る。ニコニコ取り繕っていても心のうちは、つらいよー眠たいよー、の大合唱。結局家事を放棄して昼まで寝直してしまった。
桜の名所の井の頭公園は人でいっぱいだった。
桜餅を肴に飲む酒は気のせいか回りが早かった。いい気持ちになって熟睡して地中で桜の根っこに絡まれて養分を吸い取られる夢を見た。桜餅のたたりか。