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秘書室展示会場

秘密日記 秘書の独り言


10月某日ついでに末日(?) 暑かったり寒かったり晴れたり曇ったり降ったり

・・・・・

(言い訳であります。)

10月は最悪の月であった。忙しかった。本業に火が着いて毎日お目目がしょぼくなるまで働いて、それからアルバイトにせいを出し、それからお家へ帰って夜なべ仕事。もっと寝かせてくれ〜、の毎日であった。

本業は、いまはやりの悪循環コースの労働形態である。即ち、受注が減って減益となり、手っとり早く人員削減し、しかし減らし過ぎて仕事がこなせない、故にスピードをあげろ休むな残業しろ。目が回る程忙しくなったのに収入は減った。この恨みどこにぶつけようか。

アルバイトは・・・まあ、適当な会社であるから、秘書も適当にやっている。なんせアルバイト秘書だもんなあ。上場企業の一流秘書と張り合う気なんかないぞ。(編集長となら毎日張り合ってる。)

で、夜なべしたのは、同居人のアホンダレのお陰である。ミニコミ誌の編集制作をほいほいと自分で出来もしないのに秘書を当て込んで引き受けてきた。それでも金になるなら、ありがとう、であるが、全くのボランティア、むしろ持ち出しである。ばかやろう、の他に言葉が思い付かない。

未整理の手書き原稿の山を積み上げて30数ページの冊子が1日で出来上がるなら、世の編集者は遊んで暮らせるわいな。同居人の頭の中の計算機はかなり狂っておるぞ。

で、打ちっ放しやりっ放し校正抜き一発勝負の恐ろしい代物が出来上がった。タイトルが間違ってる〜、と気づいたが、見なかったことにしてしまった。

そして秘書は今、頭痛肩凝り樋口一葉、である。なお、同居人はアホン・ダレという名の外国人ではない。

名前の話で思い出した。冬期オリンピックの中継を見ていた時であった。スキーのジャンプ競技は当然ながら寒い北の国の人が多い。ノルウェーだかフィンランドだか、名前の終わりにネンがつく。英語における〜ソン、スラブ系の〜ビッチ、〜スキーみたいなものである。が、アナウンサーが、アホネン飛びます!アホネン飛びます!とか、次はコッコネンとか、ニッカネンとか叫ぶのを聞いた時、秘書はゲタゲタ笑い転げた。笑いの発作がおさまってようやく本人に失礼だと思いいたった。


10月12日(金) 晴れ、暑い

秘書は中途半端な田舎育ちである。(中途半端は、田舎、にかかる。育ち、にではない。)中途半端の度合いは、文化的には、都会生活の三番煎じが10年遅れで回ってくる程度。自然環境においては、暴風雨で氾濫した河の水がひいて上流から押し流されて来た瓦礫がごろごろしている川っぷち程度・・・(どの程度だろうか)。

さて、何が言いたいかというと、田舎育ちを自称しながら自然についての造詣は(あればの話だが)、箱庭の井戸ほどの深さである、ということだ。サバイバルごっこで野に放てば、トリカブトでお浸し、笑い茸で味噌汁、薬味はチョウセンアサガオの種、馬酔木の花を彩りに、デザートはドクウツギの実、お皿代わりにハシリドコロの葉っぱ、お箸には夾竹桃の枝、ぐらいやりかねない。

で、本題は、近頃よく見る植物の名前がわからない、ということだ。1年性の植物だが、初夏、あっという間にすくすく成長して、草と呼ぶのがためらわれる程立派な幹にゆっさゆっさ大きな葉を繁らせ、これ又大きな花をたくさんつける。何故かみな下向きに咲く。つぼみのうちは白っぽいが、やがて薄紅色に染まってフレアスカート状に開く。触れると絹の手触りだ。瞬間何かの記憶が蘇りびらーっと裾をめくりあげる。中には太い棒状の蕊が下がっていた。

なんだ、オカマか、とつぶやいた秘書をそしる資格があなたにはあるだろうか。


10月11日(木) 晴れ(ると)暑い

9月11日来、脳味噌に火がついてしまったらしい編集長、忙しい、を連発して日課のプールにも行かない日が続いている。愛松君をこき使ってはサーフィンだかザッピングだか、あちこちのサイトをせかせかと荒し回り、すっかりインターネットおたくと化している。

が、その割りには技術的に秘書ほど通じてなく(いい加減でマニュアル読めよ)、たびたび、この記事が取り込めない!、と愛松君を張り倒しそうになっては秘書にお呼びがかかる。そのたび秘書も、オプション押しながらって前言ったでしょ!、と切れかかる。性格が悪くなりそうだ。

どぎまぎしてるのか顔色がちらちら変わる愛松君のお面、じゃなく画面をジッと見つめていたら、秘書の目もちらちらして来た。いかんいかん、と席に戻って目を休ませ、しかし、仕事は忙しい、脇目も振らずせっせとペンを走らす。

ん?

視界の端をなんか行き来する。せかせかと通り過ぎては戻りまた通っては戻り・・・バタン、とドアが閉まって・・・ げっ

秘書思わず目をこすった。ドアが閉まって奥の部屋へ消えたのは・・・ドラエモンだあ。

編集長室の扉はどこでもドアか。秘書猛烈ダッシュしてドアを開いた。ああ、そこには間違いなくドラエモン・・・そっくりに丸みがついた編集長の後ろ姿。ノックもせんで入るとは失礼な、とかお抜かしになるが、ドラ編集長、この深刻な事態がわかっているのだろうか。運動もしないでインターネットばっかりやってると、いまにドアから出られなくなるぞ。 


10月9日(火) 曇り、寒い

酔い止め薬が効き過ぎて、頭の中身が眠ったままである。出社して机の前に座っているが、意識レベルは惰眠モード。こういう時に限って複雑な用を言い付けられるのは、秘書が悪い星の下に産まれたせいか。

秘書の英語レベルは、自慢してもいいが、これは英語であるフランス語やドイツ語ではない、と断定出来る程度のものである。そこに何が書いてあるか、と聞いて返事が帰ってくると思うのは大間違いである。

なのに、分厚い資料を積み上げて、このどこかに○○に付いて記述がある筈である。急がないが、出来れば早めに探すように、とは、拷問みたいなものだ。くー、先週晩御飯をおごってくれたのはこのためだったのか。


10月8日(月) 雨、寒い

目がさめると戦争が始まっていた。なんとシュールな1日の始まりだろう。イギリスのアニメ「風が吹く時」を思い出した。核戦争が始まって、政府の言う通りに対応して、死に絶える老夫婦の、ほのぼのと恐ろしい話だった。


10月7日(日) 曇り、寒い

今年のお盆は田舎に帰れなかった。同居人と都合が合わなくて、一人で行く気はしないし、じゃお彼岸にお墓参りを兼ねて、とか予定していたのだが、明日何時に行く?という段になって、同居人のアホメがすっかり忘れて別口の約束をしていたことが判明。どっちを取るか、と迫って、あっさりかわされ秘書悄然憮然。帰れない言い訳は秘書がした。改めて体育の日に帰る、と約束して、思いっきり同居人のせいにしたが、おばあちゃんは信じてくれただろうか。もうずーっと御先祖様の墓前に参っていない罰当たり孫を持った身の不幸を嘆いてはいまいか。

さて本日、朝寝が習慣の同居人をたたき起こしてせかして田舎へ向う電車に乗り込んだ秘書、当然のことながらゲロッピ除けのお薬を早めに飲んでおいた。今日の旅はまず安泰・・・ かわりに猛烈な眠気に襲われた。前後不覚に眠り込んでときおりガクンと目が覚めまた底なし沼に落ち込む。置き引きにあっても気づくまい。(が、同居人によると、百年程度の恋なら一発で覚めそうな顔してがっちりカバンを抱え込んで爆睡してたそうだ。)

どういう訳か車内は冷房が効いていた。10月のこの寒い日にである。JRよ、なんか恨みでもあるのか。秘書はちゃんと1人前の料金はらって乗っておるぞよ。おかげで関節が錆びついてしまってぎこぎこ歩くはめになった。

いつもはJRの駅からタクシーで行くのだが、ふと思いついて、大雑把な地図では実家の近くを走っている筈の(幼少の頃は家から鉄橋を渡る列車が見えた)ローカル線に乗ることにした。田舎にいた十数年の間に乗った記憶は2度しかない。しかも今日降りる駅は利用したことがない。一抹の不安を抱えて乗り込むと、ああ、ローカル電車であった。2両編成でガラガラスカスカ。近くの席の女子高生らしきグループが元気にしている会話が筒抜けだ。それほど方言の強い土地柄ではないが、喋り方が懐かしくて人生が前途洋々宝の山であった頃の記憶が蘇った。あの頃秘書は一族期待の優等生であった。どこで道を踏み外したのやら。

駅に降り立つと、うっそー、の無人駅。案内図もない。地名にもなじみがない。んぎゃ、とあせって、幸い近くにあったコンビニに駆け込み地図広げて、実家まで結構あることを確認して何も買わずに出て来た。店の人が不審そうな顔してた。それからひたすら歩いて、ああ、疲れたよー。土地カンのある筈のない同居人が自信たっぷりに、こっち、とかいうのを信ずべきではなかった。やっと辿り着いて、すぐさま晩御飯を食べて、そのまま寝てしまった。時刻は午後7時。何やってんだろ。

ところで秘書の同居人は、アホメ、という名前の外国人ではありません。


10月4日(木) 曇り

忙しい、と、かのお方は言い訳をする。秘書だって暇じゃない。暇じゃないけど毎日ちゃんと床掃いて雑巾がけして残り水を打ち水してついでに守衛のおじさんと世間話して巷の情報仕入れて、会社の美化に気を使ってる。それなのに・・・

床を煤払いの真っ黒黒助みたいなふわふわがつつーっと移動する。掃いても掃いても毎日漂ってくる。きれいにした途端、奥の部屋のドアが開いて、季節外れのしかも排気ガスに汚染されたタンポポの綿毛みたいに吹き出してくる。ああ・・・

何年かけて埃を溜め込んだのだ。今度台風の日に窓全開にして吹き飛ばしてやる。資料が吹き飛んだって知らない。


10月2日(火) 晴れ

新社屋になって広くなった筈なのに、編集長の資料とやらが増殖して社内を埋め尽くしている。夜中誰も見てない時に、ぽこぽこ繁殖しているのだろうか。

広い事務所に移って念願の秘書室が出来る、と喜んでいたのに、あっさり裏切られた。またしても秘書は営業部長と一緒に廊下みたいな所に机並べている。役員室には諸部長が犇めいている(牛3匹は、ひしめく、と読みます。石3個ならごろごろしてる、女3人はやかましい男3人でうっとうしい犬3匹で安眠妨害・・・ええ加減にせい)。それでも編集長室に押し込められなかったのは幸いであった。しつこいが念を押しておく。秘書は社長秘書である。編集長付きではない。

廊下机の良いところは、お偉いさんを気にせずくつろげることだ。今日も外回りから帰って来てポケーッとしている営業部長を相手に、きのう雨で流れたお月見の団子並べてお茶入れて、こないだ見たテレビでね・・・、と楽しく話が弾む。

と、そこへ突如割って入る不粋な声。今の話はどこの局だ何時何分のなんという番組だ誰が言ったんだ、といきなり尋問が始まる。そんなん言われたって覚えてる筈がない。えーとえーと、を繰り返していると、ここしばらく情報過敏症候群みたいな編集長の顔に、ま×けだの、た×けだの、あ×だの、字が浮き出てくる。むっ、秘書みたいな一般庶民は楽しみのためにテレビ見てんだ。ハマスだかカマスだかハマナスだか、どうだっていいじゃないか。1文字違うだけだい。食えるか食えないかのほうが大事だい。しっかり覚えとけ、なんて言うんなら、情報提供費くれ。


10月1日(月) 曇り、雨

爽やかな10月の始まり。秘書は背筋をしゃんと伸ばして真っ当に生きる事を決意した。世のあまたの誘惑には負けない・・・

さて、ツインタワービルに飛行機が突っ込んで大惨事になってから3週間がたった。あれから現世の空間がねじれてしまった気がする。どう取り繕っても、起こらなかった前には戻れない。新聞はもうずっと「テロ」の記事で埋め尽くされている。テレビをつければ、アフガン、タリバン、イスラム、ビンラディン・・・ 嘘でしょ、と思ってるうちに日本は戦争に加担することになってしまった(と秘書は思う)。獅子のひと吠えで、これまでの憲法論議がきれいに木っ端みじんに吹き飛んだ。

戦争は嫌だ。人が死ぬのは嫌だ。殺されるのも殺すのも嫌だ。以前、もし戦争になったらどうする?というアンケートがあった。国の為に戦う、などの勇ましい回答に混じって、戦わないで逃げる、というのがあった。それも一つの方法だな、と思ったが、今は共鳴できない。何故って、この地上のどこに、ここだけは安全という場所があるというのだ。あの時から全人類の生活に不安がじわりじわり染み込んできた。

む、つい力んでしまった。まだアルコールが滞留しているようだ。


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