8月31日(木) 曇り。少々雨
朝起きたら夕立ちだった。なんのこっちゃ?
つまり朝、あれま、というような大雨が降ってしまった。今日は波乱万丈の1日になる、とわくわくしたのだが、いつの間にか晴れ上がって普通の日になってしまった。8月も終わりだ。また一つ歳をとったような気分になる。
9月は秋の入り口。明日から秘書は物思いに沈み思索に耽る。本来の自分を取り戻すのだ。天高くとも何が肥えようとも秘書は理想を貫き己の道を究めるのだ。
雑音を秘書の耳に入れるでないぞよ、社長、諸部長、特に編集長、食い物でつろうと試みないように。
8月30日(水) 晴れ。
編集長がせかせか社内を飛び回っている。今度の週末にまた新宿あたりで何か目論んでいるので、その準備で忙しいらしい、とは総務部長から聞いた。三脚はどこだ、とか、でかい紙はないか、とか、秘書の回りにもブンブン言いながら飛んでくる。
うるさい、私はあんたの秘書じゃない、と言いたいが、ぐっとこらえて、とってつけた愛想を振りまく。もしかしたら、打ち合わせとかでよく行くらしい新宿中村屋あたりでなんかお土産買って来てくれるんではないかと密かに期待しているのだ。
しかし、編集長、ろくに人の顔もみないで、モノだけ受け取ってさっさと引き上げてしまう。秘書が口裂け女のメイクしてたって、絶対気が付きそうにない。
女心の分からない男ってやーね、と、お使いに来ていた二又商事のエツ子さんと話を盛り上げてしまった。
と、突然、うあーははは、いーひひひ、と凄まじい笑い声が奥の部屋から泥流のごとく流れ出て押し寄せた。
社内の人間が総立ちになって同じ方向を一斉に注目した。社長は腰を抜かさんばかりだ。
すわっ、編集長御乱心。ついに来たか。意を決して秘書は編集長の部屋のドアを開いた。
いやぁー悪い悪い、とたいして悪びれた様子もなく編集長が頭をかいた。
効果音を調べていたら音量調整間違えちゃって、だって。
そんなもんヘッドフォンつけてやれ!、と言ってやろうかと思った。
8月29日(火) 晴れ。暑いっ
昨日変な例え話をしたからではないが、三宅島の雄山が噴火してしまった。
直撃かショック死か定かでないが、牛が死んでる写真をどこかで見た。はて、見たのははいつの事だったか、最近記憶が飛ぶ。(いつもだろ、と余計な口を挟むお方がいるが無視する。)人間の島民が全員避難するとして、人間ではない(人非人とか人でなしの類いではない)島民はどうなるのだろう。災害対策マニュアル等を読むと、避難する際は犬は鎖につないで残すよう書いてあるものもある。犬もパニックを起こすので放しておくと危険だから、らしいが、犬の身になって考えてみい、といいたくなる。平常時でも犬より凶暴な人間は結構いる。
牛だって、牛の都合で逃げ場のない島に住んでいるわけはなく、人間様の御都合に合わせさせられているだけだ。大爆発するような事態になって欲しくないが、万一の場合には、船に乗らなきゃ逃げられない犬猫や牛だの馬だの豚だの鶏だののことも考えて欲しい・・・
8月28日(月) 晴れ
何となく硫黄臭い。先日編集長に貰ったペットボトルを冷蔵庫に入れて置いたら、そうとは知らない同居人がラッパ飲みして、ぶはぁーっと盛大に吹き出し、洗ってアイロンかけたばかりのカーテンに霧吹きしてくれた。
「この水腐ってる!!」
かくかくしかじかだと説明したが、そんなもん冷蔵庫に入れるな、と猛り狂っている。人のもの勝手に飲んどいて、偉そうにいうな、腐ってるのはあんたの根性だ、と思わぬ内輪喧嘩に発展してしまった。災難だった。カーテンをまた洗うべきか悩んでいたら、テレビのニュースが二酸化硫黄の濃度が上がっていると言った。三宅島から風にのって流れてきたらしい。うっ、とベランダに出てみると、外も確かに臭い。
急に心配になってきた。石原さんは、まだ島民全員避難の段階ではないようなことを言っておられたが、現実はかなり危ないんではないのか。秘書なら、たとえ編集長に羽交い締めされて止められても(編集長を殴り倒してでも)絶対に逃げ出すぞ。
8月27日(日) 晴れ。蒸し暑い
もう十数回(嘘です。数十回です。)四季の巡るのを経験し夏を体験し夏の暑さを実感しているのに、夏がくるたび暑さに打ちのめされては、夏より冬が好きだ!、と叫んでいたりする。冬の最中はその逆を絶叫していた筈だ。
それにしても暑い。
8月26日(土) 晴れ
休み中に何をしたのか、編集長は足が痛いらしい。
虫に食われた、と言っているが、編集長を食おう、などと考えるものがこの地上に存在するのだろうか。
強いて言えば身中の虫くらいか。百獣の王ライオンもこれにはかなわないらしい。
が、足が痛いと言いながら、またいそいそとお出かけした。ホントに出歩くのが好きな人だ。吠えてくる、と社長に言ったとか言わなかったとか。
動物園にでも行ったのだろうか。
8月25日(金) 晴れ
自宅のビデオデッキが壊れた。借りてきたビデオテープを呑み込んだまま妙な唸り声をあげて悶絶しいきなりプチンと電源が切れてしまう。あれこれいじりまわしてやっと取り出し事無きを得たが、レンタルのエロビデオを入れたまま修理に出すはめに陥った人の話を聞いたことがあるもので、かなりあせってしまった。念のために言うが、秘書のはその筋のビデオではない。昭和18年作・陸軍航空戦記−ビルマ編−というものだ。(後で見直したが、91分は長いとつくづく思った。15分で集中力が切れた。)
このあいだ冷蔵庫が壊れたばかりなのに、なんということだ。実は、引っ越すつもりなので放ってあるが、お風呂も壊れている。更に実はビデオデッキは後2台あるが、それも壊れているらしい。なんで3台も、と言われるが、その2台はベータマックスだ。1台がモノラルで物足りなくてもう1台ステレオのを買い足した。出だしがベータだったのでVHSなんか邪道と思っていたが、レンタルビデオ業界からベータが消え失せて渋々VHSを買った。12年前のことで十数万円もした。(よくそんな金があったものだ。)
愛する2人の仲が壊れてくると物が壊れると聞くが、我が家の場合は、はて、どうなんだろ。同居人は同居している人であって、愛がどうのこうのというような代物ではない。人類愛の観点からすれば愛しているのだけど、映画のように愛してるよといってヒシと抱き合うことなど金輪際ない。
とにかく12年も使えば寿命だ。素直に新しいのを買いに行って驚いた。10分の1の値段で買えた。
ついでだから電話でSONYの代理店にベータデッキの事情も聞いてみた。聞いて驚くまいか(驚け)、仮にヘッドの磨耗だとして修理に約2.5〜3万、新品が欲しければ10万だという。敗者の悲哀を再認識したが、せっせと溜め込んだ100本を超えるベータテープはどうすりゃいいのだ。
8月24日(木) 晴れ
久し振りに会社へ来た。頭の中身はまだお休みモードで仕事に身が入らない。残暑厳しき折りなので自愛することにして、お土産を配ってまわる。
守衛のおじさんにはアンコがみっちりつまってお尻がプリプリした桃饅頭だ。おじさんには日頃お世話になっているから、試食を重ねて念入りに選んだ。あんまり美味しそうなので自分用にも買っておいた。
その他の方々には一口サイズのお餅だ。ちまちました容器から餅を取り出し空いた窪みへ蜜をたらして餅にからめてきな粉をまぶして食べる。鼻息が荒いときな粉が飛び散ってくしゃみがでる。手強いぞぉ。むせるぞぉ。入れ歯飛ばすなよぉ。
お茶を入れ終わってしみじみしていると、営業部長が寄って来た。にやにやして言うことには、会社は実は秘書に合わせて3日間夏休みだった!
3日も休むのか、豪勢だな、と散々嫌みを浴びせておいて、自分達はさっさと休みにしたのか。ひどい、あんまりだ。
むっとしてると、いやぁ大変だったよ、と部長が話を始めた。会社は休みにしたけれど、土日祭日休暇の概念のない仕事中毒の編集長が、出社しなくていいのなら街頭で我が社の宣伝をしよう、と言い出した。渋る営業部長を、だいたい販促はあんたの仕事だ、代わりにやってやろうと言っているんだから手伝え、と荷物運搬係りを命じたそうだ。勤め帰りの人が行き交うJRの駅前で、編集長はハンドマイクを握りサンドイッチマンよろしくでかい看板を首から下げて、延々と発行準備中の雑誌の中身を喋りまくったという。はじめは側にいた部長もだんだんと他人の振りしたくなって柱の陰に隠れてしまった。そこには苦々しい顔したおじさんがいて、その表情に親近感を覚えて思わず話しかけそうになったらしい。この苦々おじさんには控えめな連れがいてそっとビデオで撮影などしていたので、テレビのニュースで流れる、と部長は喜んだそうだ。21日のことだった。
で、ニュースになったの、と聞いたら、残念そうに首を振った。ボツになったらしい。編集長のアップならうつらなくて幸いだった。
そんな話をしていたら、編集長が、これ、とペットボトルをくれた。日帰りで温泉に行ったお土産だという。源泉の水で食い過ぎに効くらしいぞ、言い添えてくれた。むっ、みんなには胃腸関係に良い、といって配っていたではないか。ふたをあけたら、玉子の腐ったような匂いがする。硫黄泉だというが、まさか湯舟から汲んでこなかったろうな。
8月21日(月)〜23日(水) おおむね晴れ
夏休みでした。お寺に参ったり温泉につかったりと仕事など忘れて(休んだ分だけ給料が減ることも忘れて)遊びほうけておりました。社長の小言も部長達のたわ言も編集長の嫌みも知ったこっちゃありません。人生楽しむためにあるんです。何が楽しくて皆さんパソコンなんぞ相手にしているのでしょう。
8月20日(日) 晴れ
本日はお休みです。明日から夏休みです。今年は奮発して3連休です。同居人と連れ立って田舎に帰って上げ膳据え膳でたらふく御馳走になってきます。
8月19日(土) 晴れ
真夏の週末はどどっと疲れが吹き出して、ここはどこ私はだれ状態になる。正気にかえっては、ここは会社、私はお仕事中、と自分に言い聞かせるが、心は直ぐどっかへ行ってしまう。
今日は多摩そごうの閉店セールだ。半額以下になるらしい。行きたい、行きたい、行きたい・・・・と意識の底の欲の虫が鳴く。しかし、理性の虫も鳴く。金が無い、金が無い、金が無い・・・・
8月18日(金) 曇り(だったよな)
たまには真面目になれ、と編集長がのたまう。む、失礼な。秘書はいつだって大真面目だ。中学生の頃は真面目がお下げ結ってメガネかけてカバン引きずってると言われた位だ。
そう言ったら、人事部長と総務部長が側でバカ笑いしてた。いい年して失礼な連中だ。秘書は常に国内外の情勢を気にかけ、世界平和の実現を心から願っているのだ。伊豆諸島が揺れると(ボロ社屋も揺れる)社内をあたふた走り回って一刻も速い鎮静化を思い、南北朝鮮の離散家族の悲痛な顔に涙し、中東情勢の進展を願い、その他盛り沢山の事柄に心を炒めている。もとい、痛めている。
今度は、営業部長がお腹を抱えて息も切れ切れにのたうちまわっている。そんなにみんなして秘書を笑い者にしたいのか。
そりゃ確かに手みやげのお饅頭を受け取るが早いか、お客様のお茶を用意しながらつまみ食いしてのどにつかえさせてむせたのは悪かった。でもいいタイミングでお茶はお出しした。おいしいお茶だ、とお客さんは目を点にして喜んでくれた。一体秘書のどこが不真面目だと言うのだ。
顔を洗ってこい、と編集長が言う。
そんなら編集長は首を洗って出直せ、と心の中でぶつくさ言いながら洗面所に行って鏡を見た。
ぐぇっ。口のまわりにきな粉の輪っかが出来ている。
8月17日(木) 晴れ。夕立ち
今日は銀行めぐりだ。振り込みをしたり入金を確認したり通帳を作り直してもらったりで、すっかり時間を取られてしまった。1つの銀行に口座をまとめてくれればいいのに、大した金額でなし、なんでこんなに細切れにするのだ。てくてく歩いているとうんざりしてくる。暦の上では秋でも現実は真夏だ。あ〜あ、と身の不幸を嘆いていると、なにやら声が聞こえる。彼方通りの向こう、往来する車の騒音に混じって誰かなにか怒鳴るように喋っている。この前交通安全おじさんが演説してた警察署のほうだ。聞いたような声だ。
通りすがりにみると、歩道の木陰で帽子をかぶったおじさんがマイクを握って警察に訴えてる。スピーカーがあちら向きらしくてよく聞こえない。おまわりさんが3人長い警棒みたいなのをかかえたまま腕組みして眺めてる。交通安全おじさん第2弾かと思ったが、ちょっと違う様子だ。途切れ途切れに、詐欺とか不正とか品のよろしくない言葉が聞こえてくる。
野次馬になりたかったが、暑くてアイスクリームを買ってしまった後だった。急いで帰らなくちゃ。アイスのでれでれ溶けたのだけは食べたくない。先日の冷蔵庫夏バテでアイスに全滅された記憶が生々しい。
しかし、おじさん、編集長に似てたな。
8月16日(水) 晴れたり曇ったり夕立ちだったり
まだ町中はお盆体制で、シャッターを降ろしたままのお店が多い。閑散とした商店街を歩いて行くと、景気が夏の最中に雪崩をうったようだ。
情けない話なら相変わらず山のようにある。潜水艦は海の底に沈んでしまうし、神憑かりの親は子供を餓死させるし、医者は患者に間違い注射をするし・・・・
という訳で本日はアルコールで体内にたまった身の毒を洗い流して厄払いをします。明日はきっと良い日になるでしょう。
8月15日(火) 晴れたり曇ったり
お盆だというのに忙しい。わたしはホトケ様か、という気分になる。この時期都会はがら空きで空気もちょっぴりきれいな気がする。
夜、散歩に出てみた。いつも通らない道を歩くと、どこか遠くの知らない街に出かけたみたいだ。あの角を曲がりこっちの広場を横切りしていくと、ちまちました住宅街に不釣り合いな広大な敷地のお屋敷があったりする。一角が竹やぶだ。さぞかし筍がとれるんだろうな。刺身で食べたりするんだろうか。と、つい食欲が風情より先に出る。いかん。気を取り直してまた歩きはじめる。
なんだ、あの真昼みたいな地帯は、と思ったら、中古車センターだ。ミニ太陽がいくつも屋外展示場を照らしてまぶしい。330万だの270万だの正気の沙汰とは思えない値札をつけた車が並んでいる。車に興味がないどころか、排気ガスが大嫌いな秘書には、ほとんどオタクワールドに思える。
ミニ太陽の回りを何かがせわしなく飛び回っている。でっかい蛾だな、と思ったら、コウモリだった。晩御飯の最中らしい。お家はきっとあの筍御殿なのだろう。秘書が小さい頃(今でも小さいが)夕暮れになると近所の竹林からコウモリの団体さんが出動して大騒ぎをしていた。捕虫網を振り回すとたまに捕れたりしたが、触ってはいけないと大人に怒られた。ダニがいて病気になるそうだ。コウモリはよくみると、ネズミみたいな可愛い顔をしてる。ひそかにペットにしたかった。
と、郷愁に浸っていたところへ、いきなり照明が消えた。バブルが消え去ったいま、コウモリのお食事も時間制だ。
8月14日(月) 晴れたり曇ったり
容器包装リサイクル法ができてゴミの捨て方が変わった。新しいやり方は結構複雑で、低血圧で朝は脳が水浸し気味の身には新たな悩みの種だ。間違えては集積所で気がついて引き返したりする。遅刻の言い訳に、「ゴミの分別間違えました。」というのが加わった。
となると、環境問題に熱心な方々の出番だ。いつまでたっても懲りずに前のやり方でゴミを運んでくる、秘書と似たりよったりのボンヤリ属ウッカリ人を捉まえては指導に精をだす。ボランティアのゴミ奉行様だ。この間は5人もいた。普段お行儀が良いとはいえない秘書はそれだけで後ろめたくて、おはよございます、の挨拶もそこそこ、こそこそゴミを置いてお白州からトン走する。
おばちゃんが1人裁きを受けていた。プラスチックゴミの日に不燃ゴミを持って来て、だからお持ち帰りだ。ぷりぷり怒っていたが、間違えたあんたが悪い。お奉行様はみな善意のお方だ。逆恨みしないように。(しかし、言い様では腹も立つだろうな。)
8月13日(日) 雨。台風9号
日曜日が雨降りだと損した気分になる。
しかし今日は天気がよくても遊びにいけるわけではないので、槍でも傘でも勝手に降ってくれ、という気分だ。冷蔵庫が届くのを待っているのだ。来る前にすることが一杯ある。旧い冷蔵庫の中身を出して、きれいにしてやらねばならぬ。捨てるにも仁義というものがある。チビの秘書には身の程知らずと言われたデカ冷蔵庫だったが、十数年共に暮らすとそれなりの関係になる。飽きが来た恋のようにはいかない。通り道も確保せねば。
という訳で、テーブルや棚や電子レンジその他を動かしこまごましたものを寝室に退避させ玄関のがらくたはトイレに放り込みで、疲れ果てたところに新冷蔵庫がお出ましになった。据え付けが終わるのをまって大急ぎで復旧作業をした。結果、さらに疲労困ぱい。
少し休もう、と横になったら、いつも通り熟睡して、夜中になっていた。こうしてまた日曜日が終わる。
8月12日(土) またもや晴れ。夜中に雨(台風9号だ)
雪印の1件以来、なんとかが混じっていた、という話をよく聞く。曰く、蠅が入ってた、金網が入ってた、トカゲが入ってた。今に始まった話ではない。その昔は、なんとかラーメンだことのなんとかパンだことの、食欲が失せるどころか食べることに恐怖を抱きそうな話があった。が、近頃のは余りに続け様だ。たがが弛んでしまったのか、消費者が黙っていなくなったのか。(なんとかラーメンは、ブツの始末に困って、ダシ代わりにしたという噂だったが。)
秘書も、さる全国ブランドのパンを食べていたら、ボルトが出現したことがある。保健所に訴えてやる!、と息巻いたのだが、生憎と日曜日で、後でと思っている内に忘れてしまった。惜しいことをした。メーカーの人が菓子折り抱えてお詫びにすっとんで来たかも知れなかったのに。
しかし、モノはボルトだ。あとで生産ラインが止まって大騒ぎしなかったのだろうか。部品が1個足りないとかで、工場中の人が這いつくばって夜中まで探してたりして。行き過ぎたリストラの結果、残った人間に過重なしわ寄せが行き、あちこち手が回らなくなっている話をよく聞く。人を減らせば人件費が浮く儲けが出る、とは秘書でも思いつく安直な発想で、得々と語る経営者を見るとこちらが恥ずかしくなる。高い金出して重役を雇ってるのは、山田浅右衛門の真似をしてもらいたいからではない。ヒラには出来ない高尚な発想で働く者全員を引っ張り上げてもらいたいと期待しているのだぞ。
8月11日(金) 晴れ晴れ
この暑いのに今日もお仕事かぁ、とちんたら歩いていたら、後方からなにやら軍国調の歌が割れ鐘のように鳴り響く。音楽は嫌いではないが、音質の著しく悪いのは気に障る。もちっといいスピーカー使えケチるな金はあるんだろ、と振り向いたら、あらら。真っ白いワゴン車(かな? 車に興味はない)の横に「小渕一族は有権者をバカにしていませんか?」と大書きしてある。社名団体名その他身元を宣伝する文字は一切ない。ついこの間見た街宣車(装甲車?)には、闘ナントカ維新会本部とでかでかと書いてあった。普通の車に所有者の名前は書いてないから、この白車が違法とか言うのではないけれど、街宣する車に名前がないと、なんかヘンと感じてしまう。
さて、この白車の主、警察署の前まで来ると、やおら演説を始めた。
「警察署長殿、私は9月8日に、交通安全に関する要請書を提出したものです。しかし、今日にいたるまで回答がありません。」正確に覚えていないのが残念だが、この後、交通安全をねがう市民をなめとんのか、みたいな発言が続く。このおじさんの言ってることはもっともなので、通行人が歩きながら注目している。警察の人も何人か表にでて腕組みをして見ている。朝っぱらからこういう楽しいことをしてくれる人がいる。嬉しくてにやにやしてしまった。
行き交う人たちも同じ思いらしかった。
そう言えば、編集長がハンドマイクがどうのこうのといってたけど、なにするんだろ。
8月10日(木) 晴れ
今日の晩御飯は麻婆茄子だ。とれ過ぎてしまったから、と経理部長が茄子の山をくれた。茄子ゆうたら麻婆茄子、と最近は決まっているらしい。秘書は良識ある常識人だ。誰かみたいにいちいち逆らったりせず、世間の趨勢に合わせるのだ。
ところで、茄子を英語でいうと玉子になる。eggplant。玉子みたいに丸いからだ、というのは英米の話。いわゆる米茄子だ。日本の茄子は、茄子型をしている。つまり、お盆におがらの足(と尻尾)をつけてもらい仏様の送り迎えをするやつ。まんまるでは仏様がすべり落ちてしまう。
経理部長の茄子は何故かひょろ長い。日本茄子でも米国茄子でもない。味は一緒だというが、見た目は、母は茄子、父は胡瓜で、国籍不明。
あれこれ詮索しているうちに、はたと思い当たった。これは、かの”棒茄子”ではないか。わーい、幻の逸品だ。
む、しかし、毒だと社長が言ってた。食べていいんだろうか。鹿、といったことを、経理部長は根に持っているんだろうか。
8月9日(水) 晴れ。空がゴロゴロ
西の空が真っ黒になっている。つい条件反射で、急いでお家に帰りたくなる。が仕事がまだ終わっていない。あ〜あ、遊びたいよー。みんな夏休みを楽しんでいるぞぉ。
編集長はまたいそいそと何処かへお出かけした。仕事って言ってるけど、あやしいぞぉ。と、ぶちぶちつぶやいていたら、人事部長に、永久休暇をとるかね、と言われた。ぐさっ。
秘書をからかうと面白い、と思ってるらしいが、あんまりいたぶると仕返しが恐いぞ。
部長お気に入りの蓋付き湯呑み茶わんの蓋をボンドでくっつけちゃうぞ。茶托もくっつけちゃうぞ。
8月8日(火) 晴れ。西の空がピカピカ
我が家の冷蔵庫の寿命が尽きました。この暑い最中にあんまりです。泣く泣く郵便局にいって預かってもらっていた虎の子供を返してもらい(預り賃は雀も泣く程のものでした。)、電気屋さんに走りました。ああだこうだうんだすんだとあれこれ物色して我が家の身の丈にあったチビ冷蔵庫を買いました。チビでも担いで持って帰れる代物ではないので、配達して下さいとお願いしました。
配達はいつにしましょうか、と聞かれてガーン。
日曜日まで休めない。
日曜日まで冷蔵庫抜きで人生を送らねばならない。
様々な苦難はあれど冷えない人生がこれ程辛いものとは今日まで知らなかった。
8月7日(月) 晴れ。嵐のような夕立ち
雨乞いをやり過ぎたのか、大雨が降ってしまった。夕立ちとかいう可愛らしい規模ではない。ピカピカゴロゴロ派手に光るは鳴るは、雨は強風に煽られてほとんど横に殴りかかるはで、金に糸目をつけない映画セットのようだ。部屋の電気を消して暫し鑑賞してしまった。突然の大雨にとまどって通りを右往左往された方々には申し訳ないが、久方振りのエキサイティングなアミューズメントだった。(日本語で言え、と編集長にからまれた。今日は凶暴だ。先週、編集長の背中に家内安全火の用心のお札を貼ったのは秘書だとばれたらしい。)
8月6日(日) 晴れ。
あいも変わらず暑いので、近所のスーパーへ避暑に出かけた。しかし店内はこの前、穴のあくほど眺めてしまったので、あまり楽しめずジュースと牛乳をぶら下げて早々に帰ってきた。
牛乳に氷を放り込んで、胃も凍るアイスミルクを頂こう、と冷蔵庫を開けたら、なんか変だ。冷蔵庫が夏バテしてる。
これだけ暑ければ無理もない。全ての目盛りを「最強」にしておいた。電気代、かかりそうだな。
8月5日(土) 晴れ。一時雨。
今年は記録的な猛暑、とみんな言っている、と言ったら、みんなって誰?と編集長に突っ込みを入れられた。みんなはみんなだ。秘書のお友達たち(いわゆる一般大衆です)や守衛のおじさんや交番のおまわりさん、それにテレビやラジオや新聞も、み〜んな言ってる。
証明などいらない暑さなのに、ひねくれたおじさんだ、と思ったら、この暑さには編集長が一番怒りを感じているようだ。いや、正確には、暑さそのものではなく、その結果訪れるであろうものに。後ろ姿がメラメラいってて、半径2メートル以内に近付くのがためらわれる。
今年の春先の予報が大当たりの猛暑だ。おのれ、予報風情めが、でもないらしい。予報に罪はない。つまり、この春の予報は、この夏は猛暑である、故に杉はすくすくとご成長あそばし、故に来春は盛大に花粉を振りまくであろう、というものであった。
編集長が給湯室の引き出しをガサゴソかき回している。何をお探しで、と訊ねたら、百円ライターはないかとのこと。ありません、そんなもの。だいたい、マッチから灰皿から、タバコを連想するもの全てまとめて捨てて下さったのは編集長ではございませんか。おかげで秘書は、お客さんにお茶を出そうとしてガスコンロが着けられず往生しました。そういえば、ゴーと盛大に火を吹くチャッカマンならあります。
かくのごとく申し上げたところ、百円ライターでなければ意味がない、とにべもなく却下されました。なんでも、百円ライターには、深い象徴的な価値があるのだそうです。
ところで、本日は雨乞いの甲斐あって干天の慈雨が降りました。
8月4日(金) 晴れ。いい加減で降って欲しい。
千葉すず選手敗訴、と報道されたが、少なくとも秘書の回りでは、千葉すずさんの勝ちだ。あの水泳界の長老古橋さん相手に怯むことなく堂々と自分を主張したのだ。五輪代表から漏れた時点で、お偉方ははっきりものを言う女が嫌い、と印象付けられてしまった。あの時から、秘書のお友達たちは、日本水泳連盟がなにさ、の雰囲気だった。
世代間格差は確かにある。殊に1世紀ぐらいの間に目まぐるしく変動した社会ではなおさらだ。千葉すず世代には当たり前の主張が、長老達の世代ではとんでもない非常識と捉えられることが多い。真実も常識も不変のものでは無くなっている。秘書は千葉すずさん頑張れ!のクチだが、一方で古橋氏の感情も分かるような気もする。溝を埋めることなど出来ないだろう。共存の方策を考えるのが一番ではないか、と思ってしまう。
今回、千葉さんがスポーツ仲裁裁判所に提訴した。その背中を、いつも歯がゆい思いをしている、はっきりものを言えない女たちが、無言のまま後押ししていた思いがする。
無言では力にならない、と言われるかもしれないが、無言の思いが時代の空気となって流れていくのではないだろうか。
8月3日(木) やっぱり晴れて暑い。
森さん内閣から脱落第1号は久世さんというお方だ。歴代の方々のように、いわでもがなのことをポロッと喋ってしまって・・・というのではない。それは森さんの得意技なので、領域を侵犯しないようみなさん気を使っているらしい。銀行だの不動産会社だのからお金を貰っちゃったんで問題になってるようだが、不動産会社のは何しろぼつぼつ10年前の話なので、あげた方も貰った方もなんのお金だったか定かでなくなっていて、党費だった会館運営費だった、と使い道でもまた揉めている。党費だとちょっと具合が悪いらしい。1億円といったら秘書には一生忘れられない金額だが、政治の世界ではいちいち覚えていられない端金のようだ。
森さんがお詫びしたが、謝ればいいってもんじゃない、と言う人もいる。あの森さんが謝ったのだからよほどのことだ、と秘書は思ってしまうのだが。
スキャンダルを取り締まる筈の人のスキャンダル。漫才の新作ができそうだ。
8月2日(水) 熱熱晴れ。
先日の寒い日々に引いた風邪が治らない。熱の出ない風邪、とかいう噂があったが、秘書は熱を出してしまった。37度位熱の内に入らない、などというのは野蛮人のセリフだ。今様の文明人は概して体温が低い。脳味噌がビニールコーティングしたみたいだ。こんな時にどうでもいいことでとやかく言われるとプッツンしたくなる。
よっぽど暇だったのか、会議室に集まって秘書の日記の合評会を始めてくれた。
慣用句を誤用するなとか、変換を間違えるなとか、感字をつかうなとか、挙げ句、馬から落ちて落馬するんじゃないとか。秘書は、趣味は乗馬、などという優雅な暮らしはしていない。
8月1日(火) 熱晴れ。
アルバイトを始めて1年が経った。長かった。あっと言う間だった、というのは年経た人間のセリフだ。秘書はまだ1年を長いと感じるお年頃だ。
思い起こせば1年前の暑い日だった。2日しかない夏休みの貴重な1日を割いて、秘書募集アルバイト可、の面接に来たのだった。会社の前まできて、想像を遥か彼方に置き去りにしてくれる建物を目にして、この話は存在しなかったことにしよう、と回れ右しかけたら、「入り口はこっちだよ」と声がかかった。守衛のおじさんだった。(あの時は、このヤロー、と思った)おそるおそる応接室に入ると、品が良いというのか人が良いというのかなんとものんびりほんわかしたオジ(イ)さんぞろいだった。職種は、時代の最先端を行く情報産業、というが、言葉の解釈取り違えているんじゃないか、と余計な心配をしたのを覚えている。
仕事は、お茶入れたりお使いに行ったり書類の清書したりあとは気が向いたら掃除でもなんでもやりたいことをやってくれればいい、と言うので即決してしまった。楽して金が稼げる。やっと運が向いてきた。忘れもしない、4日目の午後だった。
玄関を開ける音から喧しかった。日に焼けたおじさんが大きな荷物を抱えてドカドカと入ってきた。そのまま奥の(開かずの間の)部屋にどさっとリュックやらなにやらを放り込み勝手に冷蔵庫を開けて秘書が冷やしておいた麦茶を排水溝に流すような勢いで一気飲みした。誰だ、このおっさんは。
「ん?」ようやく傍らに人が入るのに気がついたらしい。
「おまえは誰だ」(こっちが聞きたい)
「秘書です。」
「秘書? そんなもの雇った覚えない。」(私もアンタに雇われた覚えない)あわや、というところで社長が出てきた。
「あれ、初対面だったかね。」
このおじさんは編集長で、7月からニューヨークに出張してた。奥の部屋は編集長の部屋で、今日からまた使うのでよろしく、とのことだった。
「社長秘書です。よろしく。」とでかい声で挨拶したのを覚えている。アンタの秘書じゃないぞ、と強調した積もりだったが。
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