『読売新聞・日本テレビ グループ研究』(0-4)

序章 ―「体質」「体質」 4

―江川問題で表面化したオール読売タカ派路線―

電網木村書店 Web無料公開 2008.4.25

Z旗あげて、血の汗流せ!

 正力は死んだ。しかし、戦後はまだ終っていないし、「戦争体質」のトップたちは、依然として頑張っている。

 昨一九七八年のことである。

 「一月六日、まだ松もとれない東京・大手町の読売新聞本社を訪ねていたとき、九階大会議室で異様な音楽をきき、会場の中に迷いこんだ。……(略)……

 異様にひびいた音楽は、なんとあの『月・月・火・水・木・金・金」の軍歌のメロディーだった。街頭に軍歌を流して走る右翼の装甲車じみた光景は、もうひとつあった。正面演壇の背後中央にかかげられた黄、黒、青、緑の、日露戦争・口本海海戦のときのZ旗なのである」 (『現代』一九七八年三月号、一一一頁)

 この会場に集った男たちは、約二五〇名、読売新聞販売店主たちである。そして、Z旗を背にして熱弁を振うのは、愛国党党主ならぬ読売新聞販売局長である。

 読売新聞社が、Z旗をどこであつらえたのかは分らないが、Z旗とは、もともと万国共通の信号旗で、その名の通りZの文字を示すだけのものである。ところが、日本海海戦の大バクチにそなえて、日本海軍の特定信号文「皇国ノ興廃コノ一戦ニアリ、各員一層奮励努力セヨ」が、この旗にふり当てられ、バルチック艦隊撃滅のノロシとなったものだから、以来、Z旗は日本の好戦的諸子の間で、突撃の旗印となってしまった。

 そのZ旗をひるがえして、いま、読売新聞社は誰を相手に戦おうというのであろうか。すでに一九七六年二一月、読売新聞の発行部数は朝日新聞を追いぬき、いまや八○○万部をこえ、毎日新聞を約半分に突き落しているのだ。世界一の部数をほこる読売新聞は、最早、自己の記録を更新するだけなのである。それでもなお、Z旗が必要なのであろうか。

 一方、日本テレビでは、小林社長が、機会さえあれば「王者の道」とか、「激しい競争を忘れずに」とか、長時間の演説をぶちまくっている。「王者」という言葉は、テレビ・マンガ『巨人の星』のテーマ・ソングにあり、そこでは、「血の汗流せ……行け行け、王者、ドンと行け!」、などとなっている。こちらも、いわば“Z旗あげっぱなし”の状況である。

 本書の課題のひとつは、これらの強引きわまる“競争”意識の正体追求でもある。


(序章5)「共同声明」で世論操作