京大ユニセフクラブ2002年度11月祭研究発表
「水家族」

(コラム) シャープIC工場を訪問して

第2章 工業用水(文責:高垣)


(注:先に2−2“膜の作る社会基盤”をお読みください)

 11月15日、奈良県天理市にあるシャープのIC工場を見学しました。シャープとはパソコンではメビウス、PDAではザウルスといった商品を提供しており、液晶の技術が昔から優れており、また太陽電池生産で世界第一位のシェアをとっている会社です。現在工学部では外部講師をお呼びして授業を進めている分野がたくさんありますが、その一部で(設計分野で)シャープの人に授業を任せているものがあります。この授業に出席しているというつながりで、工場見学へ行ったわけです。
 工場では、案内のお姉さんに「小学生にも分かる説明(僕は理解できませんでしたが・・)」をしていただき、また事前に「専門的なことを聞きたい」と伝えておきましたので、工場の技術者の方二人が対応にあたってくれました。一学生にはもったいないほどの破格の対応で恐縮してしまいました。
 工場内では一般的な案内コースではなく、IC製造過程に絞って見学しました。通常の見学では5〜10分程度のところでしたが、1時間ほど質問しました。特に驚いたのは(何点かありますが)、一点目は、超純水を貯めておく事ができないので管の中を流しつづけるというところで、技術者の方が「本当にそのとおりだ」というように何度も首を縦に振ってみえたことです。これは、水が滞留するとバクテリアが発生するためです。そのため「盲腸(水が滞留する袋小路)」を作らないことが一番重要だと話してみえました。二点目は、超純水を流す管の中が既に鏡面加工されているということです。僕の読んだ本の中には、今後管の内側の鏡面加工や純水運搬タンク車のタンク内の鏡面加工が必要だと書かれており、既に鏡面加工をしなければならないところまで製品の加工精度が要求されているとは思ってもみなかったからです。また、三点目としては、工業用水道からの水を使っていないという点です。これは「日本の工業用水道」のところで説明しましたが、上水道水よりも格安で提供される水のことです。つまり工業用水道の水を自前で超純水に加工するよりも、上水道水から超純水へ加工する方が経済的であるとの判断からです。このような方法は広く電子機器メーカーで行われているようで、上水道の重要性がより大きく感じられました。他には、管内の浄化は年一回行われるとか、工場の清浄化システムは建設屋さんが基本的に考えるなど、面白いお話をいろいろ聞きましたが、水に関する工業からの要求は既に十分満たされており、強く技術革新が望まれているという様子ではありませんでした。
 クリーンルームへ入ったり、純水製造過程を見たり、純水を舐めてみたりしたかったですが、見学コースでは不可能でした。しかし、シャープの方はとても親切で天理へ行った甲斐がありました。



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