チェチェン総合情報

チェチェンニュース Vol.22 No.38(#509) 2022.09.11

ウクライナ左翼からの訴え:「人々はウクライナのためだけでなく、プーチンを打倒するために戦っている」

 ウクライナをめぐって左翼の混迷が続いています。どのような意見を持とうと自由ですが、ウクライナに関して発言する限りは、当事者であるウクライナ人と常に対話しているという緊張感をもって発言すべきですね。そういう意味ではウクライナ人左翼がじっさいに置かれている状況がよくわかるこの論文をすべての人に(ロシアもウクライナも両方悪いと考えている人にも)読んでほしいと思います。(久下格、元国労)


2022年9月2日(Links International Journal of Socialist Renewal)

 ロシア大統領ウラジーミル・プーチンの侵攻から半年、
・ウクライナのレジスタンスはどうなっているのか?
・停戦交渉とNATOに関して、ウクライナの一般的な雰囲気はどうなのか?
・そして、この戦争は進歩的勢力にとって何を意味するのか?
 ウクライナの民主的社会主義組織「社会運動」(ソシアルニ・ルーク)の活動家であるヴラディスラフ・スタロドゥブツェフに、フェデリコ・フエンテスがインタビューした。

Q ウクライナの現状について正確な情報を得るのは非常に困難です。ウクライナはどうなっているのか、教えてください。

 ウクライナはいま、戦争による深刻な経済的悪影響に直面しています。大量の失業者、金利の高騰、住宅市場の崩壊など、あらゆる種類の経済問題が発生し、社会が総崩れになっています。そして、ロシア軍の駐留が続いています。

 ウクライナ人自身ですら、侵略軍を撃退できるとは思っていませんでした。この戦争が始まって半年以上経つのに、まだここで戦っているのです。私たちには、近代的な装備を持つ強力な軍隊があるわけでもないのに、ロシアへの反撃を開始できたことは予想外でした。ここには、この戦争に勝つという人々の決意の高さが現れています。

 今のところ、戦争はやや動きが鈍くなり、互いの塹壕を砲撃しあう状況です。これは第一次世界大戦に似ています。一方が10回砲撃し、もう一方が10回砲撃することを繰り返し、最終的には追加の弾薬を持っている側が勝利する、という状況です。このような戦闘は非常にコストがかかるため、当然ながらウクライナ軍には大きな負担となっています。旧ソ連製の砲弾を大量に持ち、ロケット砲も発達しているロシアに比べ、ウクライナには壊滅的に砲弾が不足しているのです。(注:インタビューはウクライナが南部で反攻を開始する数日前の8月27日に行われた)

Q ウクライナ国外からは、膠着状態の中でこれ以上の犠牲を出さないために、停戦交渉に応じるべきだという声が高まっています。交渉を求める人たちは、米国や英国、北大西洋条約機構(NATO)などの外国勢力が、ウクライナに和平交渉をしないよう圧力をかけており、戦争を続けてロシアを弱体化させることを望んでいるのだ、と主張することが多いようです。これに対して、あなたはどのように答えますか。

 現実はまったく逆だと言いたいです。アメリカもイギリスもフランスも、最初からウクライナを売り渡すつもりでした。彼らは戦前から、ウクライナを支援したくない、ウクライナは敗戦国となると明言していたのです。戦争前の数日間、これらの勢力がゼレンスキー大統領と話をしていたことはよく知られています。

 フランスのマクロン大統領や、ドイツのショルツ首相といった権力者たちは、ゼレンスキーに対して、ウクライナがプーチン大統領に何らかの譲歩をするよう求めていました。また、米国の諜報機関は、ロシアが侵攻を開始すれば2日以内にキエフに到着するから、ゼレンスキーには、出国して占領後のパルチザン戦に備えるのが最善であると勧めていました。しかしご存じのように、結果は違います。

 このため、欧米列強は厄介な立場に立たされました。ウクライナの善戦が予想外だっただけでなく、彼らはウクライナを支援すべきだ考える自国民からの圧力に直面したのです。欧米列強にとっては、交渉の主役はウクライナ人ではなく、自国民でした。ウクライナ人は、占領者との和平を迫ってきたこれら帝国主義勢力に対して、非常にまっとうな怒りを感じています。だから私は、状況は正反対だと言うのです。

 欧米列強が勧めてきた宥和政策は、民主的な手続きなどよりも、最大の軍隊を持ち、強者による支配を貫こうとする国が世界を支配するという、いままでの世界秩序を強化することにしかなりません。ウクライナでの和平交渉でロシアが利益を得たりしたら、ロシアはウクライナ以外の国々をも侵略し、同様の大量虐殺を行う動機を与える結果になるでしょう。

 また、欧米列強によるそのような主張は、占領されることを望まないウクライナ人に対する、ひどく植民地主義的な言説です。ブチャやイルピンでの虐殺の後では、ウクライナ人は交渉の可能性を考えていません。だから、いまウクライナ人は2014年の国境線の回復のためだけでなく、プーチン政権の打倒のためにも戦っていると言えるでしょう。これが一般的な雰囲気です。誰かが和平交渉について話しているのを聞くと、人びとは非常に怒るのです。

Q こうしたことは、ウクライナ人のNATOに対する態度にどのような影響を与えているのでしょうか。

 興味深いのは、ウクライナの人々は今、NATOに好意を持っていると同時に嫌ってもいるということです。戦争の前、NATOはプーチンに、ウクライナの加盟は絶対に認めないと言っていました。このことは、ドイツのショルツ首相が最近のインタビューでも改めて確認しています。多くのウクライナ人は、こうしたことがプーチンに侵略のゴーサインを出したと見ていますし、実際そうでした。

 なぜなら、戦争の可能性が現実味を帯びる中で、NATOはただ妥協して、できるだけプーチンをなだめようとしたのですから。こうしたわけで、人々はNATOを嫌っています。NATOは自国の利益を追求したいだけなのだと考えているのです。同時に、ウクライナが2014年にNATOに加盟していれば、このようなことは起こらなかったと考える人も多くいます。NATOを理想化する人びともいれば、同時にそれを憎む人びともいるのです。

 私たちがこの戦争に勝ち、ロシアの現体制が崩壊すれば、ウクライナの人びとがNATOを必要とするとは思えません。戦前、ロシアの侵略を阻止するためにNATOを支持する雰囲気があったときとちがい、最悪の事態が現実となった今では、NATO加盟はそれほど大きな問題ではないのです。

Q ロシアに占領されたウクライナでの生活について教えてください。

 占領された地域では、弾圧、大量殺戮、政治活動家の家族の人質化、LGBTQコミュニティに対する弾圧などが一般化しています。占領地は、政治活動を行う者は誰でも残酷に弾圧されるテロ国家の様相を呈しています。多くの労働組合が破壊され、ウクライナの労働契約よりはるかに悪い新しい労働契約を受け入れさせられ、すべてのストライキが禁止されています。多くの一般人がロシアに連行されたまま帰ってこず、行方不明になっています。また、ロシア軍による公然の略奪や強姦が多発しています。

 また、ロシア当局は過激な同化政策を推し進めています。ウクライナ語の使用を事実上禁止し、学校や行政などあらゆる場所でロシア語を強制しています。学期が始まる9月1日からは、占領地のどの学校でもウクライナ語が教えられなくなります。ウクライナ語の勉強も、ウクライナ文学も、外国文学という科目の中ですらも、教えられなくなるのです。ロシア当局は、ロシアから教師や政治委員といった人びとを占領地に招き、教育制度や行政のポジションを引き継がせています。人びと全部をロシア人にしようという強制的な同化運動が進行しているのです。つまり、現状はファシストによる占領です。

Q ロシア軍の撤退によってドンバス地域の市民がウクライナ軍からの弾圧を受けることになるという懸念がありますが、「社会運動」(ソシアルニ・ルーク)はドンバスの状況をどのように解決すべきだと考えていますか?

 まず、ロシア軍撤退後のドンバスの人々の状況が今より悪くなることはないと思います。現在の状況は、完全に(親ロシア派による)弾圧に依存した権威主義国家であり、あらゆる民主的な対話が閉ざされています。どのように再統合が行われても、ドンバスの人々は、今よりは良い生活を送ることができるでしょう。

 第二に、ウクライナの人々の間に、ドンバスの人々に対する憎悪があるとは思えません。もちろん、ドンバスでのテロを助長し、ウクライナとの戦争に参加した人たちを裁く必要はあるでしょう。しかし、それでもウクライナ政府には、妥協したいという気持ちがあるように見受けられます。ですから弾圧の波が来るとは思えません。

 とはいえ、再統合は簡単なプロセスではないでしょう。ドンバスの人々は8年間、政治的な議論や行動がいっさい禁止された状態で生活してきました。ドンバスの政治文化は、ウクライナの一般的な文化とは大きく異なっていたのです。また、ドンバスを追われ、家やそれまでの生活を捨てた人たちがいます。そして、ロシア人が優遇されているのに対して、ドンバスに残ったウクライナ人が下級国民として扱われている状況もあります。これだけ長い間、全く異なる現実を生きてきた人々が、再び一緒に暮らす方法を見つけるためには、ある程度の時間が必要でしょう。

 言葉の問題など、解決しなければならない複雑な課題もあります。しかし、政府にはドンバスに住む人々を抑圧しようとする姿勢は見られません。社会的な支援が行われ、住民が対話に参加できるようになれば、乗り越えられない問題はないと思います。

Q 戦争中にもかかわらず、ウクライナの議会は法律の審議を続けてきました。その中には進歩的なもの(例えば、家庭内暴力に対するイスタンブール条約や結婚権の平等など)もあれば、反動的なもの(最近成立した反労働法など)もあります。「社会運動」は、ゼレンスキー政権をどう評価しますか?

 戦争以前から、この政権はウクライナでは人気がありました。これは「良い政権」だと言っているのではなく、比較的ましということです。ゼレンスキーの政党「人民の奉仕者」は、LGBTQの権利、女性への暴力などの社会問題に関して、最も進歩的な政党となりました。しかし、これらの政策のほとんどは、欧州統合を念頭に置いて推進されてきたものであり、党自体が進歩的なのではありません。

 いっぽう経済面では、ゼレンスキーの党は新自由主義であり、市場原理主義的です。この戦争は、彼らが夢想したあらゆる不人気な法案を押し通す、千載一遇のチャンスでもあります。戦争は、望むことは何でもできる白紙委任状を与えています。例えば、彼らは労働関係を規制緩和するために新自由主義的な法案を採択し、集団的労働契約と労働組合の力を弱めました。彼らは労働組合を破壊しようとしています。

 彼らはまた、税制改革を採用し「10-10-10」と呼ぶ、所得税10%、法人税10%、物品・サービス税10%の定率税を設定する税制改革を推進しようとしています。このような税制では、特に戦時には何の財源も確保できないので、最終的には医療も社会福祉も教育も公共交通も軍需産業も成り立たなくなります。

 ゼレンスキー政権は、戦争のさなかに民営化を推進する法律も成立させました。これは、これまでほとんどの戦時政府が行ってきたことに反しています。経済を中央集権化し、国民を動員して戦争に勝つために必要なものを生産させるというセオリーに反しているのです。例えば、第二次世界大戦中のイギリスには、戦争に勝利するために、社会的ビジョンが異なる政党同士が協力し合う連立政権がありました。労働党を政府に入れ、労働者が工場で役割を果たせるようにしたのです。当時の資本家は、戦時には労働者と妥協する必要があることを理解していました。

 なぜなら、戦争を遂行するためには社会的平和と社会的安定が必要だったからです。これは極めて重要なことでした。そこで労働者は動員され、できる限り多くの兵器を生産しました。しかし、わが国の政府は、必要なものは西側諸国がすべて与えてくれるから、兵器を生産する必要はないと考えています。そのため、軍備を生産する工場は閉鎖されて資金不足に陥り、民営化され、労働者は解雇されているのです。

 わが国の政府は、侵略者に対する戦争の遂行を妨害しています。経済を国有化しないと決定し、戦時経済を破壊し、新自由主義、寡頭政治(オリガルヒ)のビジネスを継続することを決定したのです。彼らは国民のニーズを満たすためでも、軍備を生産するためでもなく、新自由主義的で市場原理主義的な経済政策を押し付けるために、戦争を利用しているのです。彼らは、戦時下では労働組合やメディアが何もできないことを利用して、特権の確立を推進しているのです。この点で、彼らは戦争の遂行を完全に妨害しています。

Q この姿勢は、ゼレンスキーのウクライナ戦後復興構想にも当てはまるのでしょうか。

 はい、戦後復興についても同様です。ゼレンスキー政権は、可能な限り新自由主義的な復興を推し進めようとしています。一種の「西部大開拓」的な新自由主義経済を構築し、ウクライナ経済をできる限り西側に売り払おうとしているのです。これはひどいシナリオです。

 残念ながら、現在、再建のための代替案に関する真の公的議論は行われていません。私たち「社会運動」は社会的に進歩的な再建のためのビジョンを強く推進しています。ウクライナの多くの人々は、その違いを理解していませんが、説明すると、社会的再建の考えに賛同してくれます。しかし、今のところ、政府がこの議論を独占しているので、負担は大きいです。メディアが完全に戦争に集中しているため、この議論を始めることさえ非常に難しいのです。

 皮肉なことに、現在、欧米諸国はウクライナ政府に対して、経済対策が急進的すぎる、もっとケインズ主義的な対策を検討し、一定の社会政策を実施すべきだと言っているのです。彼らはこう言っているのです。「私たちの基準からしても、あなたたちは本当にひどい」と。これは大きな課題です。この問題は絶対に重要なので、私たちはこの問題に取り組んでいます。そうしなければ、金持ちの幸福を最優先する、非常に新自由主義的な再建に行き着いてしまうからです。

Q ゼレンスキーの政策を欧米諸国がどう見ているかというご意見を踏まえて、「社会運動」はウクライナの欧州連合(EU)加盟の申し出をどう見ていますか。

 ウクライナの左翼の多くは、欧州統合を支持しています。私たちは、EUとその新自由主義的な政策に関連する問題を理解しています。実際、ウクライナはすでにEU連合協定や貿易協定によって、ウクライナの企業や国営企業の保護主義的措置が撤廃され、貿易が崩壊するという負の影響を受けています。その意味で、ウクライナはすでにEUの最悪の面を経験しており、まだ経験していないのはその良い要素です。

 例えば、EUは現在のウクライナに比べ、労働保護や権利がかなり強化されています。また、EUに統合することでウクライナ人が恩恵を受けるであろう、より社会的に進歩的な政策もたくさん持っています。ですから、EU統合によってウクライナがより進歩的な方向に改革する可能性はあります。逆にEUへの加盟は、支配階級が反動的な政策を採用する際の障壁となるでしょう。

 さらに、EUに統合することで、ヨーロッパ最大の国であるウクライナは、EUの政治に参加できるようになるのです。現在、すべての決定は、私たちと何の相談もなく、どこか他の場所で行われています。統合によって、政治の新しい空間が生まれ、私たち左翼はこの空間を利用しようとするのでしょう。EUはウクライナの加盟を促進するために政策を変えなければならないので、ウクライナの加盟はEUの将来にとっても非常に重要であると思います。ウクライナの加盟によって、もうひとつのヨーロッパを再構築し、現在のEUの新自由主義的なプロジェクトに代わる、社会主義的・進歩的な選択肢を作る可能性が生まれます。

 例えば、競争に関する法律など、EU加盟にはマイナスがあることは分かっています。また、もしウクライナがこの戦争に勝ったら、国を再建する必要があります。しかし、インフラや生産、雇用の確保に対する国家投資を禁止する競争法を導入してしまえば、もう再建は不可能でしょう。ですから、ウクライナの再建を可能にする特別な条件を組み込みつつ、ヨーロッパを統合するために、今すぐ闘い始める必要があります。

 しかし、はっきりさせておかなければならないのは、EUはウクライナを受け入れようとはしていないことです。彼らは、ウクライナの統合にこれ以上お金と時間をかけたくないので、常に新たな障壁を作り出しています。彼らはウクライナに関して、すでに支配的な地位を確立しており、その状態を維持したいのです。ヨーロッパの特権階級はすべて、ウクライナの統合に反対しています。

 欧州の官僚は、特別な条件があろうとなかろうと、ウクライナの統合に反対するでしょう。彼らは、ウクライナを締め出すために、想像力に富んだ新しい障壁を発明し、新しい条件を強制し続けるでしょう。そして、もしウクライナが加盟に成功したとしても、彼らはウクライナをできるだけ利用し、できるだけ妥協点を与えないようにしようとするでしょう。彼らはすでにこれを実行しており、あれやこれやの条件がなければ参加できないと言っています。しかし、多くの特別な条件をつけてEUに加盟したデンマークの例を挙げることができます。戦後の社会・国家を再建できるよう、ウクライナの復興にもそうした条件を認めるべきでしょう。

Q 「社会運動」は、ウクライナの労働者階級に、寡頭政治に代わる選択肢を提供するために組織されました。戦争と、ロシアの脅威に対抗するための何十万人ものウクライナ人の動員は、ウクライナの政治にどのような影響を与えたのでしょうか。もしあるとすれば、それは「社会運動」にとってどのような機会を開いているのでしょうか。

 戦争はウクライナの政治を劇的に変化させました。フランツ・ファノンは、戦争や革命によって、人びとが抑圧者と戦うために集団で行動しなければならない状況に置かれると、人びとのなかに、自分たちが自分たち自身を統治できるという感覚を生み出すと言っています。ウクライナでは、軍隊や工場など、あらゆる場所で人々がボランティアとして組織化され、社会の間に強い連帯感と協力が築かれました。人々は、協力する新しい方法、組織化する新しい方法を見つけ、より多くの力を得たと感じています。

 つまり人びとは、戦争の先頭に立つのは支配階級ではなく自分たちであり、自分たち抜きでは何もできないことを理解しているのです。この感覚は、戦争が終わったからといって消えるものではありませんから、戦後も民衆の活動が活発になると思います。

 戦争がもたらしたもう一つの影響は、ウクライナの既存政党の社会的基盤が崩壊したことです。戦前は親ロシア派と親ヨーロッパ派の政党がほとんどでしたが、今はそのような溝はありません。政党は、有権者を獲得し、当選するために、新しい問題や新しい方法を見つける必要があります。親ヨーロッパ、親ロシアという対立軸だけでなく、新たな議論が生まれるでしょう。

 また、戦争の中で、多くの人々がヨーロッパや新自由主義に懐疑的になっています。戦前は多くの人が「ヨーロッパは素晴らしい、あのようになるべきだ」と言い、ドイツやアメリカで採用されている政策を支持したのです。しかし今、特にロシアとの妥協に走り、ヨーロッパがウクライナを本当に助けていないことを見て、人々はヨーロッパ世界に対する信頼を失いつつあります。人々は今、彼らを、私たちの正当な民族解放戦争を助けてくれない裏切り者とみなしています。彼らはこう言います。「なぜ彼らに従わなければならないのか」「彼らのようになりたくない」。

 戦争の結果、左翼もかなり強くなり、受け入れられるようになりました。マイダン革命が起こり、2014年にドンバスで戦争が始まったとき、左翼は一般に「裏切り者」と見られていました。残念ながら、スターリン主義的で親ロシアの左翼が多く、反帝国主義の強力な左翼は存在しませんでした。左翼とは、ロシア帝国主義を支持するか妥協しようとする人々だと考えられていたのです。

 「社会運動」や他の左翼組織(無政府主義者、社会主義者、社会民主主義者)が戦争に参加している今、この議論は崩壊し、人々はこう言うようになりました。「左翼はウクライナ人の味方であり、我々を支援し、我々の問題を心配してくれている」。これは、左翼政治への支持を築き、左翼の政治的主体を発展させるための非常に良い環境です。いまは民族主義的な考えを持っている人たちも、左翼に対してかなりオープンになってきています。

Q 西側の左翼は、自国の帝国主義的な政府がウクライナ支援していることに不安を感じているのではないでしょうか? 西側の左翼が自国政府に要求しうることは何でしょうか? そして西側の左翼は、どのようにしてウクライナ国民に連帯できるのでしょうか?

 第一に、自分たちの利益のためにウクライナを売り渡そうとする自国の政府に対して、各国の左翼はウクライナを支援するよう圧力をかけ続けるべきです。西側諸国の政府は、プーチンのウクライナ侵攻によって引き起こされた問題にフタをしようとしています。ロシアのガスや、新しい貿易取引が欲しいという資本家をなだめたいのです。このため、彼らはウクライナへの支持を表明したことを撤回したがっています。

 それを防ぐために、左翼は街頭で動員し、ウクライナ支援を継続するよう圧力をかけるべきです。左翼はこう言うべきなのです。「政府がウクライナを支援しないなら、私たちは政府に反対し、ウクライナのために立ち上がり、さらなる支援を要求します」と。私たち左翼は、侵略や強者の意思の押し付けに基づく世界ではなく、より民主的な世界を求めて戦う必要があるのです。

 左翼はまた、すべての難民を受け入れるために戦い続けるべきです。ウクライナ難民の受け入れだけが進んでいる状況は例外的なので、左翼は「ウクライナの状況はわかる。しかし、同じような状況は世界中にある。シリア、パレスチナなど、紛争、戦争、抑圧、占領にさらされているすべての国と何が違うのか。なぜウクライナだけを特別扱いするのか」という提起からはじめて、すべての難民の支援につながる主張をするべきです。ウクライナ紛争は、欧米のほとんどの政府の人種差別主義を露呈しており、これを批判する必要があります。

 次に、制裁の問題です。もしロシアに対してより強力な制裁を課さなければ、多くの死者、多くの難民、多くの社会崩壊、多くの飢餓が発生するでしょう。ロシアに制裁を加え、兵士の賃金や軍備の増強のための費用を捻出できないようにする必要があります。その費用の捻出ができなければ戦争は終わるでしょう。だから、私たちは制裁を推進する必要があるのです。

 左翼は、例えば反労働改革など、政府の新自由主義的な行動に反対するキャンペーンも行うべきです。なぜなら、左翼は帝国主義に対抗するだけでなく、戦後の未来のビジョンのために戦う必要があり、それはウクライナのためだけではないからです。もしウクライナが勝利すれば(私はそうなることを望みますが)、これは既存の世界秩序の再編成につながります。特にプーチン政権が崩壊した場合にそうなります。

 考えてみてください。ウクライナ人は自国を再建する必要があり、そのためにはEUを改革する必要があります。さらに、ロシアを何とかしなければならない。新しい経済・安全保障のアーキテクチャはどうあるべきか、今後同様の問題や債務問題にどう対処していくのか、といった議論も必要でしょう。

 これらすべてが、新しい世界秩序のための社会的に進歩的なビジョンを推し進める機会を生み出すでしょう。これについての発言や議論を、ウクライナで今すぐ始める必要があります。現在、世界の目がウクライナに向けられているからです。もしウクライナが新自由主義的な路線で再建されてしまうと、支配階級はこのモデルを利用して、自国でも同様の政策を採用するよう宣伝するでしょう。しかし、もしウクライナが社会主義的に再建されれば、それはひとつの前例となります。だから、これは非常に重要な戦いです。

 また、国連などの国際政治機構の問題もあります。この戦争が起こったということは、既存の構造に何か問題があることを示しています。左翼は、民主的な世界秩序がどのようなものであるかを考え抜く必要があります。ノーム・チョムスキーが提案するような、小国を犠牲にした帝国主義者同士の妥協に基づく世界秩序ではなく、大国と小国の差が大幅に縮小され、ウクライナ、バルト諸国、台湾などの国が発言力を持ち、帝国主義勢力の影響から自らを守るための民主的方法を持つ世界秩序が必要なのです。この議論も今、始める必要があります。

 最後に、左翼の人なら誰でもここに来て、直接支援や援助をすることができます。ウクライナは非常に貧しい国で、軍隊も組織も未発達ですから、どんな援助でも大いに結構です。左翼が労働組合の輸送隊を組織し、最前線で戦う労働者に連帯と援助を提供したよい例がいくつかあります。この闘いにおいてウクライナの労働者を支援することは、非常に左翼的な行動であり、もっと多くの人々がこれを行うべきです。

 ウクライナを支援する最も大胆な方法は、おそらく、ここに来て戦うことです。多くの人がアゾフ連隊について話しますが、もし国際的な左翼の志願兵で構成された大隊がたった一つでもあれば、誰もアゾフ連隊について語ることはないでしょう。

 残念ながら、左翼の多くはウクライナ人を「ナチス」か「NATOの操り人形」と見なす人種差別的で不当な考えに縛られているため、こうした支援はほとんどありません。むしろ左翼はウクライナに反対し、右派だけがウクライナを助けているというイメージを増殖させています。残念ながら、西側諸国の左翼はアゾフ連隊のことばかり語り、何の支援もしないことで、こうしたイメージが実現するのを助長してしまっています。

 全体として、左翼は自らを見直し、左翼によく見られる上から目線の発言ではなく、人々との実践的な連帯を作り出す必要があるのです。これは、ウクライナにおける左翼である私たちにとっても大きな挑戦でした。左翼がどのように自らを再構築し、左翼がなすべきこと、すなわち人々の解放のために戦い、国際的な連帯を構築することができるかを見極めるための挑戦だったのです。

 しかし、この戦争は、国際的な左翼に多くの可能性をもたらしました。例えば、私たちは何千キロも離れているにもかかわらず、こうやって互いに話し合っています。この戦争がなければ、このようなことは決して起こらなかったでしょう。こうしたことが、新たなつながりと、新たな国際連帯の可能性を生み出すのです。私はこの可能性が発展することを望んでいます。

【原文】

http://links.org.au/vladyslav-starodubtsev-sotsialnyi-rukh-people-fighting-ukraine-destroy-russian-regime


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