チェチェン総合情報

チェチェンニュース Vol.22 No.25(#496) 2022.06.22


映画「ナワリヌイ」好評公開中!


ナワリヌイは決して諦めない。

公開中の映画「ナワリヌイ」を見た。彼は弁護士・政治活動家で、
プーチン政権とオリガルヒたちを「汚職と泥棒の党」と呼んで、
徹底的に汚職と闘うことで支持を獲得しようとしている挑戦者だ。
年齢は46歳、対するプーチンは70歳。

ナワリヌイはシベリアの町で汚職の調査をした帰り、
飛行機の中で昏倒し、病院に担ぎ込まれた。
ロシアではこの手法で、過去にジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤが
殺害されかかったこともある。
この映画では、ナワリヌイがロシアからドイツに移送される場面から始まり、
ふたたびロシアへと帰還する場面へと向かっていく。
その間に、自分を殺そうとした軍人、情報機関員、
化学者を割り出すというエピソードが入る。

民間の調査グループ「べリングキャット」が、
ロシア国内の電話の通話記録と、航空会社の顧客情報を買い漁り、
ナワリヌイが国内を移動する時に、こっそりと後からついてくる人間たちを
ネット上で一人ひとり見つけていく様子にはびっくりした。
しかも、ナワリヌイは彼らに直接電話して、上司を装って毒物や、
その投与方法について質問していくのだから、痛快すぎる。

多少の脚色はあっても、
このドキュメンタリーの中で解明されている事柄は、信憑性が高い。
そして強烈な印象を残のすは、記者会見でのプーチンのある言葉なのだが、
そこは映画の中で驚いてほしいと思う。まさに語るに落ちる。

よく「プーチンは多くのロシア人の支持されている」という。
そこには、ソ連崩壊以降、西側によってプライドを傷つけられてきた
ロシア人の恨みつらみもあるし、だからこそ「強いロシア」を求めているなど。
それもきっと間違いではないだろう。

しかし、もしこのような暗殺攻撃を、政敵やジャーナリストに対して、
一切していなかったなら? メディアの弾圧をせず、自由に報道させていれば?
政府や特務機関が持つ情報を公開していたら? 
プーチン政権は即、倒れているだろう。
つまりプーチンにはこうした暴力でしかロシアを統治できない、根本的に弱い指導者だ。

ナワリヌイがドイツで毒物の治療を終えて、
すぐロシアに戻ることを選んだことは、周囲を驚かせている。
常人ではできない判断だが、それは彼が闘いの最前線から、
プーチンの本質的な弱さを見抜いたからだと思う。
そして、モスクワに着くなり連行され、妻ユリアとも娘とも切り離されて、
今はロシアのどの監獄にいるのか、弁護士も家族も知らされていない。

だが映画の中のナワリヌイは、ロシア中の支援者たちに言う。
「諦めるな」と。この権威主義国家を倒すまで、彼が生きることを願ってやまない。

(大富亮・チェチェンニュース)


(原題=Navalny、ダニエル・ロアー監督作品、2022年、アメリカ)
新宿ピカデリー、渋谷シネクイント、シネ・リーブル池袋ほかにて、
劇場を拡大して公開中

“ロシア反体制派のカリスマ”を襲った衝撃の毒殺未遂事件。
奇跡的に一命を取り留めた男は自らの手でその真相を暴き出すーー
ロシア政府の暗部に切り込む、緊迫のドキュメンタリー!

公式サイト https://transformer.co.jp/m/Navalny/

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