チェチェン総合情報

チェチェンニュース Vol.21 No.22 (#492) 2022.06.04





自分を暗殺しようとした情報機関員たちに電話で詰問!
 映画「ナワリヌイ」に見るプーチンのロシアの不条理


(原題=Navalny、ダニエル・ロアー監督作品、2022年、アメリカ)
[Text: みーしか]

 正直言って、アレクセイ・ナワリヌイという人物は近寄りがたかった。

 ネットを駆使した強烈な自己宣伝、反政府の旗手ながらレイシストや極右と交
流し、そして何度投獄されてもヘタレない地獄のメンタリティ。しかし、毒殺さ
れかかったときは少し心配した。今、その時の状況がドキュメンタリー映画と
なって公開される。

 ナワリヌイは、ノヴォシビルスク出張からモスクワへ帰る途中、機内で毒を盛
られ重体に。幸い、解毒剤を投与されたタイミングが早かったため命をとりとめ
たが、その後の治療に危険を感じた妻が強引にベルリンの病院へ移送した。彼は
ドイツで再起を図る。

 その時にコンタクトを取って来たのがブルガリア人のクリスト・グロゼフ。彼
は犯罪調査を独自に行う組織「べリング・キャット」のジャーナリストだった。
ナワリヌイ毒殺未遂に興味を持ったクリストは、自費で闇サイトに接触し、実行
役とみられるFSB(ロシア連邦保安局)メンバーを割り出した。CIAでもM
I6でもない一介のジャーナリストが、ノートパソコン1台で犯人を突き止めて
いく手腕には快哉を叫ぶほかない。

 クリストと手を組んで独自調査を行い始めたナワリヌイ。自ら犯人を確定する
ために、容疑者たちとの直接コンタクトに挑む。その様子は彼のSNSサイトで
も公開されているが、映画はSNS動画のいわゆる「メイキング映像」に等しい
ので、さらに手に汗握る展開だ。

 ナワリヌイ帰国のシーンはまさにロシアの不条理集大成、「ナワリヌイ」の名
前を唱えることすら憚るロシア大統領に罵声を浴びせたくなるのだった。

 ロシアがらみの暗殺というと、古くは放射線物質ポロニウムで殺害されたリト
ビネンコ、チェチェン報道で名をはせたポリトコフスカヤ、ダイオキシン中毒に
なった元ウクライナ大統領のユシチェンコ、ナワリヌイと同じくノビチョクをか
けられたスクリパリなど、枚挙にいとまなし。その「発注主」は公認されてはい
ないが、皆が知っているあのおじさんである。私も、あのおじさんの名前を呼ぶ
ことを憚る気分になってきた。

6月17日(金)より新宿ピカデリー、渋谷シネクイント、シネ・リーブル池袋ほか
にてロードショー

公式サイト https://transformer.co.jp/m/Navalny/




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