チェチェン総合情報

26 Jan 2014
チェチェンニュース(転送・転載・引用歓迎)


 爆破事件が続発するロシアですが、その前後の文脈や、特務機関の「うっかり
ミス」などによって、実はそれらがロシア政府による自作自演であるという事実
が明らかになっています。

 ニューヨークに拠点を置いている「現代ロシア研究所」のサイトに掲載され
た、ロシアで起こる「テロ」の背後についての論文を紹介します。

 筆者のアレクサンドル・ポドラビネク。ロシアで人権情報を伝えるPRIMA News
を発行していた人で、現代ロシア研究所は先日ロシア政府が釈放したホドルコフ
スキーの息子が理事長を務めています。

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■自作自演と容疑者殺害─「ロシアにおけるテロ事件の特徴」


 ロシアにおけるテロリズムは風変わりなものだ。たとえば、自動車の中で爆弾
が爆発する。あるいは飛行機の中や、駅で。それで数百人の人々が死んだり、障
害を負ったりする。そんな惨劇が、何度も繰りかえされている。政府と特務機関
の手によって。

 この国で起こるテロには特徴がある。まず犯行声明がないことが多い。しかし
本来のテロ行為は、政府と社会を威嚇するために起こすものだから、誰が何のた
めにしたかが明らかにされなければ意味がない。ところがロシアでは、テロリス
トたちは沈黙を守るのだ。

 1999年に、モスクワとブイナフスク、ヴォルゴドンスクで起こった連続爆破事
件では、まさにこの通りだった。少なくとも307人の人々が死亡し、1700人以上
の人々が負傷した。政府が犯人と名指ししたチェチェンの抵抗勢力からは、犯行
声明はまったく出なかった。多くの独立系のアナリストたちは、この事件がテロ
リストの活動とはまったく関係ないと確信している。最近ヴォルゴグラードで起
こったテロ事件に関しても、テロリストたちは同じやり方を繰り返している。テ
ロリズムで大事なのは、まず事件を起こして、それからすぐに犯行声明を出すこ
となのに。

 ロシアで起こるテロのもう一つの特徴は、被告人がいないことだ。特殊な例外
を除いて、テロリスト容疑者は法廷に連れていかれる前に警察か軍が殺す。テロ
鎮圧の際には、犯人の確保は難しいというのが、当局のいつもの言い分だが、他
の国々では、同じような状況でも犯人たちを逮捕して訴追している。

 2002年に、モスクワ劇場占拠事件が起こったとき、被告人になりそうな人間は
あらかじめ殺してしまうというやり方がまた使われた。公式情報によれば死亡し
たのは36人の容疑者全員(40人という情報もある)だった。ほとんどは、特殊部
隊が現場に注入した毒ガスで意識を失っている間に銃殺された(逮捕しようと思
えばいくらでもできた)。しかもこの解放作戦で、150人の人質も死亡した。そ
のうち4人はテロリストが殺害したもので、それ以外は特殊部隊のガスによって
殺害された。

 こうした、テロリストに対する即時報復行為の正当化は、ウラジーミル・プー
チンが1999年に言った、「テロリストを便器にぶち込んでやる」という言葉にい
きつく。それは、チェチェンの首都グローズヌイへの空爆の正当化のためでもあ
った。

 ロシア政府および警察と治安部隊の指導部は、ことあるごとにテロへの対応の
甘さに言及し、そもそもテロリストは見つかり次第殺害せよと強調している。テ
ロリストを殺害した場合は犯罪にはならない。テロリストが死亡していれば、捜
査をする必要もないというわけだ。こうして政府はテロ事件を法廷で審理する必
要がなくなり、事件についての情報を一手に握ることができることになる。

 ロシアにおけるテロのもうひとつの特徴は、不人気な政治的決定とテロ事件は
ほとんど同時に起こるということだ。国民の結束は異常な手段で作られる。1999
年の連続アパート爆破事件は、チェチェンへの軍事侵攻とグローズヌイへの空爆
によって、第二次チェチェン戦争を始めることを政治的に正当化した。また、こ
の戦争自体が、エリツィン大統領から強硬派の情報機関出身者、プーチン首相
(ともに当時)への権力の移譲に大いに役に立った。

 誰もが記憶しているだろう、2004年9月1日の北オセチア・ベスラン学校占拠事
件では、子どもたちやその親、教師など1100人前後が人質になった。彼らを解放
するために、ロシア特殊部隊は校舎に向かって重火器で砲撃した。そして334人
が死亡し、800人が重軽傷を負った。政府はこの事件を利用して、州知事選挙を
中止させた。理由は安全が確保できないということだった。

 推測だが、政府内部の派閥間闘争で、それぞれの派閥が政治的影響力を拡大す
るために、こうした事件を起こしている可能性も否定できない。そう考えると、
最近ヴォルゴグラードで起こったテロ事件は、ソチオリンピックの直前に起こっ
ており、社会全体の先行きの見えない雰囲気の中に非常手段を持ち込もうとした
か、あるいは現在の政治リーダー(たとえばメドヴェージェフ首相を?訳注)か
を、より強硬で、自由主義的でない人物に置き換えようとする試みかもしれな
い。ちょうど1999年の連続爆破事件のように。

 今述べたいくつかの特徴から、こう推測することができる。数々のテロ事件
は、政府自体のコントロールのもとに起こされているか、あるいは政府の自作自
演によるものだ。少なくとも、特務機関の作戦行動が、テロリスト側の方針決定
に影響していることはこれまでの例から見て取れる。政府や特務機関が重視する
地域では、必要とあればテロリストを道具に使うことさえできるのだ。

 ところで、1999年9月にロシアの地方都市リャザンで起こった信じがたい事件
を思い起こそう。街の警察官と連邦保安局(FSB)の支局員が、3人のテロリスト
を逮捕した。彼らは高性能爆薬ヘキソーゲンの入ったバッグを、12階建ての集合
住宅の地下に置いた犯人だった。しかし彼らは連邦保安局に引き渡され、すぐに
釈放された後で、これは「テロに対抗するための演習だった」と発表された。

 こんな例は他にもある。1999年9月13日に、ロシア連邦下院のゲンナジー・セ
レズニョフ議員は「ヴォルゴドンスクでテロが起こった」という情報をあやまっ
て発表した。しかしこの日に起こったのはモスクワのカシエルスコエ通りでの爆
破で、ヴォルゴドンスクで実際に集合住宅が爆破されたのは3日後の16日だっ
た。明らかに当局側は、準備されているテロについての情報を把握していた。し
かし彼らがそれについて説明したことはない。

 テロ事件に関する物的証拠の改竄も実に多い。その結果、公式発表に対する社
会の信頼は極めて低い。もし信頼を高められるとしたら、テロ事件を法廷で訴追
できたときだ。しかしそれはほとんどない上、あっても拘置所か軍施設で開廷さ
れたあげく、公衆とメディアには非公開になる。2008年に、テロ事件は陪審制裁
判の対象から除外され、そのこと自体ほとんど公示されなかった。

 ロシアのような法治の伝統のない国では驚くほどのことではないが、政府は、
テロリストを法廷に送り込むよりは、直接殺害することを選んでいる。だが、も
し正しく法廷で訴追を開始できさえすれば、多くの疑問の答えが得られるだろ
う。特務機関がテロ活動にどう関わっているかも含めて。

The Peculiarities of Terrorism in Russia 
Alexander Podrabinek  08 January 2014
http://imrussia.org/en/society/636-the-peculiarities-of-terrorism-in-russia

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