チェチェン総合情報

9 Apr 2012
チェチェンニュース#388 

 またも、チェチェンを取材するジャーナリストが襲撃された。
 今度は、日本を訪問し、明治大学で講演会を開いたこともある、
 エレナ・ミラシナさんだ。

 大怪我だったが、一命はとりとめた模様。
 とりいそぎ、ヒューマン・ライツ・ウォッチの情報を転送します。

 なお、ミラシナさんが書いた記事のいくつかは、日本語訳されています。
 ぜひお読みください:
  http://d.hatena.ne.jp/chechen/archive?word=*[mirashina] 


 ●記念日情報:1996年4月21日 チェチェン初代大統領ドゥダーエフ爆殺


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ヒューマン・ライツ・ウォッチ www.hrw.org/ja 日本語ニュース配信

ロシア:著名ジャーナリスト 襲撃される 捜査当局は直ちに捜査を

日本語ニュースリリース:  http://www.hrw.org/node/106356 
英語オリジナル: http://www.hrw.org/node/106318

(モスクワ、2012年4月6日)−ロシア政府捜査当局は、著名なロシア人ジャーナ
リストで人権活動家のエレナ・ミラシナ氏
への悪質な暴
行事件に対し、迅速かつ徹底的な捜査を行うべきである、と本日ヒューマン・ラ
イツ・ウォッチは述べた。

2012年4月5日午前零時直後、正体不明の男2人が、ロシアの著名な独立系新聞
ノーヴァヤ・ガゼータ紙の記者ミラシナ氏と、彼女の友人で米国の人権・民主主
義団体フリーダム・ハウスのプログラム担当職員であるエラ・アソヤン氏を襲
撃。事件は、モスクワ郊外のバラシハにあるミラシナ氏の自宅付近で起きた。ア
ソヤン氏はモスクワを訪問中で、その夜ミラシナ氏の家に滞在していた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ欧州・中央アジア局長のヒュー・ウィリアムソン
は「ジャーナリストを敵視する環境の中で活動する、勇気あるジャーナリストが
襲撃された場合、通常の路上強盗と見える事件であっても、ミラシナ氏の新聞記
者としての活動に関連する暴行ではないのか、当局は捜査する義務がある。いず
れにせよ、捜査当局は犯人特定と責任追及のため、直ちに行動をとるべきだ」と
語る。

ミラシナ氏によると、犯人は主に彼女の頭部を狙い、殴る蹴るの暴行を加えた。
彼女は12ヶ所に及ぶ頭部血腫を負うとともに、歯を1本失った。犯人はアソヤン
氏に対しても数度暴行を加えたものの、主な狙いはミラシナ氏だったとみられ
る。ミラシナは財布、アソヤンはノートパソコンを奪われた。犯人たちは、ミラ
シナのノートパソコンの入ったバックパックも奪おうとしたが、彼女が抵抗して
いるところに通行人3人が助けに入ったために逃げ去った。

ノーヴァヤ・ガゼータ紙の花形記者だったアンナ・ポリトフスカヤ
氏が、
2006年、残忍な手口で殺害された後、ミラシナ氏は、チェチェンなど人権侵害の
はびこるロシア北コーカサスを報道するという重責を引き継いだ。2009年7月、
チェチェンの著名な人権活動家で、ミラシナ氏の重要な協力者だったナタリア・
エステミロワ氏

が白昼堂々殺害された。ミラシナ氏は独自にこの暗殺事件の調査も行った。ノー
ヴァヤ・ガゼータ紙はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、ミラシナ氏への襲
撃が彼女のジャーナリストとしての活動に関連している可能性を捨てていない、
と述べている。ミラシナ氏は近年、記事に関する多くの脅迫を受けていた。

午前零時40分頃、ミラシナ氏は犯人が逃げた直後に警察に電話。30分程待っても
警察が現れなかったため、出血して衰弱していたミラシナ氏とアソヤン氏はいっ
たんミラシナ氏の自宅に戻った。午前2時、暴行後に彼女たちを助けてくれた3人
の女性から、犯行現場に警察が到着した旨の電話をうけたミラシナ氏らは、犯行
現場に戻った。

犯行現場の警察車両の中には数名の警察官が乗っており、目撃者の1人に質問を
していた。しかし、警察官たちはミラシナ氏とアソヤン氏を無視し続け、車から
降りて来ることもなかった。彼女たちは寒い中で15分待った後に自宅に帰ろうと
したところ、警察官たちは彼女たちをすぐに追いかけてきて、ミラシナ氏の自宅
近くで追いついた。

ミラシナ氏によると、ある警察官が車両から身を乗り出して怪我の様子を記録す
るために病院に連れて行くと持ちかけてきたものの、その物言いはとても失礼
で、誠実さがみられなかった。暴行による痛みと長時間外で待たされたことによ
る疲労でくたくたになっていたミラシナ氏とアソヤン氏は、ミラシナ氏の自宅に
戻った。翌朝、ミラシナ氏は診断書を書いてもらうために病院に行った。ミラシ
ナ氏とアソヤン氏は警察への供述も行い、現在は、襲撃事件に対する予備的な調
査が行われている段階である。

前出のウィリアムソンは「警察の犯行現場への到着が不可解なほど遅かったとみ
られる。しかも、怪我をしているミラシナ氏とその友人に対する医療面での手助
けを優先的に行っていない模様だ。とても遺憾である」と語る。

ロシア政府当局は、この襲撃に対し、徹底的かつ公正な捜査を行うべきである。
さらに、緊急通報から警察車両の現場到着までに90分もかかり、かつ、現場到着
後に警察官が不適切な行動をとったという報告についても、捜査の中でしっかり
調査すべきである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、2009年、エレナ・ミラシナ氏に対して、
ヒューマン・ライツウォッチの最も栄誉ある賞であるアリソン・デフォージュ人
権賞

を授与した。同賞は年に一度、他者の尊厳と人権を守るために自らの命をかけて
いる勇気ある個人を称えて贈られる賞である。

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