チェチェン総合情報

22 Apr 2010
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チェチェンニュース #338
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 先日のミラシナ記者の講演会、100人をこえる多数の方々に来ていただき、
ありがとうございました。多くの市民、報道関係者が参加され、充実した報告
会となりました。新聞にも掲載されています。

  http://tinyurl.com/23f6b7k (PDFファイルが開きます)

 さて、私も今知ったので大急ぎでお知らせする次第なのですが、ミラシナ記
者の出演するBS番組が、22時から放送されます。BSお持ちの方は、ぜひご覧く
ださい。

  http://www.nhk.or.jp/kyounosekai/

 ご意見ご感想はこちらから:
  https://www.nhk.or.jp/kyounosekai/opinion/index.html

 そして、今号のチェチェンニュースでは、ミラシナさんが16日の、記者懇談
会の様子をお伝えします。17日に開かれた集会は、さらに密度の濃いものでし
たので、また改めて流します。

 本当に直前ですみません。
 

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■2010年4月16日 記者懇談会での報告内容



タニヤ・ロクシナ(HRWモスクワ副事務所長):

 3月29日に起こったモスクワの事件は、結局、ロシア政府による北コーカサ
スでの政策が、何もうまくいっていないことの証明だと思います。10年前、モ
スクワを初めとする諸都市のアパートが爆破されたとき、プーチンは「テロと
は断固として戦い、テロリストを抹殺する」というメッセージを出しました
が、状況はその時より悪くなっていると言えます。政府は逆のことを宣伝して
いますが、北コーカサスに広がっている「ジハード」やテロ活動を軽視するこ
とはできません。

 第2次チェチェン戦争では、本当にひどい人権侵害、強制失踪、拷問、暗殺
などが行われてきました。それは今、チェチェンの隣のイングーシでも行われ
ています。1999年からの10年間、強制失踪による被害は最大5千人に及びま
す。それに対する不処罰の横行は大変ひどいです。これまで、欧州人権裁判所
は、チェチェンに関して130件に及ぶ判決を下しました。そのほとんどはロシ
アに責任があることを認めたもので、それらは法的拘束力がありますが、ロシ
アは判決に従っていません。法律で決まっていることを政府が守らなければ、
国民と政府の間は広がっていきます。

 テロリズムは国際的な問題ですが、地元の人々の協力なくしてはそれと戦う
ことができません。しかし当局による人権侵害がすさまじいと、人々は協力す
るというより、むしろ政府を敵視するようになります。これはテロリストたち
にとって、新しいメンバーをリクルートしやすい状況です。合法的に政府批判
をする場所がまったくない──表現の自由も、報道の自由もない中、自分や家族
が人権侵害を受けた若者たちは絶望し、武装勢力に加わっていくのです。

 少数の勇気ある人々が、こうした「不処罰」の慣習に反対の声を上げていま
すが、それは大変危険なことです。特に、ロシア社会でチェチェンの問題を取
り上げることは、死を意味します。2006年に暗殺されたアンナ・ポリトコフス
カヤの件も、犯人はまったく処罰されていません。

 暗殺者たちが処罰されない慣習ができるのは、危険きわまりないことです。
去年、人権活動家のナターリア・エステミローワが殺害されました。この人
は、外国のジャーナリストや人権団体など、さまざまな人の情報源になってい
た一です。その2009年だけで、人権活動家、弁護士、ジャーナリストなど、6
人の人々が殺害されました。そのうち4人は、私のとても親しい友人たちでし
た。こうした事件の犯人も、まったく処罰されていません。

 今のロシアにも、独立したジャーナリストなどの小さなコミュニティーはあ
りますが、欧米からの支援によって成り立っています。日本の社会も、こうし
たコミュニティーを助けて欲しいと思います。とくに、ロシア社会には不処罰
という問題があるということを、日本でも伝えて欲しいです。メドヴェージェ
フ大統領に関しては、「人権を重視する」ということをたびたび発言していま
すが、彼は言葉だけでなく、行動すべきです。

エレナ・ミラシナ(『ノーバヤ・ガゼータ』記者):

 私の同僚である、アンナ・ポリトコフスカヤの本を日本で出してくれた出版
社や、支援グループの人々に、まず感謝したいと思います。彼女の本は、スロ
バキアのような小さな国でも出版され、場合によっては無料で配布されていま
すが、その一方、ロシアでは出版もされていないのです。

 私は『ノーバヤ・ガゼータ』紙に、記者として13年間勤めて来ました。最初
の頃、ロシアは民主的社会になりつつありましたが、今、報道の自由がまった
くない国になってしまいました。それなのに、欧米の政府でさえ、「ロシアに
も独立したメディアが存在する」などと言います。確かに『ノーバヤ・ガゼー
タ』は独立しており、私も自由に書くことができますが、ロシアに報道の自由
があるかどうかという問いについては、2つの例えでお答えしたいと思います。

 1つは、つい最近の3月29日に起こったモスクワ地下鉄爆破事件のことです。
この事件では、時間をおいて爆発した2つの爆弾によって死傷者が出ました。
最初の爆弾が爆発してから、地下鉄はしばらく止まり、状況がわからなくて
困った人々は携帯電話で自宅や会社に電話して、何が起こっているのかを確か
めようとしました。しかし、この事件の速報はどのテレビにも出なかったの
で、誰にも答えようがありませんでした。そうして、何も知らずに電車の中で
待っていた人々は、2回目の爆発で命を落としました。

 この間40分間、たくさんあるテレビのチャンネルは、どれひとつとして事件
のことを伝えませんでした。なぜかというと、テレビの経営者たちは、政府の
指示を待っていたからです。この事件をどう報道すればいいのかと。

 もう1つは、日本に来たときに始めて知ったニュースですが、ロシアの
『ノーボエ・ブレーミヤ』という雑誌の編集部に対して、警察と検察が強制捜
索を行ったというニュースです。この雑誌に掲載されたある記事に対する報復
です。これは私の所属する新聞でも、いつでも起こりうることです。実際、ロ
シアでは犯罪者よりも警察の方がよほど怖い存在です。

 このように、ロシアのジャーナリズムはプロパガンダのシステムの一部に成
り下がっており、その結果として、多数の人命が失われている現実がありま
す。2004年のベスラン学校占拠人質事件のとき、中には千人もの人質が取られ
ていましたが、ロシアのメディアは最後まで人質は350人しかいないと言いつ
づけました。

 というわけで、ロシアには報道の自由は存在していません。私は、西側にあ
るような民主主義は重要な価値を持っており、今のロシアの制度より進んでい
ると考えています。民主主義がないために、ロシアの社会は徐々におかしく
なっていますね。こうした現象の一番ひどいところが、北コーカサス地方です。

 これは、ロシアの中の問題ではなく、グローバルな問題、文明に対する挑戦
だと思います。人間の生活、人生に対する、もっとも重大な問題が含まれてい
ると、私は思うのです。

 ロシアにおいて、警察は法の上にあり、どんな犯罪を犯しても許されます。
これは組織犯罪そのものですが、軍だけでなく、そんな警察部隊が「対テロ作
戦」のために、チェチェンには送り込まれています。そういう警察官は半年ご
とのシフトでチェチェンに送り込まれ、チェチェンでしてきたような残虐なや
り方を身につけて、ロシア各地に持ち帰り、そこで同じことを繰り返すのです。

 最近、ロシアのスーパーマーケットで、酔っ払った警察官が、居合わせた人
7人を射殺する事件がありました。ロシアでは、毎日のように警察官が犯罪を
起こしています。そして、処罰はされません。政府は何があっても警察官をか
ばい、警察官が市民を殴る蹴るしても、それはむしろ忠誠心のあらわれとみな
します。私も、ある日本のジャーナリストが、モスクワで反体制派の集会を取
材していたところ、警察官に殴られた上、警察官から反体制派とどんな関係が
あるかを尋問されたという事例を聞きました。

 2008年のグルジア戦争のとき、ロシアの当局は、南オセチアのツヒンバリ
で、グルジア軍が2千人もの民間人を殺戮したと発表しました。外国の記事
も、嘘はつかないまでも、こうしたプロパガンダを引用したものが多くありま
した。

 私たちの仕事は、現地で何が起きているかを知らせることです。その方法は
簡単で、現地に聞きに行くことです。政治家はそれぞれに政治課題を持ってい
ますから、そのまま信じることはできない場合もありますが、一般の市民に、
何が起こったかを聞いていけば、おのずと事実は明らかになっていきます。単
純に、遺体の数を数えていくのも有効です。ヒューマン・ライツ・ウォッチは
グルジア戦争のとき、その点でとてもいい仕事をしています。やり方はシンプ
ルで、グルジアのあちこちの病院に行き、遺体の数を調べたのです。

 今でもロシアでは、聞きに行けば事実を話してくれる人は大勢います。なか
なか話してくれる人がいないという意味では、チェチェンと、北朝鮮の体制は
よく似ているのではないかと思いますが、ジャーナリストが行けば何かしら話
をしてくれる人はいるのです。

ロクシナ:
 不処罰の理由は何か? という質問がありましたが、これは政府が義務を果
たしたくないからです。国内的にも、対外的にも。ロシアの高官たちが自分の
利益を確保する一方、責任はとろうとしないからです。

ミラシナ:
 この10年間の間で最大5千人の市民が強制失踪させられました。私たちはこ
の数のほとんどはすでに殺されたと考えているのですが、こうした強制失踪に
対して、処罰されたロシアの警察官はたった1名しかいません。拉致された人
の父親が訴追の努力をしたためですが、この裁判をバックアップした人々は、
すでに3人とも殺されました。それが、ジャーナリストのアンナ・ポリトコフ
スカヤと、弁護士のスタニスラフ・マルケーロフ、人権活動家のナターリア・
エステミーロワです。

ロクシナ:
 この「最大5千人」という数字の根拠ですが、まず、ロシアでもっとも信頼
されている人権団体の「メモリアル」は、強制失踪した3千人の人々の情報を
確保しています。これこそが、ほとんどナターリア・エステミーロワによって
調査された、非常に確実な情報です。そして、その他のNGOが調査した約2千人
を積み上げると、最大5千人となるわけです。ロシアの検察も捜査しなければ
ならないに決まっていますが、「容疑者を特定できないため」という理由で、
捜査はほとんどされていません。これは、検察が捜査したくない時の常套句
で、今まで何度聞いたか分かりません。

(文責:チェチェンニュース)


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