チェチェン総合情報

22 Feb 2010
 チェチェンニュース #328
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  INDEX

  * 復讐か抵抗か──チェチェンでの掃討作戦をめぐって
 * イベント情報

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 ■復讐か抵抗か──チェチェンでの掃討作戦をめぐって


 チェチェンから届いた、ある情報を読んでからしばらく、わかりやすくて、
読んでいる人にぐっとくる、何かそういう文章を書けないものかと、思い切り
無駄に日々を過ごした。仕方ないので、今日もずるずると書いてみようと思う。

 東京新聞に、次のような記事が載った。つい最近のことだ。

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 「ロ南部爆弾テロ住民ら2人死亡 イスラム勢力犯行か(東京新聞2010.2.20)」
   http://d.hatena.ne.jp/chechen/20100221/1266760879 (全文)

 2月19日にイングーシで爆破事件があり、住民など2人が死亡したので、これ
をロシア側は「チェチェン独立派のテロ」だとみて捜査している。自爆テロが
相次いでいる上、今月13日には、ロシア側治安機関がチェチェンで武装勢力の
拠点を急襲して20人を殺害していたので、「その報復とみられる」という。
(要約)
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 本当に、これだけの内容の短い記事だ。しかし問題点がたくさんある。「20
人」とは、武装勢力だったのか、民間人だったのか?。拠点とはどこか?。そ
して、別の場所で起こった爆破事件が、なぜ犯人も明らかになっていないの
に、「報復」だと推定できるのか?。

 問題を明らかにするために、次の声明に、ざっとでも目を通してほしい。

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「チェチェンでの掃討作戦に関する声明」2010年2月14日〈自由コーカサス〉発

 1944年2月23日は、チェチェン・イングーシ人がスターリンによって強制移
住させられた日だ。ヨーロッパの多くの国々で、コーカサス出身者のディアス
ポラが記念の集会やデモを準備し、あの強制移住がジェノサイドであったこと
を認めるよう、国際機関に訴えようというその時に、チェチェンから悪い知ら
せが来た。ロシアの占領者が、またアチホイマルタンとスンジェンスク地区の
一般市民を多数まとめて殺害したのだ。

 チェチェンとロシア両方の情報源によると、チェチェンの若者数十人が、山
岳部にギョウジャニンニクを採りに入ったさい、ロシア軍の餌食とされたとい
うことだ。生き残ったチェチェンの若者たちも極めて残虐な拷問や虐待を受
け、抵抗運動に参加している者たちと協力関係にあることを自白するよう要求
された。コーカサス全体で果てしない軍事挑発を行い続けているロシアの殺人
者たちの戦争犯罪は明らかだ。

 「自由コーカサス」は、国際裁判所、人権団体、そのほかヒューマニズムに
立脚するあらゆる団体に訴える。チェチェンで行われている一般市民の大量殺
戮の調査にただちに取りかかり、ロシア軍が北コーカサスでおこなっている犯
罪行動を、政治的・法律的に評価するように。

   署名 イサ・ムナエフ 「自由コーカサス」議長ほか
 
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 ギョウジャニンニクが、東京新聞にどう関係しているかというと、モスコフ
スキー・コムソモレツ紙が伝えたころでは、

 13日に、ロシア特殊部隊が、チェチェンとイングーシの国境地帯で14人の市
民を殺害した。ヘリによる空襲で、武装勢力20人だけでなく、ギョウジャニン
ニクを摘みに山に入った一般市民が殺害された。

 チェチェンはこのところ暖かで、この山菜は芽吹いたばかり、人々は珍味を
求めて山へ行った。バターでも動物の脂でもおいしく食べられる。そのとき、
ロシア側は独立派狩りの無差別の空爆をおこなった。そして、なんの罪もない
14人の若者たちが殺されてしまった。

 このとき、150人ほどの住民が山にいて、ほとんど全員が拘束、尋問され
た。私(大富)が思うには、ニンニク摘みも、国中を貧困が支配するチェチェン
の人々が、食料か、わずかな換金手段として探しにいったもののような気がする。

 さてそういうわけで、ロシア側の公式発表では、約20名の武装勢力を殲滅さ
れた。山には武装勢力も、ニンニク摘みも両方いたのかもしれない。そしてさ
らに、一般市民14人が殺されたようだ。

 モスコフスキー・コムソモーレツ紙は、良心的な新聞だとも、もろにロシア
政府寄りの新聞だという評価もあって、まだよくわからないのだが、

 「われわれがこれを報じる目的はただ一つ。新たに任命された北コーカサス
大統領全権代表A・フラポーニンが試されている瞬間ということだ。かれの任
務は、現実を公表し、責任者を罰して、アチホイマルタンの村民に謝罪するこ
とだ」

 と、まともに論じている。ロシアがどうしてチェチェンを支配する権利があ
るのか、というような視点はこのさいおくが。そして、こういう状況が放置さ
れると、

 「若い人たちなら、山に入っていく(独立派ゲリラに参加する)だろう、
それはもうニンニク摘みのためでなく、イチケリアの独立のためでもない、
身内の血を償うためにだ」

 と結んでいる。こういう考えの元に、東京新聞のような記事の「報復とみら
れる」という結論が導き出されるのかもしれない。この記事も一癖ありだ。

 ( http://d.hatena.ne.jp/chechen/20100221/1266762729 )

 どうも、チェチェン戦争が始まって15年目のこの頃、メディアの状況はます
ますひどくなってきているのではないかと感じ始めた。

 最初の東京新聞の記事を貫いているのは、ロシア側の政策に対する批判的な
視点の欠落だ。「報復と見られる」という結論に至っては、悪意さえ感じる。
どうして、犯人もわかっていないのに・・・繰り返しはよくないな。

 どうしてこういうことになるのかを考えてみた。すると、ある前提を仮定す
ると、読み解けるような気がしてきた。こういうものだ。

 〈ロシアの対チェチェン進攻と、その後の制圧は正しい。そして今度の掃討
作戦によって「武装勢力にだけ」は被害が出たが、それも問題ない。武装勢力
は「復讐」を繰り返しているので、今回の爆破も、そうであろう〉

 佐藤優なら、こういう論も立てかねない。私なら、記者にはこう伝えたい。

 ロシア政府は、過去にチェチェンとの間に結んだ和平合意や平和条約を踏み
にじって、20万人におよぶチェチェンの民間人を殺害した上で、現在の支配を
行っている。この15年間の間、死者の圧倒的多数は民間人だった。今の状況
は、そういう犯罪の延長線上にある。

 という、少し調査能力があれば共有できるであろう前提のもとに、情報や、
事実を読み直していただきたいこと、切に願う次第だ。


 ところで、イラク侵攻による民間人の犠牲者は10万人とも言われている。ア
フガンでも最近、国際治安支援部隊(ISAF)による「誤爆」が相次いでいて、
チェチェンで計34人が空爆で殺されたのとほとんど同時、2月14日に、一日で
民間人12人が殺害される事件が起きた。( http://tinyurl.com/yjckpy7 )

 「誤爆」も虐殺も、けっして、ひとごとではないのだ。

                              大富 亮
                              訳文提供:T.K.


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 ■イベント情報

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 ★ 2/25 飯田橋:第92回みみの会 アクティビスト・園良太が語る!
     労働運動、反戦、ヘイトスピーチ ──東京の路上から

    http://d.hatena.ne.jp/miminokai/20100204/1265288360

  アクティビスト・編集者、園良太が語る東京の平和・労働運動シーンの今。
  排外主義的な極右が各地で朝鮮学校への「襲撃」を繰り返し、
  貧困も戦争も悪化していく中、今の状況にどう切り込むか、熱く語ります。

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 ★ 2/25 :ガザ攻撃1周年追悼・報道規制を訴える集会 
     ガザで起こった“本当のこと”〜『沈黙を破る』・兵士が語るガザ攻撃〜

    http://doi-toshikuni.net/j/info/20100225.html

  約1400人が犠牲となったガザ攻撃から1年2ヵ月。
  イスラエルは報道規制を強め、ジャーナリスト・土井敏邦さんへの
  プレスカード発行も拒否された。抗議の声をあげる集会にご参加を。

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 ★ 2/27 大崎:タタール、歴史と現在
                  グローバリゼーションの中で民族について考える

    http://ulr.livejournal.com/127505.html

  ロシアで、ロシア人の次に人口の多いタタール民族の抱える問題と、
  かつて日本に存在した在日タタール人コミュニティーについて。
  ラリサ・ウスマノヴァ氏、松長昭氏が語る。

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 ★ 3/6 表参道:抗う映画たち アムネスティminiフィルム・フェスティバル

    http://tinyurl.com/ydgpmeu

  偏向報道、検閲・・・
  さまざまな角度から「表現の自由」を切り口に選び出した
  「抗う映画たち」を上映します。

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 ★ 3/9 文京:DAYS JAPAN 6周年記念イベント

    http://daysjapanblog.seesaa.net/article/138768994.html

  廃刊するかそれとも存続か? イラク戦争のあまりにもむごい光景は、
  戦争を許してしまった私たちにも責任があり、目をそらす権利はありません。
  その想いが集まって生まれたDAYS JAPANが6周年。

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 ★ 3/13 御茶ノ水:映画『こつなぎ』上映会

    http://blog.livedoor.jp/kotsunagi/

  ここに山がある 山はみんなの生活の場

  岩手県北部、農地の少ない小繋集落の農民を襲った火事と、
  山の入会権〈いりあいけん〉を求める訴訟。
  「山はだれのものか?」「生きるとは?」という問いかけを、今ふたたび。
  50年前の貴重な記録を7年の歳月をかけて編集。

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 ★ 3/14 水戸:在日難民と収容所列島ニッポン
          ─「牛久」から「大村(長崎)」に虹の架け橋を

    http://d.hatena.ne.jp/chechen/20100207/1265507564

  知っていますか? 県内に外国人収容所があることを!
  多くの難民申請者が無期限に収容されている東日本入国管理センター。
  収容所の知られざる現実を、皆さんと一緒に考えたいと思います。
  講演者に、山村淳平さん(港町診療所医師)ら。

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 ■映画・連続講座

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 ★ 『アメリカ帰還兵(IVAW)イラクに誓う』

  許しを請うのではなく──

  イラク帰還兵士が、自らの意志で再びイラクを訪れ、誓った。
  この戦争と占領を終わらせるために、
  イラクや世界の人々とともに歩みつづける。

    http://www.peacetv.jp/movie.html

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 ★ 『南京・引き裂かれた記憶』

    http://nanking-hikisakaretakioku.com/

    間違いなく、あったことなんです──
  7人の被害者の証言と、6人の元日本兵の証言から浮かび上がる、
  「南京大虐殺」の記憶。

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 ★ 『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』

    http://www.uplink.co.jp/bluegold/

  世界の人口増加により、水資源は不足しはじめている。
  石油戦争から、水戦争の時代へ──
  あなたは、ペットボトルの水を飲みますか?

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 ★ wam de video 2010 兵士が加害を語るとき
    〜日本・アメリカ・イスラエルからの証言〜

    http://d.hatena.ne.jp/chechen/20091219/1261215475

  中国を侵略した元日本軍兵士、イラクから帰還したアメリカ兵、
  パレスチナ占領の実態を語るイスラエル兵が語る加害行為。
  彼らはなぜ、語り始めたのか──

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 ★ 連続講座:ジャーナリスト実践養成講座

    http://apc.cup.com/

  マスメディア業界を目指している方、フリーで取材する方、
  ブロガーなど記事文章の上達を目指している方にお薦めの実践養成講座。
  「ジャーナリストのための実践英語入門講座」など幅広く。

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 ★『鶴彬 ーこころの軌跡ー』

    http://tsuruakira.jp/

    万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た──
    数多くの鋭い反戦川柳を詠んで戦争反対を貫き、獄中に果てた鶴彬の生涯。

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 ★『沈黙を破る』

    http://www.cine.co.jp/chinmoku/

    考えるのをやめたとき、僕は怪物になったーー
    「祖国への裏切り」と非難されながらも加害行為を告白する、
    若いイスラエル兵士たちがいた。

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 ★『チェチェンへ アレクサンドラの旅』

    http://www.chechen.jp/

    孫へのまなざし 平和への祈り ロシアの見たチェチェン

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 ★『ビリン・闘いの村』

   http://www.hamsafilms.com/bilin/

  パレスチナ暫定自治区、ヨルダン川西岸のビリン村。
  若者たちは非暴力の闘いに立ち上がった。

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